2019/04/28 のログ
■フラニエータ > 「…一昨日…ううん、生まれる前にでも…いらっしゃいな…」
声を掛けてきた鴨に向けられた小さな独り言は、なんとも女の性格を表しており、辛辣。
それだけ女の興味を惹かない人物だった様子だった。
そしてそんな女に、間髪入れず声をかける男性が一人。女は小さなため息を落とし、やれやれ、といった表情。
今度の鴨はどんな鴨なのか、とその男性を向く。
「……――…ッ…」
先程まで秋波を送り、細く流されていた女の瞳が見開いた。
その男性は見知った人物で、鴨なんかではない。食うつもりが食われ、飼うつもりが飼われる、そんな危険を孕んだ男性。
女は続けられる言葉にびくり、と肩を揺らすと、生唾を飲み込み、必死に表情を作る。
「…貴方、相変わらずね…」
小首を傾げ、己の横の席、スツールに掌を向ける。それが今、女の出来る精一杯。
■グライド > (女の、澄ました顔が、一瞬驚愕を彩るのに
愉快そうに笑みを深めては、肩を竦めた。
女の辛辣な評価を、果たして聞いたか聞かなかったか
傍に居たもう一人の男は、既に自分がお呼びで無いと言う事を察したか
静かに其の場から去って行った。)
「そうか? 俺様は常に正直だぜ、女の評価はな。」
(相変わらずだ、なんて言う物だから、ゆるりと首を傾げて見せよう。
横の席を促されるなら、くすりと笑って――首を、横に振る
席に座らず、此の儘で良い、と一言添えれば。)
「座っちまうのも悪かない、が…、……この角度で、御前さんを見詰めるのも悪かない。」
(其れに、腰が重くなっちまうからよ、と。
座らぬ理由を敢えて告げれば――其の背後、壁から少しだけ背を浮かせ
女の背後、其の肩へと片掌を乗せて、柔く触れるだろうか。
金属の小手は、外されている、硬質な冷たさでは無く、指先の温度が
女の肌へと、触れるだろうか)。
■フラニエータ > 己が促そうとも、その腰を浮かせたままの彼から視線を酒へと戻せば、一口含み、喉を潤す。
口元を緩ませてそそくさと席に座ってくる、女にとって鴨と成り得る人間とは違う彼。
「…そういう所も相変わらずだわ…本当、女を知り尽くしている男って…これだから…」
皮肉交じりの言葉も投げ掛けつつも、その表情は微かに微笑んでおり、この時間を楽しんでいる様子。
最後に彼と会ったのは、数ヶ月前、いやそれよりもまだ前か…そんな懐古の情もあるのだろう。
「…腰が重くなる?…これから用事でもあるのかしら……仕事では無さそうだけれど…――ッ…」
再び女の肩がびくりと揺れた。彼の大きな、無骨な掌が己の肩へと乗ってきたからだ。
彼の体温が指先から伝われば、女は肩口から体温を伝えさせられる。
そんな状況に、女は重ねて、これだから、と言葉を零す。
■グライド > (飲み物を、注文する様子は無い。
それが、男が此処で腰を落ち着け、長居する心算では無いと言う表れでも在るだろう。
用件について問われれば、再び、ゆるりと首を横に振る
仕事では無い、と、其れだけは否定して置きながら、するりと指先が、女の肩を柔く撫ぜ。)
「―――なぁに、簡単なこった。
折角こんな場所で、捕まえようとしたって捕まらん様な御前に逢ったんだ。
酒飲んで、潰れるだけじゃあ…勿体ねぇ、だろう?」
(酒を酌み交わす、と言うのならば其れも悪い事では無い。
此れだけの良い女を前に飲む酒は、間違い無く格別に美味い事だろう。
だが――其の贅沢を、あえて捨ててでも、もっと欲しい物は在る、と。
肩から滑る掌が、カウンターの端、壁際にて、他の客からは見えぬ位置
女の二の腕を滑り、そして、脇腹から腰元へと落ちる。
そうして、柔く腰裏を、撫ぜる様にしてから――するりと、ただ、意識させるだけで掌を離して。)
「――――……御前を連れて帰るにゃ、な。」
■フラニエータ > 席に座らず注文をしない彼の手が己の肩の上にある。そして彼の言葉は、如何にも己を誘うような言葉。
それに加えて彼が仕事を否定すれば、意図は自ずと導かれる。
「…あら、そんなに私、捕まえるのが難しいのかしら…そんな心算は無いのだけれど…?
現にこうやって…貴方の言葉を聴いて…貴方の掌を受け入れて…貴方の欲を満たしつつあるでしょう?」
飄々と告げながら肩に乗った彼の掌に、己の掌を乗せ、重ね、彼の指の間に己の指を滑り込ませ。
しかしその手は己の手から逃げるように、緩く肩から下りていく。
「…――んッ…」
彼の掌が甘い刺激を腰に届けた。女はその刺激に小さな甘い声を漏らすも、
離されていく掌、続かれる彼の言葉に絆される事も無く返答する。
「…あら、家までエスコートしてくれるの?…夜道は怖いけれど、貴方ほどじゃないかも、ね…クク…」
女の手が解け、逃げていく彼の掌を追う。その手を掴む事が出来れば、再び彼の掌を己の腰へと導くだろう。
もっと愉しませて、と。
■グライド > (―――そうして、まるで軟派師の如き手管で女の瞳を隣から覗き込む。
此方の言葉を躱すかに、家までのエスコート、と言葉を返した女に
口端を僅かに吊り上げ、僅かに肩を揺らせば。)
「―――……御前はそう言う女さ。
男が必死になって捕まえようとすればする程、指の隙間からすり抜けちまう。」
(まるで雲をつかむ様に、風を掴む様に。
誘われる男をあしらい、煙に巻き、伸ばされる腕から軽やかに逃げて仕舞う。
それが、己が感じた、女の本質だ。 だからこそ――必要なのは、捕まえる事じゃない。
離れかけた掌が、再び女の腰元に誘われる。
自ら招く意味を、言葉にせずとも理解したなら。
緩やかに再び、女の腰元を指先が、掌が擽り、甘く撫ぜるだろう。
今度は、離れる事は無い。 其の肌を、或いは、其の奥を、愛でる様に。)
「……そんじょそこいらの連中よりは、護衛向きだぜ?」
(先刻よりも、近くで言葉が女へ触れる。
鼓膜へと流し込まれるような距離で、明確に――女にだけ聞こえる声音で
もうひとつ、告げられるだろう――女の名を、己に許された呼び名を、呼ぶ声が)
■フラニエータ > 難色を示しているようで、楽しんでいるようにも見える彼。
言葉での鬩ぎ合いが続けられる中、女は己を評価するような言葉に、くすりと笑う。
「…簡単に捕まるような女が好みには見えないのだけれど…?
――難しい方が愉しい…そうでしょう?私だってそうだもの…」
捕まえてくるような男は、ある意味男らしく、包容力もある様に見え、女の興味を擽るだろう。
しかし女が望むのは、捕まるように仕向ける男、なのだ。
己が導いた彼の手、それは女の腰を撫で擽り、弄ぶ。女はそんな手に掌を重ね、優しく指を絡ませ、爪で軟く掻く。
「…護衛を貴方にお願いすると…高くつきそうだわ…んぅッ…く…
なぁに?…お酒もゆっくり飲ませてくれないの?一応私…飲みに来ているのだけれど…?」
耳を襲う甘やかな言葉は己の名。それは彼の吐息に乗り、女の耳を擽り、鼓膜を揺らす。
そんな刺激を受けながらも、黒ビールを一口含み、ごくり、と喉を鳴らした。
押し出てくる甘い溜息を酒に乗せ、流し込むように。
■グライド > 「良い女なら、そんな女でも構わねぇぜ。
勿論大抵は、ただ容易く捕まるだけじゃない「何か」が在るがよ。
其れが、良い女って奴だ。 ……だが、御前みたいなのも、俺にとっちゃ特上の良い女、だ。」
(――この女に必要なのは、捕まえて閉じ込める努力では無い。
媚びる必要も無い、ただ、己と言う器を示せば良い。
評価は、何よりも女自身が下すのだ、ならば――焦る必要が、何処に在ろう。
端の方に居る事を幸いに、密やかな指先同士の触れ合いが、交わされる。
酒を喉に流し込む、女の声音が僅かに跳ねるなら、煽る様に指先が、尾てい骨の辺りを掠める様に。)
「……さて、如何だろうな。 安請け合いはしない主義なのは、間違いないが。
……は、邪魔する心算は無いぜ。 飲みながらでも、愉しめるだろうよ。」
(――そうして、指先が再び、女の腰へと戻れば。
今度は脇腹の辺りを通り、回される腕が、女の下腹へと滑り込んで。
服の上から、丁度臍下の辺りを柔く捕えて、きゅう、と、甘く圧する、か。
まるで、奥底を、揺らす様に)。
■フラニエータ > 「…私にとって貴方は…凄く扱い辛い男よ。良くも悪くも、ね…
そんな言葉を簡単に吐けてしまう、そんな貴方が憎くも、好ましくもあるの。
――本当、嫌な男だわ…」
もう一度、ぐびりと酒を飲む。残った酒は後、一口か二口、そんな所。
カウンターの下で女と彼の指がゆっくりと擽り合い、高め合う中、カウンターの上では言葉での探り合いが続けられている。
彼の指先が女の尻へと向かい、少さな刺激を与えれば、その刺激に耐えかねた吐息が、微かに漏れ。
「…フフ…私の価値と…貴方への対価…差し引きすればどの位になるのかしら…ね…
ん…ッ…は……」
腹へ、その奥へと少々強い刺激を与えられれば、吐く息は大きくなり。
それを堪え、流し込むかのようにまた、酒を飲む女。
そして…女のグラスがついに空になる。
女の左手は己の腹を撫でる彼の手の上に。
女の右手は懐から探り出した酒代をカウンターの上に。
その状態から、重ねあっている彼の手を腹から下ろさせ、ほんの少し引き、席を立った。
そして絡み合った糸が解れるかのように、するりと彼の手から女の手が抜け落ちる。
「…で…送ってくれるの?…なら、いらっしゃいな…」
女はその言葉を彼に伝えると、彼の方を振り向かずに酒場の扉を開け、外に出た。
すっかりと熱を帯びた体が冷めるには少しばかり暖かすぎる気候。
女はどうやって、その熱を冷ますのか…。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からフラニエータさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からグライドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイグナスさんが現れました。
■イグナス > 貧民地区の路地裏、昼間でも薄暗く好んで立ち入る場所ではない。
そんな路地裏を大きな大きな大男が、やや足早に歩いていた。
小脇には紙袋を抱えて、路地の十字で立ち止まれば、さてと、ぐるりと見まわした。
「……まいったな。慣れねェトコは、コレだ。」
どうやら、迷っているらしい。
貧民地区にしかない店ゆえに立ち寄ったはいいが、奥の奥にある店から表に出るのは、なかなか難儀なことだった。
これが昼間でよかった。ついでにいえば、この体躯や見た目のお陰で、面倒な連中に絡まれないのも楽ではあった。
――道がわかるようになるわけじゃ、ないのだけど。