2020/01/14 のログ
メリル・クルーガー >  
「ふふ、やっぱり貴女からもいいにおい、するわぁ♡」

妖艶な笑顔。
お腹がいっぱいになるような食べ応えのある恐怖ではないが。
甘く蕩けるようなお菓子のような恐怖のにおい。

「あらぁ、そんなことないわよぉ」

彼女に手を伸ばす。
立ち上がる手伝いをするような、善意に満ちた手だ。

マリカ > 「あ、ありがとうございます……。」

自分からいい匂いがすると笑う女性にこの世ならざるものを感じ、おびえる
マリカ。だがどう見ても友好的な相手に、警戒しては失礼だと恐怖を押さえつけ
精一杯の愛想笑いを浮かべながら伸ばしてくれた手を取り立ち上がろうとする。

メリル・クルーガー >  
「だってこんなにおいしそうなんだもの♡」

手をとった瞬間。
修道服の袖がほつれる様に広がった。
修道服――に擬態していた触手が彼女の腕に絡みつくように伸びる。
すぐに手を引けば逃れられるだろうが、こちらも逃がすまいと握った手に力を入れて。
それでも咄嗟に手を引ければ間に合うだろう。
しかし一瞬でも恐怖や戸惑いで動きを止めてしまえば、間に合わないかもしれない。

マリカ > 「へ?」

先ほど蠢いたように見えた修道服。それは目の錯覚ではなかったのだ。
何か得体のしれないものに形を変えたメリルの服、いやそれはもしかすると全身の一部なのかもしれない、に腕をからめとられながらも、あまり
の現実感のなさにマリカがしたことと言えば、手を引くのではなく、ただ
目の前の何かが冗談よ、と言ってくれるのを期待して見つめるだけだった。

メリル・クルーガー >  
勿論冗談でもなんでもなく、それは触手以外のなにものでもない。
ひんやりしていて温もりがあって表面がぬるりとした粘液で覆われている。
それがあっという間に彼女の右手を絡め取る。

「うふ♡」

更に十字架を地面に落とし――ドゴン、と重い音が響く――、左腕も伸ばす。
やはり抵抗しなければ彼女の両方の腕の自由は奪われてしまうだろう。

マリカ > 「っ!!」

一気にいい匂い、がマリカの体から吹き上がる。無我夢中で右手に力を籠め
引き抜こうとするマリカ。歯を食いしばって全身に力を入れながら、左手で
剣を抜こうとするが、当然ながら上手く抜けない。

「だれか!!助けて!!」

大声でそう叫ぼうとするが、触手で邪魔をされればそれもかなわないだろう。

メリル・クルーガー >  
触手は筋肉の塊だ。
魔術か何かでブーストしているならともかく、生身で抵抗できるようなものではないだろう。

「怖い? 大丈夫よぉ、すぐ怖くなくなるからぁ」

ぐい、と引き寄せる。
彼女の顔に自身の顔を近付け、かぱりと口を広げた。
彼女から見えるこちらの口内には、歯や舌のような生き物の口内ではなく。

「んべぇぁ♡」

無数の触手が蠢いている。

マリカ > 「ひ」

メリルの構内に広がる光景。それが自分の視界いっぱいになるほど迫っ
てくる。その光景に悲鳴を上げてかすれたような悲鳴の声を歯の隙間から
漏らした。

ぺたり、あまりの恐怖で全身から力が抜け、迫りくる触手の群れを見ながら
マリカは一度意識を手放した。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区・路地裏」からマリカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区・路地裏」からメリル・クルーガーさんが去りました。