2015/10/25 のログ
■ヴィアベル > 「しません! 人身売買とかできねーから! そんな権限ねーよ!
ってえええ軽ッ!? 返してくれるなら先に言えよなー、なんだよー、も~」
抱えてすぐに財布を返すなんて言われたもんだから、ずっこけかける。
どこにいくのか、という問いの答えは持っていなかった。
とりあえずどっかに逃げよう、程度にしか決めていなかったから。
大人しくなった少女を抱えたまま歩きつつ、路地裏へ一歩入ったような、そんな場所で立ち止まる。
そして、無造作に置かれた木箱の上に座らせる。
「よ、っと。
まさに借りてきた猫っていうか……ホントに猫だな。
とりあえずさっき言ったとおり、財布返そうな」
今まで気にしていなかったが、気が抜けたためか彼女の人の耳でない耳が気になった。
が、それより財布だ。ん、と手を差し出して財布を求める。
■キスカ > ちょこん、と木箱の上に腰かけて。
「もともと用があったのは…こっちじゃなくて君自身のほう」
心配になるくらい軽いおサイフをお兄さんの手のひらにのせる。
「私の仕事、手伝ってもらおうと思ったんだけど」
「そっちは当てが外れちゃいました! おかげで散々な目に遭ったんだから」
この人は間違いなく被害者だけど、私にも一言くらい言わせてもらう権利はあるはず。
「ふつーさー、あれぐらいの人数だったらさー? もーちょいぱぱっとさー??」
「しかも見失ってなかった? こんな目立つのに。おサイフ取られてるのに気合が足りないよね」
「こっちは君が追いつけなかったせいで死にかけたんだよ! まったくもー……」
むくれてそっぽを向く。細かい返り血と紙一重でかすった切傷のあともそのままに。
自ら望んでしたことで、責めても仕方がないとわかってはいるのだけど。
■ヴィアベル > 「は? おれ?」
漸く返ってきた麗しの財布(重みは相変わらず貧しいまま)を受け取って、続く話を聞く。
細かいことは分からないが、なにやら酷い言われようである。
というか、見られてたのか。
衛兵に足止めくらったのはともかく、見失ったところまで。恥だ。ちくしょう。
「てっめ、こっちだってなあっ!
ハラ減ってるところにいきなりスられるわ、衛兵のオッサンがくるわでなあっ!
……え? しにかけた?」
尋常でない言葉に、そっぽを向く彼女の返り血やら切り傷やらに気付かされる。
一体何をしたんだ。そして何に巻き込まれかけたんだ自分は。
ふう、とひとつため息をついて。
「……何したかしらねーけど、仕事の依頼なら、フツーに頼めっての!
こんなんでも冒険者なんだぞ」
おっしゃるとおり、衛兵にてこずる程度だけどななんて言いながら、
返り血を拭おうと腰布を破く。
■キスカ > 「知ってるってば。迷惑してたのも。ごめんなさい。謝って済むことかどうかわからないけど…」
「君と私は無関係。何のつながりもなかったから、もしもの時にも関係を否定できる」
「あと、もっと言えば…何も知らない人たちには絶対に裏切られない」
「……ううん、期待は裏切られたけど。でも結局、何ともなかったでしょ?」
くすくす笑う。片目をつむって。
「私の敵は、いつも私よりお金持ちだから……お金で動く人たちはちょっと」
冗談交じりに答えつつ、ふと表通りの方をみて耳をそばだてる。
教団の秘術をつかって耳と尻尾を隠し、ヴィアベルの襟元を引いて唇を近づける。
二人の隠れるこの場所へ、殺気だった荒くれものたちの足音が近づきつつあった。
■ヴィアベル > 素直に謝られると、頭をかいて、そっぽを向く。
それにしても彼女は、財布どころじゃない、もっとヤバい盗みでも働こうとしていたんだろうか。
そういうことなら、彼女の言うとおり、何もなかったことに喜んでおくべきか。
「なるほどねえ……。
まー頼みたいことがあるなら、ちゃんと言えよってこった!
今日みたいなのはゴメンだからな。」
苦笑しつつ拭った布を無造作に仕舞うと、不意に襟元が引っ張られる。
「ッ、今度は何……、」
気付けば彼女の顔が間近にあって。
しばらく、不穏な足音に気付くことができなかった。
■キスカ > よく見ると顔はそこそこ。小さい頃は女の子みたいだったとか、たぶんそんな感じ。
橙の瞳と間近に見つめあうことわずかに数瞬、私の方から唇を近づけていく。
お兄さんの身体に遮られて、表通りのほうからは隠れる絶妙の位置取り。
首に腕をまわして、甘い声をあげながら口付けを交わす。
「――――ん………は、ぁ…ぅ…」
壁に立てかけられていた木材が蹴飛ばされ、音を立てて倒れこむ。
濛々と埃の立ちこめる向こうから凶相の大男がのっしのっしと近づいてきた。
『クソッ、盛りやがって!!』
『おい、止めとけよチェーザレ。野郎を見つけるのが先だろうが』
『けどよぉ兄貴、親父が殺られまったってえ時にこいつらァ…』
『幹部会の言葉はボスの言葉だ。知りませんでしたじゃ済まねえんだよ』
『と、とんでもねえ! 俺ァ…待ってくだせえ兄貴! 兄貴ィ!!』
最後にもう一度だけ殺気が飛んできて、ならず者たちが遠のいていく。
「……ぅ、ん……………行った…?」
まれびとと同じ形の耳を澄まして、確証が得られるまで息をひそめる。
少しして、ぐったりと長いため息をつく。このまま気絶したいくらい疲れてもいて。
「はー…ごちそうさまでした。でね、ごはんまだだったら食べに行かない?」
「迷惑料みたいなあれで。ご馳走してあげてもいいからさ」
■ヴィアベル > 不穏な足音に気付く頃には、自分の唇が塞がれていることにも漸く気付いた。
「!?」
一瞬驚きはしたが、この不穏な気配をやり過ごすには丁度いい。
こちらも細い体に腕を回して、口付けに応える。
甘い声。柔らかい感触。うん、悪くない、なんて思いながら。
男たちの会話から、ヤバげな組織が壊滅したのかなーとかぼんやり考える。
この辺はお世辞にも治安が良いとは言えないから色んな騒ぎが起こっても不思議じゃない。
だけどそんなのはどうでも良い。
足音も気配も遠のけば、抱きしめた体から手を離し。
「は、……ったく、突然が多いな、あんたは。
……ってマジで!? やった!! ごちになりまーっす!」
そういえば同じ耳の形になってるなとか、
お疲れのご様子ですねとか、
そんなことよりごはんのお誘いに目を輝かせる。
ふと気付いたように。
「……そーいや、名前知らないし名乗ってもなかった。
おれはヴィアベル。
兄貴たちにはベルとかアベルとか呼ばれてたけど、まー好きに呼べよ」
■キスカ > 「ふーん。知らないままでも良かったんだけど。知りたいのなら、教えてあげる」
「私はキスカ。姓はあるけど私も知らない。たぶんもう、知ってるひとはどこにもいない」
「だったら無いのと同じかなって。ヘンな呼び方をしたらぶっk――――とばすのでそのつもりで」
木箱から降りて、ヴィアベルの腕をとって歩きだす。
「昔ながらのミレーの料理が味わえるお店があるんだ。いわゆる伝統料理ってやつかな」
「まれびとがやってるお店だから、食べられないってことはないはず」
「ものはためしってことで。行こう行こう!」
長居は無用。もうこの場所に止まっている理由もなく。腹ごしらえの時間だ!
■ヴィアベル > 「姓はあるけど知らない、か。じゃーおれと一緒だな」
彼女、改めキスカが不穏なことを言いかけたような気がするが、たぶん気のせいだ。
きっとそうだ。
どうせ変な呼び方なんてしないし、何も問題ない。たぶん。
安心したせいか、空腹を思い出しつつ。
肉があるといいなーとか言いながら、彼女についていくのだった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からキスカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からヴィアベルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にアルフレイドさんが現れました。
■アルフレイド > 数日前に受けた仕事を経てようやく王都まで戻ってきた。
しかし、外門を通り抜けた男は表通りを避けて、この年の影の部分、貧民地区にその身を潜めた。
ご丁寧にクロークのフードでその顔も隠し夜の闇に紛れて。
「……やれやれ、ここならまぁ…あとは金次第でなんとかなる、か?」
ブーツの足音と共に妖しげな明かり灯す娼館通り前を通り過ぎていく。
館の窓から娼婦が客を誘う様は惹かれるものがあるが、今は金がない。
明日以降また金を稼ぐ必要はあるが、今は宿だ。
決して快適ではないが格安の宿を求めて、娼館に集う人の中足早に歩いてゆく。
■アルフレイド > 金と欲の集まる通りも抜けてしまえば、後は文字通り貧民地区。
人気の無い廃屋や、薄汚れた浮浪者がだらしなく明かりの無い通りに腰を下ろし眠り扱けている。
仮に死んでいても誰も気にしない闇。
まぁ、隠れるには打って付けだけに男もまたそうした闇の中を歩み行く。
「さて…確か、この辺だった気もするが…。」
初めて王都に辿り着いた際、僅かばかりの金で何とか泊まれる場所をと探した宿。
いつ以来だか覚えも曖昧な上に嘗てよりも闇が深くなったような地区だけに、フードの中双眸は宿の外観の記憶だけを頼りに廃墟の街を進み行く。
■アルフレイド > 右を見ても左を見ても、看板も無ければ明りのついた家も無い。
見れば見るほど何処も同じ廃屋にしか感じない。
フードの中、男は小首を傾げ次いで溜息を零し
「むぅ……あん時は確かにこの辺にあったんだがなぁ…。」
昔の記憶辿りではやはり見つけるのは苦しいのか。
しかもこの地区なら何が起きてもおかしくは無い。
とりあえず、人気も少ないここならと被っていたフードを取り、少しばかり周囲への探知の気配を広げてみよう。
人の気配でもあればこの際
宿でなくとも突撃して一泊頼み込む。
そんな心算で、歩く早さを緩め更に街の奥へと潜って行く。