2019/03/04 のログ
■イグナス > 墓場と来たか。その物言いについ、苦笑いする。
もちろん、彼女の言葉の意味は分かる。ああ、きっと、そういう面も強い場所。
「…だがまあ、アレだ。お前もおれも、生きてる。
墓場みてェかもしれンけどな。墓場じゃあ、なかろうさ。」
けれど頭を振って言葉を。
墓場みたい、で済んでる間はまだマシなんだろう、なんて。
――さてそれはともかく、どうも救世主にぶち当たれたようだ。
ほう、と大男は胸をなでおろして。
「おう、いやァ、助かる。——おン?もちろんだ。
…別に急ぎやしねェしな。」
腹は減ったが、とからりと笑って付け加えるも。
もう一度だけその紫色を一瞥してから視線を伏せる。
行こうか、と催促を一つ。
■モカ > 「そうだね……でも、墓場じゃないから、誰も弔ってくれない」
彼の言う通り、ここは墓場のようだが貧民地区の路地裏の一角。
誰もとは言わないが、人々が通り抜ける通路の中で、入り組んで寄り付かない場所。
暗いことを言うつもりではなかったが、真顔のままポツリと呟いてから間を置き……はっとした様子で彼を見上げた。
「……ごめんね、何か暗い言い方になっちゃった。 うん、ありがとう……じゃあ、こっち」
意味深な言い方になったことを謝罪すると、彼の明るい笑みと言葉につられて、柔らかに微笑みを浮かべていく。
促す言葉に小さく頷くと、背中を向け、行く先を示すように歩みだす。
揺れる銀糸から溢れるバニラの様な甘い香りが、薄っすらと道標の様に残っていき、数mほど進んだところで、左へと曲がっていく。
そこにあるのは、光の届かぬ行き止まり。
屋根が重なって日を遮り、木箱に奥が見えづらいそこへ分け入ると、カンテラを傍らにおいてしゃがみ込む。
魔石を手の合間に挟むようにして瞳を閉ざすと、紡ぎ出すのはここらでは聞き慣れぬだろう言語の祈り。
その言葉と共に、周囲に薄っすらと瘴気にも似た風が淡く吹き抜けていくと、いつの間にか手にしていた石は、懐刀へと変わり、両刃のそれを地面に突き刺していく。
淡く黒いてかりを見せる刀身と、シンプルな柄に鍔の墓標を立てると、深呼吸と共に立ち上がり、彼へと振り返っていく。
「おまたせ……もう、大丈夫」
これで用事は済んだと苦笑いを浮かべて。
■イグナス > 少々くらいの位、別にいい。
己は底抜けに明るいから、そういう役割の人間もきっと、必要なんだろう。
「………、何を。」
甘い匂いをたどって彼女の後ろをついていく。すこしくらりとする。
呼吸を一つ、行き止まりの奥での有様を、じっと見つめた。
「…お、う。——………魔術師、か?」
振り返る彼女と、その奥の地面に突き刺さった懐刀。
それと彼女とを見比べて、ふむ、と首を傾けた。何をしていたかは理解できない。
いや、墓、か――?
「…………こんな場所でも弔われるンなら、幸せなことだろうな。」
もう一度だけその場所を見遣ってから視線を外す。
いくか、と提案を。
■モカ > 「……魔術師、というよりは…シャーマンかな」
唱え終わった後、自分でもよくわかってなさそうな様子で呟くと、短剣を突き立てていく。
刃の墓が出来上がると、立ち込めた瘴気の気配はすっと晴れていき、冷たい空気だけが残っていった。
「……そう思ってくれる気持ちも、この子を安らかにしてくれる。ありがとう」
彼の一言に嬉しそうに答えながら振り返り、先程よりも深くなる微笑みで見つめ返す。
御礼の言葉を墓の主の代わりに告げると、促す言葉に頷いて再び細道を歩き出した。
徐々に喧騒が近く聞こえてくれば、建物の間からも賑わいの明かりが差し込んでくるはず。
「そういえば……お名前、聞いてなかった。私はモカ、名字はないよ。お兄さんは……傭兵さん?」
途中から歩みを少し遅くして、彼の隣へと並ぶと簡単な自己紹介と問いを。
背丈の差もあって、隣に歩くと彼の手の甲に銀糸が淡く擦れて擽ったいかもしれないが。
■イグナス > 「シャーマン。」
なるほど。やはり己の及ぶ範疇のことではなかったが、納得だけは。
消えていく瘴気になんとなく、その性質をうかがい知る程度だ。
礼には首を振った。礼を言われるほどのことは、ないのだ。
実際振り返って歩き始めれば、先ほどまでの光景は記憶の奥へ。
「…あー、そういえば、そうか。
おれもイグナスと、そう呼んでくれりゃあいい。……冒険者だよ。」
確かにこの風貌、このいかつさでは傭兵の方が言葉としては似あうかもしれない。
実際ほら、傭兵だってしてはいるんだが。
――ふいに、擦れてくる銀糸のくすぐったさに手を伸ばして。
…くしゃり、髪を撫ぜた。くしゃくしゃ
■モカ > こくりと頷いて、歩き続ける。
二人が立ち去った後も、そこに残った何かは静かに消えていくのだろう。
「イグナス……うん、覚えた。冒険者……」
今更ながらにお互いの名を確かめながら歩いていくと、繰り返す合間に銀糸に掌が重なった。
彼の大きな手から擦れば、子供の様に小さな頭なことだろうから、すっぽりと収まるサイズ感のハズ。
そして、子供扱いに撫でられるたびに、銀糸はさらさらと絹のように指の合間をすり抜けて、先程の甘い香りが少し強くなっていく。
掌が重なった瞬間に、仔猫のようにビクリと跳ねながらも、撫でられる合間、大人しくされるがまま。
そのまま銀糸のヴェールの下から、彼をじっと見上げると、眉を顰めて笑う。
「イグナスからみたら……子供だよね、私」
背も小さければ、胸も小さい。
最近物知らずだと叱られたこともあって、少し自身の幼い部分が淡いコンプレックスとなっていた。
子供っぽいのだから仕方ないと、自分に言い聞かせるように呟きながらも、満更でもない様にその手に少しだけスリついていく。
■イグナス > 「おう、よろしくな、モカ。」
確かに彼女の身体は小さくて、頭撫ぜてたら、本当子供のようだ。
居座りがいいというか、心地がいいというか。
髪に指を絡めて、くしゃくしゃ、わしゃわしゃ。
――抵抗あるかなって思ったけど、そんなこともない。むしろ従順だ。
問いかけに、…く、く、と喉を鳴らして。
「なんだ?モカ、お前、気にしているのか、そういうことを。
…俺からみりゃ、ちっこいがな、みんな。
でも――ちゃんと女だ。お前にも欲情するぞ、俺ァ。」
なんて、自信満々に言う。そりゃあもう、聞く人が聞けば顰蹙モノ。
さて彼女であっても、どうだろうか。嫌がられて逃げられても仕方ないが。
あんまりそいういうのを考えずに素直に感想、口に出て。
■モカ > 名前を呼ばれ、小さく頷きながら撫でられ続ける。
指の合間をするりと滑り落ち、一つも絡む事なく綺麗に流れ落ちていく。
猫毛の様に細く柔らかい毛質なのもあってか、指にかかる感触もふわりと綿にふれるように軽い感触も与えていった。
頭を擦り寄せたのも、彼の無害な感じと無意識に抱える寂しさを埋めるため、なのかもしれない。
降り注ぐ笑い声に、訝しむように眉を顰めて彼を見上げると、何故か自信満々の笑みがあり、より一層謎は深まった。
「……? 気にする…うん、少し無防備だって最近――…っ!?」
そういうところが幼く見えるのだろうかと、思っていたより子供だった自分に小さなショックを覚えつつ、苦笑いを作ろうとした瞬間。
続く言葉に紫色がわずかに見開かれて硬直し、唇がはくはくと空気を求めるように蠢く。
そして、一間遅れて頬に一気に熱が駆け上ると、白磁の肌が朱色に染まった慌てふためきながら、そっぽを向いてしまう。
「そ、そういう意味で言ったわけじゃなくて……っ」
性的な意味ではないというのは自身でもわかるも、それを説明する言葉が瞬時に浮かばない。
そっぽを向いたまま硬直してしまい、歩みも一度止まってしまう。
■イグナス > 柔らかな感触がつい楽しくて、指を髪にからめて、ほどいて。そんな遊びもして、すう、と緩く撫ぜてやってたら。
―――…おや?この答え方ではよくなかったろうか。
ああ、むしろこの返しに、完全に不意を突かれたみたいだ。
くっくっく、と彼女とは正反対に実に楽しそうに、肩を震わせて、笑う。
白磁の肌がすぐ染まる様は、なんとも楽しい。
「なんだ、違ったか。——それで、そういう意味じゃあ、まずいンか、な?」
なんて意地悪に聞く。
そっぽを向く彼女に軽くかがみこんで、ぐいと顔を近づけて。
なんとも意地悪く、砂糖のような空気を混ぜて。
「もっかいいうぞ?…ちゃあんと大人の、女だ。
俺はお前に、しっかり欲情するぞー…?」
なんて、もうここまでくれば完全にいじわるだ。
くくくと楽しそうな空気と一緒に言葉を落とした。
■モカ > 幼くて魅力がないと言いたいわけではなく、幼く危なっかしいと言いたかったのだが、どうしてこうも取り違われてしまうか。
彼の笑みがより深まるのは、聞こえる声だけで振り返らずともわかる。
かぁっと頬を熱くしていく中、違ったかと言われれば、そうだと言うように小さく頷き返す。
「なっ、不味いというか……」
意地悪な問いに、視線が目まぐるしく散っていく最中、視線を合わせてくる彼の赤色から逃れられない。
子供っぽい恥じらい顔と、戸惑う視線に落ち着きのない息遣い。
改めて突き刺される言葉に、紫色が恥じらいに濡れていくと、あまりの意地悪に耳まで赤く染まっていった。
「わ、わかったから……欲情、しなくていいから……」
視線を振り払うように、ぱたぱたと眼前で両手を振って遮っていくと、ぎゅっと瞳を閉ざして視線から逃れようとする。
恥ずかしさのあまりに身体は小さく震え、閉ざした瞼が雫を淡く絞って目元を僅かに濡らしていった。
■イグナス > もうあってるとか間違ってるとか、とりあえず捨て置いてよい。
からかいがいがあるか、否かだ。
違うと返されても気にせずに、こう、言葉をさらに追い込んでいく。
なんとか、というように返されるあまりにも恥ずかしげな様子に満足そう。
ようやくここで手を放して、ぽふぽふと頭を軽く撫ぜるにまで緩める。
「っくっくく。………いや、悪い、悪ィ。
嘘じゃあないがな、でも、お前の様子が楽しくて、な…っ。」
っくっく、とまだ笑い冷めぬ様子で弁明を。
可愛いかわいい、とつい、素直な感想も出てきて。すくと立ち上がれば。
「……もちろんおれとしては?さっきの言葉を本気にして、どこかに連れ込んでもいいンだが。」
なんてまた、余計な一言、付け加えた。
すけべで欲望深い、この男らしいストレートな言葉を、つらつらと。
■モカ > 子供扱いな撫で方に指先が変わっていけば、その閉ざされた瞳が、様子を窺うようにそろりと開かれていく。
未だに少々憎くも感じる楽しそうな笑みが見えれば、淡い憤りが胸中に渦巻いていき、ムスッと頬を膨らませながら不機嫌顔で視線を反らしていった。
「だからって……そうやってからかうのは酷い」
言葉に困って、どうしたらよいかと思考が混沌としたというのに。
そこまでは言わないが、不服だと態度で示しながらも、可愛いと言われれば、少しだけ頬の膨らみも減っていく。
そこは年頃の少女らしく、褒められれば嬉しいのは変わりない。
「――っ、知らないっ! 約束したのは、道案内とご飯のところまでだからっ」
追い打ちの言葉にへそを曲げると、こっちというように指さしながら、彼のペースも気にせずズンズンと歩いていく。
その度に肩から提げた鞄の中で、淡くこすれるガラスと鉱石の硬い音色が響き渡る。
■イグナス > んむ、実に不機嫌そうで。むすってしてるのは子供っぽい。
――そんなことを言えば藪蛇だろうからもちろん、黙っているけれど。
「いやァ、うん、悪い、わるい。——っくく、…おう、それじゃあ、案内してくれ。」
もちろん、彼女がズンズンと進んだところではぐれるなんてことはない。
なにせ身長には大きな開きがあるわけで、足を延ばせば、追いつく。
「そんなに反応せんとも、なー。
お、ああ、そうだ。せっかくならメシ、一緒にどうだ。お礼に奢るぞー?」
なんて楽しげにだ。
さて、あんなことを言ったばかりで。ノってくれるやら。後ろから声をかけて。
■モカ > 「っ、絶対悪いって思ってない。笑ってるっ、もう……っ」
こちらを掻き混ぜた彼の返事は笑いが混じっており、心がこもっているとは思えず。
相変わらずに不機嫌なままに歩き出すも、彼を置いてけぼりにはできない。
小さな歩幅で頑張って急いでも、彼の大きな一歩で簡単に距離が詰まるのが悲しいところか。
「そんな反応をさせたイグナスが悪いのっ。むぅ……じゃあ、お財布パンクさせるぐらい、食べる」
食事に誘われれば、すんなりと乗っかりながらも額で仕返ししてやるなんて宣うが、あまり食べないし、手頃な値段の料理しかない店では難しいことなのだが。
そのまま進めば、やっと賑やかな大通りへと抜けて、そう遠くもなく行きつけの酒場へと彼を案内していく。
その後、宣告どおりに彼の財布を破綻させられたかは今は分からないが、難しいことだろう。
■イグナス > 「いやいや、思ってる、思ってる。少しはほら、な?」
思っているとしても少し、そんなのを正直に吐露しつつ。
彼女がどんな反応をしてようが、お構いなしについていく。
「おうとも、っく、く――。そりゃ楽しみだ。
いやさて、どうなるやら――。」
さてさて、今の段階ではどれくらいパンクさせられるのかわからないが。
…この体格じゃあ、さほどのこともなさそうだ。
ともあれ、このまま一緒に足を進めて、大通り、彼女の行きつけの酒場へとたどり着く。
実際どれくらい食べたかは、まだもうちょっと、あとのお話で――。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からモカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からイグナスさんが去りました。