2019/04/15 のログ
■ジナイダ > 「あァ!? 誰だお前……黙ってろだぁ? ……あぁそうだよ悪いかよ。ってことはお前が受取人か?」
扉が開かれると、男が一人入ってきた。
運び屋としての仕事は事実上失敗しているせいか、少女はバツの悪そうな表情を浮かべていた。
もぞもぞと体の向きを変えて地面に座り込むと、男のことを正面から見据えた。
「は? お前が受取人じゃないのか?」
受取人は大抵の場合、後ろめたい目的があるため素性を隠すものだ。
男が依頼人ではないことに気がついた女は、荷物を取られてしまうのではと焦りを浮かべた。
だが、拘束されている身である。荷物を奪還することは難しい。依頼は失敗したようなものだった。
「……それは、まぁ……俺が悪かったけどよぉ……。
待て! 縄くらい解いていってくれてもいいだろが!」
立ち去られてしまってはまずい。
少女は大声を上げると、芋虫スタイルのまま立ち上がろうとしてまたこけてうつ伏せに倒れた。
■カーレル > もぞもぞと這いつくばりながら凄まれても全く怖くない
というか、声を聞けばまだまだ年若い人物、それも女のようだと判る
「俺の仕事は簡単に言えばフィルターみたいなもんさ…
俺みたいなのを何人か経由させる事で本当の荷物を受け取る誰かを暈すってワケ
俺に依頼よこした人間がこの荷物を必要としているとは限らないって話…」
縛られている彼女へと視線を向ける。彼女のような年若い女に荷を運ばせるのもまた、偽装のためだろう
言いたい事も言ったし、説明できる事もしたので、荷物を手に去ろうとすれば背後から呼び止められる
そんな声、無視しても良かったが、年若い女が春先とは言え倉庫でふん縛られているのも哀れに思ってしまった
「………解いてやってもいいけど、それ俺に何かメリットあるわけ?
トラブルはあったが、アンタは仕事を完遂した。まあ、俺に貸しは作ったけれどな
そんでさらに助けてくれと俺に貸しを作るわけだが…それでも構わんか?
…前もって言っておくと誠意は金銭で頼みたい所だが」
恩着せがましく彼女に伝えればうつ伏せに倒れた彼女の側に寄って膝を折る
どうするね?と首を傾げて彼女を見下ろした
■ジナイダ > 拘束さえされていなければ男の胸倉掴んで食ってかかってもいいくらいだった。
拘束されていなければ。腕と足を戒める縄さえなければ、だ。たらればにすぎない。
少女は男の説明を黙って聞いていた。男の素性はわからないが、どうやら自分は仕事を一応はこなせたという扱いになるらしい。
哀れみの視線を送ってくることに我慢できなくなってきたか、格好の情けなさのせいか頬が徐々に紅潮してきた。
「そーかよ………じゃ俺は都合のいい駒にされたってことかよ、胸糞わりぃ……。
早く解けってば。あぁ? 解けって……」
男が接近してくると、屈み込む。
少女がどれだけ睨みつけても縛られているため迫力は無いだろう。片方の目で睨んで、唇をかみ締めて、屈辱に耐えるばかり。
「メリットってなぁ……くっ、どいつもこいつもこれだ。
金銭でって……………今は持ち合わせが無い。財布も全部持っていかれちまったしよ……。
何かほかの事で返すか、後払いにするかはおま……アンタが決めてくれよ」
宵越しの金は持たぬ主義―――とは聞こえがいいが、現状素寒貧の少女に支払える金など一硬貨たりともなかった。
お前からアンタに一段階人称を上げつつ、判断を委ねることにした。
■カーレル > 胸糞悪い、なんて彼女が口にするから、くくく、と喉を鳴らすようにして笑う
自分より年若い彼女にしたらそうなのかもしれない、かつて自分もこんな風に境遇を呪った事があったろうか?
「そんな事、言ったっら俺だって駒だしな…
まあ、金貰えるんだったら駒にだって何にだってなるけども」
頬を赤くしつつも唇を噛み締める彼女の表情
そんな様子に若いなあ…なんて心の中で思ってしまう。生きているだけでも儲けものと割り切るには
まだまだ人生経験が足りないのだろうか?…と考えた所で、自分の老成した思考にゾッとした
「そりゃあ、そうさ。だが、考えてもみな、神様ですらお布施したって救っちゃくれないが、
俺は幾らかの金銭で助けてやろうって言ってんだ…神に祈るよりは余程、現実的な選択肢だろ?」
彼女の事情を聞けば声を出して笑う
運び屋の仕事に失敗して、簀巻きにされてこんな所に放り込まれる彼女に持ち合わせがあるようには思えない
任せる、と言われれば、そうだな…と思案顔を浮かべてから、改めて彼女に提案する
「『お願いします、カーレルさん』で今のところは助けてやる
どうだ?あと、俺の事はちゃんと「さん」付けで呼べ。あと貸しは貸しだからな?
羽振りの良い時に金を渡してくれてもいいし、俺が頼み事をしたい時に手助けしてくれたって良い」
手の内で器用にナイフを弄び、首を傾げて彼女の答えを待つ
■ジナイダ > 「金で買える神ってわけかよ、くそっ。ここいらの神様ってのは随分現実的なんだな」
だが金で買える神ならば、それほど手軽なものはいない。
悔しいが男の言うことはもっともなのだった。このチャンスをふいにすれば、倉庫で誰かが来るまで待つか、外で野垂れ死にか、奴隷にされるかくらいだ。
声を上げて笑う男とは対照的に、少女は不満そうにむっつり唇をかみ締めていた。
「カーレルぅ? 変わった名前してやがんなアンタ。
さんね、はー、くそっ、わかったって……カーレル……さん」
男がナイフを取り出した。ナイフさえあればなんとかなったのだと、改めて悔しさがにじみ出る。
屈辱にぎりぎりと歯を食いしばりつつ、祈りを捧げるが如く、両腕を男の方に差し出してナイフの切断を要求する。
「俺はジナイダ。ファミリーネームは………忘れた。好きに呼べ。
わかったよ金が欲しけりゃくれてやるし、手助けだってやってやるよ。ほら、切ってくれ」
降参と言わんばかりに首を振りつつ、ずいずいと腕を伸ばしていく。
ロープさえ切ってくれれば、それだけで解決することなのだ。
■カーレル > 「俺は神様じゃないからな…飯も食いたいし酒も飲む。たまには女だって抱きたくなる」
となると金が必要というわけである
不満げな彼女にニヤニヤしつつ、彼女が自分の名前を呼べば、腕を伸ばしてわしゃくしゃ、と頭を撫でようと
「良い子だ、ジナ…素直ってのは美点だ
ツンツンしてるより、よっぽど長生き出来る。尖って叫び散らして立って誰も助けちゃくれまいよ」
歯ぎしりのする様子に差し出された両腕を眺めつつ、動くなよと告げるとスパッと結び目を切り拘束を解く
続けて立ち上がれば彼女の足の方へと向かい、ジッとしているように促せば同じように縄を切り彼女を開放して
「よし、こんなものか…
妙な薬を吸わされたり、魔術くらったりはしてないな?」
いつの間にか手に持っていたナイフはそこから消えており、短くなった煙草を落として踏みつける
ぱんぱん、と一仕事終えたていで軽く手を打てば、脇に荷物を抱えたまま彼女へと視線を向けた
まあ、あれだけ減らず口をたたけるのであれば身体の方は傷以外は問題ないのであろうが
■ジナイダ > かつてならともかく、今は無一文に近い状況だった。
どの時代国でも必要な金さえあればと失われてしまった財布のことがなおさら悔やまれる。
男がナイフでロープを手際よく切断していく。まず腕。次に足。拘束が解かれ自由になった。
伸びて来た手は、上半身を拳闘士よろしくスウェーさせて回避。
少女は腕やら足やらの調子を見てから立ち上がると、腕を組み、男を見上げた。背丈は一回りも二回りも男のほうが高い。
「ジナ言うなコラ。誰がツンツンだ。感謝はしてるけどよぉ、略すな、触るな。俺は子供じゃねーよ!」
ツンツンした態度は崩さない。腕を組み、無い胸を張って背丈の幅を埋めようとしている。
「あー、ない。と思う。わからん。ずっと寝てたし………いまんとこおかしなことにはなってねぇと思う」
己の手首を見、足を見、息を吸ったり吐いたりしてみる。
少なくとも何もされてはいないようだったが、殴られた頭はいたいし、腹もいたいし、足取りもどこかふらふらとしている。
「ありがとな。……んで、後で金でも渡しゃあいいわけか」
腕を組みなおすと、また男を見上げる。目を細めたり睨みつけたりと忙しい。
■カーレル > 縛られている割に身体がよく動く。頭をわしゃくしゃにしようとした腕もひょい、と回避されてしまった
いきなり現れた男にわしゃくしゃされるのもあまり気分が良いものでもないだろうけれども
「子供はみんなそう言うんだよジナ…特に虚勢張ってるヤツは大抵、そんなもんだ
感謝…?誠意は金額で見せてほしいね、ジナ」
言うな、と呼ばれたのからかうように彼女の名前を何度も口にする
ロープから開放されれば腕を組んだり、薄い胸を張ってみたりとする彼女に忙しいヤツだな…と内心思う
「そうか…気分悪くなったら、貧民街のミレーの薬師の爺のトコにいけ
気難しいが薬に関しちゃここいらで一番詳しい…料金も…まあ、ここいらじゃ良心的な方だ」
貸しを返してもらうまでは死んでもらって困る
薬師の住む場所を簡単に説明しながら、何となく彼女に視線を向けるが…言葉通り今のところは平気そうに見える
となれば、自分は自分の仕事をさっさと済ませておきたい
この荷物をさっさと手放して依頼料を貰わなければ、食事も酒もお預けである
「…金でも手助けでも構わんよ
身体で返す、なんて口にするにゃ色気と胸が足りなすぎる、じゃあなジナ」
ふわふわ、と手を振りながら彼女に背中を向けて倉庫の出口へ歩きはじめた
■ジナイダ > 悲しいかな、どれだけ頑張っても背丈の差を埋めることはできなかった。
「アァ!? ジナって呼ぶなこのヤロー!」
ジナ呼びが余程気に触るのか、腕を上げて猛抗議。もっとも、少女を子ども扱いする男には通用しないだろうが。
「自慢じゃないが薬買えるだけの金持ってないぞ。財布すられたからな…………。
とりあえずアンタのお陰で仕事は一応完了したっぽい扱いになると思うから、報酬貰いにいくさ」
不幸中の幸いと言うべきか、報酬はもらえるのだ。貰っておかねば。
足が若干ふらついている以外は元気なように見える少女は、男が外に出ようと歩き始めると、その横に並んだ。
負けるものかと早足で。
「ハァァァァ!? オイ、待てや! 誰が胸無しだ殺すぞ! しかもジナって呼びやがってぇぇぇぇ! 待て!」
胸無し呼ばわりされ、かちんと来た。
男掴みかからんばかりに大声を張り上げ顔を真っ赤にして抗議にかかる。もとい、謝罪を要求し始める。
そうして二人は倉庫から去っていった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/倉庫」からジナイダさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/倉庫」からカーレルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/裏路地」にハーティリアさんが現れました。
■ハーティリア > 春の暖かさがほんのりと漂うようになった王都の片隅に、ひんやりと…冬のような冷たさと甘い香りがただよう一角。
木箱に腰掛け、夜闇の中…動かなければまるで彫像かなにかのように一種作り物めいた造形の美女めいた風貌が……ゆるりと目を開ける。
「……おっと、もうこんな時間か。記憶の整理してるとどうにも、時間がかかる。ん、ぅぅ……っ!」
ふぁ、と欠伸のような仕草を交えてグッと伸びをすれば、何時からその体勢でいたのか、バキバキッ、と強張った体が音を立てた。
人気のほとんどない路地の中、体をほぐしながら歩きだせば、冷気と甘い匂いがまるで付いてくるように、ふわりと動き出す。
そのまま、今は誰も居ないように見える、誰かが居た「痕跡」だけはある路地をカツカツと足音を立ててあるき始める。
■ハーティリア > さて、これからどうしようか。このまま散歩、と洒落込むにはいささか雰囲気のない路地は、しかし暇つぶしの何かが起きれば良いなと期待してのこと。
最近、帝国からの公主がやってきたとかで、富裕地区と王宮は乱痴気騒ぎとのことだし、その騒ぎにこっそり混ざってみるのも面白いかもしれない。
あるいは、転移でどこか別の街にでも言ってみるかいやいや、冒険者として依頼でも受けたほうが手っ取り早く暇を潰せるだろうか。
「……色々考えはするものの、いざ暇になったら、これがしたいって決まらねぇもんだなぁ。」
研究したい魔法や薬剤も今はないしなぁ、とボヤきながら、背中に背負った箒の柄を指先がするりと撫でると、ふわりとひとりでに浮き上がって眼の前に。
「今はちょっとしまっとくか。」
それをするりと撫でると、箒はどこかへと消えてなくなり。
鞄を抱えた甘い香りの美女に見える何かだけがそこにのこる。