2023/07/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にフュリアスさんが現れました。
■フュリアス > ―――ブシャッ!!!!!……バタリ。
路地裏で何かが破裂するような豪快な音。……そこから少し間をおいて人間が倒れる音が小さく響き。
大量の返り血を浴びた黒髪ロングの痛々しい顔面の痩身がだらぁ……とだらしなく開いた口からよだれを垂らして出て来る。
脱力しているが恐ろしくもあるその様相はゾンビか何かと見紛うだろう。
「……ブッ殺したぜェ……しょーもねぇなァ……」
けだるそうな、枯れた若い男の声が力なく零れる。
両手に握りしめたナイフをそのまま、自らがトドメを刺した人間の死体を漁り始める。
「クッソじゃねぇか…………ッ」
ズボンや鞄などをゴソゴソと漁るが、ろくな戦利品がない。
貧民街の路地裏なんかで燻っているような者が、満足のいくブツを持っている筈がないことを若い男は知らない。
「オレが飼ってたワンコ返せよォォォォォォォォ。
テメーもしかして食い殺しただろ畜生ォォォォォォ……。
……オレの、オレのワンコォ……ウッウッ……」
いつもの場所で、腐った飯を分け合っていたきったない野良犬の姿がない。
ナワバリにしていたところにいた男を、一方的に犯人として殺しの仕事で培った殺人術であの世逝きにした若い男。
既に事切れた死体に、怒り混じりにナイフを数回突き立てた後、薄暗い闇の中でやっと出来た”トモダチ”との離別に呻く。
■フュリアス > 「クソッ……クソッ……クソ、クソクソクソクソクソッッッッ」
忌々しい様子で、汚い土壁にもたれかかり、尻もちをついて座り込めばポーチから小瓶をゴソゴソ。
じゃらじゃらと色とりどりの錠剤が入った瓶の蓋をきゅっきゅと開けて、乱雑に手を突っ込む。
そして、得体の知れぬ薬らしきものを大量に手づかみすれば、不揃いのバケモノみたいな歯が恐ろしい華奢な顎を広げて、バクッと丸のみ。
「ンンンーーー……グゴゴッ。……ヴェッ、喉張り付きやがッた……」
水が欲しい。だが飲めるようなきれいな水など手に入っていない。
繰り返し唾をのむが、喉奥にへばりついて離れない錠剤。じわ…と体内の水分で溶けた錠剤から苦い成分が染み出す。
これはまずい とバタバタと忙しない足取りで己が殺めたばかりの成人男性の流した赤黒い血をじゅるる と啜って、
鉄の味がする遥かにマズい液体で無理やり錠剤を剥がして胃に収めようとする。
何かがぽろんと剥がれて胃へ落っこちる感触に、これでよし と安堵する。
……だが
「……ウゲエェェェェェェェッッッ!!!!ブェッ!!!ゴボ……ゴホッゴホッ!!」
大絶叫と共に嘔吐。せっかく飲んだ錠剤もいくつかが吐瀉物に混じってリバースされてしまう。
苦しい、気持ち悪い。
フラッシュバックを恐れて慌てて服用した薬品。そして流し込む為に鮮血を啜って飲み込んだ男の胃は悲鳴をあげない筈がなく。
しばらく四つん這いで、寒気を感じながら路地裏でガクガク震え続けていた。
■フュリアス > せっかく仲良くなった”トモダチ”が居ない。
こんな汚いオッサンがトモダチなんて御免だ。
本当のところ、あの男が犬を食ったのかも追い出したのかさえも分からない。
だが、毎日が死活問題で常に神経が苛立っている闇の住人にとって、殺し合う理由は……―――
「邪魔しやがって……ッ」
その場の気分であったとしても何ら不思議ではない。
表でも喧嘩や殺しなんてどこかで起きている。
ましてや、国に見捨てられ死んでも誰も看取らないような者どもともなれば双方遠慮などない。
「……ド畜生。オレ達の居場所だったのに……」
動悸や悪寒が収まった頃、ぐったりとしながらも立ち上がればとぼとぼと闇の向こうへ消えていく。
死体で蟲が湧き、居心地が悪くなるであろう元のナワバリを捨てて、若い男は気分不良に苛まれながら次のナワバリを求め。
誰も来ない闇の中の安息地を再び求めて亡霊の如く暗黒へと歩んでいくと、やがてその気だるそうな姿は見えなくなる。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からフュリアスさんが去りました。