2021/04/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にウォルスターさんが現れました。
ウォルスター > 「高貴な御方のお遊びに付き合うというのも、中々に骨が折れるものですね…。おっと、これは失言ですな。」

雑多に建物が乱立した貧民地区の路地。
建物の壁を背にし、珍しく紫煙を燻らせて時間を浪費していた。
近くに控えている同行者の執事見習いの一人は苦笑する事しか出来ず。
今日は高貴な血筋のお遊びの護衛も兼ねて同行していたのだった。
もっとも当人が戻ってくるのは、遊びに飽きるまでだが――…下手をすれば半日以上は戻らないだろう。
望めば高級娼婦をいくらでも抱けるというのに、どうにも今回は貧民地区のスレきっていない娼婦。
水揚げしたばかりか、もしくは自ら処女を購入して楽しみたいという趣味趣向らしく。
しかも、美少女美女よりも――…個人の趣味趣向に対して多くは語らないが。

「はぁ……本当に困ったものです。他の近衛もおりますし、私はこの周囲の見回りと時間潰しにでも行くべきか…」

仕事は完璧にこなすのが信条であるが、地位が低いせいもあり暗殺者すら送られる事は無い。
当人も遊び人としての地位に満足しているので、権力闘争とは無縁。
こうなってしまうと、そこら辺の金持ちの道楽息子と変わらぬような存在なので。
近衛一名、執事見習い数名他、護衛も控えているので仕事としては時間を浪費するのが仕事となっている。
他の優秀な人員は全て別の王族付きとなっていた為に、隠居しているような自分へと声をかけられ。
このように臨時の執事兼護衛として同行していたのであった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にシシィさんが現れました。
シシィ > 「────……」

ふ、と零れる吐息めいた欠伸を手許で覆い隠して、歩を進める。
よく使う、というほどでもないが、地区と地区との抜け道めいた路地は、表通りのように整ってはいない。
それでも幾何かの時間短縮になることを知っているから女はその場所で歩を進めていた。

煤けた壁面、片隅にまとめられ、打ち捨てられた雑貨の残骸。そんなものが当然のように点在するのは治安はあまりよくないと謳われている貧民地区のごくありふれた風景だった。

「………?」

けれど今日はそこに不釣り合いなものを見つけてしまう。
整った身なりの───侍従?と思しき数人の集団。
それに護衛らしき存在もある。

更に路地に奥まった場所を、少々手持ち無沙汰気味にうかがっているのには理由があるのだろうが、なんともそぐわない。
ある程度自由を許されてもいるのだろう、紙巻の香りがくすぶるのもまた、そんな違和感に拍車をかけてくれる。

あまり他所の事情に興味を持ちすぎるのはよくないことだとは思うが、行きがかってしまった以上、あまり性質の良くない好奇心は擽られてしまった。

趣味の悪いことと知りつつも、何とはなしに様子を見守ってしまう。

ウォルスター > 「……ネズミが居るようですね。別件だとは思いますが、警戒を…」

警戒をしていなかったわけでは無い。
むしろ警戒をしているからこそ、向けられた視線に気が付いてしまうのだった
貧民区に身なりの整った数名の集団―――明らかに厄介事の匂いしかしない人間達。
老執事は視線を合わせず、ペッと口に咥えていた葉巻を地面へと投げ捨てて革靴の底で踏みにじる様に火を消した。
特にいらだった様子というわけでもなく、多少の荒事の経験を潜ってきた経験があるのならばコレの意味は近づくなという警戒のサイン。
しかしながら、魔が悪い事に女の後ろから数名の人間を引き連れて現れるのは―――。
平民服だというのに、生地の質が明らかに上等過ぎる程に高価な衣装を身に纏った男の姿。

『おっ? そこなお嬢さん、どうだい我と一夜を共にしてみるか。』

一言で言えばナンパである。
ただし、彼女をナンパしているのがどうやら目当ての嬢を見つける事が出来なかった高貴な御方。
背後には同じく平民服に身を包んでいるが、帯刀している近衛の男が数名。
このまま何事も無く時が過ぎる事を祈りながら、老執事は彼女とナンパ男の方へと歩み寄っていくのだった。

シシィ > 彼等の様子を暫く窺うに、おそらくはやんごとなき身分の方でも『遊び』に訪れているのだろう。
それがどういった類の遊びかは───あまり詮索する内容でもないし、近寄らぬ方がいい。

吐き捨てられた煙草を見届けたなら、静かにこちらも踵を返し、表の通りに向かおうとしたのだが───

「……っ、ぇ」

不意に背後から掛けられる声音と、数人の気配に、びく、と背筋を震わせるのは女の方になる。
此方もあまり治安のよくない場所を行き来する以上はそれなりに警戒はしているのだけれど、行きあった光景につい注意を傾けるのを失念していたよう。
掛けられた言葉に振り向いたが、振り向いた先で、どうするべきか、と判断に悩んでしまった。

───己は商売女ではない以上そんな言葉でなびくこともないのだが、おそらくは高貴な方には街の女の出で立ちの違いなど些末な問題でしかないのだろう。

とはいえ、己の生業にどこで障害になるかもわからない、あまり邪険にしない方がよさそうなことも、理解はできた。
……剣を隠さない護衛の方々、に視線を向けて穏やかな表情を少々曇らせた。

とりあえず無言のまま首を垂れる。豊かな銀の髪が肩から雪崩、揺れる。

「ごきげんよう、旦那様───大変栄誉な申し出とは思うのですけれど、私では役不足、かと」

困ったような笑みと共に、無難な言葉を差し向ける。
華美でも露出が多いわけでもない、ごく一般的な出で立ちだと自覚はしている。そのことを彼の背後に控える侍従たちが考慮してくれると嬉しいのだけれど、と淡い期待を胸に。

ウォルスター > どうやら女は礼儀をそれなりに弁えているらしく。
老執事自身や、他の男達も少しばかりほっと胸を撫で下ろす思いだった。
下手をすれば帯刀している近衛の男に処分されても、一切問題にすらならないのだから。

『ふむ…後ろ姿とか服装は良いのだが――顔が整い過ぎている。それに、もっとこう…我はむっちりとしたのが好きだからな。よし、その女はくれてやる。我は次の店に行くぞ!』

どうやら彼の好みからは外れていたらしく。
足早に貧民区にある別の店を目指して近衛達を引き連れて歩いて行った。
普通はこれだけであれば、後は彼女を開放して何事も無かったと済ませるべきだろう。
しかしながら、彼女に声をかけた相手の立場に問題があった。

「そのような御戯れは御自重して頂きたいのですが…はぁ……お前達、後は任せます。私はこの娘を調べてから後を追いますから。」

老執事は重い溜息を吐き出した後で、他の執事達に後を追わせてから。
改めて、女の容姿をじっくりと確認するように上から下まで視姦していく。

「申し訳ございませんが、アナタに声をかけた御方の身分に問題がございましてね……一応は安全確認の為に取調べを行いたいのですが、御協力願えますかな?」

すみませんという風に、被害者である彼女へと若干眉を下げながら心の中で詫びていた。
ほぼ間違いなく彼女は暗殺や政治闘争とは無関係であろうが、念は念を入れて調べなければならない義務があった。
手荒な事はしたくないと言う風に少しばかり路地の奥まった場所へ行こうと、抵抗されなければ女の肩を抱くようにして誘導していくが―――…。

シシィ > ────とりあえず問答無用で切り捨てられる事態にはならなかった模様だ。向けられる視線は少々痛いが、路地を一人でふらついている身故にいくらでも難は押し付けられかねない。

けれど、声をかけてくれた主人格の男の言葉にはどう反応すればいいのかさらに判断に悩んだ。
───興をそそらなかったのはいいのだけれど、嘆くべきか喜ぶべきか。
───聞き捨てならぬ言葉に顔を上げるころには、男はすでに言葉通りに動き出している。
彼が足を向けたのは貧民区の中でも娼館の連なる区画。己が追いかけるべくもないその先でどんな騒動が起こるのかは───彼に付き従う護衛たちに同情すべきなのだろうか。

己もまた、避け損ねた汚水を浴びた気分を流すべく、贔屓の旅籠の温泉にでも向かうべきかを悩みながらその場から離れようとしたのだが。


それを遮るように立ちふさがるのは、侍従の一人。
紙巻を口にしていた壮年の───けれど上背だけをみれば誰よりも大きいとすらいえるだろう。
己にしてみれば壁のようにも感じるが、向けられる眼差しに言い知れぬものを感じて、僅かに後ずさる。

目線は合わせぬようにしつつも、己の姿を上から下まで、射貫くような視線に伏し目の睫毛が揺れた。

「───………」

眼差しとは違い、言葉は丁寧だ。存外に、と注釈はつくのかもしれないが───。
同行を強請る言葉、厄介ごとを招いたのは己の軽率。それは自覚しているだけに、申し出を断ることは難しい。
ぎこちなく頷き、誘導に従うが、近くなる距離には少し緊張したように身を固くし。

「……そうするほうが、身の潔白は証明できそうですしね」

ため息交じりの言葉で応じ、促されるままに歩を進め───

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からウォルスターさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からシシィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にリーアンさんが現れました。
リーアン > フードのついた黒い外套を羽織り、目立つ帝国風の衣装を隠しても、
僅かに覗く顔立ちから、王国の者でないと気づかれるものらしい。
特に、此方を値踏みすることに長けた娼婦たちには―――――

此の界隈を歩き始めて、未だ、ものの数分。
けれど既に何人もの娼婦から腕を取られ、カタコトの帝国語で誘われては、
やはり鋭く同性であると悟られ、さては稼ぎに来たのかと問われるに至る。
うんざりした顔で肩を竦め、ついと頭を振って、

「違う、わたしにはもう、他に仕事がある。
 此処には、仕事を探しに来たんじゃなくて……、」

女を買いに来たのでもなく、仕事を探しに来たのでもない。
つまりは女たちにとって、何の得にもならない案件を抱えていると知るや、
彼女はするりと腕を解き、じゃあね、と去って行く始末。
引き止める暇も有らばこそ、振り返った時にはもう、別の男にしな垂れかかっており。

「………素早いことだ、……全く」

溜め息交じりに呟いて、視線を彼女と其の獲物から転じる。
では、やはり己は自力で――――――そう、思い定めて。
踏み出した足は更に、歓楽街の奥へと向かう。

リーアン > 闇の深い方へ、深い方へ。

目当てのものに辿り着けるか、探り当てるか、
其れとも、―――――――

何れにしても、夜明けは未だ遠い。
己の彷徨も未だ、始まったばかりで―――――――。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリーアンさんが去りました。