2020/02/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にバティスタさんが現れました。
■バティスタ >
「──可哀想に。こんな場所では満足に治療を受けることもできなかったのでしょう」
貧民街の片隅
今にも崩れ落ちそうな長屋の一室
その入口から中の様子を覗き込む一人の少女と、数人の騎士の姿があった
■バティスタ >
飢えと困窮から病気に掛り、親も子も野垂れ死ぬ寸前…と言ったところ
ここ貧民街でもここまで悲惨な状態になることが少なくないとはいえ…
「…安心して。私があなた達を救いましょう。
我が主、我が父ヤルダバオートは平等に手を差し伸べてくださいますよ」
少女は柔らかく微笑み、背後に控える騎士へと耳打ちする
すぐさま騎士は荷馬車へと歩みを進め、貧民街の他の住人に気取られることのないよう、僅かながらも十分な食料品を手に長屋の一室へとそれを持ち運ぶ
■バティスタ >
「…他の者に奪われないよう、気をつけてくださいね。
本当なら私達が守衛も行えれば良いのですが──」
突然の施しに困惑する痩せた子供たちへと微笑みを向けたまま、一歩、長屋へと足を踏み入れる
床に臥せっているのは子供たちの親だろう
単なる風邪程度であろうと、衛生状態も栄養状態も悪い貧民街では命に関わる
そして当然、親が倒れれば子供は餓死してしまう
「…動かないで。大丈夫、我らが神ヤルダバオートの奇跡の光が貴方をお救いになるでしょう」
言葉を紡ぎ、祈りを捧げるように印を切る
やがて翳された少女の手に朧気に光る紋様が浮かび上がり、淡翠の光が小さな部屋の中へと満たされていった
■バティスタ >
『お疲れさまでした。グランドマスター』
一刻の後、長屋を後にした少女は荷馬車に揺られ、貧民街の畦道を揺られていた
「ふふ。見たかしら?あの子供達の、希望の光に満ちた眼を」
翠眼を笑みに細め、少女は愉しげに言葉を紡ぐ
「光は深く暗い闇に差すからこそ有り難いもの。神々しきもの。
──あの子達はヤルダバオートに感謝しながら生きてゆくことでしょうね」
"それ"が"何なのか"も知らずに、と内心で口の端を吊り上げる
■バティスタ >
あの長屋の者達に与えた施しは一週間分にも満たない
けれどそれで良い、病気さえ治れば家長である親は子供達のためまた働く事ができる
施しとは甘やかすことではない
死の海からすくい上げ、安全な岸へと運んであげること…
ただ、それだけで良い
故に彼らは生を実感し、道を繋いでくれたモノに感謝する──
「…さて、我が神の奇跡が助けになろう者はまだまだこの町にはいるでしょう。
馬を急がせましょうか。そのために十分な施しの品も積んで来ているのですからね」
聖女を自称する、少女の口元は笑みに歪んでいた
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からバティスタさんが去りました。