2015/10/15 のログ
ご案内:「王城の見える貧民街」にツァリエルさんが現れました。
ツァリエル > 年のころは10にも満たないだろうか、数名の身なりが貧しく
お古の衣服を着まわしたような子供がきゃあきゃあといいながら年上の少年の周りではしゃいでいる。
男の子も女の子もいるし、鬼ごっこでもしているのか修道士のような格好の少年の周りをぐるぐると駆け回る。

やがて遊びにつかれた修道士がもうおしまいと声をかけると、
子供たちはむくれて文句を言いながらも次なる遊び場へと一斉に駆け出して行った。

ツァリエルはそれをやや疲れた様に見送って手を振った。

ツァリエル > たまにこうして貧民街に奉仕活動で訪れると、決まって子供の遊び相手に指名されるのがツァリエルだ。
あまり歳も離れておらず、弱そうなツァリエルならば喧嘩になっても勝てるだろうと踏んでいるのだろうか
それはわからないが、大人の修道士たちよりかははるかに誘われやすかった。
仕事の合間をぬってこうして遊び相手になることも一度や二度ではない。

煤に汚れた法衣のすそを払いながら、遠くにうっすらと見える王城を見つめる。
ツァリエルはなぜか王城を眺めるたびにひどく懐かしい気持ちに襲われるのだ。
それがなぜかはよくわからないが……
最初は貴族に対する憧れか何かだと思っていたのだがどうやら違うらしい。

もっと近くで王城をよく見たいと思うこともあったが、
富裕層のいる地区を自分のようなみすぼらしい修道士が歩いていると露骨に嫌な顔をされるので気がすすまない。

この懐かしい気持ちがどこから来るのか、知りたいとは思うものの何の手がかりもないのだ。

ご案内:「王城の見える貧民街」にケイシーさんが現れました。
ケイシー >  (やれやれ、ようやく散りやがったか。)
中々に日当たりの良い空き地の片隅。物陰から、もぞりと一匹の猫が這い出る。

 別に子供が苦手な訳ではないが、ただの猫の姿で、あの人数の子供達に手加減無しにもみくちゃにされるのはさすがに勘弁だった。
隙をついてこの場を離れるつもりでいたが、何分彼らときたら随分幼い修道士と一緒にあっちへワラワラ、こっちへワラワラ。
出るに出られず、隠れていた猫だった。

 いや、まだ一人。件の修道士が一人残り、王城へ視線を向け物思いに浸っている。
プラチナブロンド。青い瞳。褐色の肌。整った顔だち。
こんな華奢で美形な少年、修道士達の間で随分と「可愛がられている」のではないか。

 とっとと立ち去るつもりが、猫は修道士の少年をなんとはなしに観察していた。

ツァリエル > しばらくの間その場に突っ立って、王城へと目を向けていたが
物陰からひょこりと出てきた猫の姿に気づくと
にっこりと笑いながら猫のほうへしゃがみこむ。

「猫君もひとりかな?」

なんの疑いもなく猫のほうへ手を差し伸べる。
あいにくと猫が食べられそうなものがないから
もしかしたら餌がないことに腹を立てて行ってしまうかもしれないが。

ケイシー > 「まぁね〜…」

 気が、緩んでいた。
にこやかに語りかけてきた少年修道士の、その何の気もない声かけに、
ケイシーはうっかり返事をしてしまった。
ザワザワとした感覚が背中を奔る。

「ま…んまァォー」

 咄嗟に鳴き声を出して誤魔化そうとするが、あまりにも苦しい。
視線はツァリエルを直視出来ず、あらぬ方向へと泳ぐ。

ツァリエル > 一瞬猫の口がもごもごと動いてこちらに返事したような気がした。
驚いて瞬きをしてもう一度よく猫を見つめるが
どうやら鳴き声が人の声のように聞こえたらしい。
自分の気のせいだろうと首を振った。

どうやら人なれはしていない様子なのでそれ以上は近寄らず眺めるだけに留める。
かがみこんだまま、頬杖をついて笑いかける。

「君は随分人の声みたいになくんだねぇ。どこかの飼い猫だったのかな?」

答えてくれるわけもないか、と溜息を吐く。

ケイシー > よせよせ、動物に話しかける気持ちはオレっちにも分かる。
でも殆どの動物は喋れない事になってんだよ。
そう、こっちも応える訳にゃいかないの。

 一人心の中で受け答えをし、つい返事をしそうになるのをぐっと堪える。
なあ、そんなため息つくなって。

 必要以上に近づいてこない少年なら、無闇な扱いもされないだろう。
なぐさめる訳でもないが、ケイシーは自分からツァリエルに近寄り、その脚に額をすり寄せる。

 そして、足元からじっとその青い瞳を覗き込んだ。綺麗な、眼だ。
ケイシーは少し、羨ましい気持ちになった。

ツァリエル > 足元にすり寄ってきた猫にわっと感嘆の声を上げて
逆に自分からも手を伸ばし、額のあたりを指でこすって撫でてみようとする。
随分と人懐っこいし、人間を怖がらないあたり野良ではなさそうだ。
そうしていると猫がじっとこちらを覗き込んでくる。
まさか自分の瞳を羨ましがられているなんて思いもよらず、なんだろうと首を傾げた。

「もしかしておなかが減っているのかな?
 ごめんね、今食べられそうなものを何も持っていなくて……
 お水ならあるんだけど、のどが渇いているのかなぁ」

自分のほとんどない手荷物から水筒を取り出し、蓋に水を注いで差し出してみる。
何か肉のかけらとかパンくずでもあればよかったのだが……。

ケイシー >  瞼を閉じ、額を撫でられる感覚を楽しむ。
猫という生き物は身体が柔らかく、自身の身体をくまなくグルミング出来るが、さすがに額に舌は届かない。
額を撫でられると、子猫の頃母猫によって額を舐めてもらった記憶を猫は思い出すというが、ケイシーは生まれついての猫ではない。

 それでも、この猫の姿で居ると、額を撫でられるのはなぜかとても心地よく思えるのだ。

(腹は減ってねぇけど、そういえば日向ぼっこしていたから確かにちょっと何か飲みたくはあるな。)

 差し出される、水を注いだ水道の蓋。手で少し引き寄せ、舌をつかいペチャペチャと口に水を運ぶ。
ツァリエルの手に少しこぼれてしまった水も、ペロリ。ついでに、『年齢』を1日分だけ。
まだ幼さの残るこの修道士を、さすがに数ヶ月も若返らすわけにもいくまい。
いや、もうちょっと頂いてもいいかな。いや、いや、駄目駄目。

 すっかり蓋に汲まれた水を飲み干し、前足を揃え、ツァリエルの顔を見て「ナォ」と一鳴きする。
まぁ、お礼位は言っておきたいものな。多分、通じる。通じなくても、気にする程でもないが。

ツァリエル > 相手が額を撫でられると気持ちよさそうに目を細めているのを見て
同じぐらい嬉しそうに微笑む。
猫の目を細める顔はどこか笑顔に見えるからとてもかわいくて和む。

自分が差し出した水をすっかり飲みほして、自分の手にも舌が触れるとくすぐったいよと笑う。
寿命を操作されたなど少しも気づかず、ナォと返事をする猫に機嫌をよくした。

「いえ、お粗末さまでした。ふふ、ちゃんとお礼が言えるなんていい子だね」

手を顎のほうに変えるとのど元をかるくかいてやる。

「君に名前はあるのかなぁ。僕はツァリエルっていうんだよ」

相変わらず返事は期待しないけれどそう語りかけてみた。

ケイシー >  端正な顔立ちから浮かぶ笑顔が、また猫をうっかりさせた。

「ん、オレっちはケイシーって…………」

ハッ。

 今日は一体、どうしてしまったと言うのだろうか。
どちらかといえばケイシーは、猫らしく慎重な、悪く言えば猫らしく臆病な性格である。
それが、立てつづけにこの失態。

『笑顔というのは、時にちょっとした魔法になるんだ、ケイシー。』
師匠の言葉が思い出される。

 自分は、ツァリエルの無垢な、このにこやかな笑顔に、ついつい引き込まれてしまったのだ。
ケイシーはさよならも言わず、急に家の中を駆け回る猫のように、
ものすごい勢いで空き地から走りさってしまった。

ツァリエル > 「? ケイ、シー……?」

今度こそはっきりと猫の口から人の言葉が出た。
聞き間違いではなく自分のことを指して言ったのだ。
思わずのど元を撫でていた手が止まり、ぱちくりと目を丸くして相手を見つめた。

と、猫がわっと駆け出してあっという間にその小さな姿が見えなくなってしまう。
ツァリエルの目では到底追うことができず、その場にぼんやりと取り残されてしまった。

何が起こったのかわからない顔であっけにとられたままその場にうずくまっていたが、
やがて立ち上がり猫が去って行った方向を見る。

「ケイシーっていうんだね……そっか」

猫が人の言葉をしゃべったことよりも名乗ってくれたことを嬉しく思いながら
やがてツァリエルもその場を去り、また奉仕活動にいそしむことにした。

ご案内:「王城の見える貧民街」からツァリエルさんが去りました。
ご案内:「王城の見える貧民街」からケイシーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 深夜の貧民街」にレイアードさんが現れました。
レイアード > (今やすっかり浮浪者も身動きを取らなくなる時間帯。とはいえ、荒くれやゴロツキは絶えず闇の中で暗躍しており、迂闊に出歩こうものならどんな目に遭うか分からない。衛兵は何のためにいるのか?衛兵とは名ばかりの、実は荒くれものとつながっている者も多い。弱い者は誰にも頼れず、強者と卑怯漢が闊歩する夜の街を行く、これまた一人の無法者が終末感漂う貧民街をそっと馬と共に進む)

「……フン、ブザマだな。いくら国が賑わおうと、必ずみじめに落ちぶれる連中は現れる訳だ」

(馬を進めながら、ちらと視界に留まるのは家屋にもたれかかり、ぐったりとしている物乞い。くれてやるものなど何もない。助けてやる義理もない。己がまだこの国で豊かな存在であった頃は存在すら知らなかった貧しい者達を見れば、軽蔑するように見捨てて進んで行く)

「…あの明るさだ。どうせ、下水をドブネズミと取り合うような貧民など見向きもせず、城の中では豪勢な食事に社交界…くだらん賑わいで満ち溢れているんだろうな」

(ぎりり と手綱を握る手に力を込めて豊かな者への嫉妬心を煮やしながら、闇の中を進んで行く。今の自分はと言えば、ココの連中とほぼ変わらない、ミジメな略奪者風情なのだ。堕ちるとこまで堕ちたものである)

「……いいさ……お前達のように、小奇麗でなくても、せいぜい思い通りにさせてもらうさ…」

(誰に向けたのか、執念深い目付きで未だ夜ならではの賑わいを見せる富裕地区を睨み、獲物を探すようにして辺りを見回す。ゴロツキとつるんだ質の悪い衛兵なんてはなから眼中にない)

レイアード > (青年が嗅ぎまわっているのは、こんな貧しい地域にも点在する娯楽施設や怪しげなお店を目当てに訪れる者達。流石に無防備でやってくる事はないだろうが、もしも金持ちに当たればしめたものだ)

「この間のように、真夜中に無防備なヤツが都合よく引っかかるとは思わんが…」

(しばらく進んでいると、タダでさえ暗いのにアーケードで覆われたより鬱蒼とした場所へやってくる。既に待ち伏せしている者がいるかもしれない危険な場所に、青年は思わず息をのんだ。…見たところ、閉鎖された店らしきものがたくさんある。…犯罪が横行して廃れた商店街だろうか)

「……。良い所があったな」

(不意に目に留まったのは、やや幅のある路地裏。ボロの木箱や腐った廃棄物が山積みになっており、身を潜めるにはやや不潔だが、ひっそりと過ごすにはこの上ないスポットだ。此方からは表の様子がよく見える。馬がゆっくり進めばなんとか侵入出来る…青年はそっと馬を進めて行き、待ち伏せ…あるいは今晩の寝床にしようと。既に先客が居なければいいのだが)