2019/08/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/娼館通り」にアムネシアさんが現れました。
アムネシア > つんと饐えた臭い、騒々しい話し声、叫び声、そして、目が滑るほど派手な様々な色。
厚化粧を施した女や浮浪児と見紛うみすぼらしい少女、どう見ても金など持っていなさそうな男達。
貧民地区には娼館が立ち並ぶ通りはいくつかあるものの、どこも似たような景色を形作る。
そんな中、色合い乏しく陰気な修道福に身を包んだ尼が一人。

「やあ、身体の調子はどうだい?」

「ミレーヌ、ビョーキ予防の護符がそろそろ切れる頃合いだろ、今度うちに取りにおいで。」

「ジャン、金もないのに女の子をからかうもんじゃないよ、ちゃんと稼いでから来な。」

年端もいかない少女の面持ちながら、やたらと顔見知りが多い。
何もかもが場違いなように見え、妙に通りに溶け込んだ少女は顔見知りひとりひとりに語り掛け、笑い掛け、手を握り、叱り、怒鳴り、ケツを蹴り上げ、通りを歩む。

アムネシア > そして、ようやく辿り着いた目的地はこれまた小さな娼館。

「メリムが倒れたって聞いたけど、具合はどんな感じだい?」

修道服姿の少女は店先に座る老婆へと声を掛ける。
孤児院を出てもまともな仕事に就ける者などほとんどいない。
この娼館で働くメリムと言う名の女もまたその類だった。

「なるほど、とりあえず安静にさせておくしかないねぇ。
 おそらくは疲れが溜まったんだろ、最近暑いから。」

店主である老婆の話から容態を聞き、ひとつ安堵の吐息を漏らす。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/娼館通り」にアゲハさんが現れました。
アゲハ >  
――さて。
そんな代り映えしないような場所で――。

「おはなー、おはなはいりませんか―? お見舞いとか、ちょっとした気分転換に。たんぽぽ、バラ、お花はいりませんかー?」

少女の声が聞こえた。
窓、扉――どこかかしらから、そちらに目を向ければ
少し身だしなみを整えた、黒いドレスに身を包んだ――
鳥かごのようなゲージに、華を詰め込んで歩く。

あまり見覚えのない――

「あ、どうぞどうぞ。一本でも。はい――ありがとうございました―」

子供に、有り金で。一本くださいと言われれば手渡したりなんだりして――

「暑い日々の涼に、お花は、いかがでしょうかー」

アムネシア > とりあえず安心……と言っても問題はある。

「で、ジギィ。店のほうは大丈夫なのかい?」

小さな娼館だ。
娼婦がひとり働けないとなればかなりの痛手になるだろう。
かと言って無理矢理働かせれば病状が悪化してしまうことは間違いない。
自分がその損失を補えればとは思うものの、そんな金があれば孤児院の子供たちにもっといい物を食わせてやっている。
そもそも、孤児院を卒業した子は助けないと言うのがルールだ、彼女もまた立派な大人なのだから。

「どうしたもんかねぇ。
 私が代わりに立ってもいいけど……。」

金は出せないが身体は貸せる。
酒場で腰を振るか男の上で腰を振るかの違いだ。
もっとも酒場と違って客が付かなきゃ稼ぎにはならないのだから、そこはちょっと違うか……。
まあ、さすがに坊主にはならないだろ……と思えるくらいには容姿には自信がある。

「おや?」

そんなことを考えていると聞こえてきた花売りの声。
視線を向ければ、黒いドレスに身を包んだ少女の姿。
見た目は……自分以上にこの場にそぐわない。
どこかのいいとこのお嬢さんか?と思うものの、いいとこのお嬢さんは花なんて売らないだろう。

「本当に花を売ってる子なんて初めて見た。
 お嬢ちゃん、お見舞い用にひとつもらえるかい?」

花売りの少女へと笑顔を向け、話しかける。
裏路地での花売りと言えば、勿論娼婦を意味する。
が、目の前の少女は本当に花を売っていた。
何もかもがこの場所にそぐわずチグハグだ。
もっとも……修道服に身を包んだ年端もいかない成りで大人びた笑顔を向ける少女もまた色々とチグハグではあるが。

アゲハ >  
「あ、いらっしゃいませっ。え、そうですか?」

お嬢ちゃん、と言われれば。あんまり変わらなそうな修道服の少女に目をパチクリ――慌てて、失礼だと思ったのか。
パタパタし始めて――

「あ、はいっ。えっと、バラと、たんぽぽと百合がありますけどどれにしましょうかっ」

ひとつ、と言われれば鳥かごを前に出して。
三種類の、華を見せる。

「一本でいいならお安くしておきますよっ」

さっきのお子さんみたいにっ、なんて、同じように笑みを浮かべ――

――見た目以上にオトナな人なんだろうか、なんて思いつつ

アムネシア > 「へぇ、また随分と面白い組み合わせだねぇ。」

籠の中を覗き込めばそれなりに値の張る花とそこらで摘める野草のコラボレーション。
花売りの少女がどんな身分なのかとんと掴めない。

「じゃあ、たんぽぽをひとつ貰おうかね。
 いくらだい?」

籠の中から一番安そうな花を摘まむ。
まあ、値段もあるが娘のような娼婦にはこれくらい素朴な花のほうが似合うだろう。
修道服の襟元から首に提げたガマクチを引っ張り出し、軽く小首をかしげて尋ねる。

アゲハ >  
「ここあたりだと、幅広い値段の層のほうが売れるので」

えへへ、とほほえみながら。つまんだものを視て。

「初めてのお客さんですし、2ゴルドで大丈夫ですよっ」

贔屓にしてくれたら、嬉しいな―、なんていいながら

「リボンとか、つけますかっ。プレゼントでしょうかっ」

ドレスの裾から赤いちっちゃなリボンを取り出し、どうしましょう? と首を傾げ

「シスター? さんだから神様にお供え物、とかでしたか?」

アムネシア > 「おやおや、小さいのに商売上手だねぇ。」

一丁前に物売りの顔をする少女へと愉しげな笑みを向け、孤児院の子供たちにするようにその頭をくしくしと撫でてやる。
おそらくは孤児だろう、一瞬うちに来るかいといった言葉が頭に浮かぶも、立派に生きている少女には余計なお節介だろう。

「じゃあ、お願いしようかね。
 娘へのお見舞いだよ、健気ないい娘なんだよ。」

少女の言葉に眺めていた老婆もうんうんと頷く。
件の娘が多くの人に愛されていることが伝わることだろう。

アゲハ >  
「あ、いや。私が考えたわけではないんですけど…………はえ? 娘?」

目をパチクリした瞬間に、頭を撫でられる。
んにゅ、っと目を細めた後。ぴくりと体が跳ね――
近づけば、体がうずくような、やんわりとした蜜の匂いが、鼻腔を擽った。

「――はっ。もしや、結構あれですかっ、経験豊富とかってやつですかっ」

そういうことなのかっ、と目を見開き――

「早く良くなるといいですね」

アムネシア > 「あっはっはっ。」

少女のおませな物言いに思わず大口を開けて笑ってしまう。

「おっと、下品だったね。
 子供達にはちゃんとしろって言ってんのに私がこれじゃ示しが付かないよ。」

笑いすぎて目尻に浮いた涙を指で拭い、ぺしぺしと頬を叩いて表情を引き締める。

「そうさ、私はとっても経験豊富なのさ。
 このお婆ちゃんの何倍もね?」

娼館の店先に座る老婆へと頬ずりするように顔を寄せ、ウィンクして見せる。
そんな少女の言葉に苦笑を浮かべている老婆は当然少女流の冗談だと受け取っている。

「ああ、そうだね。お嬢ちゃんの花できっとよくなるよ。
 それにしても……君いい匂いするねぇ?」

シャンプーだろうか?甘い蜜のような匂いのする少女の紙へと無遠慮に顔を埋め、すんすんと匂いを嗅ぐ。
身体の奥がじっとりと熱くなるような感覚はあるものの、顔を離せばすぐにそんな感覚も消え失せる……少女の身体に宿る神の恩寵……少女的には呪いに依って。

アゲハ >  
「いえ、豪快な笑い方が似合う女性はいっぱいいると聞きましたし」

そんなに面白かったろうか、と首をかしげて。
おー、スキンシップが軽い? 人なのかなぁと――思いつつ。

「そうだとうれし――わひゃっ!?」

急に髪をそんなふうにされたもんだから甲高い声を上げて――
吸い込めば吸い込むほど、酩酊したような。その気にさせる、濃い、濃い――蜜の匂い

「体質みたいなものでして――えっと、大丈夫ですか?」

アムネシア > 「ああ、私は大丈夫だよ。
 それにしても君も思ったより苦労してるみたいだね。
 困ったことがあったらうちにおいで、金はないけど力にはなるから。」

花売りの少女の頭をくしくしと撫でる。
柔らかな髪に顔を埋めている最中に感じた熱、たっぷりと吸い込めば抗えないほどの発情に苛まれることだろう。
少女の佇まいからは身体を売っている女特有の色香は感じない。
つまりはそういうことなのだろう。
不憫な子だとは思う。
だが、この時代不憫な子など掃いて捨てるほどいる。
少なくとも一人で生きている彼女に無理に手を差し伸べる必要はない。
もし助けを求めて来たら、その時に小さな手を握ってやればいいだけの話なのだから。
だから……。

「場所はアムネシア孤児院って言えば誰か教えてくれるさ。」

満面の笑顔で笑ってやる。
郊外に構える孤児院の子供達にそうしてやるように、卒業していった子供達にそうしてやったように。

アゲハ >  
「大変ではありますけどお家とかもありますし」

えへへっと笑いつつ。

「苦労、はそんなにしてないですよ? その、ほら、する気になったらそのばで解消する感じにしてなんとかなってますし」

うんうんっと頷いて

「逆に貴女は大丈夫ですか?」

発散、しなくて――なんて続けてジィっと見つめて

「孤児院っ。お花持ってったらお子さん喜びそう――って、あぁ、そういうことですか、娘って!」

納得したようにぽんっと手を打った

アムネシア > 「解消ってひとりでかい?
 もし、相手が必要だったらこの店に来な。
 店先借りりゃいい、小遣い稼ぎくらいにはなるだろうさ。」

またアンタ勝手言って……などと老婆が睨みつけるも本気で怒っている様子はない。
身体を売ることは悪いこと……なんて考えはスラムでは通用しない。
現に娘の就職先に選んでいるくらいだから。
だが、それ故に当然この店は信頼出来る店だと言うわけだ。

「私は大丈夫さ、まあ体質的なアレでそういうのは効きにくいんだ。」

正確には嗅ぎ続けている間はアウトだが、効果外に離れればすぐに収まる。
心配してくれる花売りの少女の頭を「いい子だねぇ。」と再度くしくしと撫で回す。

「まあ、喜ぶけど……うちには金はないからね?」

この商売上手め、と花売りの額を指先でつんと突き、ガマクチから花の代金を取り出し少女に手渡す。

「おっと、忘れてた。
 これ代金ね。」