2020/06/07 のログ
番号215642 > ぽすぽすと撫でられると目を細めて気持ちよさそうに。彼が猫であればもう、喉がゴロゴロと鳴っているだろう。

「やっぱ、大きくならないとね。強くならないと」
成長への恐怖と成長への希望は成長期の少年の中でどちらも見え隠れしていて。

「オミくん?いいよ。オミくん」
付けてもらった呼び名を確認するように繰り返した。色々なヒトがそれぞれの呼び方で彼のことを呼ぶけれども『お前』『ガキ』以外の、自分自身を指す呼び方はどれも心地が良くて好きだった。

「そっか…これは高いんだ」
カンパーニュ、デニッシュ。並ぶパンの中でもキラキラして美味しそうなのは高いらしかった。少し残念そうな声を漏らす。手持ちのコインでは買えないだろう。

「ならこれ!」
大袋のパンの袋をいくつもいくつもじっくり見比べて。ようやく選んだのは一番たくさん入っていそうなもの。30ゴルドで足りるだろうか。
さっきもらったお金を我が物顔で店員に支払って。どうやら30ゴルドで足りたらしい。顔なじみの彼女に連れられてきた客だから少しおまけをしてもらっているかもしれないが。

「ありがとう」
ちゃっかり牛乳まで受けとると喜んで、お礼を言った。パン代も牛乳代も両方とも結果的に両方とも相手の豊かとは言えない財布から出ているにも関わらず、懐具合を慮る思慮深さは、パンへの喜びを前にどこかに行ってしまっている。

「ばいばい」
店を出ると手を振って別の方角へ。相手と別れると裏路地を入り組んだ方へ。パンと牛乳を握りしめて、路地の奥で腰を下ろすと大切にパンを食べ進める。幾つかのパンを食べると残りのパンを抱きしめたまま、路地で眠りにつくだろうか。

サチ > ――頭を撫でたり呼び名を考えたり、パンを選んだりしていると、弟がいたらこんな感じかな、とほのぼのと考える。
やがてパンの袋を抱えた少年とおやすみなさい、と手を振って、それぞれの眠りに就いてゆくだろう。
お財布は空っぽになったし、牛乳代を払いに行くことを考えればむしろマイナスになってしまったが、その分なんだかほこほこした気持ちにはなった。
明日も頑張ろう、と空っぽの財布を満たす為に気合を入れて今日は眠るのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からサチさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」から番号215642さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/泥棒市」にリズ・リナさんが現れました。
リズ・リナ > 夜の市場。
スラム地区で不定期に開催されるそれは、出所も値打ちも怪しい品ばかりだ。

「安いよぉ」

ガラクタを置いたシートの上に己も膝を抱えて座り、売り込む声を上げている少女が1人。
否、傍目には少女かどうかも怪しい黒ずくめの姿であった。
頭巾の間から眼鏡が見える。

リズ・リナ > 何人かはガラクタを見ていく客もあり。
この地域について幾つかの情報を仕入れたら、店を畳んで帰路。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/泥棒市」からリズ・リナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にシアさんが現れました。
シア > 夜の帳も落ちた貧民地区の路地裏
娼館のある通りからも離れたそこはひっそりと静まり返っていて、人の気配は感じられない。
立ち並ぶ家々のどれもが廃墟ばかり。
窓は割れ、屋根は崩れ落ちているのが星明りの中でも見て取れる。

そんな廃墟の中へと入って行く小柄な人影。
灰色のローブを纏ったその影が、手に大きな紙袋を抱えていたのが見えるかどうか。

廃屋ばかりの建物を抜ければ、そこには朽ちた教会が姿を見せる。
周囲の建物とそう変わらない荒れ具合ではあるけれど、辛うじて屋根だけは落ちてはおらず。
雨風を凌げるだけの役割くらいは果たせそうなもので。
ローブの人影は、その外れかかった扉の前で立ち止まり。