2019/06/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にブレイドさんが現れました。
■ブレイド > 「……何とか撒けた…か?」
昼間でも薄暗く、ごく日常的に女性が犯され、弱者が略奪され
何も知らぬ迷い人が襲われる。貧民地区でもさらに危険な地域。
普通なら外部から立ち寄るものも少ないのだが…まぁ、依頼となれば話は別で
自分も何度か足を運んだことがある。正直、長居したい場所ではない。
「ったく…暇人どもめ…」
襲ってくる奴らも暇だからというわけではないのだろうが…
そんなことに労力を費やす隙があるならもうちょっとなんかあるだろう。
それに、そこらの…スラムの強盗に遅れを取るほどやわな鍛え方はしていない。
とはいえ、こういう場所は無駄に仲間意識が強い。
一人退けたらそこから波及的に周囲に知れ渡り、気づけば囲まれてた、なんてこともある。
絡まれたら逃げるのが最善だ。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にパンドラさんが現れました。
■パンドラ > 「……。あなた。」
そんなミレー族の少年の頭上から聞こえる声。
見上げれば、半透明の翅を携えた少女の姿があるだろう。
「……。こっち。」
ふわ、と重力を感じさせない動きで、路地裏の方向へと降り立ち、ちょいちょいと手招きをしだした。
こちらに来い、ということらしい。
■ブレイド > ふいに、少女の声が聞こえた。
こんなところに似つかわしくない、悲鳴でもなく嬌声でもなく
ものを乞うような声でもない。
「なん…え?なんだ…!?」
聞き違いかと訝しむも、そもそも声が飛んでくる方向がおかしい。
上?
見上げると、それこそこんな場所に何故いるのかと不思議になるような
翅をもつ少女が居た。どうやらよんだのは彼女。
ついてこい…ということらしいが…
「なんだ、ありゃ…」
突然の出来事に混乱する。
場所が場所だけに罠ということも考えられたが…とりあえず、従ってみることにした。
招かれた道へと小走りに向かう。
■パンドラ > 「…………。」
行先は袋小路。
妖精の少女が片手をふ、と動かすと、即座に地面がせり上がり、壁となってその区画を遮断した。
即席の壁の向こう側から、居たか? あの小僧どこへ行った! などと言った怒声が僅かに聞こえてくる。
「……。追われているように、見えたの。ほとぼりが冷めるまで、ここに隠れているといい。」
■ブレイド > 撒いたと思ったが撒けていなかったようだ。
地の利は確実に向こうのものだし、声がしなかったものだからすっかり油断していた。
あのままだったら確実にまた鬼ごっこが始まっていたことだろう。
この少女が何者かはしらない。
妖精…?
ちいさいのは見たことあるが、人間大のものは初めてだ。
瞬時に壁を作るような魔法も使えるのだし、間違いはないだろう。
「お、おう…なんかすまねぇな。ありがとよ」
ひとまず礼を言ってから、ため息ひとつ。
■パンドラ > 「……。礼には及ばない。わたしは大地の妖精、パンドラ。不運な者に少しばかりの手を差し出すだけの善意はあるの。」
とん、と地面に降り立ち、ゆっくりと少年の近くへ歩いてくる。
そのまま、顔を覗き込むぐらいの距離まで近づいてきて。
「……。あなたは。……。えーと。……。この地の先住民、の。……。…………。なんだっけ?
……。とにかく、その強い魔力は、この国で迫害されている、ナントカ族のもの、だと、思うのだけれど。」
眉を下げて、訝るように首を左右にコテン、コテンと傾けながら顔を見ている。
何やら引っかかることがあるようだ。
「……。あなたの魔力の感じ、少し変。体の調子、良くなかったりしない?」
■ブレイド > 不運なもの…まぁ、確かにそうではあるが
ズバリと言われてしまうとなんとも複雑な心境だ。
覗き込んできた顔は、やはりこのあたりに不釣り合いなほどに整っている。
「助けてもらったんだから礼くらい言わせろよ。オレはブレイド…
あーまぁ、お察しの通りミレー族だ。ってか、妖精ってのはそういうのわかっちまうもんなのか」
ならばこのフードも無駄か。
ここに身を隠している間は外してしまってもいいかもしれない…が
何やら彼女はなにかが気になってる模様…少し、変?思い当たることと言えば…
「んー?そうかもな。少し前に吸血鬼…?に噛まれたことがあって、昼間はあまり、な」
彼女が妖精であるのならば、隠す必要もあまりないだろう。
■パンドラ > 「……。それじゃあ、どう致しましてと言い換えるの。」
礼ぐらい言わせろ、と言う少年に対しては、少し目線を泳がせて答えた。
「……。ブレイド。ブレイド。ブレイド。……。Blade(刃)? それともBraid(組み紐)?」
名前を聞いては、そんな取り留めのない質問を。
吸血鬼、と聞いては少し眉を潜めて。
「……。わたしがどうにかできるものではなさそう。ごめんなさい。
……。それはそれとして。」
ぐい、と密着しそうなほどに顔を近づける。
その目は好奇心と感動の心に満ち溢れていて。
「……。あなたはそこまでの不幸を背負っているのに、あなたの言動からは後ろ向きさを全く感じないの。
とても活力的で、精力的で。……。そして、魅力的。いったい、どうして?」
■ブレイド > 「変な名前…ってのはわかってるって。
意味までは聞いたことないんで知らねぇけどな」
彼女の問は、一瞬わからなかったが
無駄にいかつい名前である自覚はあった。
続く言葉には眉を寄せて謝るのだが、今度はこちらが不思議そうに首をかしげる。
「なんであやまんだよ。べつにいいって、なれちまったからどうにかしてほしいってもんでもねぇし
っと……と?」
気にするなと言おうとしたところ、急に距離を詰めてくる。
少しばかり驚いた。
「え?あ?魅力的……ってのはいいすぎじゃねぇのか?
まー…生まれの不幸なんてな嘆いてもしかたねーだろうし
噛まれたこと言ってんなら、噛んだ相手が相手だからな」
突然褒められると少しばかり照れくさい。
頬をかきつつも律儀に答える。
■パンドラ > 「……。変とは言っていない。名前には意味と想いが込められているの。わたしの名前は、『全ての贈り物』。」
謝るな、と言われては逆に面食らったように目を丸くして、首を傾げた。
「……。何もできないなら、最初から踏み入れるべきでないこともある。
あなたのそれは。……。そうではない、ということはわかった。」
が、若干驚いたもののすぐに納得した様子で。
そして彼を誉める言葉は、まだ続く。
「……。わたしが言っているのは、どちらもなの。
恵まれない生まれや環境でも腐らず、エネルギッシュに、真っ直ぐ生きていく姿に、わたしは憧れにも似た渇望を覚える。」
かつて、自身はそうすることができなかったが故に。
自分の持たない強さをブレイドの内に見つけた妖精は、興奮気味にそう話した。
■ブレイド > 「ふぅん、そういうものなのか。
へへ、あんたはなんかいい感じの意味じゃねぇか。
愛されてるって感じがしてさ」
彼女の過程に関してはまだわからない。
この言葉が傷つけることになるかもしれないが…それでも素直にいい名前だと思った。
「気になったもんを聞いただけだろ。パンドラはよ。
それをいちいち腹なんて立ててらんねーよ。
それでバカにされたってなら話は別だけどな」
冗談めかしつつも、彼女にその気がないのは
先から続く称賛にもにた言葉に現れている。
なんだかくすぐったくもあるが…
「あはは、そんないいもんでもねぇ…といいてぇけど、アンタがそう思ったなら
んー…なんていうかな…
ありがとよ、そんなふうに買ってくれてさ」
なんといっていいのか。やはり、こう言われると悪い気はしない。
■パンドラ > 「……。ありがとう。ブレイドも、わたしを愛してくれる?」
真顔で尋ねる。
それがどういった意味の言葉なのか、わかって言っているのかいないのか。
「……。その通り、なの。ブレイドは優しい人。自分の領分を踏み荒らされることを嫌う人も、中にはいるから。」
この少年は違う、と感じられた。
だからこの妖精は、もう少し踏み込んでみることにした。
相手の心と、体に。
「……。どう、致しまして。……。…………。」
そのまま、自分より少しだけ背の高い少年に、ひしっと抱き着こうとした。
彼女の体はとても軽く、抱き返せば折れてしまいそうに感じるほど細く、そして仄かに甘い香りが漂っている。
■ブレイド > 「ん?まぁ、助けてもらったしな。
嫌う要素はねぇよ。めちゃくちゃに褒められて少し照れちまうけどよ」
愛してくれるかと聞く妖精の少女。
どういう意味が込められているかはまだ読み取れないが
少なくとも今彼女を拒絶する理由はない。
「それこそ買いかぶりだっての。
パンドラは別に…う、お…?」
彼女に悪気があったわけじゃないのはわかる。
あったとしても、自分にそれはわからなかった。
ならば問題はない…と、伝えようとしたのだが、それよりも先に彼女に抱きつかれていた。
確かに路地は狭いが身体を密着させなければならないほどではない。
助けてくれた恩もあるが、流石に驚いてしまう。
「あ、えーっと……あー…そんな優しいわけじゃねぇから…
あんま近寄ると食われちまうかもしれねぇぞ?」
あまりに華奢な彼女の体、その細い腰に手を回し苦笑する顔は
少し赤く染まっている。
■パンドラ > 「……。ふふっ。それじゃあ、わたしもブレイドを愛してあげるの。」
意味深に微笑む妖精。
その笑みは、淫靡なそれのようにも見えて。
「……。わたしは、強い人が好き。強い雄が好き。雌でも好きだけれど。
……。食べたいのなら、食べてもいいよ。この国は、そういうところだから。」
ニコニコと笑いながら、抱き着いたまま上目遣いでブレイドの顔を見る。
妖精の顔も、ほんのりと赤みを増していて、誘っているのは明らかだった。
背伸びをして、顔をゆっくりと近づけていく。
■ブレイド > 「はは、そりゃありがてぇ。
妖精の加護とか祝福ってやつか?不運も今日まで…かもな」
パンドラの微笑みに笑顔を返すが
それよりも距離が近い。
見上げる微笑みは祝福以上に誘う少女のようだ。
「この国の流儀ってのは、好きじゃねぇな。オレはミレーだしよ。
食べやしねぇが、女に恥かかせる気はねえし…
なんつーか…オレだって男だ」
食べるなどと一方的な関係は趣味じゃない。
自分が食べるなら彼女も貪ってもらわねばフェアじゃない。
愛し合うというのなら、それこそ。
顔を寄せる妖精の唇、そっと自分の唇をそれに重ねて。