2022/06/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にユージンさんが現れました。
ユージン > 貧民地区の一角。一通りも殆どない路地裏。
表通りがそれなりに広い大路な事もあってか、此方もそれなりに広いスペースを誇る。

「……さて、と。周囲に人気なし、だ。願ったり叶ったり……だな?」

野良犬と連れ立ってゴミ箱の周囲をうろつく男がひとり。
ロケーション的にはちょうど食堂の裏口そば。
虎視眈々と中身を狙っていたカラスを犬と仲良く共同戦線を張って追い返せば、フタを取って箱の中身を覗き込む。

「…………おうおう、たんとあるじゃねえか。わりかしキレイなお残しがよぉ」

まだ骨にだいぶ身の付いた焼き魚を摘み上げる。
ブツが傷んでいないかの確認をかねてスンスンと匂いを嗅ぐも、脳のジャッジはセーフ判定。

「よしよし。今日の飯代が浮いたな!」

まだセーフの焼き魚を咥えると、足元にすり寄る野良犬には「そらよっ」と焼かれた獣肉の切れっ端を放り投げる。
尻尾をぱたぱた振って御馳走にがっつく野良犬を満足気に眺めて頷けば、自身は手近な石造りの階段に腰を下ろし、戦果を味わう行為に専念するのだ。

「……へへへ。豪快に残してるからよっぽど不味いのかと思ったが、案外イケるじゃねえの」

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 身寄りもなく、かといって孤児院なんかの力に頼ろうともせず、治安の悪い場所で集まって生きる子どもたち。ときどき、そんな子らにお菓子や古着を配るついで、病気になっている子はいないかを確認する。いくつかの孤児院が協力して行っている見回り活動の当番を終えた帰り道。
ひったくられないように、小さな鞄を胸に抱きながら、平民地区への近道になる路地裏を早足で抜けていこうとして、前方に人影を見つけ、歩幅を小さくする。
絡む相手を探しているごろつきかなにかかと思ったけれど、よく見れば、野良犬と食べ物を分け合っている様子。そんな相手なら、そばを通りすがるくらいは問題ないだろうと考える。
それでも、なるべく相手を刺激しないように、そろそろとした歩き方で通過しようとして、距離が近くなってから、思わずその人影を二度見してしまった。

「……ユー…ジン……さん?」

タキシード姿で華麗にピアノを弾く姿しか見た事がなかったから、最初は人違いかと思った。けれど、その顔はたしかに、先日酒場で出会った
人と同じで。
食べるのに困るような人だというイメージがないため、どうしようか悩みつつも、おそるおそる声をかけて。

ユージン >  おっかなびっくり路地裏を通る者がいる。
 そんな誰かの目など気にはしないし、躊躇いも物怖じもなく男は残飯を漁っていた。
 恐れるものと言えば、警邏の人間やら食堂の店主、因縁をつけてくるかもしれないチンピラや子供の類。
 ……恐れるものは普通に沢山あった。
 さておいて、足元の野良犬にも時折分け前をくれてやる様は飼い主のようでもある。
 しかし、彼らは今日たまたま此処で知り合ったばかりの関係だ。
 共に力を合わせてカラスを撃退した事で絆が芽生えたのかもしれない。
 そばを通りかかる気配に何か注視されている気がする。
 わざわざ立ち止まってこっちを見てくるようなやつはきっとおれを虐める奴に違いない。
 因縁をつけられる前にこっちから因縁をつけて追い払ってやろうか。
 そちらを見るよりも先に、まずは声を低く落として相手を脅すような声音と口調を意識しつつ口を開いた。

「ああん? おいおい、こりゃあ見せもんじゃねえぞ。
 見てもあんまり面白くないから正直オススメはしねえが、それでも見るなら見物料とか徴収するぞ!」

 脅しをかけてから一拍置いて、相手の顔をじっと見る。そこにあるのは見覚えのある顔立ち。
 先にかけられた聞き覚えのある声を記憶の中で反芻しながら目を瞬かせる。

「誰かと思えば、ミンティちゃんじゃん。
 本当に面白くねえから今のおれをじっと見るのは推奨しねえぞ。
 ……こんなとこ人に見られたら変な噂とかされちゃうからな」

ミンティ > ときどき貧民地区に足を運んでは、こういう場面に出くわす事もあったけれど、さすがに声をかけたのは今回がはじめてだった。これでもし人違いだったらどうしようと、声をかけてから身構える。今さら警戒しても遅いかもしれないけれど。
そうやって息を飲んでいたら、最初に脅し文句が返ってきたから、びくっと震えて、足が完全に止まってしまい。
どうしよう、と目に見えてうろたえながら、後ずさるでもなく、そのまま通りすぎるでもなく構っていたら、名前を呼び返された。人違いではなかったようだとわかり、ほっと息を吐いて。

「…あ、えと、……お食事中に…すみません。
 この間、会った時と…、その、…ええと、びっくり……してしまって」

以前に会った時と今のギャップをどう語ったらいいだろうと考えたけれど、ふさわしい言葉が見つからない。しどろもどろに返答しつつ、慎重な足取りで歩み寄り。

「あ…の、…もし、お気を悪くさせてしまったら…すみません。
 その、ええと…余計な事、なのかもしれないの、ですけど……
 おなか…空いてるん、ですか…?あの、わたし、今…すこしなら、手持ちが…」

一度会っただけの相手なのだから、推奨しないと言われる通りにそのまま立ち去ってしまえばいいのだろうけれど、そういう風にもできない性格。
余計なお世話だと不快にさせてしまわないか、不安に思いながら、それでも黙っていられない様子でおそるおそる、役に立てないかと申し出ようとする。

ユージン > 「アレは仕事用に衣装借りたり、髪の毛櫛入れたり、ヒゲ剃ったり……まあ、色々してたな……。
 おれは真面目に澄ましたカオしてれば、そこそこモテるのよね。
 10人に声かければ6人くらいは話を聞いてくれるよ。素の調子で喋った途端に4人は帰るけどね」

 ……つまり今目の前にいる彼女はその貴重な2人に相当する人種なのかもしれない。
 以前遭遇したときとは違い、礼服を着ていなければ、滑らかに櫛を通した艶やかな黒髪もない。
 薄汚れた食い詰め冒険者じみた衣服に、ボサボサの癖っ毛。
 おまけに腑抜けた顔の顎にはだらしなく無精髭までボツボツと生えている始末。

「……まあ、気にはしてねえけど、金をくれるってんなら有難くもらうぜ。
 受けた恩義を律儀に返すような甲斐性、おれには多分ないけどな。
 後であいつは恩知らずだって言われないように今のうちにちゃんと言っておくぞ」

 言いながら相手の申し出には露骨に気分を良くした様子。
 子供のように目を輝かせながら、ちょうだいちょうだいと両の手のひらを差し出した。
 咥えた魚の骨が上下に揺れる。まるで足元の犬の振る尻尾のようだ。

「こないだの稼ぎは翌日には賭場でぜーんぶスっちまってよー。
 いやあ、3倍くらいに増える予定だったんだけどな。何か間違っちまったかなー?」

ミンティ > たしかに先日のような雰囲気だったら、誘われてついていく女性も多いだろうと思う。自慢話なのか自虐話なのか、どちらにも聞こえる話に耳を傾けながら、語られる人数にあわせて指折り。
最終的に二人になってしまうらしいと聞いて、強張っていた表情がすこしだけ和らいだ。笑い出しこそしなかったものの、面白がるような顔をして。

「…今でも、あの、なんというのか……野性的…?……みたいな、感じなので…
 頑張ったら、二人以上、残ってくれるかも……、しれない、のかな…って」

一応どうにかフォローしてみようとするけれど、言葉は尻すぼみになる。
野性味というか、野良っぽいというか、そんな雰囲気をどう褒めたらいいのか、わからなくなる。なんとなく、隣の野良犬と見比べてしまいながら。

「…なにかを返してほしくて、言っているわけではないので…、だいじょうぶです。
 恩を売っているつもりも、ありませんし、……え、と……」

鞄から財布を取り出す前に、一応周囲を確認。こんな場所でお金を見せたせいで、余計なトラブルを増やしてしまわないように警戒し。
自分たちだけのようだと目視を終えてから、財布の口を開き。そこで、ぴたりと動きを止めた。
気分よさそうに両手を差し出す男性を、困ったような顔で見つめて。

「…お金、渡していいのかなって…、今……すこし、悩んでいます。
 あの、…ご飯を、ご馳走…とか、そういう形で……、あ……でも……」

あの酒場の様子を思い出すと、きっとそれなりの金額は貰っているのだろうと考えられる。その稼ぎを全部ギャンブルにつぎこんだのだと聞いて、むむ、と眉を寄せる。
さすがに、賭け事で無駄にされるためにお金を渡すのは躊躇する。
代替案を考え、ご馳走する形を提案しかけて。ちらりと野良犬を見る。この子を置いていくのも、なんだかかわいそうだと思えてしまって。

ユージン > 「無理して褒めてくれなくても良いぞ。世間的にはおれを見る目が厳しいのは理解してるからな……。
 でも、そう言ってくれるならたまにはちょっとだけ頑張ってみるかね。こないだみたいに、さ」

 足元の野良犬を時折撫でたり、ゴミ箱から漁って取り出した新たな残飯をくれてやったり。
 その合間に、相手の言葉を思い返しながら考える。なるほど、確かに野性味とやらはあるかもしれない。

「……いいね。徳を積んでるよ。
 おれからは何か報いたりはしないと思うけど、どっかできっと還元されるぜミンティちゃん。
 哀れなおれに見返りを求めずに金品を……いや」

 己のような人間に、ストレートに金を渡すべきではない。
 彼女は一応、こういう人間との付き合い方を心得ているようだ。
 もらったその脚でそのまま賭場にいけないのは甚だ残念だが、メシを喰い溜めできる機会そのものは大歓迎である。

「…………まあ、ちょっと顔見知りになったばかりの人間にカネをたかるのもどうかと思う。
 どうかと思うその上で、それでも断行しちゃうのがおれという人間なんだけど。それはともかくとして……」

 足元を見下ろす。
 どっかいくの? つれてってよ。
 もっと食べたいワン。 

 とかなんとか、足元の毛むくじゃらが精一杯のつぶらな瞳で無害なけだものアピールをしきりにしている、ような気がする。

「クソッ、ずりいなおまえ。おれもおまえみたいになりてえよ……。
 可愛かったら得するように出来てるんだ、この世ってやつは」

 ここで強引に獣をハブにしても、相手の心証を損ねるかもしれない。
 ただメシの機会を喪失するのはごめんこうむる。

「……向こうのほう、行くか。今日は知らんが普段なら屋台とか、けっこー来てるんだぜ」

ミンティ > 今日明日にも行き倒れるほど困っているようには見えないから、ごみ漁りの姿には驚いたけれど、結構余裕もあるのだろう。野良犬を撫でる様子を見つめながら、そんな風に考える。なんだか兄弟みたいだと思うと、すこしだけ肩が震えて。

「……でも、今くらいの方が…お話、しやすいかもしれません。
 ああいう…綺麗な格好をした人とは、あまり…慣れていなかったので」

自分も自慢できるような出自ではないから、感じた気楽さをそのまま伝えて。そんな風に言いながらも、すす、と財布は鞄に戻る。

「巡り巡って…、いい事があれば…嬉しいな、と思います。
 でも……お金は、だめです。…知りあったばかり、とか……ではなくて」

ギャンブルをするのがよくないとまでは言いきれないものの、そのためにはお金を渡せないと首を振った。
自分としては、珍しくはっきりとした主張。財布をしまったあと、鞄をまたしっかりと胸元で抱いて。

野良犬と見つめあって、無言の会話を交わしている様子を俯瞰する。
お互いの声が聞こえてくるわけではないけれど、どんなやりとりをしているのか想像は膨らんで、また、肩が震えはじめる
堪えかねたように顔を伏せながら、ふ、ふ、と小さく息を零して。

「……でも、面白かったです。…代わりに、わたしが……
 ………………いえ、…なんでも、ないです。すみません……」

可愛い方が得なのは、そうだと思う。目の前の男性は、どう見ても可愛いとは言えないように見えたけれど、それでも羨むような声には、片手を差し伸べる。
なにもない空間をさするような手つきで、自分が撫でようかと冗談っぽく言おうとして。さすがに、調子に乗りすぎたと思う。すぐに手をひっこめて、らしくない事をした恥ずかしさに、うっすら頬を染めて。

「ペットも一緒に、入れるお店があったら…よかったのに。……え、と、あっち……ですか?」

富裕地区にあるような、綺麗な飼い犬を連れていけるお店を想像したけれど、この野良犬では難しいだろう。
向こうの方、という声に視線をそちらへと向けて。小首をかしげながら、いい場所があるのなら案内してもらおうと。