2023/05/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にラディエルさんが現れました。
ラディエル > 「―――――…悪いんだけど、さ」

うんざりしています、というのがありありと知れる表情と声。
それを取り繕う気力も無く、己は肩を竦めながら、相対する男たちを見遣った。

貧民地区の片隅、夜更けの裏路地。
今宵の宿を探すうち、迷い込んでしまったこちらにも非はあるのだろうが、
それにしても、半時も経たぬうちに、これでもう三組目だ。
前、二回はなんとかまいてやれたのだが、今回はいささか分が悪そうだった。

己が背を預けているのは袋小路の行き止まりで、正面にはこちらを取り囲むように、
縦幅も横幅も己より立派な、目つきの悪いごろつきどもが三人。
今のところ出て来てはいないが、もしかしなくても刃物のひとつふたつ持っているだろうし、
このままこちらが金を出し渋っていれば、早晩それが突きつけられることになるだろう。
しかし―――――困った。

「本当にさ、今、持ち合わせが無いんだよ。
 ちゃんとした宿には泊まれそうにないってんで、ここらまで流れてきたんだし……、
 そもそもさ、金、持っていそうに見えるのかい?」

一応は身綺麗にしているけれども、高そうな衣を纏っている訳でも無く、
贅沢な装飾品で身を飾っている訳でも無い。
それなのにどうして、こうもごろつきに絡まれるのか。
――――――ここはひとつ、仕方ないから腹いせに、少しばかり殴られてやるしかないのだろうか、
溜め息交じりに、そんな覚悟を決めようかと思い始めていた。

ラディエル > ――――――仕方ない。

そう、声に出さずに呟いて、懐に右手を突っ込んだ。
探り当てて、掴んで、取り出したのは財布―――では、なく。

素早く振りかぶって叩きつけた球が、軽やかな音を立てて破裂する。
途端、足許から噴き上がる乳白色の――――――

それに紛れて、逃げ切ることが叶うかどうか。
イチかバチかの賭けに出た、その顛末は神のみぞ知る、といったところ――――――。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からラディエルさんが去りました。