2020/07/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……ふむ」

貧民地区、娼館の立ち並ぶエリアで、男は一人、細巻を味わっていた。
口から煙を吐きつつ、客引きの誘い文句に、手のひらを振りながら。
なんとも、退屈そうな立ち姿。

「どんな女でもいい、ってわけでもねぇのよなぁ」

ぼけー、っとしつつ、そんなことを呟く男。
確かに、女遊びをしに来たのだが。
こと、ここに至って何かしっくりこない、という様子。

「まぁ、ちっとピンとくるまで。
 のんびりさせてもらおうかね」

とりあえず、こうしてのんびりしているのもいいもんだ。
などと自分を納得させて。男は細巻をゆらゆらと揺らしてみたり。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にジーゴ(番号215642)さんが現れました。
ジーゴ(番号215642) > 貧民街。客引きの目立つ通りで、
まだ少年と言えるようなミレー族が一人。
他の客引きと同じように客に声をかけている。
売れ筋ではないことは自覚しているからとにかく、あらゆる人に声をかけ続けていて。
先ほど、他の客引きの誘いを断って煙草を吸っている男にも近づいて声をかけてみようと。

「ねぇ、おニイさん。オレとか一晩どう?なんでもしていいよ」
近づくと身長差から見上げるような形になって。
にっこりと笑う口元から覗くのは、獣の尖った牙。
身なりの整い方は、まだ清潔な方。
狼の耳がピンと立って目立つ。

セイン=ディバン > しばし忘、としていれば。
声をかけられ、ちら、とそちらを見る男。

「……いきなりだなぁ、オイ。
 まだ若いだろうに」

視線の先には、明らかに若い少年ミレーの姿。
やれやれ、と。男はため息を吐きつつ。
少し屈み、相手と目線の高さを合わせる。

「一応、今日は女を食うつもりだったんでアレなんだがな。
 お前さんも、客を捕まえられないと困るんじゃないか?」

男にしては、珍しく。
優しく笑みを浮かべながら、相手に話しかける。

「どうだい? 一晩付き合ってくれる、っつ~んなら。
 ちょっと、話相手にでもなってくれねぇか。
 メシでも食いながらよ」

奢るぜ? などと言いつつ、男は相手に向かって首をかしげる。
本当に。この男にしては珍しい様子だ。

ジーゴ(番号215642) > 「若い?若いほうが高く売れる…たぶん」
返ってきた言葉に小首を傾げた。
普段、若い男を喰いたいという相手に商売をしていることが多いから、相手のような返答は予想外だった。


「ご飯たべる」
相手が目線を合わせてくれると、見上げるのは止めて。
食事の申し出に、頭を何度も縦にふった。
性欲よりも食欲がまだまだ勝っている育ち盛り。
食事であれば、痛いことも怖いこともないし、
第一、お腹が膨れる。
獣の耳は喜んで後ろに倒れて。

「なにたべる?」
支払うのが相手だから、内容も相手の希望のものにあわせようとして、問いかけた。

セイン=ディバン > 「そりゃ時と場合による」

イコールそれがすべてではない、と。
男は、相手に向かって静かに宣言するのであった。

「おう。そうかそうか。
 ほんじゃ、適当な店に行くとしよう」

食事、というものに反応したのか。
首を縦に振るのを見て、男はカハハ、と笑う。
そのまま、近くの酒場へと入り。

「そりゃこっちのセリフ。
 なんでも好きなもの頼みな。
 オレはとりあえず……黒麦酒があれば上等だ」

適当に選んだ店で、適当に席に座り。
メニューは相手にパスしつつ、男は酒とツマミを注文する。
そこで、男は相手に向き直り。

「あぁそうだ。自己紹介してなかったな。
 オレはセイン。セイン=ディバン。
 まぁ、冒険者だ。お前さんは?」

咥えながら移動していた細巻を靴の裏で消しながら。
男は、相手に名前を問う。

ジーゴ(番号215642) > 「もじ、よめない…」
相手に連れられるまま、近くの酒場へ。
渡されたメニューをしばらく眺めて。
食べるものを選ぶには十分すぎるくらいの時間眺めてから、小さな声で言った。

「なんか、お腹いっぱいになりそうなやつ選んでほしい。あと、オレも黒麦酒」
渡されて眺めるだけ眺めたメニューを相手に返した。
しれっと、自分も酒も注文して。

「セイン、覚えた。
オレはジーゴ。」
相手と同じように職業を言おうとして少し、沈黙する。
職業と言えるようなものを持っていなかったから。

「オレは、奴隷かな…最近買われたところ」
随分の沈黙の後に、辛うじて思いついた自己紹介を付け足した。

「冒険者ってなにする仕事?」
限られた知り合いしかいない少年は興味本位で尋ねた。
主人に、冒険者をやってみるのはどうかと言われたこともあって、冒険者というものに興味がある。

セイン=ディバン > 「おっと、マジか。
 ん~、どうすっかな」

文字が読めない、というのは想定していなかった男。
どうすればいいかな、と悩んでいれば。

「おぅ、そうか? じゃあ、そうだな……。
 面倒だ、適当に持ってきてくれ。
 ……って、お前さん、呑めるのか?」

近くを通った店員に適当に、と食い物を注文しつつ。
相手が酒を頼むのを、むぅ、と。
苦虫噛み砕いたような顔でたずねる男。

「おう。ジーゴな。覚えた。
 ……奴隷か。の、割には。
 客引きをしてたよな。店に所属してるわけじゃないのか?」

奴隷、と言われれば。微妙な表情になるものの。
すぐさま、表情を軽薄な笑顔に戻しつつ、そうたずねる男。

「ん? まぁ……。
 ぶっちゃけると、依頼があればなんでもする。
 便利屋って感じさ」

何でも屋、と嘯く人間もいるそうだが。
そんな良い物でもない、と男は苦笑する。

ジーゴ(番号215642) > 「てきとうって、何が来るかな…」
何が食べられるのかとワクワクしながら待っている様子。
文字が読めないこと自体は、奴隷から生まれた奴隷にはたまにあること。
ランクの低い奴隷は読み書き、計算などの基本的な教育も受けていない。

「酒?ふつうくらいには」
本人は普通に飲めると主張するが、そもそも
そんなに飲酒の機会が今まで多かったわけではない。
耐えられる飲酒量は普通よりも弱い程度だけれど。

「娼館とか?んー娼館には所属してないよ。フリーだよ」
フリーなどと格好つけて言ってはみたものの、ただの娼夫。
「ご主人様が奴隷商からオレを買ったから、オレがその金額を払うって約束」
手っ取り早く稼ぎやすい職業をしている理由を説明して。
貧民街で躯を売ったところで、収入はしれているけれど。

「便利屋さん?魔物とか倒すんじゃないの?」
勝手な想像で尋ねた。
もっと、きらびやかな内容を想像していた少年は
小さく首を傾げた。

「あー…」
酒のジョッキが2つと、いくつかのつまみが運ばれてくると。
ジョッキを手に持って、声を漏らした。
多分、酒を飲む前に『乾杯』とかいうものをするらしいけど、なにをどうしたらいいかわからず、不審な声を漏らして。

セイン=ディバン > 「まぁ、食えないものは来ないから安心しときな」

イザって時は、オレが食えばいい。
そう思いつつ、男は考える。
この国では、教育が十分に行き届いているとは言えない、という現実。
男も、冒険者になる前は読み書きが出来なかったのだ。

「ん、そうか。
 ……あんまり無茶するなよ?」

呑める、というのであれば。
止める権利は男にはない。
これも、イザというときは男がなんとかするつもりだ。

「そうなのか。まぁ、だとすればやり過ぎないようにしとけな?
 ……なるほど。そういうことか。
 まぁ、だとすればがんばらないと、だな?」

相手の事情を聞き、納得する男。
あまり目立ちすぎなければ、娼館の経営者たちに目を付けられることもないだろう。
その辺は、この少年も理解はしているだろうから、と考える男。

「そりゃまぁ、そういう依頼があれば、な。
 でもな。そういうスリルのある仕事ばかりじゃねぇのよ」

店の用心棒。ペット探し。浮気調査。
失せ物探しに薬草採集。
本当に。依頼次第ではなんでもやるのが冒険者なのだ。

「お、来た来た」

届いた酒とツマミに、男は一度会話を打ち切る。
そのまま、酒を手に持ち、相手を見れば。
ふっ、と小さく笑い。

「乾杯」

男は、そう言って、相手に見えるように。
ジョッキを掲げてみせる。
状況にもよるが。あまり気取らないのなら。
ジョッキやグラスを合わせなくてもいいさ、と。
目線で伝え、男は一気に酒を呷る。

ジーゴ(番号215642) > 「さいきん、ミレーとか奴隷の価格があがってるとかで、オレもそんなに安くなかったみたい…」
貧民街のルールみたいなものには疎いけれど
現状、娼館のお姉様方とは客層が違うからか、
目を付けられるまでには至っていない。
そもそも、彼がそこまで稼げていないからだけれども。
このままではいつ返済できるかもわからない状況ではある。

「かんぱい!」
相手の真似をしてジョッキを上げると、
酒を数口飲んで。
にがい…少しだけ顔をしかめるも、また数口飲んだ。
まだまだ麦酒を苦く感じるお子様の舌だ。

「ソーセージ!」
店員が持ってきた数枚の皿。
ソーセージの盛り合わせ。
粉チーズの散らされたサラダ。
ミートソースのパスタ。
少年は歓喜の声を漏らすと、それでもなお。
「たべていい?」
念のために確認をしたのは奴隷の習性。
既にフォークを握りしめて、品のない持ち方をして
ソーセージにフォークの先の狙いを定めているが。

「ふーん。冒険者ってなんでもできないといけないってことか」
相手の話を聞くところ、難しそうに思えて、溜息をついた。とにかく稼げるということが自分にとっては大切だけれども、冒険者ができる気はあまりせずにいて。

セイン=ディバン > 「へぇ、そうなのか。
 それはそれは……いいことを聞いた」

ふむ? と男は一瞬眉を吊り上げるが。
すぐに笑顔に表情を戻し、会話の方向性を変える。
この国のさまざまな情勢というのは。
あっという間に変わってくるものなので。情報は貴重なのだ。

「あいよ」

元気な相手の声に、くす、と笑いつつ。
男は酒を飲み、くぅ、と息を吐く。
目の前で相手が顔をしかめるのを見れば。
口元押さえ、くつくつと笑い。

「あぁ。麦酒には腸詰だよな」

他にもいろいろ合うものあれど。
ある種、王道なツマミ。
他のものを見つつも、男は相手の声を聞き。

「好きにしていいって言ったろ?
 食いな食いな」

相手の問いには、男は笑顔のまま。
気にしないから、好きにしろ、と言う。
男自身は、サラダをつまみつつ。

「ま、そういうことだな。
 でもまぁ、ある種の仕事を専門にしてるやつもいるからなぁ」

その辺りは、冒険者としての仕事の仕方次第だな、と。
男はそういいつつ。サラダと酒を交互に味わっていく。

ジーゴ(番号215642) > 「ミレーがお城の地下にあつめられてるんだってよ」
まるで、伝聞を話しているようにしているが、
自分も城の地下に連れ去られたことがあるが、記憶がひどく曖昧。
ひどいことがあったことだけは覚えている。

「いただきます…熱ッ」
ソーセージをフォークで突き刺して口に運ぶ。
思いの外熱くて、麦酒を流し込むように飲んだ。
肉汁がじゅわじゅわのソーセージと合わせると、
麦酒もおいしくて、再び麦酒を口に運んで。

「オレ、頭悪いし。大きくなったら体も売れないかもしれないし。冒険者もなんか大変そうだし。どうしよう…」
主人に愛想を尽かされる前に金も返さないと、
再び奴隷商に売り飛ばされても困るし。最近の悩みは仕事のこと。
さっきまで見知らぬ人だった相手だからこそ、漏らせるのかもしれない悩みを呟いて。

セイン=ディバン > 「……城の地下に?」

城、と聞けば。男の表情が陰る。
この男、出自のせいか。
貴族王族金持ちが大嫌い。故に、何かよからぬことをしているのでは、と。
いきなり疑ってかかっているのだ。

「おいおい、気をつけろよ?
 別段、誰にも取られたりしないんだからよ」

ソーセージを食し、軽く火傷したのでは? と思しき声。
男は、相手に落ち着くように言いつつ。
自身も、ソーセージを一切れつまむ。

「ふむ、そうだな……。
 やはりまずは、学問を修するべき、かな。
 なんだかんだ、読み書きできると選択の幅が広がるぞ?」

悩んでいる様子の相手に、男は男なりのアドバイスを送る。
何よりも。さまざまな書物を読み、自分自身で未来を選択する。
それができるのは、やはり強いぞ、と言いつつ。
男は酒のお代わりを頼む。

ジーゴ(番号215642) > 「ま、お前ミレーじゃないから大丈夫」
城の地下で何をされたかなんて説明したくないから、
この話は切り上げようとして。

「ゆっくりたべる」
誰も取ったりしないと改めて言われると
嬉しそうに笑った。
奴隷商のもとにいるときは文字通り弱肉強食。
食べ物を早く食べる癖はそのときのものだ。

「読み書きか…めんどい……」
彼にとっては喫緊の課題だった。
今日のように店のメニューも読めないし
何より、求人の張り紙も読めない。

でも、現状あまりに基礎ができていないから
勉強一つとっても慣れないからまだ苦痛に感じていて。

「お前はなんで冒険者になったの?」
不躾に根掘り葉掘り尋ねて。

ソーセージを幾つか食べると、次はスパゲティに手をのばした。
食欲旺盛にもぐもぐと食べ進めていく。

セイン=ディバン > 「まぁそうなのかもしれないが。
 ……ふむ……少し調べてみるかな」

ミレーの奴隷を雇っている男としては、聞き捨てならない話らしい。
表情こそ穏やかなものの、男は、調査を決意し。

「おう。そうしろそうしろ」

味わってゆっくり食え~、と。
男も笑いつつ、食事を楽しむ。
思えば、こうして他人と一緒に食事をするのも。
久しぶりなようなそうでもないような。

「そう言うなって。
 いつかそれが楽しくなるときがくる。
 オレもそうだったしな」

男も幼少期は、勉学が嫌いだった。
だが、いつしか、学び、成長することがうれしく思えていた。
きっと、相手もそうなる日がくる、と思いつつ。
一応、苦言じみたことを口にしておく。

「ん~? そうだなぁ……。
 まぁ、ぶっちゃけると。
 それしか生きる道がなかった、って感じだ」

相手からの問いには、穏やかな表情のまま、答える男。
別段、過去に隠し立てするようなこともない、と考えつつ。
あまりいやなことは思い出さないように、中途半端にぼかした返答。

ジーゴ(番号215642) > 「深入りはしないほうがいいよ…」
多くは語らないけれど。
城の地下の様子を思い出しては下唇を噛みしめた。

「ふーん」
彼からすると冒険者しか生きる道がない状況が
よくわからずに、首を傾げただけだった。

「お前食べる?」
スパゲティが残りあと少し。
もう遅いような気もするけど相手にも勧めた。
唇についたミートソースを舐め取って、満足そうに
にっこりと笑う口の端から覗く獣の牙。
野菜はそんなに好きではないから後回しにされているサラダ。

「勉強しないとずっとこのままだよな…」
安い金で一晩体を売る生活を続けていても
早々に限界が来そうなことは自分でもわかっている。

セイン=ディバン > 「ご忠告ありがと。
 ま、痛い目見ない程度にしとくさ」

深入りしないほうがいい。
即ち、城の地下には、危険があるということ。
それを聞き、男は内心高揚するのを隠すように、穏やかに言う。

「まぁ、今のジーゴに近い状況だった、ともいえる。
 即ち、他の選択肢を知らなかった、ということ」

ぐびぐびと酒を飲みつつ、そう語る男。
実際、他の職業選択について知らなかったからこそ。
冒険者になったというのは、あるのかもしれない。

「ん? あぁ、いや。
 食っちゃっていいぜ。
 オレぁもう、腹もいい感じだしな」

サラダとソーセージ、あと酒。
これが結構腹に溜まっているから、という男。
中年故に、胃腸が弱いのである。

「そういうことだな。
 まぁ、焦ることはないが。
 勉強はして損にはならないぞ?」

少なくとも、相手も色々と自覚している部分もあるらしいので。
男は、必要以上のことは言わない。
それが時に逆効果になることがある、と知っているからだ。

ジーゴ(番号215642) > スパゲティとソーセージの合間に
飲んだ酒が少しずつ少年の頬を染めていく。
酒が回ったのか少し表情が幼く、とろんとなって。

「ならたべちゃう」
相手の許しが出ると、頷いてスパゲティも食べきってしまう。これ以上頼みたい、と言い出さないものの、他のテーブルの客が食べているものをちらちらと眺めて。
まだ残っている麦酒に手をのばした。

「でもオレどうせ、ミレーだし」
獣の耳と目、牙などの特徴は隠しようがない。
欠伸を漏らすと、半ば諦めたような言葉を漏らす。
檻ごしの世界を眺めていただけの時間が長すぎて
自分のことを自分で決めるだとか、将来の夢だとか
そのようなものを全く想像できなくなっている子ども。
勉強に身が入らないのもそのあたりのことが関係している。

セイン=ディバン > 相手が食事をする姿を見つつ。
男は、空になったジョッキを置く。

「あぁ。食べきっちゃってくれ」

オレはもう入らん、と言いつつ。
なにやら、ちらちらと周囲に目線をやる相手に。
うん? と首をかしげるのだが。

「関係ないさ。
 オレの知り合いにも、ミレーだけど自分のしたい仕事をしているやつもいる。
 逆に、人間だけど、自由のないやつもな」

結局、最後は自分自身だ、と言いつつ。
男は、近くを通った店員に二、三声をかけ。

「さて。腹も膨れたし、オレはそろそろ帰ろうと思うんだが」

そう切り出した男は、机の上に食事の代金を置き。
更に、相手に向かって、金貨の入った袋を差し出す。

「一晩付き合ってくれたお礼だ。
 うけとってくれ」

男は至極マジメな顔でそういい、相手に金貨を渡そうとする。
同時に、店員がなにやら袋を持ってきて、それも少年へと差し出す。
……男が頼んだ、持ち帰り用の料理、であった。

ジーゴ(番号215642) > 「ごちそうさまでした」
ごちそうさまでした、は食事が終わりの挨拶と
習ってからちゃんと言うようにしている。

「自分のしたい仕事かぁ」
んーと考え込むことしばらく。
「酒とか料理とか作るのはけっこう好きかも」
たまに単発で働くことがある酒場のことを思い出して言った。
これでも知っている少ない選択肢の中の一つでしかないけれど。

「わかった」
相手が終わりというなら今日の食事は終わりだ。
おごってくれる相手の言うことは素直に聞く。

「マジで?ありがとう…」
驚いて、おずおずとお礼を言った。
食事代だけではなくて、それ以上の金もくれるらしい。
驚いて丸くなった獣の目とピッと立った獣の耳。
食事代も加味すれば、一晩体を売るよりも稼げたかもしれないくらいだ。
とりあえず、この金で紙とペンでも買おうかと思って。
にっこりと笑って、硬貨を受けとった。

「ご飯もくれるの!」
そのうえに、持ち帰り用の食事までくれるらしい。
ワクワクがあふれ出すような声を出した。
相手のことはいい人、と完全に脳内に刷り込まれて。
彼は尻尾がないタイプのミレーだが、
もし尻尾があったらぶんぶんと左右に振られているだろう。

「またねー」
店の外で、手を振って別れれば、どこかウキウキと
持ち帰り用に包まれた食事を抱えてどこかへ去って行くだろう。
これから勉強を真面目にするかというと、以前よりは多少するようになった程度なのだろうけれど。

セイン=ディバン > 「はいよ。って、オレが作ったわけでもねぇが」

つい、相手の言葉に返事をしてしまうが。
この場合、厨房の人間が反応するのが筋な気がした。

「そう。したい仕事。
 ……へぇ。だったら、まずはそっちの方面について勉強するのもいいんじゃないか?」

ぽん、と。一つ出てきたのは意外ではあるが、いいことであった。
人生、途中で夢やらが変わることもあるが。
まずは行動しなくては、というやつで。

「付き合ってもらったのはこっちだからな。
 ……ま、次に会ったときはまた。
 違うことにでも付き合ってもらうか」

具体的なことは 考えてはいない。
だが、色々としてみたいこともあるので。
男としては、なかなか面白い知り合いができた、と思っている。

「おう。じゃあな~。
 気をつけて帰れよ~」

男もまた、相手にそう挨拶して、帰路へと着く。
なかなかに興味深い、奇妙な出会い。
縁はおそらく……運とめぐり合わせがよければ。
続いていくことであろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からジーゴ(番号215642)さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からセイン=ディバンさんが去りました。