2021/10/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にルーミスさんが現れました。
ルーミス > 調合材料は、簡単なものなら基本王都内で調達する。
昼下がりの市場をゆっくりとした足取りで巡る錬金術師は、店先に並べられた幾つもの品を興味本位に眺めていた。

本には書いていないようなものでも、入れてみると案外役立つ効果を得られることもある。
それをこれまでの生活の中で理解しているからこそ、今もなお見る目を養い続けている。


「ふーん……」

しかし、今日は不発のようだ。
鮮度も決して高いわけではない生ものを横目に、小さくため息を吐いた。
無駄足とまでは言わないが、ぼちぼち帰宅するのもいいかもしれない。

そう考えた女は肩に提げた鞄をごそごそと漁り始める。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイザベラさんが現れました。
イザベラ > と、その時、近くの露店から男の罵声が聞こえてきた。

「いやあのね、困るんだよ売り物を……
 こりゃ南方から取り寄せた貴重な触媒だよ?2000ゴルドは優にくだらないんだぞ!!!」

「すまない……うっかりしていた。しかし今は持ち合わせがない。
 宿に戻ればその程度はあるから、少しだけ待っていてくれないか?」

「逃げようったってそうはいかねえぞ、このアマ!
 誰か番兵だ!番兵を呼んできてくれ!」

どうやら、偶然地面に崩れた売り物をローブを着た女性が踏みつけて傷物にしてしまったらしい。
2000ゴルドと言えば、それなりの額だ、が……錬金術師であるあなたなら、その触媒が貴重でもなんでもなく、
郊外の湿地などにいけば手に入る、一山いくらで取引されるコケから抽出したなんでもない触媒であることに
容易に気づけるだろう。貧民地区ではよくある、詐欺まがいのいちゃもんだ。

「困ったな、番兵を呼ばれるのは困るんだが……」

ローブの女性の表情はうかがい知れない。
しかしながら、女性は錬金術には疎いらしく宿に戻ればいくらかはある、と繰り返すばかりで。
店主は、それをみてさらに騒ぎ立てる。なるほど、騒ぎをわざと大きくし、女性が根負けして
いくらかでも金を出すのを待つ算段らしい。

ルーミス > 俄かに市場が騒がしくなる。
漁っていた鞄から手を離し、何事かと振り向いて騒ぎの方を見遣った。

2000ゴルドと随分な大金をローブの女性に吹っ掛ける店主を一瞥して、地面に転がる売り物に視線は移る。
一目見て、それが貴重でも何でもないありがちな触媒であることに気づいた。
成る程詐欺の手口かと察し、錬金術師はまたも溜息を零す。

「……煩いなぁ、全く」

別に放っておいても構わなかったが、男の良いように事が運ぶのも癪に障る。
二人の方へゆっくり歩み寄った。何事かと此方を注視する野次馬を追い払うよう、しっしっと手を振りながら。

「おっさん。これ、どこででも手に入るような触媒だろ?
それこそメグメールに行けば大量に採れるような安物だ。それを一つ2000ゴルド……まぁ随分な商売だな?」

ふん、と嘲るような笑みを携えて店主の方を見遣る。

イザベラ > 騒ぎ立てていた店主は、最初は営業妨害だとかなんとか言っていたが、
すぐにそれもごにょごにょとした聞こえづらい、言い訳のようなものに代わり……
最終的に、お前らここから出ていけ、と捨て台詞を吐いて路地裏に逃げていった。

ローブの女は、その様子をあっけにとられたように見ていたが、
男がいなくなると、ぷっ、と軽く噴き出して。

「なるほど、助けられてしまったかな……?
 あいにく、私はこういうものには疎くてね。助かったよ」

そういって、あなたに視線を向けた。

「もしよければ、その君の善意に礼がしたいのだが……」

そういって、ローブの女はあなたに手を差し伸べる。
その拍子、ローブの裾から少しだけ、この貧民地区には不似合いな高級な制服のようなものが、ちらと見えた。

「といっても、酒を少し御馳走するぐらいしかできないが」

ルーミス > ああ言えばこう言う、ではないが素人に知識で負ける筈もない。
反論を逐一並べ立て、やがて尻尾を巻いて路地裏に逃げていく男の背を軽蔑した眼差しで見送る。

「ま、しょうがないさ。専門というか、こういうものを取り扱う仕事についてなきゃわからんこともある。
そういう人を狙い目にしてる狡い連中がいるんだ、ここらには」

地面に転がる触媒の一つを拾い上げ眺めていると、差し伸べられた手に瞬いた。
ちらりとローブの裾に見える、随分と高級そうな衣装。

「いや、お礼だなんて大袈裟な……。
──まぁ、酒程度ならいくらでも付き合うけどよ」

この後は帰るだけだったし、幸い時間はある。
肩を竦めながら錬金術師はお誘いに応じた。

イザベラ > こうして、ルーミスとローブの女は貧民地区の市場を連れ立って後にするのであった
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からイザベラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からルーミスさんが去りました。