2015/10/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にヴィアベルさんが現れました。
ヴィアベル > 「参ったなあ……。アレな店ばっかだぞ……」

広くない道を歩く、歩く。
最初は夕食をとるために歩いていたのだが、歩けど歩けど食堂が無い。
目立つ建物があると思って駆け寄れば、ほとんどが娼館だ。

盗賊団にいた頃、兄貴が持ってきたおこぼれをもらったことがあったなあとか。
そんなことをぼんやり考えながら、ひたすら進む。

「本当なら、金が要るってわけか。メシと同じだな。
 うーん、美味しい思いさせてもらってたもんだ」

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にキスカさんが現れました。
キスカ > ごはん時には少し遅いくらいの時間帯。
私の前方にはあてどなく歩くお兄さんがひとり。
注意力が散漫になっているのか、ふらふらしていて隙だらけにも見える。

大丈夫かな。この街ではそんな人は格好の餌食になるのに。

一緒に倒れこむくらいの勢いでぶつかって、そのまま受け身をとって距離をとる。

「………ご、ごめんなさいっ…!!」

ぺこぺこ頭を下げて、そのまま一目散に走り出していく。
知らないお兄さんのおサイフを手に、中身の重さをはかりながら。

ヴィアベル > どん、と。背中からの突然の衝撃に、うわあとかそんな感じの情けない声を上げる。
倒れるまではいかなかったものの、なんだなんだと体勢を立て直す。
振り向いてみれば、ローブの少女。

「え? いや、こっちこそフラフラしてたし……ってあー、もう行っちまったか」

再び歩き出そうとした刹那、不意に、懐の軽さが気になった。
見れば大事な財布(中身はあんまり入ってない)が姿を消しているではないか。
これは、あれか、もしかしなくても。

「……ッ!!!コラッ、おい!!待ちやがれー!!!」

考えるより先に、足は地面を蹴っていた。

キスカ > 「あっ、は―――!」

こんなに早く気づかれた? 思っていたよりずっと早い。
それならそれで好都合、ここから先は予定の通りに。

客引きの娼婦が立ち尽くす、うらぶれた場末の色町を駆け抜けていく。
それにしても。

おサイフめっちゃ軽い。軽すぎないかなこれは。

「きゃあああああああ!!! 助けてぇ!! 殺されるーー!!!」

衛兵さんたちの詰め所を通りがかったタイミングで絹の裂けるような悲鳴をあげる。
フル武装のおじさまたちが目を白黒させて飛び出してきて、知らないお兄さんの姿を捕捉する。
衛兵たちは顔を見合わせ、長モノを構えてお兄さんの行く手を阻んだ。

その間に私は派手な色をした妓楼の、建物のかざりを伝ってすいすいと屋根の上まで上っていく。
振りかえって手を振り、一足先にならず者たちがひしめくエリアへ。

ヴィアベル > 元盗賊なめんなよ! 
まあ、元、な挙句どちらかといえば戦士寄りなのだが、それはこの際どうでもいい。
客引きにぶつからないよう、僅かに鼻をくすぐる花の香りを頼りに、小さな背を追う。

しかし、その足は突如止められることとなる。
悲鳴とともに、長モノを持った衛兵たちが、目の前に現れたからだ。

「違ッ、殺そうとなんてしてな、放せーーッ!!
 くそ、待てコラチビ助ーーッ!!」

襲い掛かる衛兵から逃れようとしつつ、殴る蹴るの暴行を加えたり。
不意に見上げると、少女が手を振っている姿が見えたような見えないような。
今はとにかく目の前のことで精一杯だった。

何とか切り抜けられる頃には、きっと少女の行方も、花の香りも分からなくなっているだろう。

キスカ > 貧民街の中でも特別に厳重な警備が布かれていて、一目でそれとわかる場所。
このあたりが貧民街に変わる前から建っていて、数少ない名建築といわれるこのお屋敷。

表札こそないけれど、ここは暗黒街の大親分の根拠地のひとつ。
今日は月に一度の幹部会義で、いまこの時間なら確実に中にいるはず。
内偵にもたっぷり手間隙かけたんだから。

………それで、お兄さんはまだかな。
お兄さんじゃなくてもいいけど、だれかに騒ぎを起こしてもらわないといけないのに。

「どうしちゃったかなー」

まさかタイホされちゃった?
可能性は否定できない。この手のことにアクシデントはつきものなのだ。

――――仕方ない。これは私ひとりでやれってことかな。

凶悪な装備で身を固めた用心棒たちの、死角を縫って垣根を越えていく。
なるべく手短に済ませよう。済ませたい。済むといいな。済みますように…!!

ヴィアベル > 一方、財布を取られた冒険者は、左腕の感覚を確かめつつ路地裏をとぼとぼ歩いていた。
衛兵に左腕を少しやられてしまったらしい。
しかし、あの大勢とやりあってそれだけで済んだのは幸運か実力か。
それは定かではないが、左腕よりも、なくなってしまった重みに悔しさを覚えていた。

「クソッ、おれのなけなしのゴルド……!
 今日はでっけえ骨付き肉食うつもりだったのによ……!」

財布の余裕はあまり無いというのに、贅沢をするつもりだったらしい。

そういえば、あの少女を最後に見たとき。
一緒にハデな色が見えたような気がするが、どちらの方角だったか。
少々豪華だったような、そうでもないような。

ぐ、と拳を握る。空腹もあまり気にならなくなってきた。
とにかく、なんとなく覚えているその色を頼りに、探してみることにした。

キスカ > ――――それから何十分か経った頃。

『うおおおおおい!! ボスが殺られちまったあああ!!!!!』
『っ!!! てめえ馬鹿野郎!!! 秘密にしとけって話だったろ!?』
『戦争じゃあ!!!! 弔い合戦じゃああああああい!!』
『うるせーーーーーーー!!!!』

二人組の声が遠ざかっていく。
お屋敷は今も黒煙をあげていて、蜂の巣をつついたみたいな騒ぎが続いてる。

陽動なしの一発勝負。結果は上々、だけど過程は散々だった。
投げナイフも煙幕も使い切って、隠し刃で剣を受けてしまったから、刃こぼれもきっとひどいはず。
武器庫の仕掛けが動かなかったら、あのまま押し包まれて死んでいたに違いない。

けれど私はまだ平気。疲れ切っていて身も心もぼろぼろだけど、まだ地獄に落ちる時じゃない。
ならず者の姿がないことをたしかめて、雑踏の中へと降りていく。

着地のときに足がもつれて、知らないお兄さんの背中にまともにぶつかってしまった。

「………うっ、ごめんなさ――――    あっ」

ヴィアベル > ハデな色、ハデな色。
だんだんどれがハデな色だか分からなくなってきた。

ふと、少女が駆け込んだエリアの近くを通りかかる。
なんとなく騒がしい。
暗くてよく分からないが、少し遠くで煙も上がっているような。

しかし少女の行き先などこの冒険者は分からない。
見るからにヤバそうな雰囲気がするし、こんな場所に少女が入っていくわけもないだろうと。
自分だって依頼でもなければ、こんなところへ入りたくはない。
足早に通り過ぎて、また人通りの多い通りへ出て行く。

と、再び、背中に衝撃。

今度は情けない声を上げずに済んだ。
そろそろそんな元気もなくなってきたか、と振り返る。
ローブと、見覚えのあるメッシュ髪。

「あ、 ああああ!!!!!」

一瞬呆気に取られるも、逃がしてたまるかと腕を伸ばす。

キスカ > 「ひゃああああああ! 人違いですーーーーー!!!」

手甲がついていない方の腕、右の手首を掴まれる。
全身が総毛立って、耳もしっぽも鉄の芯が入ったみたいにこわばってしまう。
ローブにはしっぽ穴がないので、まともに反応すると裾が持ち上がったりしてしまうのだ。

さっとフードを被って回れ右。

「へ、変態っ!!! いやああああ!! 変態! 変態!! 変質者ぁ!!!」

なんだなんだと道行く人の注目が集まる。

あらやだ変質者だわとささやき交わすおばさまたち。腕まくりしてやってくるおじさまたち。
私と同い年くらいの女の子たちが悲鳴をあげて逃げていく。

「離して!! やだ、離してってば! 変態!!!」

ヴィアベル > 「嘘つけ、おれの財布パクりやがって!! 返しやがれ!!」

やっと捕まえた。
まさか向こうからやって来てくれるとは。
もう逃がすものかと、細い手首をぐっと掴む。
少女が変態変態と騒ぐのも気にしない。

「こんにゃろ、誰が変態か!!!だれが……、」

しかし周りの視線は明らかに自分の味方ではなかった。
少女を捕まえたまま突っ立っていれば、ゆかいなおじさまたちがずんずん近付いてくる。
ここで少女を放して逃げても良いのだが、そうすると財布を諦めることになる。
それはイヤだった。少ないから別にどうでもいいとか、そういうわけではないのだ。
こうなったら一か八か。

「とりあえず、大人しく話が出来るところまで逃げるぞ!
 っていうか財布返してくれれば、それでいいんだけどなッ!」

少女を抱えて逃げるため、腕を回そうと。

キスカ > 「人間だれしもちょっとやそっとは変態なのです…YOU認めちゃいなよ!!」

振りほどく力もなくて、次の瞬間にはつま先から宙に浮いていた。

「あぁぁぁ………」
「お仕置きされちゃうんだ……ヘンな白い粉とか使われて…」
「ボロボロになったらもう用済みだなって売り飛ばされちゃうんだ……」

痴話喧嘩かよクソッと舌打ちして散っていく人々。
ノゥ。いいえ違うの決してそういうのではなく。

「えっ。あ、はい。返すけど、それは別にいいんだけど」
「どこに連れてくのさ?」

借りてきた猫みたいに大人しくぶらさがっておく。