2022/03/27 のログ
■ジール > 「おっ、反応アリ!
やっぱこの方法が一番だよなー、俺も散々祖父さんからやられたし。」
非道ともとれる介抱はどうやら実体験に基づくものだったらしい。
気付けには水ぶっ掛けるのが一番、と彼の祖父は言っていた。ただし、彼の祖父は人間じゃなかった。
それはまあ置いといて、知人の意識が戻ったのを素直に喜んでいた矢先。
「……ぅ、ぐぇっ!?」
状況が掴めていない少女によってぎりぎりと首を絞められてしまった。
腕力に乏しい細腕とて、確りと急所を捉えれば十分に効果を持たせられる。
助けられておいてその相手の頸を絞めるとは、と普通なら思わなくも無いが、
今回に限っては助けた側も手放しに誉められた物では無いので非難しようもない。
「ちょ……まっ……ぉ」
声帯が圧迫されて声が出ない。懸命に人違いを知らせるべく、自分の頸を絞める腕を叩き続けるしか出来ない。
力任せに外すことも出来なくはないが、ケガさせたら大変だし、とは絞められている本人の言。
■サリス > ちゃんと頸動脈狙ってました。無意識ですが。
殺される寸前だったので、殺す気で行かなければ死ぬと、窮鼠的な思考。
全力を賭してぐぎぎぎ……と夢中で締め上げていた。
存分に死にさらしてください、変質者が。
と暗黒に塗れた思考で絞め落としてしまう気満々だったが。
「…………ん?」
不意に緩む指先。
ぼやけていた視界が意識が回復するにしたがって徐々にクリアになってくれば。
きょとん、と双眸を瞬いた。
腕を叩くその貌は。
「………何してるんですか、ジっちゃん……」
何してくれてるのか、と逆に激高されても文句言えない女子。
ぽかんとしたような声で呟き、絞めていた両手を離すと小首を傾げて不可思議そうに。
■ジール > 気道はどうにか潰れないでいるものの、頸動脈が絞まればゆっくりと脳への酸素供給が絶たれていく。
今気を失ったらどうなるだろう、と少し好奇心が疼いたが、それよりもまだする事がある。
先の猟奇趣味の男を縛っておかなければ。さすがに朝まで意識が戻る事は無いだろうが、念の為である。その上で突き出すところに突き出さないと。
「ぁー……」
でも何だか頭がぼーっとしてきた。酸欠の兆候である。
気道は確保されているため苦しさは無い、でもどうせ酸欠になるなら男としては女性の胸に谷間とかで……
瞼が重くなってきたところで不意に首に掛けられていた手が緩んだ。半落ち状態から一気に意識が戻る。
頸から手が離れ、何をしているのかと問われれば軽く咳き込みながら、
「いや……ぇほ。このところ婦女狙いの首絞め魔が居るって聞いて。
それっぽい現場を見つけたから、よっしゃ手柄いただきーって……」
けふけふ。喉へのダメージは無いが首を絞められていた事に対する反射の様な形で咳き込み。
一度大きく深呼吸して、改めて既知の少女へと顔を向けた。
「だいじょーぶだった、サッちゃん?」
■サリス > この状況で変質者への対応とか、腹上死とか考えているところは天晴れである。
でも、そんなことしてたら。死ぬよ?
となかなか切迫な状態。
細腕でも本気になれば結構絞まる。
けれど、まだ握力は完全には戻っていない。全力でも成人男性は落とせなかったかも知れない。
その前に目の前の貌が見覚えしかなかったら。
変質者これじゃなかったですよね…?と気づいて。
手は離れて、状況把握に努める。ちなみに濡れて前髪がぺったり張り付いているのが不思議だった。
「……クビ絞め……ああ、アイツですか。
賞金首だったんですね。よし、じゃあ殺りますか……」
遠慮なくぶち殺そうか、と傍で伸びている変質者へ目を向け、我に返ったばかりの割に凄惨な科白を淡々と口にし。
「……いや、寧ろそちらこそ、無事ですか?
勘違いとは言え、うっかり絞殺しようとしてすみません。
私は水は被っているし首の骨単位で気管も痛いですし、未だに絞められているような感覚が残っておりまして。
生きているという点では大丈夫ですが、別状なしとも言えない状態でしょうか」
首を一蹴して浮かぶ赤い男の手形をさすり、張り付いた前髪をふるふると首を振って払いながら返答した。
■ジール > 今度はもうちょっと助け方も考えないといけないな、と己の頸を摩りながら反省したり。
幸い今回は相手が気絶から立ち直ったばかりという事で難を逃れたけれど、ほぼ落ちかけてたのだから。
「そこまで喋れるなら大丈夫そうだけど。
一応お医者さんに診てもらった方が良いよ、あとトラウマにもなってるかもしれないし。」
まあ本人の口から被害報告がされているけれど元気そう、と再度胸を撫で下ろす。
これで何か後遺症とかあったら問題だけど、精々悪夢に魘される程度で済んで欲しい。
「待って待って待って。
一応生け捕りってことになってるから。生かしておいて。
ギリギリ生きてればオッケーな気もするけど。変に今殴るけるしたら起きちゃいそうだし。」
とりあえず縛り上げとこ、と荒縄で男の腕を縛りあげていく。
これで万一意識が戻ってもすぐさま報復に出ることは出来ない……はず。
「ま、生きてるだけ万々歳でしょ。
俺の方はへーきへーき、びっくりしたけどねー。
もしかしたらそういうプレイ中だったのかも、なんて思っただけで。違うよね?」
己の頸を絞める時の、彼女の鬼気迫る様子は特殊なプレイとかそういう類じゃなかったように思う。
顔が濡れてる点は純度100%でジールの所為だが、問われなければ答えない態で行こうと腹を決めた。
■サリス > 「絞めたり緩めたりで遊ばれてたようなので、まあ、なんとか。
いえ、お金ないんで」
端的に首を振る。医者にかかる金があれば学食でも困っていない。
トラウマになろうが後遺症が出ようが泣き寝入りが主流であるが。
寝入る前にコイツの首でもいただいて憂さを晴らしておきましょうか、と惨い考えでいたものの。
生け捕りとのことで、ぇーとあからさまに不満げな声を出し。
「じゃあせめてタマとか潰しても?」
女学生という生き物だとは思えない様な科白が真顔で転がり出た。
「全然そうは思いません。コイツの首が広場で晒される日が来るまでは」
生きてるだけで丸儲けなんて考えは貧乏人でも持っていない。
それは余裕があるから言えるのだろう。
せめてすでに何人か手にかけていて、ノー裁判で公開処刑の日を望む。
「あなたはあなたで女の貌に水をぶっかけて興奮するんですか。くそヤバ」
誰がやったのかはその手にあった水筒が証明していた。
何気に目をくれては変な容疑を逆にかけた。
■ジール > 「ふーん、絞殺目的じゃなかったのか。
えっ、いやいやお金無くても……学校の保健医とか、居るよね」
事情が事情だし金銭の都合を案じる事も無いとは思うのだが。
養護教諭とかカウンセラーとか学院には配備されていないのだろうか、と首を傾げる。
まさか学費とは別料金じゃあるまいし、と。
「あー、まー……うん。それくらいは。
でも出来れば俺が見てないところでお願いね。」
共感性のアレがソレなので。と僅かに腰が引ける。
淡々と物騒な事を言うなあ、とそこも相変わらずで一安心と言えば一安心だけれど。
「そ、そっか……
ま、まあほら、キミが死んじゃったらこいつが晒し首になっても見れないわけだし。
とりあえず生きてて良かったー、って思っとこ。生きてりゃそのうち良い事もあると思うし。ね?」
気持ちは分からなくもなかったけれど、あまり昏い感情を引き摺り続けるのも宜しくないぞ、と苦笑する。
とはいえ彼女なりに恐怖心と折り合いを付けてるのかもしれず、あまり強くは出られずに。
「とりあえず目を覚まして貰うには、これが一番早かったんだってば。
お姫様じゃあるまいし、キスで起こして貰うなんてタマでも無いでしょ?」
う、と要らぬ疑いを掛けられて渋面を作り水筒を仕舞う。
そんな性癖ないない、とやんわり容疑を否認しつつ。
■サリス > 「最終的には絞め殺してたのでは。目撃者ですし。片しといた方が捕まりづらいでしょう。
学院の校医は基本的に学院内での傷病のケアをするものですよ。
これは完全に論外です」
そもそも今から行ったところで校門からして閉まっている。
学院外で起ったことは自己責任である。でなければ関係ない怪我や病気で殺到されても困るだろう。
「見ておいたらいかがです。そうそう見る機会もないでしょうし」
無駄に勧める。言うまでもなくあれは突出した臓器なので、やりように依っては死亡するという。
この辺をーひと思いにーとすでに立ち上がって、絞殺魔を仰向けに転がして踵で狙いを定めているが。
「何もいいことがなくても命があれば生きて居なければならないんですよ。
まあ…今夜ジっちゃんに会えたのでひとついいことがあったと思うことにします」
楽天的な科白は気休めに聞こえなくもなかったが、結局そう落としどころを着けて。
ふう、と少し疲れたように息を吐いてから、気を取り直したように。しまいに「ね?」と小首を傾け。
「キスは好きです。
いいんですよ、舌とか突っ込んで気付けてくださっても。噛みゃしませんから」
かみ合っているのだか合っていないのだか微妙な返答。
容疑を否定する様子は見なかったことに。
■ジール > 「そうか……ま、いずれにしろ俺には到底理解出来そうにないな。
わぁ御尤もだけど被害に遭った生徒の口から言われるのもどうなんそれ……。」
理には適っているし正論だとは思うが、それを彼女が言うのは世も末ではないだろうか。
何だかなあ、と腑に落ちない顔で天を仰ぐ。路地裏だからか空が狭い。
「いやです。見る機会なんて一生なくて良いです。」
やめてやめて、と実行に移しそうな少女を止めに入る。
今後顔を合わせるたびに玉砕きの被害を受けた男の様子などフラッシュバックさせたくない。勘弁してください。
「まあ、それは生物みんな平等にそうだし……。
あは、そうしてそうして。まあ、被害の帳消しにはなれないと思うけどさ。少しでも気が楽になれるなら。」
小首を傾げる相手に対し、破顔して頷く。
……余計な被害を生み出した下手人ではあるけれども。
「いいや、絶対噛んでたね。首絞めたくらいだもん。
舌噛み切られても不思議じゃないと思う。
そもそも気を失ってる相手にキスするなんて水掛けるよりヤベー奴だと思うけど。」
御伽噺に出てくる男たちは意識の無い相手によく口付けなんて出来たな、と改めて思ったのだった。
■サリス > 「自身の快楽のために他人を殺めてもいいって人間は一定数いますよ。
事実ですから。制服の襟で何とか隠れるのでよしとします」
スタンドカラーってこんな時便利なんだな、と勘違いした制服の利便性。
ぐいっと襟を正してしっかり上まで上げて一人納得した首肯。
下層組の思考は浅い。
「……見なくていいですから、止めないでいただきたい所存……」
どうせもう今後使う機会なく首を刎ねられるだろうと予想されたので、一気にいこう、と定めていた踵。
ストップが入っては不服そうにぼやき声。
「絞め殺されそうなところ、ジっちゃんが止めに入ってくれた、この思い出だけ都合よく覚えておくことにします。
そうしたら然程悪い日でもないような気もしてきます」
うん。一人で首肯し得心顔。絞め殺されそうな思い出は悪夢を呼びそうだが。
その後の出来事だけ思い出しておこうと決め。
「っふ……、あなたどういう街で生きているとお思いで?
気を失っているのをいいことにキスどころか、そのままヤってまえ的思考の奴らこの界隈わんさかいますよ。
今もどこかできっと誰か襲われてますね。間違いない」
この街ではあなたのようなタイプの方が珍妙なのです、と真顔で断罪するように言ってのけた。
■ジール > 「互いの同意の上ならまあ、良いんじゃないかな……
世知辛いなぁ……。痕も早く消えると良いね。」
一週間ほどで消えるだろうか、と思案しつつ。
本当にそれでいいのだろうかと思わなくもなかったが、本人が良しとしている以上口を出すのも野暮だろう。
せめてスカーフ巻くとかにすれば、と喉元まで出掛かったのを無理やり飲み下す。
「あーもー……分かったよ、俺むこう向いてるから手早く頼むよ。
あと耳も塞ぐから、終わったらどうにかして教えてね!」
やる気満々の様子を見れば、いっそ思うままにさせてやるのが一番かと考え直して。
宣言通りに少し離れてから背を向け、頭を抱える様にして目を瞑った。耳が頭頂にあるのでそれを隠す帽子の上から押さえ込む形。
事が済めば、気持ちやつれたような顔で振り返る事だろう。想像しちゃった……。
「うんうん、まあ首絞め以外に被害も無かったみたいだし。
間一髪のところ俺が通り掛かって良かったね、的な感じで。
もしもう少し良かった感が出したいなら、俺が協力できる範囲で改竄に力貸すよ?」
多少の出費も辞さない構え。まあ、水ぶっ掛けてるという負い目もある手前。
要望があれば出来る範囲で応じようとするだろう。
「それはそうなんだけどさあ……。
意識の無い相手をどうこうしても満たされるもんなのかねえ……?
俺が異質ってのは否定出来ないけどさあ、なーんか……ヤじゃない?」
むー、と顔を顰める。理解できない訳じゃないが納得はしたくない、といった様子。
■サリス > 「どれだけそいつに絞め殺されてもイイって変態がいましたかねえ。私は真っ平御免。
しょうがないですよ、この国は天下泰平って訳でもないですし。はい、痛み入ります」
この国の良心、と言える者はいるが、その裡の一人か。と気遣いの声を受けて生真面目に一礼し。
「合点です」
短く了承してそれから、狙い定めた踵を一気に振り下ろした――が、そう簡単には上手く潰しきれず。
ただ、結構なダメージは喰らったようで衝撃に一瞬大きくがくんと全身が跳ね覚醒しかけて、痛みでまたばったりと沈んでいた。
結構難しいものなんですね、と実証実験を行った気分でそこで満足したらしく、「しゅーりょーです」と終わって軽い声をかけた。
「ふーん……それじゃあ、絞殺魔はもうある程度気が済んだので。
ここは一つ救助者として、ハグして頭撫でてキスでもして慰めてくださいよ。
ま、できるもんならって感じですけども」
金銭的な実益は期待しない代わり、腕を組んで見上げるような視座を向け。
ある意味小銭程度払った方が大分楽な負担を救助者に押し付けにかかった。
相変わらず単調かつ冗談か真面目か分かりづらさ満載。
「睡姦って趣味存在するじゃないですか。
反応が欲しければ動けなくした上で気付けすればいいってとこです。
――無理やりでしか感じないって女性もままいますからねえ。
個々の嗜好は人それぞれって奴です」
で、ここら辺には彼と対極な趣味趣向な者が多数なのは事実、と人差し指を立て至って淡々と。
■ジール > 「世の中は広いね……。」
別段物知りを気取ったつもりもなかったが、改めて性癖の多様さに溜息が零れた。
世の中にはいろんな人が居るんだなあ、と何処か遠くの方を見つめてしみじみと呟いたり。
「じゃあ不届き者はあとでお巡りさんに突き出すとして。
ええとハグして頭を撫でて……わ、わかった。それで良いんなら。
まず……こ、こうで良いかな?」
真に受けた。
慰めろという言葉に、やっぱり普段通りに振舞っていても怖かったんだろうなあ、と内心苦笑しつつ。
そんな気持ちが少しでも和らげられるなら、と小さく頷くとそっと少女の身体を抱き寄せ、確りと抱き締めるだろう。
ハグなら一度しているだけにやや遠慮がちであれど戸惑うほどでも無く、その延長で頭も優しく撫でる。よしよし、と。
更にまだ濡れている前髪を払い、額にそっと口づけを落として。
「睡、姦……
いや、何と言うか……色んな人が居るんだなあ、ホント。
そういう国だから、ってのは分からなくもないけどさ……」
己も少しは染まるべきなのか、と考え、以前そのままで居ろと言われたことを思い出して考えを追い出した。
■サリス > 「割と世間知らずですよね……」
彼より少し年下の分際で言うのもなんだが。
遠目になった横顔を眺め正直なところをぽつりと呟き。
「お。来ますか。
――そして案の定……。場所違いますけど?」
抱き寄せられ、少し湿りがちな頭を撫でられるまでは良かった。
うむうむと納得の頷きで目を細くして、ついでにぎゅ、とこちらからも腕を回して縋りつく態。
しかし、そうしてしまいにダメ出しである。
頬に触れる柔い感触にくすぐったげに片目を閉じたが、じっとまだ腕の中にいる状態で顔を上げて視座を据えると、場所、と示すように軽く唇を上向けて悪乗りしておいた。
「……男の人もレイプされる土地柄なので……マジ気を付けてくださいね」
女子の方がそりゃ圧倒的に被害に遭うが。
そっちの気な者も少数派ながらいるだろうとお節介な心配を。結構重く告げて。
■ジール > 「育ちはこっちじゃないもんで。」
名実ともにお上りさんである自覚はある。
箱入りとまではいかなくとも、実際にこの国に来て常識が覆される事は多々あった。そしてそれはこれからもだろう予感も。
「あー……やっぱり?
目、閉じてよ?べ、別に恥ずかしいわけじゃないけどさ!」
ダメ出しされて小さくうぐぅ、と呻きが喉から漏れる。
腕の中から見上げる顔を見下ろして、すん、と小さく呼吸を整えて。
きゅ、と目を瞑ると示された通りに唇同志を重ねる。
「肝に銘じておきます……」
ぞわ、と腰の辺りに悪寒が走った。幸い今のところそんな事態に自分が遭遇したことも、現場に通りかかった事も無いが。
杞憂だろうと断じる事も出来なかった。
■サリス > 「なんでまたこんな荒んだ地へ……どМですか……」
敢えてやって来たという。
学院で他の国の風習も学んできた身としては他国の常識をがっつり持ってる人物がわざわざ来国するのは何故なのかと不審気。
「恥ずかしがるのは大事なことなので、存分に照れましょうよ」
もっともらしく言うが内容が内容。
そして言ってる口は女学生。
目を閉じるように告げられると素直に瞼を重ねて。
顎を挙げて待っていると触れ合う柔い感触に、ん、と喉声を漏らし。
ついでに、少し強く押し付けて僅かに擦り合わせると、そっと解放し。
「こんなところで許してあげます。舌とか入れたらヤでしょう」
気遣いという名の煽り文句。ありがたく賜りました、とほんのり紅潮した頬。
笑みのように目を細めた。
「はい、ジっちゃんの貞操が守られますようにー」
余計なお節介その2
手を組み合わせて祈っておいた。なにに? 神に? アニキに?
■ジール > 「近場で冒険者としてやってけそうな規模の国がここだったので……」
普通に生活しようと思えば生活できるのだ。
あとは何かとスパルタな祖父が見聞を広めるという名目で行けと命じたから。彼がMなのではなく彼の祖父がドSなだけである。
「俺が照れてる様なんて見ても何も面白くないでしょ!」
きゃんきゃん。既に顔からは火が出そうな程なのだが。
既に鼓動は相手に伝わりそうな程高鳴っているし、それも含めて恥ずかしい。
それでいて律儀なのか何なのか、唇を重ねている間も優しい手付きで頭を撫でるのだった。
「ん……あの、えっと……ヤでは、ないけど。」
唇が離されて告げられた言葉に、すっかり赤くなった顔を僅かに背けながら呟く。
サッちゃんは嫌?と訊ねながら、小さな体に回した腕に俄かに力が籠った。
いつの間にか顕現していた尾が、左右に忙しなく振られている。
「女の子に言われたくなかった、としみじみ思ったよ今……」
祈られても困る。本当に困る。
■サリス > 「身体的にも迫害される特徴持っておいて……よくもまあ」
誰がなんと言おうとどМ…非常にマゾい人ということで自分の中で決定した。
それでなければじいちゃんの奴隷なのではと。
「何をおっしゃいます。そんな見物なかなかありませんよ」
がっつりガン見します、と心底真面目にのたまうのが嫌な感じの女子である。
抱き合う姿勢においていると、鼓動が伝わってくるのでそれでほんのりとだがちゃんとした笑みを刻む。
可愛げの面では大敗している気がしながらも撫でる手の感触が髪を伝わって心地よく、はふ、と小さく吐息して。
「なのですか? それならば私としては神妙に賜りたいと存じます、けど?」
問う声に彼の赤さが伝播したように紅潮する頬でそう返すと。
腕にこもる力と落ち着かなげに揺れる尾にはにかむように表情を崩しこちらも一度ぎゅ、と絡む腕を強くして。
それから、彼の赤く染まった頬を包むように両の掌を添えて小さく首を傾けて、目を合わせて一度微笑むと目を閉じて見せた。
「私が言わねば誰が言う……」
急になんか来たらショック大きいだろうと。
余計なお節介その3発動。
■ジール > 「まあ一度実体験としてどういうものか肌で感じるのも勉強かな、って……。」
別に苦境に喜んでいるわけではないのでマゾじゃない、などと供述しており。
祖父の奴隷である事は否定しきれない。祖父さん怖いんだ。
「ま、またまたぁ……」
御冗談を、とまで告げられずに言葉尻が消えていく。
揶揄われている気もするが、この少女の事だから本当につぶさに見つめて来そうでもありと複雑な心境。
照れ隠しに乱雑に頭を撫でそうになる衝動を押さえつつ、時々髪を梳く様に弄んだり。
「じ、じゃ、じゃあ賜りやがってください。こ、後悔するなよなっ!?」
頬に手を添えられれば、熱いくらいの体温を伝えながら向き合う。
こうして正面から、間近に見ると可愛い顔してるんだな、と今更ながら思いつつ。
目を閉じた相手の唇に、数度、啄む様に口付けを繰り返してから重ね、おずおずと舌を割り入れていく。
「いっそ最初に奪うとか言い出さないだけまあ、マシか。」
流石にそこまで剛の者だとは思ってない。それなりに剛の者だとは思ってるけど。
■サリス > 「で、何か学べました?」
マゾ否定の声は、ハイハイと雑に流して。
単純に勉強の成果とやらが出てるのか興味が湧いたように尋ねた。
「っふ……」
どうも本気で獲らない気な様子に小さく笑気を漏らした。
これは本心である。照れられるとずっと見てられる。
意図して髪を梳くように絡む指先の感触がくすぐったく、小さく肩を揺らして目を細くし。
「そちらこそ」
後悔しそうなのは誰なんでしょうねという意味含みな一言。
そして、何度か重ね合わされるやわやわとした甘く擽ったい感触。
遠慮がちに舌が侵入してくると迎え入れるように唇を開き、
「んン……」
舌先が触れ合えば小さな喉声とともにぴく、と睫毛を震わせ。さらに伸ばしてそろりと絡み合わせていこう。
「……ん? 最初?」
初物?この国で最初?どっちだろうと余計なところに引っかかって窺うような視線を注いだ。
■ジール > 「まあ、うん……それなりに。」
少し声のトーンが落ちる。
話で聞く分にはどこか他人事、架空の様に思えた事も実際に目にし肌で感じれば否応にも現実として認識することになる。
その詳細を語るには、まだ己の中で消化しきれていない部分が多過ぎるがゆえに言葉を濁したのだった。
「何で笑うのさぁ!?」
本当に面白くないんだぞ、と苦言を溢す。
とはいえ面白さを見出すのは見られる側ではなく見る側なのは理解している。
物好きだなあ、と呻く様に呟きながら尚も髪を弄ぶ。
「後悔すると思ったらヤじゃないなんて言わない……」
舌先が触れ合えば一瞬だけ僅かに肩が跳ねる。
聞こえた喉声に思わず舌を引きかけたが、向こうから絡ませて来ればぎこちなくも合わせる様に舌を動かして。
相手の背に回していた手が、無意識のうちに衣服を強く握る。
「…………。」
問われて失言に気付き、分かりやすく視線を泳がせてから黙秘権を発動した。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」からサリスさんが去りました。
■ジール > 【一時中断します】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」からジールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にグスタフさんが現れました。
■グスタフ > 竜の遠吠えのような風が吹いている。
激しい風に外套がはためく。こんな日は人通りも少ない。
街路にはゴミかなにかが風で転がっていくのも見えた。
「散歩には不向きな日だな」
物見遊山でこんなところを歩いてるわけでもない。
かといって、仕事、見回りというわけでもない。
■グスタフ > 頭の中に鐘の音が鳴り響く。鎮魂歌を奏でるように。
耳元ではゴウゴウと風の音がうなるのも気にならない。
こんな日は、一人でいるのも辛い。
沸き上がる欲望を誰かにぶつけたい衝動にかられている。