2020/07/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「──む……」

人気も無ければ灯りもない、月光だけが差し込む寂れた夜の裏通りを、一人のんびりと歩いていた金髪の男は、
脇道から己の前に躍り出てきた影にふと、足を止めた。

『──ミャーオ』

それは猫だった。暗がりの中でなお黒く、逆に目立つシルエット。
その中で目だけが金色に浮かび上がっていて。

「……なんだ黒ぬこか。しかもお前平民地区でも稀によく会うヤツじゃねーか。
もうお馴染みすぎて顔すら覚えてしまう始末」

しかめっ面でそう言いつつしゃがみこむと、黒猫は気安く寄ってきて男の突き出した膝に
スリスリと顔や身体を擦りつけて来る。

「……愛想をしたってやるモン特になにもないから無駄だぞ。ってゆーか相変わらず
目ヤニまみれだなと呆れ顔になる。もうちょっと自分でキレイにすろ」

眉下げてフンス、と鼻を鳴らしつつ猫の顔を見やれば、目頭や目尻にこびりつく大きな
目ヤニが確認できて。片手で首根っこを抑えながら、もう片方の手を顔に添え、
親指でぺりぺりと目ヤニを剥がしてやってゆき。

エレイ > やがて目ヤニを取り除き終え、綺麗になった黒猫の目元を確認してフン、と満足気に鼻を鳴らし。
頭をひと撫でしてやれば、それで黒猫の方も満足したのかそそくさとその場をまた音もなく去ってゆく。
それを男はやれやれ、と眉下げて笑いながら見送り、ゆっくりと立ち上がって。

「……さてどうすっかのぅ。さっさとこっから出るべきかねぇ」

呟きながらなんとなく夜空を見上げる。
裏通りを照らす月は朧。こんな場所を通り掛かる物好きはめったに居ないであろう事を
考えれば、この場を離れてもっと人のいそうな場所にでも移るべきか。
適当に思案しながら、ざし、ざしと道を歩きはじめ。

エレイ > はてして男は、何処へ向かったのか──
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からエレイさんが去りました。