2019/03/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にヴィオラさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からヴィオラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にヴィオラさんが現れました。
ヴィオラ > カツ、カツ、往来に女のヒールの音が鳴り響く。
それが裏路地に消えたかと思うと、また往来に戻ってきて立ち止まった。
注がれる日差しを忌々しげに睨み上げながら口をへの字に曲げる。

「迷ったか」

途方にくれるとはこういうことを言うのだろう。
少ない住民の奇異の視線をも浴びながら周囲を見渡す。
適当に人間を捕まえて案内でもさせようと、そういう心算だった。

ヴィオラ > 「そこの者、案内をせよ」

声を掛けたのは物乞いの一人である。
物乞いは薄汚れた体を小さく縮こまらせて萎縮し、小声でご勘弁を……等とのたまう。
女の視線に剣呑なモノを感じたのか、はたまた取って食われるとでも思ったのか。
どちらにせよ自身の高圧的な態度が原因であることは否めない。改めるべきだろう。

「…………」

口を半ばまで開いて硬直する。おのずとそれが無理難題だと知れた。
気付けば物乞いは這うようにしてその場から離れていく。
ふん、と不愉快そうに鼻を鳴らしてそれを見送った。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 平民地区や商店街の賑わいとは程遠い貧民地区の路地の静けさ。
時折聞こえる音といえば、物乞いの呻きや、すれた野良犬や野良猫の鳴き声、
ゴミが風に流される音。

そのなかでひときわ目立つ女のヒールの音。
そして…反対側の路地から聞こえてくるのは、歩幅の狭い駆ける音。

小柄な少年が両手で抱える紙袋いっぱいに、薬の材料や薬草、食料をかかえて裏路地を通ろうとしていた。

「う~っ…買いすぎちゃった… うあっ…?」

舗装が行き届かない荒れた路地に躓いた拍子に、
紙袋の中からいくつかの、どぎつい桃色の林檎のような果実や、幾何学模様の野菜、虹色の液体の入った瓶…と、
普通に暮らしていたらお目にかかれないものがあれこれ飛び出し、落としてしまう。

鼻を鳴らす女から数歩の距離の曲がり角から、
躓く声と同時に、それらが床に散らばった。

「わっ…す、すみません。」

相手にそれらがぶつかったり、靴を汚してない…と思うが、
驚かせてしまったかもしれないと、曲がり角から出てきた少年が、挨拶がてらに謝罪して。

ヴィオラ > そこへ何者かの駆け足が聞こえてきて視線を向ける。
奇襲の類ではないだろうが、このような場所で先を急ぐ者など大抵碌な者ではない。
しかしそれが勘違いであることはすぐに知れた。

「かまわん。さっさと拾うがいい」

足元に転がってきた果物や野菜を一瞥しても、あえて拾うことはしない。
地に落ちた物を拾うという発想がそもそもないのだ。
ただ、意外な闖入者である少年には興味が引かれた。
このような場所に似つかわしくない、純朴そうな少年である。

「このような場所へ使いか」

少しだけ、身を案じるような色が声に混じる。
案内させがてら守ってやるのもよかろうなと、老婆心を働かせる。

タン・フィール > ぺこりと小さくお辞儀をして、言われるままに手際よく1つ2つとぶちまけた袋の中身を回収していく。

「あ…どうも」

路地の隅や角から、ここの住人達が落とし物に対して一瞬、集ろうと腰をあげるが、
先んじてご勘弁願った物乞いと同質の萎縮した目が女をとらえると、
すごすごと再び隅に舞い戻った。
…少年一人だったら、どうなっていたことだろう。

「ああ、お使いっていうか…自分のお店で出すお薬の材料です。
ここを通らないと買えないものもあって。」

と、この歳と姿にして、店を構えていることを明かす。
尋ねられたと同時に少年の大きな目が、女性の身なりの良さを改めて見直すと、
紙袋をぎゅっと抱えながら不思議そうに首を傾げて

「ええと…貴女は、どうしてこんな… ここに?」

【こんなところ】と口にするのは、少し気が引ける少年。

ヴィオラ > 「……薬とはそれのことか。その歳で店を構えるとは優秀だな」

少年が拾い上げている物の一つ、薬瓶に気付いて一人ごちる。
何にせよこの少年の存在は自分にとって非常に都合が良かった。

「ああ……道に、迷ってな」

言ってすぐに気恥ずかしさに襲われる。これでは立場が逆ではないかと。
それを隠すために顔をしかめながら明後日の方向を見やる。

「特別に案内することを許す。
 そうすれば駄賃の一つでも……いや、褒美をとらそう」

相手が手に職を持っている一端だと思い出して言い直す。

タン・フィール > 「あ、あぁ、これ… ハイ。」

女性が視界の端に留めた薬瓶…
それはこの貧民街の奥の露天で手に入る、淫魔の唾液と性液を、
新鮮さを保つ蜜に混ぜたホムンクルスや長寿の薬を使う時の触媒。

ひと目でそれと分かるものではないが、なんだか少年も気恥ずかしくて、すぐにサッと袋の奥にしまいこむ。

「―――あはは、嬉しいです。
…お師匠の、魔女さまにはまだまだ全然かなわないですけど…
でも、冒険者のヒトや、貴族王族のヒトにも、最近よくしてもらってます。

…ご褒美…ええっ…そんな、どうしよう。」

明後日の方向を見る気恥ずかしそうな女性に、
…それを見抜いたか気づいたかは定かではないが微笑んで答える。

駄賃か褒美か、との言葉に、女性の身なりや口調から、
ただの案内に不釣り合いな褒美を下賜されたらどうしよう…と、
呑気に照れ笑いをしつつ…それを遠慮も断りもしないのは、
少年だからか、案外逞しいからか。


「このあたり、迷路みたいですもんね。
ええと…王都の、どのあたりに行きましょう?」

と、どの道に出るにしても進んだほうが良い道の方へ踏み出しながら尋ねる。

案内がてら先を進みつつ、ときどき、ちゃんとついてきているか確かめるように振り返る仕草は、
どこか散歩中の子犬のようで。

ヴィオラ > 「大したものだ。誇ってよいぞ。
 己の糧を自らの力で勝ち取れる者は好ましい」

よく見れば幼い顔立ちも中々どうして悪くない。
微笑みに釣られて己の唇の端が釣り上がるのを自覚しながら、
少年の歩みにカツカツとヒールを鳴らして追従する。

「王都の中であればどこでもよい。いわゆる物見の最中だからな。
 ああ、おぬしの店でもよいぞ。些か興味がある」

時折こちらを振り返る様子を微笑ましく眺めながらそう言い返す。
興味があるのは薬ではなく久しく合間見えた少年という存在に、なのだが。

タン・フィール > 「わかりました、ではこちらへ…」

険しい…とまでは行かずとも、人によっては高圧的で近寄りがたくすらある、
女性の気品に満ちた貌が、何であれ口の端がゆるめば、
嬉しそうに弾む少年の足音。

その足取りは、裏路地からそう歩かされることもない近道を通って、
郊外の少年の薬屋へと案内する―――。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からタン・フィールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からヴィオラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」にジードさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」からジードさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」にジードさんが現れました。
ジード > 貧民地区の路地裏の一つ。大通りの裏側に位置するちょっとした路地裏。
その中でも少し広くなった場所に荷物を広げて陣取っている露天があった。
並べてあるのは薬やアクセサリー類、いわば色街向けの商品の数々である。
普段であればそれなりに人の通る道ではあるのだが――

「場所が悪いのか、本当に人が通らないねえ。
 まあ仕方ないと言えば仕方ないんだろうけど」

そんなボヤキと共に閑古鳥の鳴いている道を見回して嘆息一つ。
生憎と一緒に過ごす相手も居ない身の上としてはせっかくの稼ぎ時、
と意気込んできたのだがそうそううまくは行かないようだ。