2020/09/17 のログ
クレス・ローベルク > 「ラスボスて。確かに魔王みたいなのと戦った事もあるけどさあ――」

心外そうな顔をしていたのも一瞬。
少女が助け起こして欲しいと言うと、男は苦笑いする。
別に、男は薄情さからそうしたのではなく、寧ろ彼女の気丈さを信頼してそうしていたのだが――リクエストを頂いたなら仕方ないな、と。

「はいはいお姫様。でも、そういう扱いがお望みなら、もう少し欲をお出しになった方が宜しいですよ、っと」

そう言うと、差し出された手を敢えて無視し、丁度起きている上半身と膝を足がかりに、ひょいと持ち上げてみせる。
いわゆる、お姫様抱っこである。
男は、そのまま、周囲を確認。他に敵がいない事を確認すると、取り敢えず彼女との会話に意識を傾ける

「いや、あはって。緊張感無いな君!?
いや、自衛手段は確保した上での事だとは思うんだけどもさ!
……ったく、しっかりしてるようで本当は危なっかしいのかな君は」

はぁ、と溜息をつく男。
人の事を心配できる義理など無いと解っていても、心配になる。
このムスメ、明日ぐらいにばったり死んだりしてないよな、と。

「まあ、折角だから送っていくよ。何処行くつもりだったの?」

等と聞いてみる男。ちなみに、もしも迂闊にも応えた場合、そのままお姫様抱っこで彼女を運ぶ悪戯などを考えている。
降ろせと言われれば降ろすつもりではあるが。

ティアフェル > 「自覚したほーがいいよ? あなたそんなナリでこんなとこウロついてたらボス狩りに遭うよ?」

 心外そうな表情を見請けてひとこと。ボス狩りどころか、狩られそうなゴロツキは先ほどのように裸足で逃げてくが。

「まず、暴漢に襲われてる現場に駆け付けたら、例え相手がティアフェルであろうが形式上『大丈夫?!怪我はない?!ビョーキ感染されてない?』て訊くものよ――お、や……?」

 減らず口を叩いて立ち上がるのを助ける手を求めたが――それを越えて軽々と抱え上げられ。一瞬きょとりと目を瞬く。そして、まあ、コレはコレで悪くない。何より楽。苦しゅうないと云わんばかりに目を細め。

「さすが鍛えてるねー。わたしが軽いのもあるけどぉ。うん、安定感安定感。
 ん? 緊張?そんな緊張してたら、ここじゃ秒でエジキよ? 余裕カマしすぎも良くなかったけどね。
 うふふ。でも姫のピンチには王子が駆けつけてくれるものと信じていたので。ほら。今日の結果をごろーじろ…なんてね」

 ため息とは対照的にそんな風に至って能天気にのたまって、へらりと笑みを投げかける。要は結果オーライ。
 案外しぶといのでやばそうな割にすれすれ無事。という。

「ありがとう。用はもう済んだの。平民地区へ戻って少し気晴らしするかどうかって考えてたとこ。
 クレスさんは? 用事はいーの? 助けてもらった上に送ってもらうなんて悪いわねえ」

 一応遠慮の素振りを見せるが――例によってやはり素振りだけ。お気楽な顔で、落ちないよう、というかこのフザけ調子にキレて落とされないように彼の首元に手を回して項で組み合わせるようにしてとっつかまる。
 

クレス・ローベルク > 考えてみれば、男はそれなりに恨みを買っているわけで、その復讐をボス狩りと称すのは強ち間違っていないのかもしれない。
とはいえ、男とて別にやりたい訳ではないが。寧ろ積極的にご遠慮申し上げたいが。

「自分で『相手がティアフェルであろうが』って言う辺り自分を解ってるね君……。
っていうか、君が対処できない"ビョーキ"にかかってた場合、俺じゃどうしようもないと思うんだけど」

まさか、その彼女が現在、治療の力を失ってるなど知りもしない男は、そんな風に突っ込む。とはいえ、知らないにしても男の方も彼女の力を過大評価している節はある。
流石に万能の力とは思っていないが、やはり骨折を直ぐに治したというのはインパクトが強かった。

「まあ、実際軽い方ではあるけども、君全く動じないね。最早俺王子様というよりカボチャの馬車だよね。後、エジキはお姫様の台詞じゃ――いや、お姫様の演技とかされても困るんだけどさ!」

散々な言い方だったが、前に恋人のフリをした時は実際、結構見ていてキツかった。
キツかったから逆に可愛いかったとも言えたが――とはいえ、この密着状態であの演技をされると、何か全身がむず痒くなりそうだった。
見たいような、見たくないような。複雑な心持ちである。

「んー、まあ用事って言っても元々休暇だし。ぶらぶら遊んでただけだから、君と平民地区で気晴らしってのも一興かなって」

そう言うと、表通りの方に足を進めていく。

ティアフェル >  寝首を掻かれる存在であることは間違いないらしい剣闘士。対してこちらは分かりたくない己を自覚した、アネゴリラ。ふ、とシニカルな笑みを唇に引いて。

「わたしはね、生まれてこの方日常的に『ゴリラ・ボスザル』という罵倒を浴びて生きてきた女よ――
 だから、形式上ね。テンプレよテンプレ。ひな型大事」

 多少のごビョーキであれば確かになんとかできるが、できるけど。感染されてたらさすがにめっちゃショックでしょ、と八つ当たり的に半目を向ける。その上、今は大事な一芸で切り札な回復魔法も使えずにいるのだから、正直救助の手は助かった。

「うんまあ。スキンシップとか職業柄慣れちゃって……。だけど、まあ乙女を運ぶには大変心得た姿勢で。ふわふわしちゃうー。わたしも女の子ーきゃー……水差さないで。わたしのジョイフル気分に水を。今まさに演劇賞狙えそうな姫らしい芝居をして見せようと思ったのに」

 相手が自分の芝居をキモイと思っているのをこの際覆してやる気で、いっちょやってやろうとも思ったが、姫の演技はやる前から拒否されて、唇を尖らせブーイング。これからわたしのかわいさを見せつけるターンだったのに、とゴリラの愚痴。拗ねる。

「あー、そうなんだ? お疲れ。たまには休まないとね。あなたワーカホリックのテッペン獲ってるものね。
 じゃ、一緒に休暇を楽しみましょ。休みの日は普段なにしてるの?」

 世間話をしながらであるが――姫抱き状態なので、ハタから見ると少し変だ。いちゃついてるにしては平常運転過ぎるし、救護者などにしては元気過ぎる。
 人さまの腕の中でゆっくり動いて行く夜の景色を眺め。楽。楽。となんだかうれしそうだった。

クレス・ローベルク > なんというか、おかしな光景であるというのは自覚している。
え、何この二人、どういう関係?みたいな目で見られているのは重々承知である。
流石にお姫様抱っこで表を歩けば、如何にティアフェルとて「やめてよー」ぐらいは言うだろうと思っていたのだが、この乙女は想像以上に手強かった。
しかし、かといってそこで「冗談だよ」と引けないのがクレスクォリティである。単なる意地とも言う。

「え、そんな呼ばれ方してたの?割と素直に可愛そうなんだけど
そう考えると、テンプレでも心配してあげるのって大事って思えてくるな……」

日常的にゴリラ呼びされる人生。例え男でも割と堪えられそうにない。
それを考えれば、多少違和感があっても心配してあげるのが礼儀に思えてくる。
……まあ、実際彼女も弟に、そう呼ばれるだけの事はしている気がするが。去勢とか。

「まあ、実際揺れが少ないように腰を少し落としてるし、抱かれ心地は悪くないと思うよ。
っていうか、ある意味君お姫様らしいよね。癒やし手さんだからなのか、人に物怖じしないし。言うべきはズバッと言うし」

そういう意味では、俺は王子様というよりはお付きの人かもしれないなあ、とぼやくでもなく言う男。
実際、彼女が貴族や王族に生まれたら、結構な女傑として名を馳せたのではと思わなくもない。

「休みの日は、喫茶店とかで落ち着いて勉強したり、或いはカジノ行ったり……まあ、その時々だよ。
逆に君は何してるのさ。何かこう、あんまり休みの時の君って想像付かないけど」

仕事疲れでバッタリ寝てる、或いはいっそ遊びまくっている――どっちも余り想像ができない。
案外、服屋さんとか巡ってたり?とちょっと興味深そうに聞いてみる。

ティアフェル >  姫抱きなんて、自分の人生でなさ過ぎて「やばいこれ楽しい」とフツーにお喜びの自称乙女。
 憧れの運ばれ方トップ3に堂々ランクインされる奴じゃん、とはしゃぎ気味で自分から「下ろして」などともったいないこと云わない。暴漢どもに多少殴られて回復魔法も使えず少し不調なこともあるが。

「弟筆頭に地元ではそんな扱い。よして、可哀そうなんていい出されると……超刺さる。
 そうよ、乙女心を救ってやって。すでにズタボロよ」

 スタボロも一周回ってかなり鍛えられて頑健になってしまった乙女のハートですが、一応主張した。
 礼儀は大事だ、と畳かけてみる。真顔で。
 さすがに弟をちょんぎったりは今のところしていないことはどこかで伝えられるだろうか。

「うん、うん、姫ってこんな風に運搬されちゃっててさぞやいい気分だろーと思ってたけど、コレはいい、すごくイイ。どこかに姫抱き運送とかあったら呼び止めちゃうな。
 ………そんな、ある意味、とか逆に、みたいな姫らしさ、求めてない……」

 侍従に甘んじているというか、むしろゴリラ姫相手だと一歩引きたい彼の気持ちは痛い程理解できて、はー、と嘆息。前半はそれなりに浮かれていたが後半で少し落ちた。

「えー? 勉強? なんの? 行動物理学?媚薬? ……カジノね、クレスさん相手じゃイカサマもやりにくいだろね。
 わたしは、お金があれば素敵なカフェでお茶でしょ、服見て靴見て―お菓子屋さん行ってえぇー、お酒が飲みたいとお洒落なバーで一杯。お家にいる時はひたすら寝てるかレース編みかな」

 趣味がゴブリンイジメだが、これは休みの日にはやんないので除外。案外フツーな趣味だった。
 ウフフ、と淑やかな笑いを零しながら微笑む――それが通常運転だったら、きっとゴリラではなかったろうが。 

クレス・ローベルク > 何か、お姫様抱っこというこれ以上無い女の子扱いされつつも、どんどん彼女の女の子力への自信が消えていっている気がする。
誰のせいだ、と思うが、どう考えてもそれは自分のせいだ。
だから、罪滅ぼしではないが、ちょっとフォローのつもりで、

「……いっそ、一度本格的にデートとかしてみる?
ああ、変な含みナシで、普通におめかししてさ、遊んだりご飯食べる感じで」

この感じだと、多分彼氏とかは居なさそうなので、さらっと誘ってみる。
下心がないでもないが、それ以上に冒険者でもなく癒やし手でもない彼女というのを、一度見てみたいという欲もある。

「お姫様抱っこの事を"運搬"って言う人初めて見た。
あー、うんまあ。君のお姫様像って、物語のイメージも入ってるだろうしなあ。俺はほら、割と現実を見る機会が多いから……」

出資者パーティや、ちょっとした依頼で王城に出向くことも多い男。
確かに、生まれた時から銀食器以上の重いものは持ったことがないという者も多いが。
中にはとんでもない性格のお姫様も見てきたので、その辺は割と齟齬があるのかもしれない。

「あ、媚薬――つまり薬学は暇さえあればよくやってるね。仕事に直結するし、成果が調合って形で結果に出るから楽しいんだよアレ。
おー、普通に女の子らしい一日だ。ひたすら寝てる以外。
っていうか、そういう所もっとアピールしていったら、普通に女の子扱いしてくれる彼氏の一人ぐらい出来ると思うんだけどなあ」

家事はできるし、癒やし手としての腕もピカイチ。
これ程の優良物件が何故埋もれているのか。

「(性格だろうなあ……)」

悪い意味で性格が長所をカモフラージュしてしまっているのだろう。
でも、この性格は凄く気に入っているので、出来れば強く生きて欲しい。
そう願わずにはいられない秋の貧民地区表通りなのだった。

ティアフェル > 「あら、おデート? ダイレクトなお誘い……そんな真似ができるんじゃないの。クレスさん。
 いーよ、気晴らしになりそーだし。デートのひとつやふたつ立派にカマしてみせる」

 デートのお誘いなんて、自分相手には普通の人類はできないのだろうと思っていたので、云われたことが少し意外、と目を瞬いたが。
 ちょっとした食事やお出かけくらいなら、喜んで乗る。プラスアルファ、おめかし必須というのもなかなか良さそうに思えて軽くOKを。

「いや取り繕っても運搬は運搬でしょ…?
 現実の話をしないで! 理想の中で!夢の中で生きるの乙女は…!」

 キッ、と眼光鋭く、世間一般夢に満ち溢れたお姫様のイメージに水を差すんじゃないと彼の意見を拒否。
 夢くらいみたっていいじゃない、と涙目な辺り、現実を知ってはいる。

「……媚薬自分で調合してたの? 今クレスさんに対するヤバ味が増した。
 かわいいネグリジェでひたすらふかふか寝てる姿は女子らしいじゃないの……寝てて悪いか。
 じゃあ、これ見よがしにレース編み広げて、小指立ててお茶を飲み、かわいい小物を見つけては立ち止まって目を輝かせて見せるわ――でもそんなところに惹かれた男は付き合ってみると即座に幻滅するに違いない。次々にフラれるわたしかわいそう過ぎる」

 アピールして釣れた所できっと速やかに破局する。フフ…と遠い目をして乾き切った笑いを浮かべた。
 そのままでいーよって云ってくれる野獣使いが現れるのを気長に待った方がいい気がするがそんな根性のある野獣使いがいるとも思えぬ。色々考えが交錯して、はーっとまた重い息を吐いた。
 そうこうしている内に、結局姫抱き運送業者(仮)さんに連れられて貧民地区から平民地区へと移って行くのであった。
 その先は適当に一杯やって、夜も更けた頃に別れるのだろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からティアフェルさんが去りました。