2023/07/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にクレイドルさんが現れました。
■クレイドル > 貧民地区。人通りの絶妙に少ない通り。
剥き出しの砂地がデコボコとした路面に広がり、周囲には粗末なあばら家が建つ。
区画内でも人が行き交いする理由が余り無い場所であり、時折に通行人を見かける程度。
そんな場所に一人のシスター服の女が佇んでいる。
「…ああ、そんな…誰か、誰か助けて下さいまし…!」
朽ち掛けている建物の壁を背中にして、追い詰められていた。
その周囲には包囲網を敷く様にして何頭かの犬が取り囲んでいる。
全て好意的とは言い難く牙を剥き出しに唸り声をくぐもらせ、全身の毛皮を逆立てて身を低くし今にも飛び出さんばかり。
じり、じり、と、距離を詰め込むかのようにその足は少しずつ輪を狭く縮めつつあった。
「このままでは食べられてしまいますわ…!何方かどうか…!どんな御礼でも必ず致しますから…!」
恐怖に怯え竦むシスターの顔色は蒼褪めて震え上がり、崩れ掛けた足の膝はガクガクと戦慄いている。
冷や汗に合流して恐ろしさの余りに涙腺からぽろぽろと零れ落ちた涙が頬を伝っており。
それは雫となって零れ落ちると、神に祈りを捧げ組み合わせている手袋をつけた両手の上に砕けて染みた。
■クレイドル > 「……両足を食み千切られ動けなくなった後に、ハフハフとわたくしのお肉を戴かれてしまいますのよ。美人薄命とはこの事ですわ~!」
どぅるん、と、身に纏っている濃紺の衣装の一部がゼリーみたいに震えながら肥大化し、自重に耐えかねるかのように落ちた。
それは地面に触れた途端に成型されて四肢を生やし、毛の一本一本まで丁寧に編み織られた一頭の獣となる。
そして、その獣はシスターを取り囲んでいる群の中に加わって唸り出していた。
「…だれかー?見目麗しいシスターが食べられてしまいましてよー?美人の損失は社会的損失でしてよー?」
ちらっちらっと周辺にへと祈りの姿勢を固持したまま振り返って顧みる仕草。
首を振る都度にウィンプルから、零れだしている金髪がさらさらと揺れる。
完全なる自作自演。獣たちも一定の距離を詰めているだけで結局の所は歯牙にかけてはいない。
間も無く一度絹裂く悲鳴を休め、思案に耽るように顎に指を当てて小首を傾げる。
「……場所?それともやっぱり少し大袈裟なのかしら…?手足の一本ぐらいは噛み付かれて血を流し、逃げられない!みたいな方が緊迫感が出て来ますでしょうか…?」
ぽんっと両足を軽く手で叩いただけで、足の一部にあたかも噛まれたかのような穴が空く。
そしてそこからはるいるいと流れる鮮血、のように見立てた体液が溢れて衣類を汚し、そして路上の地面に滴った。
獣たちはまるで映像作品でやり直しを命じられたかのようにシスターから距離を置き、定位置にへと戻り始める。
とすんと本体である女はそのままシナを作って崩れ落ちるようにその場に座り込んだ、TakeX。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイリーナさんが現れました。
■イリーナ > 「あー……食べた食べた……。」
太陽が真上まで登ってからの遅い活動。
時折恋しくなる貧民地区の濃すぎる味付けの昼ご飯を終えての帰り道。
唇の端に残った塩を指で拭い、昼からはどうするかとのんびり考えていたところ――聞こえたのは、悲鳴。
「……はぁ」
こんな場所ではよくあること。
小さなため息とともに駆けるため、一歩を強く踏み込めば。
「っ、たくも――……」
角を曲がり、目に映るのはよく目立つ修道福とそれを取り囲むんでいる四足足の獣。
腰のスティレットを抜き、駆け寄りながら手前の一体に突き刺す。
勢いのままくるりと半回転しながら繰り出したのは回し蹴り。
シスターに吠え掛かっていた一体の獣の頭部に赤いブーツの踵がめり込み、コートを翻しながら、修道女をかばうように立つ、が。
「……。」
若干の違和感、突き刺したものと、蹴とばした獣の手ごたえにわずかに感じるものがある。
「……なーんで、こんなところにシスターがいるわけ?」
半身のまま囲う獣たちと対峙しながら、赤い眼を後ろへ向ける。
右手にはスティレット、左手は腰へ――魔導銃をいつでも抜き放てるようにしながら獣たちの出方をうかがうだろうか。
■クレイドル > 「あら?」
そんな塩梅でへたり込んでいたところに、飛び込んで来る姿があった。
あっという間に自分の一部分である獣達が蹴散らされて行く。
所詮は演出を行う為の小道具にしか過ぎない、多少抵抗するような素振りは見せるものの、一体目は刺突の傷跡から血を垂れ流しながら倒れ。
そしてもう一体は軽々と蹴りつけられ、頭蓋骨を陥没させながらぐしゃりと地面に伏せこんだ。
瞬間的な出来事の連続に一瞬演技も忘れてきょとんとした面持ちに目を丸くするも。
「あらあらあらあらー!た、助かりましたわ…!わたくし貧民地区にご奉仕に上がりまして!そうしたらこの獣達に取り囲まれていましたの!どうかお助け下さいまし…!」
相手の顧みるまなざしに自分の立場を思い出し台詞を吐き出す。
そしていかにも脅威に襲われ我を失っているシスターの振る舞いをもって。
相手の腰回りにへと膝立ちで歩み寄って縋りつくようにして抱き着こうと。
周囲の獣達は唸るだけでそれ以上の距離は差し当たって詰めようとはしてこない。
それも当然であり本体が攻撃しろと一切命じていないからであり。
■イリーナ > 「……。」
不意打ち気味に入ったとはいえ、獣たちの反応が気にはなる。
しかし、今は――。
「それはまたご熱心なことで……」
へたれこんだままの相手を一瞥し、獣たちへと意識を切り替える。
顔を動かさずに視線が右へ、左へ。
いかにしてこの場をしのぐか、後ろの相手を襲わせないかを考えていたところで――、すり寄る手。
「わかった、わかったから……そんな抱きつかないの」
腰の魔導銃へと伸びていた手が、腰へと抱きつこうとする相手へと無用人に伸び、それを止めようと。
銀のスティレットの剣先に怯えてか、とびかかってこない獣たち。
ならば、と数を減らすために踏み込もうと力がこもる。
ブーツのつま先が貧民街の土を踏みしめ、落ち着いていた呼吸が力むために一瞬、止まる。
背中からも、それは背後の相手に伝わってしまうだろうか。
■クレイドル > 「ああん!ツレナイですわ~、感謝の気持ちを示したいだけですのよ!スキンシップですの!救い主に対する敬意ですの!よよよ!」
相手に突っ撥ねられた抱擁に一時的に止まらざるを得ずに立ち止まった。
相手の振る舞いとはさかしまに緊張感の欠片も無い振舞いに身を捩って声をあげている。
一瞥を配った行く手において獣達と視線が合い。
その視野に間も無く飛び込んで来るのは尚も攻勢に出ようとしている傭兵のバネの撓み。
密着しそこねたその片手の平を無造作にその背中にへと対象を定めて持ち上げる。
「…なので、是非、助けて頂いたお礼をさせて下さいまし♡名も知らぬお方…♡」
たちまちに窮地に陥った弱者としての振る舞いをしていた顔がにっこりとしたり顔に微笑む。
空気の弾ける音が人通りの乏しい路上に響き渡る。
手袋を嵌めた掌を経由して、紫電のように走った魔力が空気中を伝導して奔った。
齎す電流は瞬く間において互いの距離を詰め込み。
そして回避しなければその無防備な脊椎にへと直撃となるだろう。
魔力的な遮蔽物や、弾く為の気勢が無ければ蝕む痺れはあっという間にその体の動きを封じ込める。
良くて大きく鈍らせるまでにいたらしめる事になる筈だ。
■イリーナ > 「はいはいはい、今はいいから。」
なんともまぁ危機感のかけらもない声に呆れ交じりに息を吐く。
「そんなの、この場を切り抜けてから……っ、――。」
右手をわずかに引き、勢いをつけるために体重が前足に載る。
視線は狙いを定めた獣に向けられているからか、背後の満面の笑みには気がつくはずもない。
ぐ、と。踏み込み、蹴る瞬間。
空中をはじける音。
「ぃ、ぎ――!?」
完全な不意打ちは背後から。
前へと踏み出した瞬間だったからか、身体は前へ宙を飛び、獣たちの前へと投げ出されるように倒れこむ。
電撃の痙攣が手の力を失わせて、スティレットはすっぽ抜け、くるくるまわって貧民街の奥へと消えた。
「あん、たっ……!」
痺れと痛みに震えながら、地面に頬を擦り付けた姿勢で視線は背後。
救助者と思っていた相手からの一撃に、視線と表情は当然険しく。
■クレイドル > 【相談。移動となります】
■クレイドル > 「ごめんなさいまし…♡折角助けに入って来て頂いたというのにそのお気持ちを無碍にするような真似を…♡」
攻撃が効果を表したということを確認すると共に、負傷している筈の足を平気な顔で立たせてその場に起き上がる。
片手の平でぽんぽんとこびり付いた埃を払い落としながら、先程までの立場とは逆転して今度はこちらが相手を見下ろす側。
至極当然の反応に応じ艶めかしくとろりと期待と情感の疼きに眦を赤らめて、糸目に薄らとアイスブルーの瞳を覗かせながら笑いかける。
魔術を放った片手の平を握ったり開いたりしているその最中に、周囲を包囲している獣達は粛々と動き出していた。
「でも、御礼をさせて頂きたいという気持ちは本当ですのよ♡さあ、こちらに…♡皆さんも手伝ってくださいですわ…♡」
獣畜生たちは攻撃あたわず目の前で倒れ込んだ獲物の赤いコートの袖や裾周りにへと顎をうずめるように噛み付きだした。
だが決してその肌を傷つけるような真似はしない、今の所は未だ。
救助者は今この瞬間に自分自身となった事を傭兵は知る事になるだろう。
そのまま群達はその力を合わせて倒れ込んだその体を引きずるようにして歩き出す。
率先してくるりと踵を返すシスターに先導されて、その一団は間も無くして通り道より外れ、愈々人気の無い路地裏にへと消えて行った…。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からクレイドルさんが去りました。
■イリーナ > 「ふ、ざけ……」
身体に力が入らない。
小さく唇を噛みながら、ずる、ずる。
と、獣たちに囲まれ、引きずられながら路地の裏へと消えていくのであった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からイリーナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にラディエルさんが現れました。
■ラディエル > 貧民地区と呼ばれる界隈の片隅、何の変哲もないありふれた安宿の玄関先。
何とはなし、昼でも仄暗さが付き纏う路地に面した戸口から、僧衣にマントを羽織って姿を現すと、
直ぐに天を仰いで顔を顰め、マントを脱いで片肘に掛けた。
一旦は肩から降ろしていた合切袋を、もう一度掛け直して溜め息を吐き、
「昨夜みたいに雨が降ってたら降ってたで、じめじめして鬱陶しかったけど、
晴れたら晴れたで、きついな、これ……」
低く呟き落としながら、空いた片手が無意識に、己の胸元を軽く撫でる。
慣れ親しんだ硬い感触に、密かにもうひとつ安堵の息を吐き。
さて、今日こそ新しい仕事を探しに行こうかと―――――
宿の中では女将が、訝しげな顔で首を捻っていた。
昨晩遅く、部屋を求めて現れたのは、ぶかついたローブ姿の小娘ではなかったか、と。
何のことはない、ひと晩ぐっすり泥のように眠って、躰が元に戻っただけなのだが、
わざわざそんな説明をする必要も無いだろう、もともとそういう宿を選んでいる。
だから彼女の疑問は疑問のまま捨て置いて、とっとと立ち去ろうという訳だった。
■ラディエル > 本当は、昨日のうちに仕事を見つけておくつもりだったのだ。
アクシデントに見舞われなければ、今頃は王都を離れていたかも知れない。
今から仕事を見つけ、町を出る、というのは、道中、少しばかり危険であるかも知れないが―――――、
「……ま、王都に留まってるよりは良いだろ、多分」
昨日の失敗を繰り返さないためにも、今は王都を離れるべきだ。
そう独り言ちて、ひとまず向かう先はこの地区の外れか。
幾度か仕事を貰ったことのある、小さな修道院があったはずだ。
そこで見つからなければ、何処かのギルドを訪ねてみるのも手であろうか。
歩き始めた足取りが、何処となく覚束ないのは、体力が戻り切っていないせいだ。
ぐしゃりと乱暴に前髪を掻き上げ、苛立たしげに頭を振って、
人通りの絶えた午後の路地を、独り、何処かへと―――――。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からラディエルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にクロスさんが現れました。
■クロス > (満月が空に昇る夜の貧民地区。
ここは平民地区よりも暗く、不気味な雰囲気を醸し出す、正しく最底辺の地区であった。
常に非合法的な取引に殺人や人身売買などが行われており、ハイブラゼールにて売られる子供の奴隷もここの出身者であるという話は珍しい話ではなかった。)
「・・・。」
(そんな街のとある建物にて、クロスは一人過ごしていた。
ソファに横になり、煙草を吸いながら天井をぼーっと眺める。
今日はもう客が来る様子がないため早めに店じまいにしていたのだった。
しばらくすれば娼館でも酒場でも何処へでも行くクロス。
彼にとって、この街の治安の悪さは平凡な日常に見えるのである。)