2022/10/22 のログ
■アリス・クェンビー > 「アリス、素直な人。好きよ?」
一人称が名前。それだけで言動が幼く見えるだろうか。
言葉に棘はなく、相変わらず女は笑顔なのだが、恥ずかしがらずに平気で言うものだから。
どこまで真意か怪しいものだ。今のところ、穏やかな物腰を保ってはいるが。
「一応言っておくけど、死体をお人形さんにして遊んだことはないわ」
それが彼の一番の関心事かと思い。正体に関しては言外に肯定しつつ、そういった所業は過去にないと明言する。
彼の表情の変化には気づいていた。当然の反応だと思う。
「……? アリスには若く見えるけど」
彼の素性よりも、そっちのほうが気になったらしい。男の人でもそういう謙遜をするのかしら……。
内心、少し不思議に思った。その思考の隙間がなおさら、彼の視線を無防備に浴びることになって。
遅れて、ようやく気付く。
「仕事着。フォーマルな黒って決まっているの。上着も……でも」
言っていて、違和感を覚える。彼は服全体ではなく、上半身、胸元を見ていたのだろうかと。
気のせいかも知れない。考え過ぎではないか。……だが、いったんそういう想像をすると、
可能性として無視できなくなって。女は僅かに頬を染めると、胸元で腕を組んだ。
■ヴァン > 「そいつはどうも。……ヴァン、神殿図書館の司書だ」
名前と職業を知ったのなら、返さなければ不作法だろう。正直に自分の所属を部分的に告げる。
首から提げた聖印は隠さない。主教に詳しければ気付くだろうが、こちらは害意がないことは伝わっているだろう。
付け加えられた言葉にも嘘はなさそうだ。害意がなく、問題も起こさないようなので警戒を解く。
アンデッド化は材料がなければできない。死体を作ってアンデッド化するような意思や能力はないと考え、
硬くなっていた表情を和らげる。
「四捨五入すれば四十だ。若くはないさ」
おそらくはバンダナが若く……というよりは、幼く見せているのだろう。とはいえ、悪い気はしない。
仕事着と言われ納得する。ネクロマンサーが白、というのはどうにもイメージできない。
表情の変化と腕組みに、誤解を与えたかと苦笑する。
「……あぁ、済まないな。寒くないのかと思ってね。俺もこれは仕事着だが、ご覧の通り薄手じゃない。
伊達の薄着って言うだろう?その……シースルー、だったか?そういう服は寒くないのかな、と」
仕事着として肌色が見える所は必要なのか、夏冬兼用なのか。単なる興味からで、性的な視線でないことは伝える。
女がそれを信じるかはまた別の話だ。
■アリス・クェンビー > 「ヴァン様って仰るのね? ……ふぅん。神殿図書館の、司書」
女の表情が微妙に変わる。ただ、どこで反応したのかが曖昧だ。
表情筋のコントロールは得意らしい。今のところ、お互いに害意がないわけだが……、
相手にはどこか喰えない印象を与えただろうか。
「アリスの降霊術が失敗して、死霊が生者の肉体を奪ったケースは過去にあったけれど。
死霊を支配下に置くのはともかく、死体の使役は祖国で禁じられている。
……錬金術の材料に使うのは、許されていたかな。ただし、生前、本人の許可が要る。
後々面倒事にならないよう、家族の許可も要る。本人と家族の同意書が要る。
書類手続きが堪らなく煩雑って聞いた。書類を偽装した場合、重たい罰があったと思うけどなんだっけ……」
話しながら首を傾げる。思いのほか、話が長くなってしまったし、罰の内容も思い出せない。
中途半端になってしまったが、この話題はいったんここで切り。
「……それでも気になる」
ぼつり。水面にそっと小石を投げ入れるような声量で言った。
実年齢に関わらず、惹かれるものがあるとそれとなく気持ちを表した。
女の表情は真顔に見える。
「……寒くても仕事の正装が優先されるわね。仕来りなのよ。
いかにも『死霊術師です』って相手に伝われば、本当はなんでもいいのだろうけれど。
今はなんとか。これからはきついと思う」
基本、寒い時は上着や防寒具を足す。その中の服装はいじらない。
そういうものらしい。女はそこに対して微妙な表情をしているが。
■ヴァン > 区切られた言葉に一つ一つ頷く。嘘は言っていない。
深夜の路地で会ったばかりの相手に全てを晒さないのはお互い様だ。至極当然の反応といえる。
「祖国……出身はここではないのか。外見からではわからなかった」
聞く限り、問題はなさそうだ。意外といっては失礼だが、遵法意識もあるようだ。この国では珍しい部類だ。
服装からすると、この国よりは南方だろうか。北国でこの格好は寒かろう、と想像する。
気になる、と小さな声で言われると肩を竦めた。
「気は若いつもりだが。なんだ、逆ナンか?」
冗談めかした口調で笑ってみせる。人を――特に女性を揶揄うことには慣れていても、逆はそうではない。
若い娘から言われたのならまずは軽く流してみせるのがいい歳をした大人の無難な振る舞いだろう。
女から仕事の話を聞いて、大変なんだな、と呟く。
そういったしきたりというか、営業努力が必要だとは知らなかった。世知辛い。
「それで……アリスさんは、なぜここに?帰宅途中かい?」
目の前の女からは酒の匂いは感じられない。貧民地区に顧客がいるような稼業とも思えない。
問い詰めるでもなく、当たり障りのない質問をして返す。
■アリス・クェンビー > 「生まれも育ちもここではない」
言いながら、訝しげな目線を彼に送る。
──何か失礼なことを、考えてはいないか。そう疑っているようで。
結局、目つきを和らげると直接確認もせず。そのまま終わったが。
「……自分でもよくわからない。
ただ、『もうちょっと一緒にいたいなあ』って思っただけ」
こちらも軽口で返しては、先ほどの自分の言葉を撤回するようなものだと思った。
だから、真剣そうな表情を崩さないまま、思ったことをそのまま言葉にして。
いわゆるナンパという行為なのかは、正直よくわからない。気になる異性に声をかけるのはふつうだと思うし。
……さすがにすぐさま行為に及ぶのは、どうかと思うが。
ともかく、自分の気持ちは伝えた。内面に燻る気恥ずかしさは、極力表に出さないように心がける。
恥ずかしい。
「知り合いに用事があって。それだけ。その帰りよ」
言いながら、数歩分だけ距離を詰める。
■ヴァン > 訝しげな視線には不本意そうな表情をおどけて作って見せた。
「はは……酒場で一緒に飲んでる娘から言われたら、階上(うえ)に行こうかって返す所だが。
ここではなにぶん風情がないな。どこか飲みにでも行くかい?」
酒場が宿屋を兼ねている店は多い。下心が透けてみえる即物的な返答は多少、からかっているようにも思える。
男の提案もほとんどの酒場が閉店した深夜では現実的ではない。
「何にせよ、場所は変えた方がいいかな。交遊を深めるにはここはふさわしくない」
どこか人通りの多い場所でつまみと酒を買うか、深夜営業している酒場を探すか。
女が真面目な顔をしているので、あまりにも軽く流し続けるのはよくないだろう。
知り合いに会いにいったとの返事には頷いて、距離を詰めるのも拒否はしない。
目の前の彼女が自分のどこをみて一緒にいたいと思ったのかは皆目見当もつかないが、まだ眠るには早い。
平民地区の方に視線を向ける。ここにいても寒くなるだけだ。
■アリス・クェンビー > 「その表情(かお)、むかつくから殴ってもいい?」
不問で終わらせるはずだった。気づけば笑顔で彼に問うていた。
本気で怒っていたら、問答無用で殴り掛かっていると思われる自分だ。
多分、彼の受け答えにもよるが……最終的には殴らないかと。
「お酒は苦手。理性が飛ぶから」
真顔を微妙に崩す。苦笑い。細められた目は彼を捉えている。
先ほどから続くからかうような物言いに、気分を害した様子はない。
「……交友を深める気があるなら──なんでもない。
場所を変えるのは賛成。ただ、日を改めたほうがいいなら、アリスはそうする」
成り行きの出会い。そこに今の流れがある。
ともかく、歩き出そうか。拠点である富裕地区まで、どうせ平民地区を通る。
■ヴァン > 「腹ならいいが、顔は勘弁してくれ。客商売なんだ」
冗談を言うのは呼吸をするようなもの。容易にはやめられない。
顔を殴られそうになれば防御はするが、腹ならば腹筋でどうにでもなるだろう。
酒がある程度入っているのが不安要素だが、さて。
「そうかい?ならお茶かな。
……そうだな。俺も酒が入っている。素面の時の方がいいだろう」
途中までは同じ道を辿るだろう。目の前の女性が不埒な輩に後れを取るようには見えないが、ある程度までは送っていこう。
ただ焼け跡を眺めていただけなのに妙なことになったな、と思いつつ、貧民地区から立ち去っていく――
■アリス・クェンビー > 「……ふと思ったんだけど。お酒が入っているから減らず口が叩けるの?」
今の彼と素面の彼に差異はあるのだろうか。
なんとなく、酒が入っている時は、言質を取られまいと酒のせいにするイメージがある。
女の勝手な想像だが。
途中まで道を一緒にすれば、そのあとは別れて。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアリス・クェンビーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」に紅刃さんが現れました。
■紅刃 > 貧民地区にただひとつ救いがあるとすれば、それは身綺麗に保つ手段には事欠かないということ。疫病対策の為、公営の共同浴場が置かれており、歩くことさえ出来れば利用できるといってもよいほどに料金が低く設定されていた。
「……」
今、1人の女がその共同浴場から出てきた。僅かに湿った黒髪を冷たい夜風に靡かせ、ほつれた財布を懐に入れる。全ての感情が欠落したかのような無表情は僅かに俯いており、景気の悪さというか、空虚さを感じさせる様子だった。
今日も、生きた。何のために生きているのかは女自身にも分かっていなかったが、ともかく、貧民地区で暮らしていけるだけの、僅かばかりのゴルドを得て、入浴と食事を済ませた。後は寝る場所を探すだけだが、今のところ見えるのは娼館ばかり。色付きランタンの猥雑な光から紅色の瞳を逸らし、女は薄汚れた路地を歩く。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にスザンヌ・ドレークさんが現れました。
■スザンヌ・ドレーク > 貧民地区に顔を出すようになって数日だが、私の予想とは少し違った。
公衆浴場なる施設があるらしく、皆が皆薄汚れているわけでもない。
立ち上げたばかりの商会の仕事で寄った帰り道、風呂上がりと思われる女性を見つけた。
湯に濡れた黒髪、色白の肌と綺麗な女性だ。
ただどことなく常人とは違う雰囲気も漂う。
それが何かは分からないが、興味を惹かれた私は思わず声を掛けていた。
「そこの女性、この時間は独り歩きには物騒だぞ。
何か探し物でもしているのかな。」
キャプテンハット、黒のジャケットにズボン、ブーツ…これが私の普段着だ。
はたして向こうはこちらをどう思うだろうか。
■紅刃 > 「はい」
呼びかけられ、女は足を止めて振り返った。腰まで伸びた冷たい黒髪が、顔を半分覆い隠す。程なくして相手へと向き直り、頭を垂れた後、目を伏せさせつつ改めて口を開いた。
「宿屋を、探しております。昨日までの宿はあいにく、火事にて」
一言ずつ区切る口調の最中、紅色の視線が相手に投げかけられる。上着と脚衣と靴は良い仕立てのように見えるが特筆すべき点はない。帽子は船乗りを髣髴とさせるが、別に彼らだけが着用を許されたものでもなし。
物取りではないだろうということだけは察したので、特に逃げるでも目的を訊ねるでもなく、その場に佇む。
■スザンヌ・ドレーク > 「火事か…それは災難だったな。
宿屋、ではないがうちの家に泊まっていくのはどうだろうか。
家と言っても自宅兼事務所だからそれなりに広い。
腹が減っているようなら食事も用意できる。
どうかな?」
私としては女性への興味が続いており、勢いで口走っていた。
だがよくよく考えると初対面の相手に気軽に声を掛けてよかっただろうか。
無論私は悪意などは持っていないが、何せこの格好にこの場所だしな。
■紅刃 > 「御厚意は有難く存じますが、一宿の対価として、貴女様にお渡しできるほどの持ち合わせがございません」
表情を変えず、頭を垂れたまま女は続ける。そして深く呼吸した後、顔を上げた。
「ですので、何かお役に立つことで宿代とさせて頂ければと思いますが、それでよろしければご厄介になりたく存じます」
申し出を拒絶する気力も無かった女は、そう告げて再び頭を下げた。
■スザンヌ・ドレーク > 「なるほど、慎み深い人だな。」
相手が視線を挙げた際、私と目が合う。
髪が顔の半分が隠れているが、それでもわかる位に綺麗な人だ。
「そうだな、私としては貴女の事を詳しく知りたいと思っていた所だ。
だから身の上を話してくれればそれで構わないのだが。
あまり話したくないと言う場合は別の手段でも。」
そう言うと私は彼女の隣に立ち、腰に手を回そうと。
私の態度で言わんとすることが伝わるだろうか。
■紅刃 > 「……恐れ入ります」
腰に手を回されても、特に抗いはしない。瞼をほんの僅か、しかも一度震わせただけ。隣に立つ相手とは目を合わせず、視線を僅かに伏せたまま。
「詳しく話すほどの者ではございません。東方の生まれで、物心ついた頃より端女として躾けられました。励みましたが力及ばず、主に見限られ、この国に流れ着きました。ただ、それだけの女でございます」
身の上話はしたが、それで済むとは女も考えてはいなかった。腰に回った相手の手に、自身の細指をそっと這わせる。
■スザンヌ・ドレーク > 「東方の生まれなのか。 実際にじっくり拝見するのは珍しいな。
ではそれ以上の事は私の家に着いてから教えて頂くとしようか。」
手の甲に指が触れる。
私は女性を抱き寄せたまま、この場を後にする。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」から紅刃さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からスザンヌ・ドレークさんが去りました。