2019/09/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からセヴンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からクウさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にセヴンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にクウさんが現れました。
セヴン > 貧民地区に存在する建造物は基本的には無人。
例外は勿論あれど、その場所で育ってきた者にとっては当たり前であり、雨風を凌ぐのに好きに活用出来るのは暗黙の了解であった。
とはいえ、ドアノブがある様な住居向きの建物は数える程度しか無く、多くは戸板をドア代わりにした簡易的なものでしかない。

「……よし、此処はまだ使われてないみたいだ。
窓は無い代わりに指一本通るかどうかという隙間だらけで、換気の心配は無い。
一応椅子とテーブルはあるみたいだし、楽にしてくれ」

目に入った石造りの建物、戸板を押してみれば軋む様な音はするものの鍵代わりの閂は掛けられてはいなかった。
言葉通り四方に窓は無く、幾分薄汚れた椅子が数脚とこれまた薄汚れたテーブルがあるのみ。
部屋の隅に就寝用なのか、誰か使ったのか、そもそも誰が持ち込んだのかすら分からないスプリングも一切効かない簡素なベッドがあって。

「この手の所だと……あるとすれば………」

テーブルの下を覗き込んでみれば、そこには格子状の小さな物置があり、木杯が幾つか逆さに置かれていた。
一つ一つ状態を確認し、その中からそこそこ綺麗な状態の物を二つ取り。

「あったあった。
悪いがこれで勘弁してくれ。わざわざ酒一本の為にグラスだの何だの買いに行くのも面倒だしな」

軽く告げて木杯二つをテーブルの上へと置く。

クウ > 仕事と教会に来る以外は全く分からない場所の多い貧民地区。
空き家を勝手に使うという考えは流石に廃村などではあるがこういう場では…という考え。
いいのかと思いながら空き家を探していたが先に彼が見つけたようで…。

「そうなの……?よくわかる……。
乱入、来ないなら……隙間ぐらい…いい。
お邪魔する…」

彼が見つけたのは頑丈そうな石造りの建物、扉が開くということは使っていない証だったか。
中にと入れば本当に窓はないがよく見れば隙間はある、パッと見れば椅子とテーブルが目につき、ふと慌てたように扉を閉めて閂を付ける。
そうしてもう一度室内を見れば今度は隅にベッドのような物も見つけ誰か住んでいたのではと考えてしまう。

「何……?」

彼がテーブルの下を覗き込むのを見て何があるのだろうかと考え。
そうしていると木杯が二つ持たれていた。

「用意が……いい?
大丈夫……拭けば……問題ない……」

気にしないと首を横に振り、テーブルに置かれた木杯を懐から取り出した手拭いで拭いて綺麗になったと笑みを見せる。

セヴン > 「まぁ覗かれはするだろうけどな。
…指先が入る程度の隙間じゃ大して覗けないか」

縦長な隙間でもあれば別だが、覗くに適した隙間は床付近に分布している。
地べたに伏せないと満足に覗く事も出来ないだろう。
そしてそんな者が外に居れば、恰好の標的となるのも事実。
故に覗かれる心配もほとんど存在していない。

「しかし流石に灯り無しだと暗いか。
此処ら辺だとランタンがどこかに……あぁ、上か」

頑丈な石造りであり、隙間も小さいとなれば当然暗い。
夜目が効くのか、微かに見上げれば腕が届く範囲にランタンが吊るされているのが分かった。

両腕を伸ばして光を灯せば、決して強くは無いが柔らかい灯りが室内を照らし出す。

「よし、これで良い……ん? あぁいや、用意が良いというか、大抵誰かが持ち込んで、そのまま放置されてるんだ。
それを、次にこの建物を使った奴が再利用してると、まぁそんなところ」

そんなサイクルを繰り返しているから、建物によって鎮座する物品に差が生じる事もある、等と嘯いた。
罅割れが無い椅子を選んでテーブルまで運べば、一度だけ手で押して強度を確認。
壊れる心配が無いのを確認して、ゆっくりと腰を下ろした。

クウ > 「……そういうの…慣れた…。
……それもそう……かな」

しっかりとしていてもやはりボロ屋。
そんな場所を使うのだから仕方がないという諦めとお酒を飲むだけだからという気軽さ。
もし床下から視線を感じればその時は突けばいいという物騒さもあり。

「しっかりとしてるから……私、明かりは持ってない……。
上……?」

頑丈なだけに外の明かりも隙間からしか入ってこない。
かといって明かりは持っていないと告げたが、彼がランタンを見つけたことには素直に驚く。

簡単に明かりがつく様子によく使われているのかとランタンを見たりして。

「それでも……手慣れてる……。私だと…わからない…から。
持ち込んだって……考えないし……。
……持ちつ…持たれつ……?」

彼の言葉に違いもあるのかと、それなりに居座った国であるが知らないことはまだまだ多く。
いくつかある椅子を眺め……適当に一つ選んで運んで腰を下ろし。
少しきしんだ音を立てるが大丈夫だろうと気にしないことにした。

セヴン > 椅子にテーブル、ランタンに木杯、そして簡素なベッド。
凡そ生活するに最低限の物だが、確かに彼女からすれば手慣れている様にも見えるか。
酒瓶の蓋を回しながら開けて、まずは彼女の木杯へと軽く口を差し向ける。

「昔から……それこそ餓鬼の頃から此処で暮らしてるからな。
大体何処に何がありそうで、どれが使えそうか…判断出来る様になったんだよ。
――……あぁ、それだ。持ちつ持たれつ。
信頼関係も信用も、此処じゃ作れないけど、そういう変な繋がりはあるな」

彼女の言葉に納得の頷きを大きく数度。
木杯を傾けたならば、トクトクと杯の半分程度まで流し入れて、そのまま自分の木杯に手酌せんと。

クウ > 時折に空き家を借りることは旅の最中にはあったが室内を漁ったことなどはなく。
こうして色々と使えるものを見つける手腕、慣れた動きには驚きをみせて。

「そう……なんだ……。
それはそれで……すごいと……思う、私は……出来ない事……。
それって……利用し合う……?」

信頼信用はないがつながりがある、変わってると思いながら木杯に酒を注がれ。
自分の杯に注がれるとそっと手を伸ばして酒瓶を取り、自分が彼の木杯に酒を注いでいこうとする。

セヴン > 自らの木杯に注ごうとした所で、流れる様に掠め取られる酒瓶。
釣られる様に視線を上げれば、酌をしようとする所作に気付く。
口元に笑みを僅かに浮かべて木杯を軽くだけ差し向けた。

「普通は出来ないんじゃないか?
出来たとして、得するのはこういう場面だけだし」

彼女の木杯より幾分多く注がれた所で片手を軽く挙げて、ストップの合図を。
一度鼻に近付けて香りを確かめる。
上質、とまでは言わないが劣悪な物でないのが分かる程度には、しっかりとアルコールの香りがした。

「そうなるかな、暗黙の了解なんだよ、此処では。
だから何が起きても仕方ない。
実際、この小屋だって利用し合ってはいるが、鉢合わせした時にどう転ぶかは……分からない」

言うなれば別々の空き巣が折り悪く同じ家に盗みに入る様なものなのだ。
共謀するのか、反目しあうか、分からないのと一緒なのである。

「……ま、一先ずは乾杯といこうや。
夜も深い、完璧に安全とは言い難いが、それでも安全な場所に居られる事に感謝して。
――乾杯」

木杯を軽く頭上へと掲げてみせた。

クウ > 断られずに差し出された木杯にそっと酒を注ぎはじめ。

「でも……出来たら…便利そう。
色々……役に立つ気が…するよ?」

ストップをかけられると注ぐのを止めて。
酒瓶をテーブルに置けば自分の木杯に入った酒をじっと見つめる。
良し悪しはほとんど判らないが綺麗な色とアルコールの匂いに変な交じりはないとみて。

「私は……そういうの…よくわからない、から。
鉢合わせる……と、やっぱり……危険……?」

もしかしてお互いの物を狙った争いになるのだろうと朧気に理解し。
平穏に見える場所でも一歩入れば危険しかないという事を再認識して。

「ん……乾杯……。
腕利き……二人いるから…安全……だよ。
でも……安全な場所と……お酒に……乾杯…」

彼につられるように木杯を掲げて小さく笑みをこぼし。
木杯に口を付けていく。

セヴン > 「んー……まぁ確かに、戦利品とかの選別は捗るか…。
後は家具の寿命とか……」

痒い所に手が届く程度のものではあれど、言う通り役に立つのは否定出来ない。

下手な乾杯の音頭でも、ノッてくれたならば照れた様に小さく笑みを浮かべた。
口元に木杯を寄せて、躊躇する事無く大きく一口。
灯りがあるとはいえランタン程度の灯りでは酒の色までは分からない。

「――危険、とまでは行かないけどな、此処らは。
それこそさっき話した様に、もうちょっと奥だったら危険だろうけど」

喉が熱くなるアルコールの強さ。
鼻から安堵の溜息にも似た吐息を逃し、背凭れに体重を預ける。

「鍵というか閂というか、掛けただけで誰も入ってこない場所だからさ。
此処と比べれば、あっちは危険だ」

肴になる様な物までは流石に持ち歩いていないし、常備もされていない。
言葉を切る度に木杯を傾けて、もう半分嚥下している。

クウ > 「……私、武器の良し悪ししか……わからない。
家具の傷みは……少しだけ……」

あくまで斬った商売の旅の剣士、武器ぐらいしかわからないとポツポツと話し。
戦利品があるような仕事でもきっと損をしていることもあったかもしれなく。

木杯に口を付けて小さく啜るように一口。
いかにも飲みなれていないという姿で口を付けて。

「私は……安全だと……思ってた…。
奥は……行くこと…ないと…思う」

ほんの一口でも体が熱くなるようなアルコールの強さ。
ランタンの灯りではわかりにくいが顔を真っ赤に染めてちびちびと飲み続け。

「奥は……かけても…入って……来る?」

アルバイト中でなければ干し肉程度は持っているが今はあいにく持っていなく。
そしてこの辺りに詳しい彼と知らない自分。
話を聞きながら本当にゆっくりというペースで飲み進めて。

セヴン > 「寧ろそっちの方が大事じゃないか?
斬るか斬られるかの商売なんだし」

家具など最悪新調すれば済む話だが、得物となれば話は別だ。
いざ斬らん、という時に一合で折れでもしたら悲惨も悲惨、目も当てられない。

そんな惨状を幻視してか、木杯を空にする頃には渋面となっていたかも知れない。
とはいえ、彼女の顔色を見通せぬ様に、そんな細かい表情の違いも、判別は難しいだろうが。

「そうだな、五回に一回は入ってくる。
気を抜いて休める環境じゃないのだけは確かだ。
……特に、女は」

詳しく言わずとも、女、と限定した事で読み取る事は出来よう。
酒瓶に手を伸ばして二杯目は手酌。
一杯目と同じ程度注いで、酒瓶は中央へ戻した。

クウ > 「剣士には……当たり前……の事…。
売るときにも……いいよ?」

愛刀があるので他の武器といえば売ってしまうだけ。
それを思えば家具の良し悪しを分りたいと考えてしまい。
この辺りの考えはお互いの得意不得意での考えの違いがあるようで。

相手の獲物が脆ければ獲物ごと切り捨てる事もある自分。
なぜか飲むペースが落ちたような彼の様子に首をかしげて。

「それ……危ない……行かないように…する…。
……襲われる…から?」

詳しくは言われないが内容はよくわかる。
貧民地区でバイトをしていれば知らない間に雇い主に娼婦扱いにされた事もあるだけに。
それを思い出して酒とは別に頬を赤くして、ようやく半分になった木杯に酒瓶を手に少しだけ酒を足す。

セヴン > 「流石、言う事が違うね。……そもそも俺は胸張って剣士とか言えないしなぁ。
ん、まぁ、武具って意外と良い値で売れるもんな」

剣に誇りや愛着でもあればまた別なのだろう。
その日生きるのに精一杯だった彼には、殺傷能力の有無しか判断材料が無かった。

さておき、注いだ二杯目。
今度は豪快に、喉を鳴らす勢いにて嚥下していく。
一杯目は味わう故にゆっくりと、と言わんばかりの勢いだ。

「そうだ、襲われるから。
剣に覚えはあるんだろうけども、そんなものは奥では意味を成さない。
薬に搦め手、罠に人質…たった一人を無力化する方法なんて、ザラにあるからな」

挙げたどれもが大概卑怯と罵らえる手段なのは、治安も何も無い危険区域であれば当然の帰結。
話す男本人も嫌悪しているのが良く分かる程、吐き出す言葉は陰鬱で。

「…ま、行かないと決めたなら、問題も無いだろうけどよ」

そんな自分の落ち込んだ声を自ら振り払う様に、わざと鼻で笑い飛ばして木杯を空にした。

クウ > 「奥に行けるなら……腕、立つんだよね…?
うん、売れるから……でも…重い……よ」

この場所、奥でも行けそうな彼なら剣士と言ってもいいと思うだけに見つめ。
戦利品といえる武器、この国で出回るものは扱いにくいので全て売っているが重いとポツリ。

二杯目を口にしていく彼とは違い、多少は足してもまだ一杯目。
飲み進める間に顔の赤みだけでなく瞳も潤みだして。

「……慣れたけど……困る……武器…取られるから…。
ん……卑怯な……手…苦手……」

上げられる手段はどれも苦手なものばかり、しかもこの場所では助けも期待はできない。
もうなくすものはないと言っていいが…陰鬱に吐き出す言葉を聞けば猶更行こうという気持ちにはならず。

「ん……よほどでもないと……行かない…」

だから安心してと、木杯から顔を上げて無理に笑って見せて。

セヴン > 「こうして五体満足で生きていける程度には。
長袖だから分からないだろうが、これで結構鍛えてるんだぜ、俺も」

重い、との言葉にしたり顔を浮かべて力瘤を作ってみせる。
しかし言葉の通り、軽装とはいえ長袖。
どんなに盛り上がった所で視認出来る程ではないか。

順調に酒を消費する男と違い、彼女の進みはあまり早くはない。
ゆっくりと時間を掛けて楽しむ派なのだろう、と自己完結をするのは、彼女の染まった頬も潤んだ瞳も、暗くて確認出来ないが故。

「徒手でもある程度やれるんじゃないのか?
そういう剣を使う知り合いが居るが、なんだっけ?
武芸百般……?」

どういう意味かは忘れたが、刀を使う者はそれ相応の実力を持つらしい。
得てしてそういった者達は得物を選ばないとか。
となれば、徒手でも割と戦えるのではないか、と。

「そうしてくれ。
届け物先でアンタが犯されてる場面とか、想像するだけで心臓に悪い」

酒瓶を取りまた木杯に注ぐ。
ペースも量も、彼女よりも数段上であるからか、元々さほど大きくはない酒瓶。
すでに半分以上が無くなっている。

クウ > 「それができてれば…十分強い……。
知ってる……忘れてるかも…だけど……前におぶって…もらった」

したり顔で力瘤を作る彼。
長袖なので見た目にはわからないのだが…以前にあった事を告げて頷き。

まだ木杯に酒は半分以上残っているが正直いっぱいいっぱい、
残すのがもったいないという気合だけで飲み進めて。

「ン、少しは……出来るけど…大男には…勝てない…。
そういう人もいる……よ」

自分にはまだ無理と首を小さく左右に振って見せ。
あくまである程度しか無手では無理と。
仮に戦えても小娘ゆえに体格差はどうにもできないのだから。

「その時…助けて…くれる……?一緒に…犯す…の?」

どっち?とふとした疑問が浮かんで問いかけて。
気が付くと酒瓶の中身も結構減っている。
そこでおいしい?と視線で問いかけて。

セヴン > 「そういえばそんな事もあったか。
バケモンの目撃情報だけで金が貰えるんだから、ボロい商売だ」

忍び笑いでもって以前起きた事象を思い出す。
情報は武器、と分かってはいても、貧民地区では最後に物を言うのは武力となる。
だからか、他の者達からすれば情報というものに重要性を見出していなかった。

「それもそうか、貧乏なくせして図体だけはでかいのが多いからな」

自分の事は棚に上げて、彼女の言に然りと頷いた。
技術は重量に負ける。
どんなに優れた達人であっても、突進力には抗えない。
それと同じく、身体の作りが違う時点で、相当なハンデだろう。

三杯目になっても変わらぬペース。
遅々とした速度でも苦杯を持つ彼女を見据えて、続けられる問い掛けには半眼。

「助けるに決まってるだろ。
奇妙な縁でも、結んだもんは結んだんだ、そこまで外道じゃない。
…………まぁ、その躰に興味が無い、と言えば嘘になるけど…」

軽口の様に最後の言葉を紡ぎ、何か言いたげな視線に首を頷かせる事で肯定した。

クウ > 「ン……あの時は……助かったから…。
教えてくれないと……知らなかった、だから覚えてた」

あの時は会っていなければあの報酬はもらえていなかった。
情報がお金になるというのを知った瞬間でもあり。
それからは稼ぎやすくなったので感謝していたと告げて。

「大きいは……強さ…頑丈…だし」

軽いは重いに負けるのは仕方がないこと。
たとえ技術で勝っていても勢いと重さの前には無力な時もある。
特に自分は小柄だと思うだけにそういう相手とは戦いたくはなくて。

もうかなり酔いも進んでいるがもったいない。
その一心で口を付けていれば判目の彼に気が付き。

「そう……?その時……あったらお願い……。
そっか……あの時も思ったけど……いい人……。
したいなら……いいよ……?」

危険な場所でも助けるという彼の優しさに小さく頭を下げ。
最後の軽口のような言葉にはしたいならと一言、縁がある彼だからこそまだいえば返答で。

セヴン > 「棚牡丹だと思ってれば良いものを…律儀過ぎるのも考えものだな」

あの程度の事はそれこそいづれは知る筈の事。
それを律儀に覚えていたというのだから、真面目以上だろう。

肩を竦め、小首を傾げて、礼を言われる様な事ではないと大袈裟に伝えるかに。
それでも、稼ぎ易くなったと言われれば、役に立てたのは素直に嬉しいものでもあって。

「単純な腕力も、何故か持ち合わせてるしな」

非合法の薬なども平然と流通する危険区域。
或いは筋力増強の薬などもあるのかも知れない。
非合法故に悪影響もあるだろうが。

「そんな時が来ない事を祈るよ。
………あんな棒立ちで居た時点でも思ったが…もう少し危機感を持った方が良いんじゃねーかな?」

何てことは無い、と言わんばかりの提案に、三杯目を一気飲みして額を押さえた。
貧民地区出身である男が頭を抱える事案である。

「そんな、良い人だから抱いても良いよ、ってアンタ……。
安売りして良い様な躰じゃないだろうが」

溜息というよりは、呆れた嘆息か。
酒瓶を取り、残りのほとんどを注いだ。

クウ > 「そう………?でも…おかげで…今の縁」

知らなければ知るまではそれを誰かに取られていたかも。
それを思えば彼の存在を覚えておくには十分な恩。

だからこそ礼をいい、この国で少しでも苦労なく過ごせるきっかけをくれたのだからと。

「そう……大きくて頑丈、力が強いと面倒」

まるで経験があるというように不機嫌そうな声色で告げ。
用心棒をしていれば嫌でも遭遇してしまい、今までもこの先も。
もう少し何かを考えたほうがいいかなと。

「私も……出来れば……。
大丈夫……殺気、なかったから……それだけ…」

あの時に彼ではなく強盗なら切り捨てていたと暗に告げて。
知らない男に襲われるなら縁がある彼がいいというシンプルな答え。

「もう……汚れてる。それに…安売りでもない……。
一人で危険…でも……二人なら……安全……でしょ?」

ちゃんと打算もあるとつぶやいて木杯を煽り。
アルコールにむせてせき込んで。

セヴン > 頑なに感謝を告げられれば流石に固辞も出来ない。
何より、事実として教えたのだ。
生活の糧となっているのであれば、喜びこそすれども謙遜し過ぎる必要は無い。

照れ隠しのつもりか、四杯目をちびりと舐める。
さして大きくない瓶、まだ満足とはいかないからこそ、最後はゆっくりと。

「……どんなに望んだ所で、か。
殺気の有無で判断出来るのが凄いと思うぞ俺は。
基本的に有害か無害か、しか判断しないしよ」

言外に語る言葉があった。
そしてそれを正確に読み取る程度には、色々なものを見てきている。
同情はしない。
そして下手な慰めもしない。
全て自己責任の世界なのだから。

しかし、続けられる言葉にあからさまに不機嫌そうな鼻息を放った。
木杯を傾けるのも止めて、細めた眸。

「なら俺は真っ黒だな。
…今の時点で十分安全だとは思うが……据え膳は喰うぞ?」

呟いた言葉に片眉を跳ね上げはするものの、特に言及したりはせずに。
ただ、本気かどうか、今一度訪ねた。

クウ > 今ではそれなりに知り合いも多くなっているが、あの時はほとんどいなかった。
その時の親切なだけに感謝は他よりも強く。
たとえ大した事ではないと言われてもそうだと押していく。

そうして4杯目に口を付ける姿に怒ったのかなと心配そうにみて。

「これだけは……わからない……から……。
私の国……の剣士…だと……普通……。
無害でも……襲ってくるなら……斬る。有害でも……私に…関係ないなら…捨て置く…」

いくら奥に行かなくても、この辺りでそういう目に合い連れ込まれないという保証はない。
気を付けてはいる、本当は来なければいいのだがどうしても来る理由があるだけにそれもできない。
だから襲われても自業自得、その覚悟は持っているからこそいるのだと。

「……この場所……で仕事してる時点で…私も……黒い…から。
安全……多いほうが……いい。
冗談……で、言わない……相手……は選ぶ……よ」

不機嫌そうに鼻息を吐き木杯を止める彼。
細められた眸を臆することなく見返し、中が見える見えないかと程度に着物の胸元を緩めて見せる。