2023/07/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/薄暗い酒場」にフュリアスさんが現れました。
■フュリアス > 薄暗く、あちこち老朽化して食事がマズくなりそうな不衛生さを誇る酒場―――
あちこちには目つきの悪い男やいかにも人を殺ってそうな人相の者がギラギラした目つきで酒やツマミを喰らっている。
……もちろん、味目当てならこんな掃き溜めのようなドブのようでサービスもクソ喰らえな酒場なんて来ない。
知らずに訪れた一見の客は店内のあまりの殺伐とした雰囲気に一発KOを喰らって逃げ帰るだろう。
それでも、冒険者ギルドのすぐ傍にある酒場などではなくこんな隠れ家的な店へ訪れる者は少なくない。
何故なら―――
「……確かに受け取った。んじゃ、とっとと失せろッ」
バーカウンターの隅っこで不貞腐れたように頬杖をついている姫カットの長髪痩身の男。
麻袋に入った何かと、それなりの金品を人目につかぬよう受け取れば、フードで顔を隠した者へ素っ気なく言い放つ。
クライアントに対する態度とは思えないが、利害が一致して互いに邪魔にならなければ馴れ合いなど要らない。
相手もその筋の世界の住人だろう。用が終われば、勘定を済ませて早々に失せる。
「オゥ、水くれ水」
ドスの効いた声で、店員に頼んだのは”水”。
流石に貧民街の泥水よりはマシだが、マズい。酔い覚ましで飲ませるものではないマズさ。
並みの人間なら腹を壊すのも珍しくない。
店員の方も、売り上げになるものを頼めと言わんばかりに不機嫌そうな視線を送りながら、雑にコップ一杯分の
水を男の方へ寄越す。
すると、早速男は様々な種類の錠剤が入った瓶を取り出し、手づかみで大量にとっては口に含み、水で飲みこむ。
『……ヤク中めが』
「ア"ァ"ン"……?」
悪態をつく店員に、威嚇混じりに怒声を向ければ速攻で目をそらされる。
鬱陶しそうに食器を洗う店員を黙らせれば、カウンターでじっと周囲に聞き耳を立てる。
王都の内情だったり、衛兵同士が風俗店や奴隷店を紹介しあったり……
まだ若い冒険者なのだろうか。フードで顔を隠しているがどこか浮いた雰囲気の者が掲示板を眺めている。
殺人の依頼だったり禁止薬物の原料採取だったり、採掘禁止命令が下った地域への盗掘……。
犯罪まがいの依頼と言っても、実は初級冒険者向けの案件も結構ある。
……金払いはいいがリスクも大きい。知識に乏しく、一時の高給に目が眩むあまり下手を打とうものなら
冒険者ギルドにも睨まれて真の意味でこのような場所にしか居られなくなるだろう。
パイを奪い合う相手にもなる存在。
そんなライバルが間抜けぶりを発揮している中、わざわざ親切心を発揮してやる謂れはない。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/薄暗い酒場」からフュリアスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にルプランさんが現れました。
■ルプラン >
夜更けの貧民地区、娼館が建ち並ぶ界隈で。
とある娼館の玄関先、羽織った上衣のフードを目深に被って表情を隠し、
腕を組んだ仁王立ちの体勢で、じっと佇む女の姿があった。
俯いた顔が実際は、明らかに不機嫌です、という表情をしているとは気づかれなくても、
佇んだ体勢があまりにも傲岸不遜であるところから、いわゆる立ちんぼだとは思われまい。
思われたとしたら、誘いなどかけられた日には、きっと無言で股間に蹴りを入れてしまうだろう。
何しろ、これはれっきとした、案内役のお仕事なのだ。
ギルドを通したものではなく、とある知人を介して紹介された、
やんごとなき身分のお坊ちゃまからの依頼である。
そのお坊ちゃまは先ほど、うきうきと鼻の下を伸ばして、
この娼館の中へ入っていった。
今頃いい思いをしているのかも知れないし、
適当にあしらわれて、金を毟り取られているかも知れない。
そんなことは、女の知ったことでは無かった。
「だいたい、さぁ……女買いに行きたい、市井の女と寝たい、ってのは、
まぁ、良いわよ、別に。
でもなんでわざわざ、こんなとこなわけ……?
もっとあるでしょーよ、こう、お坊ちゃまに相応しいところがさ……」
怖いもの知らずというか、なんと言うか。
どこで調べたのだか、やけに詳しい地図を渡されたから、
はいはい、と案内してきたけれども。
ここはあまりにも、環境がアレに過ぎる。
帰りはもう、一人で帰って貰おうかな、などと思い始めていた。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にケストレルさんが現れました。
■ケストレル > 「ごっめーん、今持ち合わせ無くってぇ!
次の依頼の報酬で必ず、必ず来っからサ!」
娼館通りをほろ酔い加減で歩いてくる長身の男
進む先々で客引きの娼婦たちから声を掛けられては大仰なジェスチャー付きで断りながら、
ふらふらと女の居る店の前まで近づいてくる
『ちょっとケスト、今日は寄ってかないの?』
「いや今夜はちょーっとお財布が。さっき飲み過ぎちゃってぇ、足もフラフラでぇ」
女が立つ娼館の向かいの客引きも彼に声を掛け、これまで通りの問答が始まった
ケストと呼ばれた冒険者が、両手を顔の前で合わせ、ぺこぺこと頭を下げながら後退して客引きの娼婦から離れていく
と、ここまではこれまで通り。この時違ったのは誰かが飲み溢したであろう酒か、
性質の悪い客を店が追い払う時に撒いたであろう水が、彼の足元に広がっていたこと
「また今度、また今度誘ってくれりゃ奮発しちゃうから―――あぁッ!?」
歩みも覚束無い軽い酩酊状態にも関わらず、足元への注意も散漫だった男は、
見事に足を滑らせてよろめき、傍に居たであろうフードを被った女へと向かって行く
もしそのままぶつかってしまったならば、慌てた様子で謝りながら貴女が転んでしまわない様腕を回して抱き留めようとするだろう
■ルプラン >
単なる酔漢ならば、この界隈ではさして珍しくもない。
やけに賑やかしい男が現れたとは思ったけれど、フードの陰から、
ちらりと一瞥しただけで、女の注意は彼から逸れた。
しかし、身の安全のためには、彼をずっと凝視しておくべきだったのかも知れない。
何やら素っ頓狂な声が聞こえ、ぎょっとして振り仰いだ時には、
女よりずっと大柄なさっきの酔っ払いが、こちらへ思い切り傾いて来るところだったのだから。
「へ、―――――― きゃ、っあぁあ!」
色気、という点では皆無と言って良い、こちらこそ素っ頓狂な悲鳴。
小柄なからだをすっぽりと、男の腕に抱き止められて、
驚愕と、狼狽と、それからそれから――――――とにかく、ものすごく混乱して。
まるで痴漢にでも遭ったかのごとき、激しい反応を示す。
すなわち、両腕を思い切り突き出して―――――突然抱きついてきたこの男を、
押しやって、突き飛ばしてしまおうと。
「な、な、な、何すんのよ、っ……!?」
興奮してはいけない。
いけないというのに―――――どくん、どくん。
心臓が、不穏な拍動を刻み始めていた。
■ケストレル > どうにか自身は転ばずに済んだけれど、近くの女に抱き着いてしまった
当の本人は彼此の体格差からぶつかれば只事ではないと判断しての事だったのだが、
相手の反応から半ば痴漢の濡れ衣が頭上から降って来てばっさりひっ被る形と相成って
一部始終を見ていた向かいの娼館の客引きは、『あらあら』と完全に野次馬を決め込んだ様子
ついでに通りを行き交っていた何人かが、何事かと視線を二人へと向けた
「ッ……ごっめ、わざとじゃないんだ
驚かせちゃったよね、怪我は?無い?
――って、キミどっかで……?」
突き飛ばされたにも関わらず、男は女への心配を続ける
というか、状況的にも自分に非があるのだから当然と言えば当然だ
声を掛けながら怪我の有無を確かめる様に女の身体をぐるりと一度見回すも、混乱した女にはどう映ることか
そしてフードの奥に刹那窺えた顔に見覚えを感じて、目を眇めてじぃーっ、と記憶を掘り起こす様に見つめる
本人は過去の、相手が冒険者時代に見掛けただけなのだが、他の事案での見覚えと勘違いされるやもしれず
■ルプラン >
思い切り、とはいっても、女の細腕でのことである。
長躯の男が吹っ飛ぶ、などということは、もちろんないし、
せいぜい、掌でどんと突かれた胸板に、鈍い痛みが残る程度か。
対して、女のほうはといえば―――――
「お、っ驚くに、決まって、ん、でしょ…!
なんなのよあんた、いきなり抱きついといて、
わざとじゃないとか、そんなの、信じられるとでも……、」
ああ、だめだ、だめだ。
あんまりにもびっくりしてしまったから、心を搔き乱されてしまったから、
詰る言葉が止まらない、頬が、首筋が、体中が熱を帯び始めている。
ただでさえ、刺激に敏感になってしまっている肌が、男だけでなく、
周囲の視線を浴びて、ちりちりと炙られるような気がした。
「な……ん、なのよ……、
ひ、との顔、じろじろ、見んじゃ……、」
どきん、と、またひとつ鼓動が跳ねる。
まさか、ここはあのギルド界隈からは随分離れているのに。
頬を真っ赤に染めて、上目に睨む瞳を、熱っぽく潤ませて。
無意識に両腕をきつく胴に巻きつけ、我が身を抱き締めるようにしながら、
じり、と半歩、後ずさって距離を稼ぐ。
明らかに、普通では無い反応をしている自覚もある。
相手が酔っ払いだとしても、そろそろ、不審に思ってもおかしくない。
■ケストレル > 「あー……どこだっけかな……
人の顔覚えるのには自信があったんだけど……」
素面でならポンと出てくるような事でも酒気で浮ついた思考では儘ならず
もどかしさを抱えて眉間に皺を刻んでいたが、流石に相手の異常に気が付いたのか
ハッとした顔になると慌てて首を振った
「ごめんごめん、さすがに不躾過ぎたよね!
信じられないとは思うけど、ホントに今のは事故なんだって
――そもそも考えてみてよ、こんな人の目があるところで堂々と痴漢なんてするわけないじゃん」
宥めようと声を掛ける男の背後から、野次馬を決め込んでいた向かいの娼館の女が顔を出す
『そーよ、そんな大それた事出来るようなヒトじゃないわ』
「……それフォローしてる? すっごいグサグサ来てんだけど
それより何だか顔色も可笑しい気がするけど、本当に大丈夫――」
思わぬ援護射撃に男が追加ダメージを受け、それでもなお不審な反応をする女に心配の声を掛けた直後
―――横合いから別の悲鳴が上がる
悲鳴に釣られ目を向ければ、別の娼館の娘が酔っ払いに絡まれている最中
娼婦に男が抱き着き、露出の高い衣装の上を手が這い、隙あらば服の中へと潜り込もうとしていた
―――こんな場所で痴漢なんてするわけないという説得力、霧散
『………止めてくるわね』
向かいの娼館の女も、同情と憐憫の視線をケストレルへと向けると、足早に隣の娼館へと向かう
後に残されたのは、あまりの間の悪さに言い訳も出せず、引き攣った顔で女へと手を伸ばしたまま硬直した男
周囲は変わらず好奇の視線を二人へと向けるのみで
■ルプラン >
「あ、たしは……あんたなんか、知らない、から……!」
まさか、まさか、まさか。
相手が記憶を手繰ろうとしているだけで、女にとってはたまらない。
つい先日、とんでもない醜態を晒したばかりなのだ。
相手がなんとか思い出そうとしている前で、こちらはそれ以上に真剣に、
どうか何も思い出さないで、と願い続けている。
それに、ああ、それにしても――――― からだが、熱い。
「そ……んなの、わかった、もんじゃ、ないわ……、
あ、たしは、あんたが、どんな人間、なのか、知らない、もの、
――――――… っ、っ?!」
どんな意図で声を掛けてきたにせよ、今、この状態で。
不意に声を掛けられれば、たとえ相手が女性でも、びくっ、と余計に身構えてしまう。
差し出された手だって、素直に取る気にはなれない。
その上、すぐそばから別の悲鳴があがったりしたものだから、
女はもう、ほとんど恐慌状態に陥りかけていた。
膝ががくがくして、立っているのも難しい。
こんなところで、こんな、信用ならない見ず知らずの男の前で。
意識を手放すわけにはいかないと、必死にこらえているけれども。
気弱そうな娼婦と酔漢の揉め事に、別の娼婦が割って入り、
何処からか呼ばれた用心棒らしき男が、それに加わって。
そちらの騒動は早くも鎮まりつつあるが、問題はこちらだ。
相変わらず、野次馬たちの視線を集めていることさえ、苦痛だというのに。
涙を溜めた瞳で、じっとりと、差し出されたまま硬直した手を。
そこから腕を辿って、完全に固まっている男を、睨んで、見つめて。
『なぁ、あの女、――――――…じゃね?』
野次馬の中から、低く、零れてきた声。
ぎくりと肩を跳ねさせる、弾かれたようにそちらを振り仰げば、
こちらを指さして、やっぱりあの女だよ、とか何とか、隣の男に話しかけている男が居た。
考えるより先に、からだが動く。
先刻、この手で空けた筈の距離を、大きく踏み出した一歩で削り。
男の手を取るどころか、その懐へ飛び込んでしまおうと。
かなうなら男の胸板へ、深く顔を埋めて―――――とにかく、隠れてしまいたかったのだ。
■ケストレル > 「と、とにかく……! 一旦落ち着いて。
俺は通りすがりの冒険者で、ここらじゃそれなりに顔も割れてるから―――」
一目見て錯乱していると判別付けられるほどの状態になっている女へと、ケストレルは声を掛け続ける
野次馬たちの中には周囲の娼館からも娼婦たちが様子を見に来ており、このまま事が大きくなるのはバツが悪いので避けたいところだった
ひとまずは相対している彼女の誤解を解くことを先決としようとしていたのだが、
「―――っとぉ?」
野次馬の中から聞こえた声、その声に反応するように女がそちらを向き
続けて何やら発せられた声におびえた様子でケストレルの胸へと飛び込んで来る
幸か不幸か彼女の痴態を知らなかったケストレルは、半ば突進の様に飛び込んできた彼女を受け止めると反射的にその肩を抱いて
手から、伝わる彼女の狼狽具合にただならぬものを察すれば、自らの身体で彼女を覆う様に抱き締めると周囲へと険しい表情を向け
「んだァテメーら、ワイワイぎゃーぎゃー見世物じゃねーぞ!!」
と一喝、同時に顔馴染みの娼婦たちに目配せをすれば、状況を察した娼婦たちが野次馬の男たちに次々と声を掛け始める
周囲の注目が一斉に薄れ始めたのを確認すると、腕の中の女に
「そのまま付いて来て。 約束する、酷いことは絶対しないから」
と小声で声を掛け、女が依頼人を案内した娼館へと運ぶ様に連れ込んでいくだろう
突然の事にまだ事情は飲み込めないままのケストレルの頭の中は彼女への申し訳なさで一杯になりつつあった
■ルプラン >
女を落ち着かせるため、である筈の言動が、これまでのところ、
ことごとく裏目に出ているようである。
冒険者だなどと言われれば、ますます疑惑は高まるわけで、
こんなにも足がガクガクしていなければ、全部全部放り出して、
今すぐ一目散に逃げ出したいくらいなのだ。
けれども。
飛び込んで、熱を溜めた額を、頬を、男の胸板へ押しつけて。
きつく目を瞑り息を詰め、この行動の理由を咄嗟に説明も出来ず、
ただ、ただ、震えていた女の背に、男の腕が回される。
「っ、―――――――――…っ…」
触れられただけで、かくん、と腰が砕けそうになる。
男の匂いを嗅ぐだけで、眩暈がしてきそうだった。
懐深く守られて、この場所で聞く男の声は、なんと頼もしく聞こえることか。
ぶるっ、と腕の中で身震いしたのを、怒鳴り声に怯えたのだと思われるだろうか。
本当は違う、本当は彼の声に―――――ひどく、感じてしまっただけのことだ。
「ん、はぁ、っ…… ぁ、……んん、っ―――――…♡」
うっとりと目を細めて息を吐いた、女の真意などきっと知らず。
男は全くの善意で、女を庇ったままどこかへ連れて行ってくれるらしい。
どこであれ、人目を避けられるならば大歓迎だ。
それにもう、今は、この男から離れ難くなってしまっている。
そうして連れ込まれた娼館の中で、二人の間に何があったか。
あるいは何も無かったか、誤解は解けたかどうか。
全ては、冒険者の彼と、仕事を放棄した案内人の女、二人だけの秘密である―――――。