2022/10/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にゲーゲン・アングリフさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にビョルンさんが現れました。
ゲーゲン・アングリフ > 寒さ厳しくなってきた貧民地区。
当然、男の経営する宿も、寒さを感じること多く。

「……う~ん」

ただでさえ客の少ない店であるから寒々しさはあるものの。
それを更に強調するような空気の冷えに、男は唸り声をあげる。

「よいしょ」

壁際にしつらえられた暖炉。
その中に、手先から焔を飛ばし、火を入れれば。
多少なりとも、暖かさが生じるものの。
閑古鳥の無く店内をぐるり、と見渡せば。
男は、はぁ、とため息をついてカウンターの中へと戻り。
暖かいスープをかき混ぜつつ、客の来訪を待つ。

ビョルン > 角を曲がれば目的地はもうすぐ、という路地できつく嵌ったコルク栓を取り小ぶりのポーション瓶を傾けて口へと流し込む。
匂いがきつい、が辛うじて飲み込んだ。
唾を吐き捨てたくなる欲求を抑えて空瓶をポッケに捻じ込めばすぐ足早に歩き出す。効果の持続時間は短いとも聞くからだ。

「やってるかい」

冒険者が屯をしているなら出直そうかというもの。
静かすぎればそれはそれでまた心配か、好都合か。
ドアに下げられたカウベルを鳴らしながら奥へと呼びかけた。

ゲーゲン・アングリフ > くつくつと、温まっていくスープを見ながら。
店内の静けさに、退屈さと静謐さを感じつつ。
男は小さくも様々なことについて考えていたが。

「おや、いらっしゃいませ」

そこで来訪者が現れたため、男はくるり、と。
顔だけで扉のほうを向きつつ、そう返事をする。

「お好きな席へどうぞ。
 今、スープを温めていたところですが。
 めしあがりますか?」

一見の客ではなく、縁深い客であったため。
男は、『なにになさいますか』ではなく。
そう相手に声をかける形にした。
無論、それ以外の注文があれば、応えるつもりではある。

ビョルン > 閑散とはしているが営業中ではあるらしい。
そう察せられる返事を聞けば店舗に踏み入る。

そうしてカウンターへ向けて進む中、問いかける言葉があればはたと足が止まる。

「ああ、ええと」

ポーションの効き目を試すために敢えての空きっ腹であった。故に嬉しい言葉ではある。
ただその効果すら薄めてしまうまいか、けれど酢漿草のような後味と匂いははんとも紛らわせたいところでもあった。

「少しだけ」

止まっていた足を進めながら頷いて答える。
コートを脱げば壁のフックへ自ら吊るしてカウンター席のひとつに陣取る。

「どォだい、薪代くらいは稼げそうか?」

台所仕事をする相手の手先、それから首元へ視線を転じれば、フ、と息をついて。

ゲーゲン・アングリフ > ある意味では、相手にとってはいつもの光景、というところか。
基本的に、この店が繁盛していることはまぁまぁ無い。
緊急の依頼などが大規模で発生すれば、この店にも冒険者が大挙することもあるが。

「少しだけ。かしこまりました」

相手が一瞬言いよどむような様子を見せれば、男は首をかしげそうになるが。
食事を済ませてきたのかな、という考えに落ち着き。
男は、普段スープを提供する皿よりも、一回り小さい皿にスープをよそいはじめる。

「そうですね。まぁ、それなりに、というところで。
 一応、ギルドから回ってきてる依頼も片付けてるので。
 飢えず凍えず冬を越せる程度には」

ははは、と困ったような笑いを漏らしつつも。
男は正直に経済事情を告白し、相手の目の前に皿を静かに差し出す。

「今日は、魚介ベースにしてみました。
 ちょっと辛めですので、お気をつけて」

湯気の上がるそれについて説明しつつ。
男は、がさごそと棚を漁り。酒瓶を手に取ると。
くぴ、とそれを軽く飲み始める。

ビョルン > スープ鍋の火元へ近付けばきゅうと鳴りそうな腹の、鳩尾あたりを擦る。

「ギルド」

その道にはその道のシノギがあるのか。馴染みのない言葉をつい鸚鵡返す。
知能を賢い鳥程度に落とすのは頂けない。

スープが供されれば中身を解説する言葉にひとつ頷く。

「じゃあパンも少しだけ」

ちょっと程度の辛味でも今は刺激が強いかもしれない。
そうオーダーしてから、男が酒を飲む姿を眺めている。
掛ける言葉も成すべき報告がないのも、只只管に住む世界が違ったからなのか。

「客が来るまで隣に来ないか」

暫くと言うには長い日付を沙汰なしに過ごした隔たりがあるならば埋めるべきか。
なんとなくそんな提案を投げかける。

ゲーゲン・アングリフ > 「えぇ。冒険者ギルドからの依頼を。
 受け取っておいて、そのまま私がこなす、という形で」

本当は、冒険者の皆さんにこなしてもらいたいのですがね、と。
男は、少し悲哀感じる笑顔でそういうのだが。
続いての注文に、こくん、と頷き。

「はい、どうぞ」

と。これまた、皿に載せたパンを差し出してみせる。
そのまま、酒を飲み始めた男であったが。
相手に声をかけられれば。少し驚いたような顔になり。

「まぁ、基本お客さんは来ませんからねぇ。
 それも良いですかねぇ」

ふふっ、と微笑みながら。男は自分の分のスープをよそい。
そのまま、カウンターから出て、相手の隣の席に座る。

「こうして店で会うのも久しぶりですからね」

そう言って、スープを口に運ぶ男。
納得できる出来だったのか。うん、と頷き。
その暖かさを体の中へと取り込んでいく。

ビョルン > 依頼を受けて店主が自ら、とは少し腑に落ちなかった。

「そんなの、その辺のにやらせておけばいいんだろう」

発してから続けられた言葉には、そうもできない境遇を察してああ、と頷いて口ごもる。
パンの乗った皿を受け取り、スープ皿と並べればパンを千切って一口口へと入れる。スプーンに掬ったスープは吹いて冷ます。

隣に腰を掛けた相手から発せられる言葉には頷く。

「あれ以来おかしなことはないだろうな──とうに屋根裏への上り口も塞げたことだし」

聞き及ぶにこの宿に関しては冒険者や住民の口に上がることも少なく、悪い噂もなく、といった程度であるからして。
その辺りは恙無く、といったところだろう。スープを飲めば美味いと呟き、行儀悪くカウンターへと頬杖をつく。
仏頂面ではあれど、昼間の常の顔ではあった。

ゲーゲン・アングリフ > 「……はい。お察しの通りです。
 そもそも、ウチのお店に冒険者さんがあんまり来ないんですよ」

発言から、表情、そして頷くまでの相手の一連の姿を見て。
男は、はぁ、と息を吐いてそう告白する。
そのまま、男は酒とスープを口に運んでいくのだが。

「……そうですね。さすがにあんなことはなかなか。
 平々凡々、というところですよ」

ここ最近は実に穏やかなものです、と言いつつ。
ほぅ、と息を吐く男。
体に熱が宿ってきて、まさに心地よい、という感じであるが。

「そちらはどうです?
 なにかしら、ありました?」

そこで、男は逆に相手にそう尋ねてみる。
相手の立場や事情を多少なりとも知っているので。
少し気がかりがあるようで。

ビョルン > 「だろうな」

スープは味がしっかりと沁み、具材の野菜は舌で押せば潰れそうなほど煮こまれていた。飛ぶように売れて捌けていく、という客入りではなさそうだ。

「平々凡々」

また男の言葉をそのまま返している。
昨今の己にはひどく羨ましく聞こえた。

「何かしら、なくはない──けれど最後まで足掻いてなんとかする、迄の話」

己の平々凡々をも担ってくれているような相手へと横目に視線を転じる。
再び手指と首元へ視線を往復する。

「ん、まあいいだろ……」

パンを口に放り込んで独り言ちる。

「総ては俺の不始末でした」

ゲーゲン・アングリフ > 「……」

無論、男としてはそういった状況にはある程度の慣れはあるのだが。
やはり、少しは悲しみもあるのか。相手の言葉を聞けば、黙ってしまい。

「えぇ、いたって平凡ですよ」

よく言えば、落ち着いてる、とも言える。
そして、男にしてみればそれはとても幸せである、という想いもあり。

「おや、そうですか。
 ……結局のところ、そういう結論にたどり着くことは多いですからね」

そのまま、相手の呟きを聞き、男は、ん、と一度頷き。
くい、と酒を飲んでは、相手の方に視線を向け。

「……うん?
 不始末、ですか?」

続いて聞こえた言葉には。
男は、確認するように、そうたずね返す形になり。

ビョルン > 「自分にとっての今は他人にとっては非凡でも結局己の非凡やも知れずだ」

哲学的考察でもないが、妙に持って回った言い方になった。
平凡を生きたかったという数々の願いの結実の成果の如き男が心なしか眩しく見えた。気のせいだ。

「まぁね。
 身内の怖いオジサンたちに囲まれて問い詰められたり責められた利のターンは終わったね」

頃合いに冷めかかったスープを飲んで細く長くため息をつく。

「ただの独り言。
 ──海老のビスクかな」

香辛料でアレンジされたスープの名前を問いつつ、己を見る相手の肩に手を置けば少ない動作で席を立つ。
相手の真後ろへと立てば腰裏の匕首の柄へと手を掛け、抜こうと手を引き。

ビョルン > 【後日継続】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にゲーゲン・アングリフさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からゲーゲン・アングリフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にクレイさんが現れました。
クレイ > 「よう、まだやってるか?」

 なんて言って入るひとつの店。貧民地区にあるのにここの酒場兼宿はあまり淀んだ空気は無く、どこか平和すら感じられる。
 適当な席に座れば。

「酒とつまみ、肉多めで頼むわ。明日から復帰戦だからよ」

 なんてニカッと笑えば剣を腰から外し、自身の横に置く。
 今まで持った事も無い良い剣。人造でありながら魔剣に匹敵するそれを撫でる。

「まったく、高かったんだから活躍してくれよ」

 なんで言いながら。