2021/04/05 のログ
■レト > こちらの不遜な態度に眉を顰めもしない。
貴族故の余裕、それもこんな子供が。
笑みを浮かべたその表情もこちらにしてみれば気持ちいいものではなかった。
相手の煙草の匂いが漂う…
こちらの安物とはくらべものにならない上質な香り。
煙草の味も楽しめず、尚更に不愉快な感覚だ。
彼の持ちかけてきた仕事も余計に不愉快さに拍車を掛ける。
殺しだのハニートラップだのは問題ない、問題なのはそういった仕事を適当に見繕った傭兵にやらせようとしているところだ。
つまるところ成功しようが失敗しようが構わない、成功すればもうけもの程度の案件だ。
だからこそ使い捨てられそうな傭兵にやらせようとしている。
「ハッ、殺しは別に構わねぇけどよ…
その貴族サマがアタシみてぇなケダモノに竿をおっ立てるようなモノ好きなんだろうな?」
まぁ、そうでもなければもっと普通の殺し屋に依頼しているところだろうに。
わざとらしい相手の態度が鼻についてしょうがないから、あえて難癖をつけているようなもの…仕事自体を断る理由は限りなく少ない。
近づいてくる少年へ向ける視線は次第に見下ろすようなものとなる。
まともに報酬を払うような良識を持った貴族なのか、判断しかねるといったところだが。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ >
「ふむ?」
殺しは構わないが――との言葉の後に続けられた彼女の言葉に、歩み寄る足は止まる。
「まあ確かに、暗殺する方法は他にも幾らでもある。
しかし、男というものは褥の中が一番無防備だからな。
最も成功率の高い方法を提示したまでだ。先程も言っただろう。
方法は問わぬ、とな。それに――」
此方を見下ろす彼女を、じっと見返す。
その視線には、先程迄の様な傲慢さは無い。
商品を検分する商人の様であり、道具を確認する職人の様であり。
そして――眼前の雌を見定める、雄の様でもあり。
「……娼婦としての評判も調べさせている。
そういった方法を取るにあたって、特に問題があるとは思わぬさ。
私から見ても、貴様は情欲をそそる女だ。
その点において、不安材料として考慮するところは無い」
と、訥々とした声色で彼女に言葉を投げかけた後。
礼服のポケットから取り出したのは、数枚の金貨。
「引き受けるなら、前金は準備してある。
無事に仕事を達成すれば、この倍の報酬を準備しよう。
これでは、不満かね?」
甘ったるい紫煙を漂わせた儘。
再び尊大な笑みを浮かべれば、もう一歩踏み出して彼女の直ぐ傍へ。
ちゃりん、と掌で金貨を弄ぶ様を見せつけながら、嗤ってみせる。
■レト > 「そんな目で見られて言われてもちっとも嬉しくないがね
アンタもモノ好きだってなら話は変わるけどな」
娼婦としての評判。
仕方がないからやっているだけの仕事の評価など気にしたこともない。
相手の視線がまた意味合いの変わるものとなれば、こちらも不愉快さは軽減される。
露骨な見方をされる方が気が楽だし。
ただの社交辞令かその気があるのかわからない誉め言葉に、女はただ淡白に答える。
ヤリたいなら別料金だ、と。
次いで前金を出してくる相手。
金を前にされれば考え方も変わってくる。
貴族の殺しに金貨数枚の前金…色を付けさせるべきか考えるが、それは仕事を成功させてから、ということにしておくか。
「…商談成立だ」
相手の掌から金貨をひったくるような形で前金を受け取れば、それは契約が成されたことを示すサインと同じ。
相手の態度は気に食わないが背に腹は代えられないのも事実。
目の前の罠かもしれぬチャンスに飛び込まぬほど、余裕のある生活ではないのだ。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ >
「快諾感謝しよう。完了の報告は必要無い。
どのみち、貴様の仕事の結果は貴様より先に私に情報が入る。
成功したら、ハイブラゼールの両替ギルドを尋ねろ。
残りの報酬は、其処から支払われる。
カイゼル通りで一番大きな両替ギルドだ。間違える事は無いと思うが、違うギルドに入るんじゃないぞ?」
ひったくる様に彼女が受け取った金貨。
それが意味する事に、満足そうな笑みと共に頷いた。
「さて、此れで仕事の話は終わりだ。良い報告が私に齎される事を期待しているよ。
――ところで、今夜の宿の当てはあるのかね?」
仕事の話は終わった。
だからこれは、血生臭い話ではない。
もう一度、ポケットに手を入れて取り出した一枚の金貨。
そして、今宵の宿を尋ねる言葉。
その言葉の意味するところは実に単純。
傭兵としての彼女の腕を買った後、女としての彼女も買ってしまおうか、と。
■レト > 「ああ……ああ?」
仕事を終えた後の説明を聞き短く返事をすれば、それでこの場の話は終わる。
貴族のごたごたに付き合わされれば碌な目に合わない気もするが。
いざとなれば前金を持って逃げてしまえばよい。
と、話も終わり踵を返そうというところで彼から続けざまに掛けられる言葉。
本気にしていなかった社交辞令の誉め言葉が思い起こされ、きょとんとした顔を晒してしまうがすぐに薄ら笑いを浮かべて。
良いご身分の割に節操がないのか、自分を誘うなど良い趣味をしてるとは言い難いと思う。
まぁ、貴族ともなればその趣味やら範囲やらも独特なんだろうが。
新たに金貨一枚を見せながら明確に自分を買おうとしている少年。
「当てなんかねぇよ、宿代は客持ち一晩だけ。
それといくら積まれたって愛想は良くなんねぇからな」
ぶっきらぼうに答える女の様子は、先ほどよりかは刺々しさは薄らいだかもしれない。
高級娼婦でもないのに金貨での支払いをしようとする相手に、サービスする気は微塵も無いようだ。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ >
「金を積まれて愛想を良くする様な女なら、一晩買おう、等とは思わぬさ。
唯の戯れだ。王城の料理だけでは飽きも来る。偶には、粗野な物も食べてみたいと思うものなのさ」
とはいえ、どんな女でも褥を共にしようとする訳でも無い。
身分の差を全く弁えぬ彼女の態度。
男を誘うに十分過ぎる程の身体付き。
獣人だろうが魔族だろうが、自分にとってはさして関係無い。
依頼するならどんな種族でも優秀であれば良い。
そして、一晩抱くなら――自分の興が乗れば、それで良い。
「別に、愛想を求めている訳じゃないさ。
細かい金は持ち合わせていないからな。釣りをくれるなら、遠慮なく受け取るがね?」
金貨以下の硬貨は持ち歩かない。
未だ名を明かさぬ少年が、随分な金蔓になることが伝わるだろうか。
「まあ、先ずは移動しようか。
近場に馬車を待たせてある。車内で打ち合わせでもしていれば、ホテルまで時間もかからぬさ」
そうして、彼女が承諾すれば。
薄暗い貧民地区から、二人の姿は影の様に消え去るのだろう。
二種類の煙草の匂いだけを、その場に残して――
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からレトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にゲーゲン・アングリフさんが現れました。
■ゲーゲン・アングリフ > 「……これでよし」
貧民地区、細い路地の奥にまったく流行らぬ酒場がある。
いつも客は少なく、活気がなく、地味な店。
そんな店で、店主たる男が料理を仕込んでいた。
「……と、言っても。
お客さんが来るかどうか……」
料理の味に満足しつつも、男は苦笑しつつ店内を見る。
現状、店内は男しかいない。いわゆる閑散としている状況だ。
だが、男にとってはいつもの風景なのだろう。
男はカウンター内にイスを持ち込むと、それにすわり。
近くにあった本を読みつつ、のんびりと客を待ち始める。
■ゲーゲン・アングリフ > 「……ん……」
そうして読書をしていた男は、ずいぶんと時間が経っていることに気づき。
ぱたん、と本を閉じると、一度大きく伸びをする。
「……う~ん。そろそろ閉めようかな」
基本的に、営業時間は男の気分次第。
なので、今日は店じまいにしよう、と決め。
男は、店の片づけを始めるのであった……。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からゲーゲン・アングリフさんが去りました。