2023/06/04 のログ
■マツリカ > 降り続く雨音だけを慰みに、どれほど時間が経っただろうか。
半刻か、一刻か、それ以上か。空の明るさで、夕方でないことが分かるのみ。
何をするでもなく呆けていた少女だが、なにやら石畳を擦る様な奇怪な音にふと気づく。
ちらり。音の正体を見定めるべく、視線を向けるのと声をかけられるのは同時だった。
「……いかがなさいましたか?」
そこに居たのは、己よりも幾つか年上だろう見た目の少女だった。
雨の中に傘も差さずのずぶ濡れで、その手には物騒な得物を携えて。
思わずぎょっとするが、己に襲いかかってくる気配もなければ、一つ呼吸を空けて。
「――えぇと、構わないと思いますよ。持ち主はいらっしゃらない様ですし。
濡れたままだと冷えてしまうでしょうし、手持ちはハンカチくらいしかないですが」
彼女を招くとともに、ハンカチと言うには飾り気の少ない布切れを差し出す。
この手の小物にこだわれる程の金銭的余裕はなく、機能のみを追求するのが精一杯。
濡れた体を拭くならば、焼け石に水より多少はマシだろうか。その程度の代物だった。
■ユンジェン > 周囲には──他に人気も無い。雨音が掻き消すから、遠くまで声は届かない。
……貧民地区という土地柄。少々の奇妙な物音を、住民は誰も気にしないし、
寧ろ自分の身を案じて、積極的に離れていこうとさえするだろう。
街を歩くには不要の得物が産む違和感、警戒心は、決して的外れではない──
「ありがとうございます。……あっ、空き家なのですね。
では遠慮なくご相伴にあずかりまして……失礼します」
屋根の下まで上がり込み、得物を床に降ろす──ごずんっ、と重い音がする。
そうして空いた両手でハンカチを受け取ると、顔を幾分か拭う程度で差し出し返した。
長い黒髪の先端からは、それこそ屋根を叩く雨のように、水の雫が床へと落ち続けている。
……烏の羽が濡れた様は、美しい黒髪の形容として用いられるが、雨露に濡れた髪はちょうど、そういう色艶をしていた。
「……ふぅ、ありがとうございました。よもやこうも強い雨になりますとは。
この空の色ですと、しばらく──或いは一晩も降り続きましょうか。お互いに運の無いことです──」
すすっ……と、少女は貴女の立つ方へ、滑るように身を動かす。
武術を嗜む者の、無駄の少ない動き。近づけば幾分か、他人という熱源が近づいて、雨の寒さも遠ざかるだろうか。
「──ところで、あの。あなたは、強いですか?」
耳元に息を吹き込むように、唐突に、少女はそう訊ねた。
■マツリカ > なおも降りしきる雨は、この場所だけを切り出す結界のような物だった。
仮にこの廃屋の持ち主がやってきたとしても、人の気配を察知したなら近寄るまい。
何事も命あっての物種だ。明らかに住まいとして不適格な廃屋に命を張るのは無理だろう。
君子危うきに近寄らず、とも言う様に、この場に近づこうとするものは誰も居なかった。
それ故、雨が上がるまでは二人きり。一人で居るよりも良いか否かは先行き次第で。
「私も雨宿りで仕方なく軒を借りているだけですからね。
持ち主が帰ってきたならば、お詫びせねばなりませんが」
等と言葉では示しながらも、貧民地区での立ち居振る舞いは何となく理解している。
雨が上がるまではこのままだろう。そんな確信すら抱きながら、彼女の様子をちらりと見る。
艷やかな濡羽色の髪が、しっとりと色めいて肢体に張り付いて、そのラインをほのめかす。
同じ女性から見ても、彼女はどきりと心臓が跳ねる程に妖しく、魅力的に見えた。
自らの中に僅かに燻る情欲のざわめき。その存在を、密かに黙殺しながら返されるハンカチを受け取る。
僅かに移った彼女の残り香が、ハンカチを畳み直す折に香った気がした。
「いえいえ、こう言うときはお互い様ということで、お気になさらずで大丈夫です。
一晩降り続けるのは勘弁願いたい所ですが、こればかりは空の機嫌次第ですからねぇ」
せめて座るなり寝転ぶなり出来るなら、体も休まるのにと内心で毒づく。
その最中に、彼女はするりとその気配すら感じさせずに、少女へと肉薄していた。
ただの学生で初心冒険者もどきの少女では、その挙動の一切を理解出来ないだろう練達の動き。
いつの間にか、耳元に囁かれる言葉のむず痒さに、少女はびくりと驚愕を浮かべながら。
「ひゃふっ!? つ、強い、ですか? いえ、あの、ただの学生、なんですけども」
嘘偽りなく、少女はただの学生である。その能力は、全く持って強さに縁のないものだ。
人より多少踊りが上手くて、ほんの少し魔術と体術の素養があって、ただそれだけ。
それ以外に有るとすれば、その身に宿した淫蕩な呪詛の刻印だが、むしろ弱い者の証だろう。
少女が自ら言葉にすることはないが、もしかしたらその気配などは滲み、漏れているかも知れない。
■ユンジェン > 耳を食む程の距離。少女の鼻が、すんすん、と、雨の匂い交じりの空気を吸う。
……その箇所が、貴女にはまだ触れようとはしないながら、移り変わっていく。
首筋へ。鎖骨の周りへ。胸元を降り、下腹部へ。
鼻を鳴らし空気を──香りを吸い込みながら、何かを探っているような。
やがてその鼻先が、貴女の下腹部の傍へ近づいた時、整いながらも表情の薄かった顔が、にいっと笑ったように見えた。
「……ただの学生さんにしては、おかしなものを感じます。
なんでしょう、これは──ああ、私のようないきものには、なじみ深いかも。
もしかしてあなたは……すっごく、いやらしい子……?」
──ひゅっ
少女の拳が、風を斬って奔った。
まだ名乗りも交わしていない初対面の、それも、戦いの素養など無い筈の相手へ向けて。
奇妙な魔の気配がする下腹部へと、躊躇なく拳を放ったのだ。
痩躯に似合わぬ速度が産む威力は、体格の良い男のそれにも勝るもの。そして不意打ちだ。
十分に鍛えていたとて耐えがたい痛みを生じることだろう──。
濡れて身体に張り付くドレスの、その股座はあからさまに持ち上がっている。
くっきりと浮かぶシルエットは、雄の根のそれ。野太く、長く、凶暴に脈打つ凶器だ。
少女は残酷に笑っている。人形のような綺麗な顔のまま、情欲を示すサディスティックな表情で。
■マツリカ > 吐息が混ざり、体温すら伝わりそうな超至近距離。じっとりとした湿気が生々しさを孕む。
気圧されて竦んだ体を彼女の整った鼻が滑る。首筋、胸元、それから正中線を下腹部へ。
通常の嗅覚で感じられるのは、染み付いた少女の匂いに仄かな汗を混じらせたもの。
或いは、魔的な嗅覚には本来の匂いとは異なる何か――宿す淫紋の気配も感じられるか。
眼下でにぃと笑う彼女。それは、先までの少女然とした表情とは異なる捕食者、凌辱者のもので。
「そ、そんな所嗅ぎながら、変なことおっしゃらないで下さい。
い、いやらしいとか、初対面の相手に言われることじゃ――」
彼女の言葉に自覚は有るのか、頬を朱に染めて食って掛かる。
対する彼女が何をするかなど気付くこともなく、ただ無防備に反駁だけを意識して。
そうして、更に言葉を紡ごうとして――瞬間、衝撃が下腹部を撃ち抜いた。
「おぎゅっ――!? おぶっ――お、ぐぅ……♡」
どちゅん。湿った肉を打つ音がして、続いて少女の苦悶混じりの声が辛うじて漏れ出た。
背中側にまで衝撃が突き抜けて、ずぐんと鈍い痛みが走って、同時にぶじゅ、と下着の股座が濡れる。
粗相に思えるそれは、しかし特有の臭気の代わりに仄かな甘酸っぱさを含んだ雌汁。煮詰めた秘蜜だ。
大男すら悶絶するだろう一撃に、しかし少女は痛みと快楽を同時に抱き、苦痛と法悦に身震いしていた。
反射的に彼女の腕に手を添えて、足すら僅かに浮かぶ形で彼女の拳を支点に持ち上げられてしまいながら。
同時に体内では子宮がメリメリと圧迫されて、しかしその衝撃が、刺激が、少女に愉悦を叩き込む。
かつて、魔族の玩具として嬲られた折に徹底的に躾けられた、暴力にすら蕩けられる被虐性癖。
その片鱗を見せつけながら、はくはくと自由にならない呼吸を訴えて、ひくひくと震えているのみ。
視線の先、彼女の股座に存在する屹立も視認しながら、しかしそれを気にする余裕は一切なかった。
■ユンジェン > 拳が肉にめり込む感触。……どこまでその衝撃が届いたか、それこそ手に取るように分かる。
普通の女ならば、その苦痛に悶え苦しみ、胃の中身を吐き散らすこともあり得よう。
だのに聞こえた声には確かに、艶やかなものが混ざっていた。
鼻に届く甘酸っぱい香り──これが何かも知っている。自分の腿にも、今、同じものが垂れ落ちているのだから。
「あはぁ……♡ ほうら、やっぱり思ったとおり……あなたは、私達の贄の子ですね。
それなら……は、ははっ……何をしても、いいですよね……?」
少女は残虐な笑みのまま、貴女の肩を押さえつけ、貴女が忌避した床へと強引に座り込ませる。
そうすれば貴女の顔はちょうど、ドレスの布地を押し上げる屹立の眼前へと位置するだろう。
雨に交じり、先走りの性臭を溢れさせる魔族の陽根は、苦痛に震える雌を孕ませるべく張り詰めている。
……その熱が、あなたの唇に押し当てられる。
「その奥地でご奉仕、してください。あなたの中に入れられるように、どろどろになるまで、丁寧に……ね?
できます、よね。……できなかったら、ひどいですよ。
そこのハルバードの、刃の切れ味を……あなたの身体に、教えることになりますよ……?」
脅迫の言葉を吐きながら、少女はドレスを脱ぎ落とす。
曝け出された裸身は豊満なものではなく、体毛もなくつるんとした下腹部も相まって、ともすれば幼く見えるやもしれないが、
けれども腰周りの骨格やすらりとした四肢を見れば、未成熟の身体でないことは窺えよう。
成熟した、子を成すことのできる肉体。手に余るほど膨れ上がった雄の根は、どれだけの精力を秘めているだろう。
「……大丈夫。雨はきっとまだ止まないから、誰も助けに来ませんよ……ふふっ」
ぐっ、ぐっ……と腰を揺らすたび、張り詰めた亀頭部が、先走りの露を貴女の唇に塗りたくる。
その露の臭い、味までが不思議と情欲を掻き立てるような──魔族の甘露、とでも言うような……。
■ユンジェン > 【継続にて】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からユンジェンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からマツリカさんが去りました。