2020/03/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアカサギさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアカサギさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアカサギさんが現れました。
アカサギ > 「……フンフン」

お天道様もそろそろ高くなってきた、朝と昼の真ん中くらいのお時間。
アタシは、貧民地区のとある家の屋根に上って、空気の匂いを嗅いでいた。

「……うん。やっぱりそうだね」

数十秒くらい。そうして空気の匂いを嗅いだら、地面へと降りて。
声をかけてくる家の人に挨拶をする。

「この感じだと、もうちょっと天気は持つかもね!
 お買い物とかに出かけるなら今のうちだよ!」

天気を気にしていたおばあちゃんにそう教えてあげれば、お礼に、と。お菓子をもらえた。
アタシはそれをかじりながら、貧民地区をうろうろとお散歩する。

「さてさて。今日はどんなことが起きるかなぁ?」

アタシはアカサギ。この貧民地区を中心に活動するフリーの殺し屋だ。
お金さえもらえれば、どんな依頼だって受ける。ただし、アタシが気に入った依頼じゃなきゃお断りだけど。
貧民地区には、いろいろなトラブルが転がっている。
だから、アタシは金稼ぎの手段として……一応名目上は冒険者になっている。
けど、アタシは自分のスキルに誇りがある。
簡単な依頼とか、くだらないロマンとかを夢見て日々を無駄にしている冒険者たちなんかとは違うのだ。
そう内心宣言しつつ歩く貧民地区は。いつもどおり、ごちゃごちゃしてて、あんまり清潔じゃないし、気分のいい場所でもなかった。

アカサギ > お決まりの散歩ルートを歩いていると、野良猫がいた。
近づいたらおなかを見せてきたので、ちょっと撫でさせてもらう。

「お前、こんな場所で暮らしてるのにモフモフだなー」

きっと逞しく餌を貰ったりしてるのだろうなぁ、なんて思いつつ。
もふもふ。猫はなんだか気持ちよさそうに『オァァァァ』なんて鳴いた。

「悪いけど、アタシお散歩の続きがあるから。
 また今度ね~」

もっと撫でろ、なんて言いたそうな猫にそう言って散歩を続ける。
正直、アタシは貧民地区が好きなわけじゃない。
でも、この地区にはなんだか、変に活力があるのも分かる。

「ま、将来的にはもっと裕福なエリアで暮らしたいけどねー」

そのためにも、お金をためたり。
お金持ちと知り合ったりしなくてはいけないのである。
なので、アタシとしてはこのお散歩は大事なお仕事なので。
あんまり野良猫とばかり遊んでもいられないのだ。
そんなアタシの背中に、猫は『うぅぅあぁぁおおおお』と不満そうに言うけど。
アタシはそれを無視して散歩を続ける。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にヴィルアさんが現れました。
ヴィルア > 少女がお気に入りの散歩ルートを歩いていれば。
そこに、『いつも通り』ではない集団が居た。
集団、というと少し語弊があるが…3人の人影だ。

その内2人は昼間でも薄暗い貧民地区に溶け込むような黒い服。
1人は、貧民地区では全くと言っていいほど見ない細やかな刺繍と上等な布で誂えた衣装。

「ふむ………。どうしようもないか。…ただ、厄介だな…」

襤褸屋の壁に凭れかかった、貴族服の男は何事か悩みながら黒服二人と話をしている。
黒服二人は、最低限の受け答えを貴族の男に返していて。

内容は聞き取りづらいが、差し迫った話のようだ。

『…………なんだ。お前は』

少女からしてみれば、その集団の方がなんだ、だろうけれど。
護衛の一人が、少女の方をじろりと見る。

「そう威嚇するものでもない。ああ、すまないねお嬢さん。
少し、込み入った話をしていてね。どうか耳を塞いで歩いていってくれるかな」

貴族らしき男は、逆に優し気に笑ながら、少し屈んで少女に話しかけ。
秘密の話であるのに、こんなところで話していることから、よほど喫緊した状況であることは予想もできそうだ。

アカサギ > 「おりょ?」

猫と別れて曲がり角を曲がる。
するとそこに、三人の人間が立っていた。
こんな時間の貧民地区で立ち話をする。
そんなヤツ等はそうとうレアな存在である。

(……っていうか、一人はどう考えてもここの人間じゃないじゃん)

物見遊山で貧民地区観光にでも来たか? なんて思うけど。
アタシとしては通りたい道に立たれていてはジャマでしかたない。
とりあえずは、三人が立ち去るのを待ってたんだけど。
なんか、黒服の方がアタシに威圧的に接してきた。

「天下の往来で立ち話。通りがかる通行人を脅しつけるような口調。
 そちらがどんな立場か知らねぇが、そんな無法が通じると思うてか!
 それ以上偉そうにするなら、この地区の流儀に従って痛めつけるぞべらんめぇ!」

思わず、イラっとしてしまったので反論してしまう。
が、すぐに貴族っぽい男が声をかけてきたので。
アタシは一度咳払いし、男のほうを見る。

「……ふんっ。飼い犬の躾くらいちゃんとしときなよ。
 ……ねぇアンタ。何か困りごと?
 良ければ、話を聞かせてみない?
 アタシ、一応冒険者っぽいことをしてるから」

少しは手助けできるかもよ、と言いながらウインクしてみせる。
もしかしたら、これは儲け話かもしれない。
アタシとしては、別段ここで『とっとと去れ』とか言われても痛くもないし。
ちょっとでも面白そうな話なら、聞くだけ聞いてみたい。

ヴィルア > 『――――――――……』

護衛の男は、表情すら変えず。
少女に声をかけたものの、まるで無機物のようだ。
少女が反論してきても、眉根すら寄せず、ただ視線を優し気な貴族の方に戻す。
貴族に指示を求めているかのような態度だ。

「いや、面白いじゃないか。私が誰かも知らずにこれほど突っかかれる無鉄砲さは中々いないよ」

く、く、と貴族は笑いながらひらひら手を振る。
その後、再び少女に視線を戻して。

「この地区でこれほど活力に溢れた相手は久しぶりだ。
冒険者。冒険者ね……」

少女の自己紹介を聞いて、ふむ、と顎に手を当てて少し考え込む男。
その提案に乗ったらどうなるか、どういう影響があるかを考え。

「済まない。私は冒険者という職には酷く疎くてね。
依頼や、食料の提供をギルドに行ったことはあるが、実態についてはほとんど知らないんだ。
だから…」

どうせここは無法の貧民地区。
何か問題が発生すれば、この少女を消すなりなんなりすればいい。

縁者程度はいるだろうが、大きな組織に多大な影響を与えるとは考えにくい。
彼の考えでは、それほど影響がある人物なら、これほど護衛に対して無策に突っかかってはこないから。

「君は、どこまで、何ができる?その売り込みによっては、君を雇ってもいい
もちろん、この紋…と言ってもわからないかもしれないが…。…私の家に誓って、無暗に君の情報を広めたりはしないと宣言しよう」

ぴ、と彼が自分の服の襟を引っ張れば。
男の顔に蔦が絡んだ貴族の紋章。
見たことがあっても無くても、それは確かに、この街の富裕層の証。
少女の安心感を誘いつつ、情報を引き出そうとしよう。

アカサギ > (ぁんだァ? 高慢ちきに声かけてきたかと思えば。
 今度はだんまりかぃ)

てっきりかかってくるかと思っていたのに。
黒服どもは黙って貴族男のほうを見ている。
なんとも、その様子がまたとっても面白くない。

「悪いけど、アンタがどんだけ凄い人でも。
 ここじゃあ外様だろ? それに、アタシは教えてもらったよ。
 このお天道様の下じゃあ、人間はどいつもこいつも平等な命だ、ってね」

もちろん、それぞれに役目だとか、位だとかの差があるのはしってる。
だけど、命の重さは平等なんだ、って。アタシはそう教わった。
なので、相手がどんなヤツだろうと臆する必要も無い。

「そう? この地区はいつだってギラギラ輝いてるやつらばかりだよ?」

どいつもこいつも、金とか肉欲とか自尊心とか。
そういうのを満たそうと必死なので。活力……っていうか欲望は渦巻いているのが貧民地区なのだ。

「まぁ、貴族の人はあんまり冒険者に関わらないだろうしね。
 ……ま、いいや。じゃあ改めて自己紹介」

相手の言葉はとても納得できるものであったので。
アタシは、近くの木箱にとんっ、と飛び乗って一回転。
びしっ、とポーズを決めてみせる。

「ここで会ったのも何かの縁! どうぞ覚えて帰ってくだせぇ!
 生まれは貧民地区、育ちも同じく!
 ちょっとした反骨心から、拾われた家を出て。
 東東への旅カラス! 覚えた技は忍の術!
 戻って手に職、殺し稼業。フリーの殺し屋、アカサギと申しやす!
 ……一応、殺しの腕には自信あるよ」

昔東の国で修行してた時。聞いた小話というか、小唄というかはこんな感じだったと思うけど。
なんか、ちょっとしっくりこないなぁ。まぁいいや。
とりあえず、相手に自分のことを語り終えたので、木箱からぴょんと飛び降りる。

ヴィルア > 黒服は、貴族の男を守るように、ただ貴族の男の少女に向けられる視線は邪魔しないような位置を取り。
ただ、彫像か何かのように待機している。
声をかけたのも、男に対しての危機を事前に察知しようとする動きだったらしい。

「なるほど。良い教えを受けているようだ。
ああ、奥底にそういった欲望を抱えている者は多いだろう。
しかし、君のように表にしっかりと出すのは珍しいと思う」

彼の視点からすれば…輝いているとはいっても、それはチャンスがあれば、というだけだ。
逆に、組しやすそうな相手、状況…そんなものに頼らずにこちらに意見を述べてくる少女は貧民地区の人間とは違って見えた。

「………。…………。」

名乗りを上げるため、身軽に木箱に乗って一回転する少女を見て、身が軽いのだな、と思い。
じ、と…名乗りを上げてもしばらくの間、ポーズを決める少女を見続ける。
それは白けたというよりは、目の前で起きたことを飲み込み、それがどういう意味なのかを考えている沈黙。
木箱から少女が飛び降りても、何かを考えている。
少女にとっては気まずい時間だろうけれど、男も、こういった自己紹介を受けるのは初めてだった故に、しっかりと飲み込むために時間が必要なのだ。

「――――……。なるほど。アカサギ。それは覚えたが…
シノビ、とは東からの絵物語にあったあれか…ふむ…………」

よく考えなければならない。忍びの技と言っても、彼には実感が湧かない。
身軽ではあるようだが、まだまだ底が知れない。浅いかもしれないし、深いかもしれない
しかし、技術は抜きにしてフリーというのは都合がいい。どんなしがらみもないというのは、とても良い。

「失礼。名乗られたら、名乗り返さなければならないね
私はヴィルア・リルアール。この街の食料などの流通の一部を取り仕切っているものだ。
とても特徴的な紹介をしてもらったのだ、話程度はする価値があると判断するが…、君は、依頼内容について情報を漏らした際に責任を取れる覚悟はあるかい?
例えば、その命や商売道具…君の場合は手足などを持って、だ。もちろん、成功した際にはそれに見合う報酬を約束することは前提条件として。」

相手の自己紹介は、彼の好奇心をくすぐるものだった。
東から、というのも珍しいし、伝聞や書物でしか知らないシノビ、というのも興味がある。
後は、仕事についてだ。幾人もの商人と腹の探り合いをしてきた洞察力を持って、相手の覚悟を確かめようと。
同時に、それほど重く、重要な仕事であることを告げる。

アカサギ > アタシとしても、相手がつっかかってこないのなら。
別にこっちからケンカを売り続けることもない。
むしろ、この場で冷静になっている貴族男と話をするほうが建設的だと思う。

「貧民地区育ちはタフなのさ。
 ……そうかな? まぁ、そうかもしれないけど。
 まぁ、褒められてると思っておこ~う!」

多分褒めてはないんだろうけど、ここはバカなフリをしておこう。
相手に変に警戒されても、良くないかもしれない。

「……。…………」

自己紹介をし終わって、これまたえっへんなんて胸を張って見せるのだけれど。
……なんでしょう、この沈黙。あれかな? 東の地のスタイルはおきに召さなかったかなぁ? なんて。
いやもう、これは完全にスベってしまったのでは!?

「……おほん。ま、まぁ。そういうこと。
 アタシは忍者のアカサギ。こっちでは暗殺者、っていうか殺し屋な訳よ」

明らかに相手にウケなかったのは一目瞭然なので。
一度咳払いをして、相手に向き直る。
なんだろうか。渾身のギャグがウケなかったときはきっとこんな感じの気まずさがあるんだろうなぁ。

「ヴィルア・リリアールね。ごめん! 聞いたことないや!
 ……それって、アタシのことナメてる?
 アタシはこう見えてもプロだよ。自白剤や魔術に対する訓練も積んでる。拷問だってそうさ。
 アタシは依頼内容を口外しない。絶対に、だ。
 もしもそんなことが、万が一にもないけど。もしもあったら。命だってなんだってくれてやる」

相手がマジメに語るなら、マジメに応えるのもプロだ。
残念ながら相手の名前とかは聞いたことないけど、凄い人だってのは分かった。
ただ、アタシとしては。ちゃんと修行したのに、情報を漏らすかも、なんて思われたのは心外。
こう見えても、ちゃんと免許皆伝の腕前なんだから。

ヴィルア > 少女の方から何もアクションが無いなら、それこそ護衛はただの置物のようだ。
視線だけは向いているけれど、特に話に入ってくる様子もない。

「ああ、覚えておこう。寝首を掻かれないようにね」

実はその自己紹介は斬新で面白い、と思っていたのだけれど。
腹の探り合いを常とする彼としては、どうしても表情に出しにくい。
愛想笑いのようなそっけないものになってしまったが、仕事の話をする以上、ある程度は興味を引かれている。

「知らなくても構わないさ。私の仕事は、裏方に近いからね。
…そこまで断言するからには、余程自信もあるのだろう。
簡単に確かめる必要はあるが……。渡りに船、か…」

名前を間違っているがそこは気にせず。くすり、と笑って
あっさりと、というわけではない。
その眼には、少女の外見には似つかわしくない自負が見て取れる。
嘘やごまかし、背伸びした雰囲気は感じ取れなかった。

「いや、ナメてはないさ。ただ、私の立場上、目に少しでも嘘などがある者を雇うわけにはいかない。
それは、戦えない私の最低限の嗜みだ。…君の覚悟は理解した。だから私の事情も、理解してくれ」

返す男のまなざしも、切った張ったではない場所で命のやり取りをしてきた者の視線。
少女といえど、更にミレーといえど侮らず、真剣に相手を見極めようという思い。
それを伝えながら、今度は微笑みを浮かべて。

「いいだろう。君を雇おう、アカサギ
恨みや面倒ごとを買いにくい様動いているが、それには限界がある
…着いてきてくれ。今日すぐに、というわけではないが、してほしい仕事の説明をしよう」

実力が万が一足りずとも、これだけの矜持があれば、信用には値する。
任務を、何としてでもやり遂げるであろう気迫を感じ、彼は仕事の依頼をすることにしたようだ。

本来は、多少ここで護衛と話し合った後、向かうはずだった高級な装飾が付いた馬車が止まる通りまで、案内しよう。
護衛、ヴィルア、護衛、少女の順に暗い通りを歩いていき。
馬車の中は、ふかふかの布地で椅子が造られており、非常に座り心地が良い。
当然、彼の左右には護衛。彼の正面に座るように、少女に促して。

「早速だが…私の商売敵を一人、殺して欲しい。
どうにか、金や交渉で片づけようとしたが、どうにもならなくなった。
更に、こちらも警戒されているのか、我が商会の面子は調べられているようでね。
外部の人間が必要、というわけだ。さらに都合のいいことに、そいつは女好きでね
少女でも女性と呼ばれる年齢でも、気に入れば囲い込むそうだ。細かい方法は任せるが…成功率が高いのは、ベッドでの暗殺だろう」

そこで一つ、間をおき。

「私も伝聞でしかないが、シノビというのは男を悦ばせる術にも長けていると聞く。
プロだというのなら、そこもぬかりはないのだろうね」

挑発とも取れる言葉だが、これも情報収集だ。
目に宿る信念は感じたが、絶対にできないことを依頼しても、それは徒労だ。
相手の能力を把握してこそ、上手く使うことができることを、彼は身に染みて知っている。

アカサギ > 「寝首は……掻いたり掻かなかったり?」

貧民地区の人間については、ちょっと一言では語れない。
悪いやつとか危険なヤツは多いけど。
そうじゃないやつもいるから。ただまぁ、貴族達を嫌ってるヤツはおおいかもだけど。

「へぇ~。大物な反応だね。
 自信がなきゃフリーで喰っていけないって。
 ……ん? リアルリー? リリリール?」

相手の家名を口にするも、毎回変わる。
どうやら、覚え切れていないらしいが。もう一回聞くのも失礼だよねぇ。
まぁでも、名前で呼べばいいか。うんうん。

「まぁまぁ、話は分かるけどね。
 ただ、アタシは信頼していいよ。うん」

ヴィルアの言い分も分かる。特に、フリーのものを雇うってのはリスクがあるもんね。
とはいえ、信用してもらえなきゃ仕事にもならないんだけど。
この辺りはやっぱり難しいなぁ。

「あら、いいの? そりゃあ助かるなぁ。
 仕事っていくらあっても足りないもんね。
 ただまぁ、アタシからもいろいろとお願いもあるから。その辺話し合おうよ」

断られるかと思ったけど、意外にも雇用されることになった。
これは非常にラッキーである。なにせ相手は貴族。
仕事をがんばれば、そうとう報酬がもらえるに違いない!

「……わぁお。わかりやすいご依頼、ありがと~♪
 交渉や金の力で片付かない、ってなったら殺しとか。
 ヴィルア、見た目の割りにおっかないねぇ♪
 ……ふ~ん。本当にわかりやすいね」

ヴィルアの話す依頼内容は、よくあるものだ。
というか、こういった依頼はアタシの得意分野でもある。
たまにあるんだけど、殺し屋スキルで情報収集を、とか依頼されるんだけど。
あれ、逆にキビしいんだよねぇ。殺せないって、やりづらいしさ。

「ま、その辺りは心配ないよ。
 こう見えても、そっちの修行もお墨付きなんだから。
 なんなら試そうか?
 あぁ、そうだ。雇われるに当たってのコッチからの提案ね。
 アタシ、フリーであることが気楽でいいんだよね。
 だから、依頼を受けることはあっても専属にはならない。今のところね。それでいい?」

ヴィルアのその言葉は、挑発っていうか。アタシを値踏みしてるんだろうな、っていうのはわかった。
だからこそ、アタシもそれにはナマイキな態度で応えよう。
一応師匠たちにはそっちのテクも凄いと言われたこともあるし。
相手がもしもお望みなら、お相手するのだって吝かではない。
あとは、こちらからの条件提示をして、相手が受け入れてくれるかどうかだ。

ヴィルア > 「そう目くじらを立てなくてもいい。
彼女も悪気はないだろうさ。ああ、いこうか」

毎回変わる家名に、流石の護衛もむ、としたのかほんの僅かだけ身体が動くけれど。
それもまた、ヴィルアが止める。
名前とは、お互いがわかればそれでいいのだ。
嘲る意図が無い限り、彼が怒ることはない。

信頼していいよ、などと言われても彼としてはすぐに全幅の信頼を、というわけにはいかない。
が、そこは…少女の仕事ぶり次第で、変わっていくことだろう。

そのまま、仕事の話をするため、更に閉じられた密室へ。
防音の魔法もかかっているのか、外の音も聞こえなくなっていく。
不自然なほど静かな馬車内で、話を続け。

「小物なら良かったのだが、力を持っている上に私の事を毛嫌いしていてね
和解も申し出てみたが、話も聞いてもらえない。…あまりとりたくない手段ではあるが、仕方ないだろう」

やれやれだ、と。肩をすくめてみせる。
殺し屋と聞いている以上、彼もまた、殺し以外を頼みはしない。

「それは頼もしい。…ああ、専属とする気は無い。またもしこういった事態があれば、依頼するかもしれないが…その時も受けるかどうかは君の判断に任せよう。
依頼の話の続きだが…女好きとは言ったが、警戒も相当厳しい。できる限りのサポートはするが、失敗した場合のアカサギの安全の保証はしない。
それも加味して…そうだな…」

そういったことを試そうか、という言葉は一旦保留し。
フリーでも構わないことと、此方に火の粉が降りかからないような条件付け。
ただ、それには相応の代価が必要だ。
これも、相手がミレーだからといって、不当に安くするつもりはない。
先ほどの少女の言葉を借りるなら、平等である命を賭けさせる仕事なのだから。

「前金で3000。成功で7000ゴルド追加で払おう。気に入らなければ、交渉してくれ
後はやはり、自白しないかどうか、そして色事の試験だな。それを受けてくれれば、私からは何も言うことは無い。
ああ、もし怖気づいた場合は帰っても構わないが…情報が漏れていると発覚したら、君の寝首を掻くことになるだろう」

平民地区の一般市民が一日普通に暮らすのに200ゴルドあれば十分な世の中。
合計で10000ゴルド払うという彼の提案をどう受け取るか。
にこり、と笑いながら脅しをかけつつ、反応を見る。

アカサギ > 「リリリーリ? ルルリリー?
 いや、ゴメン。ほら、コッチの地区ってそんな立派な名前の人珍しいからさ」

もちろん、覚えなきゃ、とは思うんだけど。
こればっかりは慣れかなぁ……。こうして依頼をもらえたんだから。
今後は人の名前をちゃんと覚えるようにしようかな。

「ふぅん。まぁ、そういうことなら。
 ヴィルアがそこまでしてって話なら。アタシは口は挟まないよ」

きっと正当な手段とかもたくさん使ったんだろうし。
それでムリなら、っていうのは気持ちは分かる。
だとすれば、アタシみたいなのを頼りたくなる状況っていうのは。
よっぽど切羽詰ってるってことなんだろう。

「うん、理解してくれて嬉しいよ。
 大丈夫大丈夫。そういう時の心構えってのも、叩き込まれてるからさ。
 ヴィルアはどんと構えて待っててくれればいいよ」

こういった汚れ仕事を依頼してくるくらいであるから。
お互いの立場については色々とある、ってことくらいは知ってる。
まぁ恐らく、こうしてアタシに依頼したことも、なかったこと、というやつなのだろう。
貴族の世界も大変だよねぇ。そういう意味じゃ、気楽な貧民育ちで良かったなぁ。

「わお、太っ腹じゃん♪
 いいよいいよ、報酬はそれで全然オッケー♪
 ……んふふ。別にいいよぉ。試験くらいはねぇ。
 でも、どうするの? ここでする?」

ヴィルアの提示した額は、殺しの報酬として考えてもなかなかに破格だ。
これは受けない手はない。っていうか受けてナンボ。
と、なると。後は試験なんだけどぉ……。
このままここでやるのかな? アタシとしてはそれでもいいんだけどね~。

ヴィルア > 「私からしてみれば、アカサギという名の方が珍しいね
本名かどうかは知らないが。一応言っておくと、リルアール、だ」

もう一度、繰り返しはするが。
特に間違っていても、護衛から静かな怒りが立ち上るだけで、彼自身は怒ってはいない。

「そうか。その言葉は信じることとしよう。
報酬も納得行ったようだし、そうだな…」

条件も詰め、報酬も提示し。
相手も承諾した。これで彼としては商談成立というわけだ。
そして、手は早めに打たなければならないが、一日二日程度は、使える時間はある。

「流石にここでアカサギの耐性を見る用意はないからね。このまま私の屋敷に行って、試験を受けてもらおう。
前金を先に見て安心したいというのなら、そこで先に渡そう」

こんこんこん、と馬車の…御者側の壁を叩くと。
ゆっくりと、振動すらも小さく馬車が動き始める。

向かう先は富裕地区。
彼の屋敷がある一角だ。
時間もないことだし、このまま拉致のような状態にはなってしまうが、移動しよう――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からヴィルアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアカサギさんが去りました。