2022/11/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > めっきりと冷気を含むようになった夜風に、細っこい首筋を竦めた。
日が落ちるのが早まり、夕刻と思っていた刻限はとうに日暮れの後。
夜長、とはよく言ったもので、その分活況を示しているように見える夜の街。
持ち合わせている財布の厚みとは不釣り合いな貧民地区に、小奇麗に整ったお子様の姿が一つ。
「こうやっておる内に、年の瀬も無遠慮にずかずかと近付いてくるのであろうな。
それはそれで商機ではあるのじゃが、何分支度がのぅ。」
ぼやいた声も、大人の胸元に届くかどうかという背丈に似つかわしい、幼げなもの。
物言いの古めかしさは隠しようがないが、当人は気にした風もない。
手袋が欲しくなる、までは数歩の猶予があっても手を外気に曝す必要性を見いだせず、ひょこっと袂の中に隠している。
「仕入れは言うに及ばず――掃除の類も忘れる訳にはいくまいて。」
商家の御曹司という対外的な地位を有する妖仙は、また好事家としての顔も持っており。
故に、供回りもつけずに夜の色街に繰り出す習慣があることも、少し調べれば突き止められよう。
治安のよろしくない貧民街の裏路地。
人目は殆ど無く、また積極的に衛兵たちと関わり合いになろうという住人にも乏しいという、襲撃者があるのなら、うってつけの環境ではあって。
■ホウセン > 見るからに羽振りの良さそうな、異国の装束に袖を通した子供。
鴨が葱を背負った上に、調味料や調理器具まで抱えてきたような存在ではあろう。
行きずりの物取りは言うに及ばず、商売柄とデリカシーの”で”の字も持ち合わせていない物言いとで敵対者が少ないとは言えない。
日の届かぬ深海で、発光器官を持つ魚がやたらに目を引くように。
”見せ餌”として、のほほんとしたツラのまま、足取りは軽く、軽く。
武芸を修めているような足運びでもなく、何事かを警戒するような慎重さもなく。
ガプリ…と、牙を立てるのが容易そうな太平楽っぷり。
「ま、掃き清める塵の類が転がり出てくるかに掛かっておるのじゃがな。
何が悲しゅうて、儂自らが手を伸ばさねばならぬ。」
数多ある商売敵が、脅しや妨害を企図した襲撃の一つや二つを仕掛けるのはありそうな話だが、率先して出端をくじくつもりはないらしい。
ちょっとした騒乱ごとになれば、それはそれで遊興の種になるからと。
ペタペタと雪駄が鳴る。
そもそもが、被害が及ぶ前に芽を摘み取るのを善しとしているのに、斯様な心情で待ち構えているのは。
――暇を倦んでのことだ。
「どうせなら、愉しませてみせよ…とは言うたものの…」
くぁ…と、小さな欠伸。
敵は多いが、味方も少なくない。
単なる好悪ではなく、主に利害関係を軸にして。
どこぞのお節介な取引相手が、陰ながら護衛を付けていたとて不思議ではないが。
仮にそれらがいるなら、呼びつけて遊びを邪魔するでないと言い含めたいという我儘具合。