2022/06/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にジーゴさんが現れました。
ジーゴ > 貧民地区は先ほどまで降っていた雨が石畳を濡らし、行き交う人もほとんどいない。
娼館が並ぶエリアはそれでも人通りは絶えないが、
一本裏手になると明かりもなく、この道をわざわざ選ぶ者は少ない。

なぜか素足の少年が服を濡らすことも気にせず、地面に座り込んでいる。
近づけば、小さな笑い声をあげていることがわかるだろうか。
クスクスと笑いながら、肩を震わせている。
足元には空いた酒瓶が数本無造作に転がっていて、既に飲み干した後のようだ。

「あー、火ぃあるかな…」
既に地面に溜まっていた雨水に濡れたズボンのポケットからマッチとタバコを取り出す。
既に巻いてある手巻きタバコを口に咥えると、マッチを擦り始める。
もちろん水に濡れたマッチが簡単につくはずもなく、何度か繰り返すも虚しく折れて。

ジーゴ > 「んん……」
口にタバコを咥えたまま不満げな声を漏らす。
湿気ったマッチを何本も折っては地面に投げ捨てていくだけ。
冷静な頭で考えれば、火がつかないことはわかるだろうに
酔った頭では、「なぜか火がつかない…」としか思えずに、マッチをただひたすらに擦っているだけ。
全てのマッチを地面に撒き散らすだけ撒き散らすと、火をつけていないタバコを咥えたまま、抱いていた膝を伸ばす。
服の濡れた部分がますます広がって、ぼーっと雨の止んだ空を眺める。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にリンさんが現れました。
リン > バイオリンケースを背負い、ぶかぶかのシャツとズボンの裾を縛って着ている小さな人影が
湿った地面を踏みしめて路地へと入ってくる。
娼館を冷やかすのが目当てでここに来たのだが、
何か予感するものがあって、たまたまここへと踏み入れた。

「……なんだ。ご機嫌じゃん。
 こんなところで酒盛り~?」

笑い声が聞こえたのだろう。
小さく手を振って、座り込むジーゴに近づいてくる。

ジーゴ > 「ん!」
タバコを口から取り落としそうになって、しかたなく
咥えるのをやめて、胸ポケットにしまう。
もうマッチはないからどちらにしてもタバコは吸えない。

「リンちゃーん」
空を見上げていたら、見知った声。
声がする方を見上げた。座っていれば小さな相手でも見上げる格好になる。
へらへらと手を振った。
相手も飲みたいだろうかと周囲に散らばる酒瓶を漁るも見事に全て空だった。
ここに座りなよ、とばかりに自分の真横の湿った地面をポンポンと叩いた。

リン > 「その呼び方はやめてって~……」

などと言ってみるが、そうまんざらでもない様子。
誘われるがままに、隣に座る。ひんやりした濡れた感触に、うひ、と声を上げた。
転がっている瓶をひっくり返してみても、雀の涙のようにしずくが落ちるばかり。

「なんだよ~、ぼくの分はとっておいてくれないのかよ~」

瓶片手に、片腕で抱きついてうっとおしく絡む。

ジーゴ > 「だって、かわいいもん。リンちゃんはかわいい」
お酒も手伝って、照れもせずにそんなことを言ってのける。
促した通り、相手が隣に座ってくれると満足そうに笑った。

「だって、オレのも気がついたらなかったんだもん…」
別に約束もしていない相手だ。相手の分の酒がなくても仕方がないのだ。
もう、自分の分もないことだし。
抱きつかれるまま、そのままぴったりと寄り添ったまま。

「あ!ねぇ、リンちゃん火ぃもってない?オレたばこ、すいたくて」
彼がマッチを全て使い果たしてしまったのは地面を見れば明らかだろう。
「リンちゃんも吸う?」
またズボンのポケットをまさぐって既に巻いた手巻きタバコをもう一つ取り出した。
ただし、もちろんこれも雨水で湿っているけれど。

リン > 「なんだよ~ ジーゴだってかわいいだろ~」

反論だかなんだかわからないセリフ。
抱きついているとあったかいし相手は楽しそうだしで、
こっちまで酔っ払ったような気分になってくる。

「残ってたかな~、マッチ……」

自分の持ち物を探ると、ポケットからマッチ箱が出てきた。
振ってみると一本だけ残っている。
ほらよ、とそれを渡す。

「……吸う~、ってこのタバコしけってない?
 こんなんで火、つくの?」

取り出されたタバコに目をすがめて。

ジーゴ > 「ジーゴもかわいい!?」
照れて笑った。獣の耳がぴこぴこと動く。
可愛い子に可愛いなんて言われたら自然とニコニコしてしまう。

「あー」
タバコが湿気っているという指摘に思わず声を漏らした。
タバコも湿気っていれば、さっき火がつかなかったマッチも湿気っていただろう。
「ごめん、すえないね…これあげるから乾かして吸って」
湿気ったタバコをそのまま相手に差し出した。
貧民街で出回っている質の低いタバコだ。大したものではないけれど。

「うーん」
空を見上げて小さく伸びをした。
「リンちゃん、いっしょに酒かいにいく?タバコでもいいよ?」
酒にせよ、タバコにせよ相手が嗜むものがないのはなんだか悪い気がした。
左右どちらの道が夜でも開いている商店に近いだろうかと、きょろきょろ考えているときに大変なことに気がつく。

「あ!!!!!」
今までの酒に酔ったとろんとしたジーゴとは異なる焦った声だ。
獣耳が大きく上に向いて驚きを示している。
ぺったりと二人で座っていたのも忘れてしまったのか、いきなり立ち上がって慌てている。

「リンちゃん!ヤバい!オレ、靴なくした!!」
やっと気がついたのは自分が素足なことだ。
暗い夜だからこの通りに落ちていないかさえ見通せない。
「やばい!やばい!ごしゅじんさまが買ってくれたやつなの」
焦ってもう走り出そうという勢いなのに、酔っ払いだから簡単によろける。

リン > 「かわいいっ。わかりやすいし」

ぴこぴこする動物耳に顔が自然とほころぶ。

「買いに行くなら付き合うけど、お金ちゃんと持ってる~?
 って今? 今気づいたの靴ないことに!?
 あー落ち着いて! あーっ」

あからさまに焦っているジーゴに、自分も慌てて立ち上がる。
案の定危なっかしくよろけているので、腕を引いて支えてやろうとする。
こんな小さな体では一緒に転びかねないが……

ジーゴ > 「くつ!ない!くつ!ない!」
ぐんにゃりと視界が横倒しになっていくけれど、
それは倒れかけているから。
助けてくれようとしているリンちゃんを貧民街のくたびれた建物の壁に壁ドンする格好になって、なんとか倒れることは阻止できたけど。

「あ、ごめん」
自分の胸板と壁の間に押しやってしまった相手に謝ってなんとか距離を取った。
いきなり距離を縮めてしまったことで普段なら気まずくなったり、逆に盛り上がったりするところだけれど。
今のジーゴの頭の中はひたすらに靴のことである。

「やばい、リンちゃんどっちからきた?くつあった?」
自分がいつからどこで飲んでいるかなんてもうよくわからない。
ご主人様からもらった靴を無くした、ってだけでジーゴの頭はパニックだ。
とりあえず、リンちゃんが来た方とは逆の道へ探しに行こうと考えていて。