2020/03/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にルインさんが現れました。
ルイン > 王都内で受ける配達の仕事は遠出の必要がなく楽な仕事の一つ。
問題は行き先がどこと言う事だけ…。
今回の行き先は貧民地区で面倒と言えば面倒であったが……。

「どうもありがとうございます、また御贔屓に」

珍しく揉める事もなく荷物を引き渡すことが出来て思わず満面の笑み。
商品引き渡しの割符も受けとり後はギルドに報告をすれば報酬になる。
その事につい足取りも軽くなり路地裏を楽し気に歩いて進む。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からルインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にサチさんが現れました。
サチ > 「きゃぁあぁー! 明日バイト代出るんでー! ちょっとー! 待ってー! くださいぃぃぃぃ!!」
貧民街の路地の一つを猛ダッシュしながら、後ろを追って来る借金取りたちに向かって叫ぶ債務者が一人。
娼館街を駆け抜け、酒場通りをひた走り、時々道の真ん中で寝ている酔っ払いを踏んずけてしまったりしながら、「金返せオラァ!」と怒鳴って追ってくる取り立て屋から逃げる、逃げる、逃げる。
一応バイト代が入るたびに細々と利子からという最悪に要領の悪い返済を続けていたが、今日回されてきた取り立ては質が悪く、今日払う金がないのを承知で返せないなら身体で払えと言う連中。
捕まってしまえば終了だ。
なので、今、人生最高の走りを見せて夜の街を突っ走っていた。
「そっちのお仕事無理ですできません向いてませんー!! てゆうか、返済日は明日なのにいぃぃぃぃ!!」
ぜいぜい言いながらも体力はある方で、地の利があるのかどうにか今の所追いつかれずに済んでいるが――時間の問題かも知れず、徐々に距離が詰まってきていた。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイエナ・イズバックさんが現れました。
イエナ・イズバック > ドン!


サチは狭い路地を曲がり際、偶然そこに立っていた人物の胸にぶつかった。
その胸は大きく、弾力のある谷間で跳ね返される。
「何だ? ちゃんと曲がり角を確かめながら走りなよ」
ぶつかられた事に特に怒りもなさそうな調子の声は女性のものだ。
そこにいたのはミレー族の身長180ほどの白茶色の体毛で覆われた女性だ。珍しいハイエナ系だった。
半裸の蛮族風のビキニアーマーだけを身につけた女性は、路地では引っかかりそうな大太刀を背に負っている。
彼女――蛮勇のイエナはぶつかった事自体は気にせず、自分の頬を指で掻いている。
と、そこで立ち止まっているサチに追いついてきた借金取りに気がつく。
借金取りの人相の悪い顔。
「ははーん」
それだけで何かを悟った様だ。
イエナはサチの身体をよけて彼女と借金取りの間に入ると、姉御肌の睨みと大胆不敵な笑みをそいつらに向けた。
「女一人に何か大勢でたかってるんだい? 用件によれば、ちょっとあたいが相手になってもいいだけど」
イエナはさりげなくウインクをサチに配った。

サチ > 「きゃあっ?!」
角を曲がった瞬間、何か柔い物に跳ね返されてそのまま、後ろに転んで尻餅をついてしまった。
顔を上げると見上げるような長身の女性……?
特徴的な見た目に軽く瞠目したが、すぐに粗相に気づいて頭を下げ。
「ご、ゴメンナサイ! 急いでて、私これで…!」
慌てて立ち上がって追いかけてくる足音が近づくのに、また走って行こうとしたが、
「えっ、あっ、あの…! あの、大丈夫、ですからえっと、いいんです、本当に…!」
自分と借金取りの間に割り入る相手に焦ってぶんぶんと首を振った。
いきなり知らない人に迷惑をかける訳にもいかないし、彼女は見るからに腕に自信があるようだが、それだけにこの借金取りさんたちに怪我をさせられてはそれはそれで、後で余計に困ってしまう。眉を下げて、荒っぽい真似はしないように止めようと。

イエナ・イズバック > 「フムン」
イエナは自分がかばった女性は荒事を出来る限り避けようとしてるな、とその態度から悟った。
しかし、一度かばったからにはここで退くのは女がすたるというものだ。それに何より、この人相の悪そうな男達が自分が去ったら彼女に何をするかは大体わかる。
「こいつら相手に武器はいらないな」
イエナはそれだけ言うと、思いきっり眼つきの悪い眼で男達をギラリと睨んだ。
ここで逃げなかったらどうなっても知らないぞ、という風に。
あくまでサチをかばう気でいる。

サチ > 「あっ、あ、本当に駄目です、やめて! やめて下さい…!
この人たちに手を出さないで下さい! 後で私借金増やされちゃうー!」
せっかく庇ってくれるのは、気持ちは本当にありがたいのだけど、この連中に何かあったら、この場はどうにかなっても、その後どうなるかが怖い。蒼褪めて彼女を止めようと、必死にその腕を掴もうとして泣きそうな顔で首を振り。
男達は逆に、ここで債務者を追って怪我でも負わせてくれれば、後で責任を取るように迫って身売りでも何でもさせられる。殴られるの等は逆に好都合だと言うように、睨まれたぐらいでは一歩も引かない。
「い、行きましょう…! ね! お願いですからッ…! 誰かが怪我をしたら困るんですー!!」
半泣きで、この女性が引かないなら一緒に逃げ切ってしまえ、とそれしか思いつかずに、ぐいい、と腕を引いて走り出そうと。

イエナ・イズバック > 「そうか……なら、こうだな」
イエナは懇願する少女を尻目に、自分の大太刀をに収めたまま、背中から外し、その長い刀身で地面を思いっきり掘り返した。
その土くれが人相の悪い男達の顔にかかり、相手は思わず、顔を手でかばう。しかし、ただの土くれだ。怪我などは負うまい。
そして、その隙にイエナはサチをお姫様抱っこで抱え上げるとそのまま走り出した。
躍動する筋肉。イエナはまるで球技の選手の様に、大事に抱えた彼女の身体を運びながら道を走り始めた。
彼女の疾走に前にいた人間達は驚いて道を開ける。
男達を置き去って、かなり走り続けたイエナは抱いている相手に話しかける。
「何処まで行く? 答えなければこのまま、適当な宿屋に連れ込んじまうぞ」

サチ > 「えっ? えっ?! ええええぇぇぇぇ!!!?
そうきたかあぁぁぁぁ!!?」
ここは逃げるが勝ちなのだ、と説得に応じてくれたかと思ったが、太刀を外して地面を掘り返した奇行に「何が起こった…?!」と目を見開いている内に、横抱きにされて。まさかのダッシュ。
ぎゃあぁぁ!とそのスピード感に悲鳴を上げながら、運び走られていたが、そろそろ追っ手も完全に撒いたようで。
「こ、ここで! ここでスターップ! 止まってぇぇぇえ!!」
運転手さんここで降ろしてください!と話しかけられた地点で慌てて止めた。

イエナ・イズバック > 止まってえ、という声にイエナは急ブレーキをかけた。
ここは貧民の人人が利用する井戸がある小広場だ。ここを中心に道は放射状に幾つかに分かれている。
「止まれ、って言うんなら止まるけどさ。やがてあいつらは追いついてくる。事態は何も好転しないよ」
抱きかかえていたサチと一緒に持っていた大太刀の鞘を背中に戻す。
サチの身体をやさしく降ろす。
「じゃあ、あたいがここであいつらに啖呵切ってる内にどれか手ごろな道に逃げなよ。……何、本当の喧嘩なんかしないよ。あいつらと時間稼ぎのにらみ合いだけはするだけさ。あんたが道のどれかに入ったら、もうあいつらはあんたの逃げた方角が解らない。その隙に今夜は逃げ切りな」
イエナは手をこまねいて追跡者が来るだろう道を見つめた。にらみを利かす。
「じゃあ、逃げなよ。バイバイ……おっと名を教えとこう。あたいはイエナ。しがない冒険者さ。……さあ、逃げな」

サチ > や、やっと止まった……と何故かへろへろしながら、広場で降ろして貰って胸を抑えた。
「有難う御座いました…っ、ご親切にどうもすみません」
深々と頭を下げて、そして今の内に再びダッシュでバイバイ借金取りしようと思っていたが、
「だって、でも! これ以上ご迷惑は…!
あの、私なら大丈夫です! 慣れていますから! どうにかなりますできますよ!」
足止めしてくれるという言葉に恐れ多いとやっぱり首をぶんぶん振り。何も彼女があいつらと揉める理由など何もないのだ、思いとどまらせようと声を掛けて。
「あの!私はサチです。で、サチ足超早いんで! 絶対絶対逃げ切ってやりますから! だから、イエナさんも、私の事は適当な方向に逃げたって言っておいて貰えれば、それだけで充分なんで!」
睨み合うまではしなくてもいけるんで、と。万が一にも荒事に発展しないようにとハラハラしながらも、追っ手はまた近づいてくるようなので、再び広場の右端の道へ向けて走って行った。
「有難う御座いましたあぁぁ! 無茶しないでくださいねー!」
ででででででっ、と土埃を上げて貧民街の路地をひた走る前向き貧乏止まらずに。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からサチさんが去りました。
イエナ・イズバック > 「サチか……さて、じゃあ、彼女に言われた通り、サチが逃げたのと違う道を教えてやればいいんだな。自分としては今日、ギャンブルで負けた憂さを晴らしてやれるちょうどいい相手だと思ったんだけど……今日は喧嘩はなしだ」
しばらくすると人相の悪い借金取りたちが追いついてきた。
やい、彼女は何処へ行ったんだ!? あいつとお前はどうゆう仲だ!?と聞かれたので、
「ナンパしたんだけどふられたんだよ」とだけ答え、サチが逃げたのと違う道を教える。
男達は素直にサチが逃げたのと全く違う道へと走っていった。
「さあて、今夜はこれで暇になったな。娼婦でも買うか」
イエナは夜の道を、サチが行ったのとも男達がいったのとも違う方角へ歩き出した。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からイエナ・イズバックさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」に現世迷いさんが現れました。
現世迷い > ふと目を覚ませば、また知らない風景。
薄汚れた雑踏。
目つきの悪い浮浪者達。
一体いつの間に、ここへ流れ着いてしまったのだろう。

「え、えっと………
 ここは、何処で……私は、何をしに……
 えっと……えっと……」
ぶつぶつと呟くのは、見た目は可憐な少女。
その頭には悪魔の様な角、尻には尻尾まで生えている。

今まで虚ろな表情で彷徨っていた少女だが、
急に正気を取り戻したかと思えば、
回りが見てて不安になるほど狼狽え始める。

「……思い出せない……思い出せない……
 ……私は何をしてた……私は誰だ………。」
頭を抱えながら、あてもなくここではない何処かへと向かう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にネメシスさんが現れました。
ネメシス > 「「おい、止まれ。」」

あてもなくうろついていた女は、柄の悪い男に呼び止められる。

「「ここはバルバロ騎士団が見回り中だ。
お前、どこの誰だ。」」

人相の悪い男たちがわらわらと集まり、女を取り囲む。

「どうしたの?」

遅れてやってきた、身軽な格好の女。

角の生えた女の顔を覗き込んで。

「貴女、珍しい格好をしているわね。
どこから来たのかしら?」

現世迷い > 「ひっ!!?
 ご、ごめんなさい、ごめんなさいっっ!!?」
屈強そうな男たちが自分に声をかけ、取り囲んでくる。
ごめんなさい、と何度も口にして許しを請う。
……何故、何に対して許しを請うているのか、それも分からないまま。

すると、男たちの群れを分け入って、
一人の女性が現れた。
彼女は、自分に何処から来たのか訊いてきた。

「わ、私は……
 うぅ……私は……えっと、えっと………」
幾ら思い出そうとしても、幾ら考えても、自分が何処から来たのか思い出せない。
怯えて口ごもる少女は、きっと彼等には相当怪しい人物に見られてしまうだろう。

ネメシス > 通常、バルバロ騎士団に捕まった女たちは大帝が食い物にされる。
この女も見目形が整っており、本来ならばそうなる運命だったのだが。

「う~ん、自分が何者かわからないのかしら?
ちょっと紅茶を持ってきてくれる?」

この日のネメシスは機嫌が良かったのか、いつものように尋問を始めることもなく。
団員の一人に紅茶が入ったカップを持ってくるように指示を出す。

ネメシスの態度に、団員隊も態度を軟化させていく。

飲み頃の温かさの紅茶が入ったカップを両手で差出す。
団員の一部は、万が一のことがないように目を光らせているが。

「急いで思い出さなくてもいいわ。
でも、貴女の格好、ここではあまりよくないわよ?」

あからさまに角を生やしている少女の姿に、誰しもが魔族と勘づくだろう。
しかし、それにしては魔力の類を碌に感じ取れないが。

「私は聖バルバロ騎士団のネメシス。 貴女、どこか行くところあるの?」

現世迷い > 「あ、あぅ……?」
差し出されたのは、温かい液体が入ったカップ。
それを手にすれば、ほんのりと落ち着く香り。

恐る恐る口をつけて喉を潤す。
どこか懐かしいその味は、
きっと以前に飲んだことがあるのだろう。


「私の、恰好………?」
自分の恰好が、何かまずいのだろうか。
そもそも、自分はどんな姿をしているんだっけ……。
あまりにも、記憶が混濁している。
あまりにも、「喪失」しすぎてしまった。

「……行く、ところ……
 ……えっと……あの……わ、分からない……。」
何処へ行くつもりだったのかも、覚えていない、
いや、そうだった。
もともと、行く当てもなく彷徨っていたのだった。

紅茶の香りで少し頭が落ち着いたのか、
断片的な記憶が浮かび上がってくる。

「あなたは、ネメシス………
 ……私は、『現世迷い』……」
その名は、確か自分の本当の名前ではない。
私をこんな風にした奴等からつけられた、蔑称だったはず……

ネメシス > 「お口に合うかしら?」

恐々と茶を飲んでいる女に笑みを浮かべる。
今日は余程機嫌が良いのか、終始柔和な態度であった。

「ほら、貴女って頭に角が生えているじゃない。
それって魔族の人に多い特徴なのよ。
ここで魔族と言えば基本的に狙われる立場になるから気を付けてね。」

本当は騎士団がいる限り、種族に関わらず襲われるのであるが。
自分たちが正しい行いをしていると思い込んでいるネメシスには
そこまでは思い至らない。

「あら、貴女行くところがないの?

う~ん、それに長い名前ね。
とりあえず、現世って呼ぶわね。

ねえ現世、行くところが無いなら今日は私の家に泊まらない?
温かいお風呂もあるわよ?」

恐らく、本当の名前ではないだろうとは団員も含めてその場の誰もが察するが。
記憶を失っている様子の相手に聞いても仕方がないとだれも口にしない。

女が大人しくついてくるのであれば、富裕地区にある騎士団の屋敷へと案内するだろう。