2022/06/09 のログ
■ユージン > 「……そう? なかなか物好きだね。
こんなので良ければ、基本は毎日こんなツラして生きてるよ」
こんなの、と言いながらだらしなく弛緩した無精髭ヅラを指さして見せる。
肩肘を張ることなく、気兼ねもせずに振る舞って良いというのなら、それは有り難いことだ。
その視線を気にする必要がないのなら、わざわざ堅苦しく振る舞うこともない。
取り出されかけて結局鞄に封印されてしまった財布を口惜しそうに見遣るのも一瞬のこと。
「なるほど。そんじゃあ、賭博抜きで死にかけた時にでも恵んでもらうわ。
ま、おれはなんだかんだで結構悪運だけは強いからな。そういう機会はないかもな」
欲の皮が突っ張って、それで大失敗する。
自分が死にかける事があれば、大体がそのパターンだ。
いい加減学習しろと他人は言うかもしれないが、それが簡単にできるならば。
この世に賭博で身を持ち崩す人間など居るはずがない。
幸い、持ち崩せるような大層な身分でない自分は日々の食代を無に帰すくらいで済んでいるのだが。
「……ん?」
娘の差し出しかけた手には気付かなかった。
ちょうど犬を撫でていたからだ。
それでもそちらを不意に見た時、何か慌てるような素振りを不審には思ったけれど。
結局、強引に問いただすような性質ではないのだ。
「……ま、店の外なら文句は言うめえ。どうせ此処に住んでる連中の大半は貧乏人だ」
そんな気取った店。それこそ、この間ピアノを演奏した酒場のような。
……あそこは問答無用で動物持ち込みは厳禁だろう。流石に出禁は勘弁だ。
「よし、ついてきな。……立ったまま、手で掴んで食べてもいいんだぜ。
誰も行儀が悪いなんて言わねえさ。大きく開けた口の周りみっともなく汚して、犬と一緒に食らったってなあ」
立ち上がってはすっかり肉を食い尽くした魚の骨を傍らにプッと吐いて捨てる。
それがちょうどいい塩梅でゴミ箱に放物線を描いて吸い込まれ。
ゴミ箱にフタを被せると歩き出す。数歩進んで振り返り。
「ほら、こっちだよ!」
そう言いながら伸ばした手を、彼女はどうするか知らないけれど。
どうなったとしても男は上機嫌に歩き出す。その後ろに、毛むくじゃらの獣と少女を伴いながら。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からユージンさんが去りました。
■ミンティ > わざと弛緩した表情を見せる相手に、笑う口元を見せていいのか悩みながら、軽く手を添えて隠すように。
タキシード姿で出会った時に接するよりは、こちらも気楽で、自然と肩の力も抜けている。
「死にかけられても…困るので、……あの、ほどほどにしていて、ください」
治療代や生活費を工面できるほど裕福でもないから、そんな状態を見つけたら、どれだけ助けになれるかもわからない。
こんな場所で残飯を漁っているくらいだから、そういう事もあるんだろうかと思うと、つい真面目な口調になって。
冗談めかして手を差しだす動きが気がつかれていなかった事には、内心ほっとする。
咳払いをして、すこし慌てた内心を落ち着かせようとしつつ。行く先が決まったらしく、立ち上がる男性の後ろをついていこうと。
「…わたしは、できたら……フォーク、くらい…あった方が、助かりますけど…
……え、あ、……えと、はい…」
手掴みで食事するなんて、そうしていいパンやお菓子くらいでしか経験がない。食器の用意がないお店に連れていかれたらどうしようかと悩んだけれど、そもそも、自分がおなかをすかせているわけではないから、特に困る事もないかと。
差し出された手に、きょと、と目を丸め。どうしようか悩んだ末に、おそるおそる、こちらからも手を伸ばし。そのまま、貧民街のどこかへと連れられていく。移動の最中は、ついてくる野良犬を、微笑ましげに見つめていて…。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にゲーゲン・アングリフさんが現れました。
■ゲーゲン・アングリフ > 「……」
貧民地区の裏路地にある、とある冒険者の宿。
そこで、店主たる男は、静かな店内でグラスを磨いていた。
本日も、客足はまぁ微々たる物。
半ば道楽営業化している店ではあるが。
男は、特に危機感を抱くことも無く。
今日もそろそろ店じまいかな、などと考えている。
「……そろそろ、溜まったクエストを消化しないとかな」
店の中のクエストボードを見ながらつぶやく男。
店に来る客が、依頼を受けてくれることも多少はあるが。
なにせ暇な店だ。店に来た依頼が残りっぱなしなことも珍しくは無い。
そういう時は、男自身が、依頼を受けて処理をしてしまうこともある。
「……一応、そっちの準備もしておきますかねぇ」
磨いていたグラスを棚に戻し。
自前の装備の類を点検し始める男。
店の中では、男が飼っている子犬と子猫が。
すぅすぅと寝息を立てている。
■ゲーゲン・アングリフ > 「……よし」
装備を点検し終えた男は。
ちら、と店内を見る。
客はすでに一人もおらず。
店自体はいつ閉めてもいいような状態。
「……ちょっと、小腹が……」
そこで、男は腹をさすりながらそう言い。
木製のカップにスープを注ぎ。
ずずず、と啜りはじめる。
胃の中にじんわりと熱が広がるのを感じながら。
男は、細巻を咥え、火をつける。
「……ほへぇ」
のんびり、とした時間。
一息ついた男は、ずいぶんとだらしない表情で。
■ゲーゲン・アングリフ > かくして、夜は更けていき。
男は、静かな店内でゆったりとした時間を過ごしていった……。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からゲーゲン・アングリフさんが去りました。