2022/03/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」にサリスさんが現れました。
■サリス > 「――あ゛っぐ……」
路地裏に響くくぐもった呻き声。
男の下で苦し気に藻掻く学生服の女生徒。
一見ただのよくある暴行現場とやら……と思えるが。
それにしては様相がどうにも異なるのが、圧し掛かる男の手が一心に細い頸部を締め上げていることから即座に知れる。
――事の発端は、少し前に遡る。
その界隈での下働きを終え、治安の悪さもあって。うらぶれた街路を足早に貧民地区と平民地区の境目付近にある自宅を目指す途中。
突然横合いから伸びてきた腕に絡めとられ、口をふさがれ強引に路地裏に引きずり込まれた。
そのまま、衣服を引き裂かれるかと思いきや。
それよりも運悪く、小柄な女生徒を引きずり込んだ男の性癖は、娘を絞首して苦しむさまを眺める、というなかなか猟奇な代物で。
不運にもそんな魔手に掛かってしまった灰青髪の女生徒は、壊れかけた街灯が申し訳程度に照らす暗い路地の片隅で、細い首を息ができなくなるかと思うくらいに締め上げられては、窒息寸前で緩められる……という生き地獄を味わっていた。
「ぅ゛…っぐ、っくぅ……っは、ぁ゛…!」
苦しむ姿をじっくり味わいたいらしく。
易々と絞め殺す気はない男は、時折加減して呼吸をさせてやるが、声を出される前にまた頸動脈を抑えにかかるという。
真に変質的で奇怪な行為を繰り返していた。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」にジールさんが現れました。
■ジール > 「高さ、角度、共に良し。
見たところ身体も頑丈そうだし、まっ死にゃしないでしょ」
女性徒が襲われている最中、やや緊迫感に欠けた声が路地の上、建物の屋根上から響く。
街灯よりも少し上、星より近くにきらりと光る山吹色の双眸が男を見下ろし、そして、
「―――とうっ」
躊躇いとかそういうものを一切持たず、女生徒に覆いかぶさる男へと青年が一人、飛び降りた。
着地点を定めたのは無防備な男の背中、まあただ足裏で着地するのも芸が無いので、ここは膝で。
躊躇いは乗せず、純粋に青年の体重だけを乗せたニードロップが猟奇趣味を持つ男の背中へと襲い掛かる。
「おっと、ごめーん足が滑っちゃった。」
しゃあしゃあと心にもない謝罪を口にしつつ。
■サリス > 苦しい苦しい苦しい……
苦悶に生理的な涙が零れ、じたばたと必死に藻掻き首を絞める男の手に爪を立てるがびくともしない。
すでにその手にはいくつもの引っ掻き傷の痕が浮いていた。
一体何人目なるのだろう……。
この恐らく女の爪で傷だらけの手にかかるのは。
苦しみ足掻きながらぼんやりとそんな考えが脳裡を掠める。
必死にその剛腕を無駄とは知りつつ引きはがそうと細腕に力を籠めるが、全く緩む気配もない。
いつこの苦しみが終わるのか。まるで延々と続くように思える。
徐々に意識も遠のき涙の滲んだ双眸に光が失われてき始めた。
白い首に巻き付いてくっきり紅く浮かんでくる男の手の容。
酸欠を起こして眼が眩み視界が霞む。
その時――出し抜けに変じる空気。
唐突に圧し掛かる男の背中にそこそこの高さから65kg級の膝が落とされたもので。
必然的にその下敷きになって、絞め殺されかけていた女生徒にも巻き添えを喰らい。
「―――っ……」
絞める男の手もその手を引き離そうと縋っていた白い手もぱた、と衝撃とともに落ち。
意識は完全に遠く向こう。ぱたりと気絶した。
男の方は流石に頑丈でなんだが苦悶に呻き藻掻いているが、まだ元気そうである。
■ジール > 「あー、やっぱ流石に頑丈だなー
けどま、今ので変に半身不随とかになられても困っちゃうし、その点は良かったというか何というか。」
一撃で昏倒させられず、あまつさえその下の女生徒を気絶させてしまった事に若干反省の色を滲ませつつ。
まだ意識があり悶絶している男の側頭と、追撃と言わんばかりに膝蹴りを放つ。
人外の血が混じる故に人並み外れた膂力で放たれる蹴りは今度こそ男を仕留めることが出来るだろうか。
「下の子、流石に死んでないよ……ね?
死んでたらどうしよう、まあこいつの所為にしとけばお咎めなし……でも寝覚めが悪いなー。」
男がなおも意識を残していた場合に備え、いつでも追撃に移れる様に身構えたまま襲われていた側の安否をちらりと一瞥。
薄暗い中で僅かに窺える姿は、事もあろうに見知った少女だった。思わず、げっ、と声が漏れる。
「サッちゃん?……どうしてこんな場所でこんな目に?」
死んじゃってたらどうしよう、と改めて狼狽えの様子を見せる。
とはいえ他に目撃者も居ないのだから、やっぱり男にすべて擦り付ける心算ではいるのだが。
■サリス > ――蹴りの主はちょっと通りすがりの気まぐれで、別に助ける気はなかったらしいことが概ね推し量れる言葉を吐いていたが。
聞こえたのは背中に一撃喰らって反問している男だけだったが。
そいつもまた内容を頭に入れる余裕はなく、さらにその後追撃を喰らってあっさり伸びた。
「「……………」」
気絶×2
死屍が転がる、そんな有様に一見思える。
それはこの薄汚れた路地裏では珍しくもない。
どの路死んでいたかも知れないが、まさか既知の貌からトドメを刺されることになるとは夢にも思わず昏倒中。
ふよふよと魂が抜けて漂っているように思えるが、一応息はある。
ただ、重たい大の男が気絶して乗っかっているので、できれば蹴り退けていてくれると大変親切であった。
このままでは二次災害で圧死する。
■ジール > 「よしっ、今度こそ勝利っ
まあ不意打ちも不意打ちだしそもそも勝負じゃないけどね。」
力尽きた男を見て、何ならつまさきで数回つついてみて確認し、ぐっとガッツポーズ。
そしてそのまま男の脇腹をよっこいしょ、と蹴り退かして下敷きになっていた少女を圧死からも救う。
わずかな呼吸音を認め、どうやら死んでいなかった様だと、ほっと安堵に胸を撫で下ろしつつ。
「おーい、サッちゃーん。大丈夫ー?」
痛々しい痕が首筋に残る少女へと声を掛け、そっと抱え起こしてみようと試みる。
先の衝撃で気を失っているだけだと見てはいるが、三分の一くらいは己にも責任はある。いや、四分の一くらいか。それはともかく。
「おーい、水とか掛けたら起きるかな。さすがに乱暴かな。」
既に乱暴の限りを尽くした気もするが、お構いなしに持ち合わせていた水筒を取り出すと、べしゃっと気絶中の少女の顔へと。
■サリス > まず、呼びかけて反応を待つとかそういうことはしてくれないらしい――ある意味漢気しかない介抱。
身体の上からずっしりとした重みが取り去られたまでは良かった。
そして身を起こしてくれるのも。
正直そこで、ぴく…と睫毛が動いていたので。
どうしてそのまま水までかけるのか。
とことん彼からの扱いがヒドイ。
何か恨みでも、と問い詰めたいがその前に。
「――ッ……!?」
唐突に冷たい液体がびしゃっと顔面にかかると、顔と前髪を濡らしながらびく!と上肢を跳ねさせて覚醒し――た途端。
ガッ、と力なく垂れていた両腕が。絞められた首を解こうとしていた手が、逆に己を助け起こして片手に水筒、と両手の塞がっている彼の首へ伸びて、ぐぐ、と絞まる。
「殺られる前に……殺る……」
低いどすの利いて掠れた声がごほっと咳き込みながら零れて、ぎらりとまだ碌に見えていない双眸が薄い街灯に鈍く光る。
――まだ覚醒したてで状況を掴めておらず、眼差しも霞んでいて絞めているのは先だっての変質者だと思いこんでいた。