2021/05/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にバティスタさんが現れました。
バティスタ >  
「……──ああ、これはヒドいわね」

貧民街の一角
見捨てられたように佇む廃屋
…のようにすら見える小さな小屋の前に少女が佇んでいた

少女は一人
身なりは整い、貧民地区には似合わない装いで──

ボロボロの扉に手をかければ、
真っ暗な室内に襤褸布に包まった数人の子供が身を寄せているのが見えた

バティスタ >  
「両親は…そう、連れて行かれたの」

労働者としてか、それとも
どちらにせよ残された子は飢え、こうやって身を寄せていたようだ

子供達はやや怯えるように壁に寄り、それでも問いかければおずおずと答えてくれた

「…それは、心細いわね。
 お腹も空いたでしょう。後ろの子は…体調も崩しているわね」

少女はその銀眼を薄く細めて、穏やかな声色で語りかける
子どもたちは警戒しているようでもあったが……

バティスタ >  
「──クリム。ティアレ。
 馬車から食料品と水を、そうね…とりあえず7日分ほど、
 5人分あれば、しばらくは保つでしょう」

背後に控えていたらしい、武装した騎士二人が返事を返し、
少し離れた位置に止まっている馬車へと歩いてゆく

子どもたちは、呆気にとられているようだった

「…入っても良いかしら。──奥の子、そのままでは死んでしまうわ」

淡々と言葉を投げかけ、返事を待つよりもはやく、小屋の中へと少女は足を踏み入れた

バティスタ >  
襤褸小屋に踏み込む見知らぬ少女
そして大人の騎士が食料を運び込む様子に子供たちは困惑し、怯えている様子すらも見せていた
そんな中、布に包まり動けずにいる子の元へと、少女はゆっくりとしゃがみ込み、その手を翳す

「恐れなくとも大丈夫よ。
 …主神ヤルダバオートの神名において、この者の穢れを祓い給え」

少女の左手に薄っすらを紋様が浮かぶ
それは淡く蒼光を帯びて、冷たい輝きを以ってその周辺を照らす

臥せていた少年は僅かに身体を軽くなる間隔に戸惑うような顔を見せていた

「……もう大丈夫。とまでは言えないけれど、病魔は取り去ったわ。
 食べすぎないように気をつけて、食事を摂りなさい」

小さく微笑んで、立ち上がる
少女の背後では騎士二人が食料と水を運び終えていた
パンや干し肉など、日持ちのするものも含む、一週間は食いつなげるであろう分量だった

バティスタ >  
目の前の少女がノーシス主教の人間であること
そして漸く、自分たちが命を繋いだことを理解した子供たちは
はしゃぐでも、歓喜するでもなく、ただただ安堵とも取れるように
深くふかく、息を吐いていた

「…このことは内密にね。
 でないと、悪い大人がご飯を奪いに来てしまうから。
 ……かみさまに感謝しつつ、召し上がりなさい」

子供に言い聞かせる母親のように
穏やかな声色で語りかける少女は、襤褸小屋を後に

そして馬車まで戻ると、小屋を振り返り小さく笑った

バティスタ >  
「本当に此処は、いつ訪れても救いを求める者がいるわね」

食料や水を幌の中に目一杯詰め込まれた馬車
少女はこうやって貧民地区を巡り、限界状態になる者を救っているようだった
飢えている者には食料を
病気や怪我に苦しむ者には治療を…無償で提供していた

これで彼らは命を繋いだ
また最低でも一週間、地獄を生きてゆくことになる
そのまま道を繋げられれば…彼らは神に感謝してくれることだろう
しかし心無い大人に食料を奪われたら…あるいは、道が途切れていたら

クスリと、少女は口元に愉悦の笑みを浮かべていた

バティスタ >  
「こうやって未来の信徒を増やす活動も大事なこと。
 ……さて、王城に向かいましょうか。」

馬上の騎士に手を引かれ、少女がと乗り込むと、
ゆっくりと馬車は王城へ向け移動をはじめる

「──途中、『神の塩粒』を卸すことも忘れずに。
 富裕地区の酒場。わかってるわね?」

幌の中
食料や水などに隠れ積まれているものがあった
それは──…

「聖堂騎士団の在り方に否定的な大臣の方がいたわね。
 あの方にも差し上げましょうか。きっと考えを変えてくれる筈よ。
 ──ふふ。ふふふ…」

小さな小さな、含むような少女の笑い声は、広い貧民街の中へと消えていった──

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からバティスタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にミドリさんが現れました。
ミドリ > 王都は広く、膨大な人が出入りし続ける。
中には真っ当な人が足を踏み入れないような、寂れた界隈だって数多い。
そのうちの一つ、貧民地区の雑多な空間に女はいた。
此処には用があってきている。すなわちギルドの仕事で、今日は単独で行動していた。

「……こんなところに隠しておくなんてね」

片手に持った剣に目を落とし、溜息をつく。
何ということはない、ごろつきに盗まれた宝物を奪い返してきてくれ、との依頼だった。
そうして当のごろつき共をさくっと叩きのめし、隠し場所を聞き出してモノを取りに来て──今に至る。

「仕事完了ね。…さっさと帰って報告しないと」

手にしていた剣を懐に仕舞いこみ、さて、と辺りを見渡す。
今は人気が無いが、あまり長居したくもない場所だ。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にステイシーさんが現れました。
ステイシー > 「あー、やっぱりバッティングか…」

その時、ミドリの背後から声が響く。
振り向けば、カトルマンハットを被った露出の多い女が立っているだろう。

「あぁ、いや、アイツらの仲間じゃないよ。そっちも違うでしょ?
むしろ私もそれ、取り返すよう依頼されててね…」

女、ステイシーはため息をつきながら肩を竦める。
彼女もまた、ギルドから依頼を受けてここに来たのだが、
既に目的のごろつきが叩きのめされていたのを見つけ、
ごろつきをもう一度叩きのめしてここの場所を聞き出し、
こうしてやってきたのだった。

依頼主が慌てたのか、手違いで別のギルドにも依頼が行くのは、
まぁよくある事だろう。

「あー、せっかく稼ぐチャンスだったのに…とほほ…」

大事な物を取り返して欲しいという依頼には、
当たり前だが持ち逃げされないようその物以上の報酬金が支払われる。
なので、割の良い仕事と言えた。

ミドリ > 背後から響く声に、ピクッ、と肩が小さく震えた。
振り向くと、被ったハットが様になっている女の姿。
半歩後ろに下がり、強めた警戒は次の彼女の言葉であっさり取り払われる。

「……あぁ、成る程。貴女も依頼を受けたのね」

仕事のバッティング。
ギルドは王都に数多い。依頼主が複数のギルドに依頼を出すのはありがちなことだが──やれやれ、と首を左右に振る。
とはいえ、おいそれと権利を譲るわけにもいかない。
懐に仕舞おうとした剣に目を落とし、彼女の方を見た。

「……どうしようかしら、ね? 何か良い案ある?」

お互いが譲らなければ、いつまで経っても決着しない。とはいえ冒険者同士、血を流すのは避けたくもある。
一先ず彼女の方に近づく。…露出の多い服装とその豊かな肉付きに目が行く。
ふぅん、と興味を惹かれたように息を零した。