2019/03/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイグナスさんが現れました。
イグナス > イグナス > 夜はもう酷く寒いってほどじゃあないけど、まだ冷える。
はあ、と男の息が、夜の貧民街に落ちた。

「冷える。——やれ、どォしたもンかなこれ。」

なんともなしにうろついていたならば、——知らない路地だ。
夜の貧民街の、知らない路地。
普通だったら非常にマズイ状況であるが、己にとってはそうでもない。
むしろそういう手合いを見つけて場所を聞き出すのが一番なのだが、…残念、そういうのすら、いない。

はてさて、ちょっと寒いし、腹も減ったし、困ったものだとまた男は息を吐いた。
時間が悪いのか、すれ違う人間もほとんどいない。
――が、人影がひとつだけ。路地の角より出てくる陰に、幸いとばかりに声を掛けた。

「あ、なあ、そこのお前さん。なァ、あんただ。」

さて、ちゃんと話を聞いてもらえるか。さもなければせめて、姿に驚いて逃げられなければいいが。 (

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にモカさんが現れました。
モカ > 冷え付く路地裏の影には、陽の当たらぬ悲しい思い出が残っている。
お金を稼ぎに来たついでに、そんな思い出を鎮める為にウロウロと人気のない場所を彷徨うのも無防備だとまた叱られるのだろうかと思ってしまう。
けれど、誰も目を向けないなら、自分がするしか無いのだと。
そんな小さな使命感に駆られて歩き回っていると、とっぷりと日も暮れていく。
それでもまだ足りないと路地裏の細道から姿を現すと、呼びかけられた声に、銀糸がさらりと流れながら緩慢な動きでそちらへと振り返り……顔が見えない。
胸元だけが見えて、そのまま顔を上へと傾けていけば、自分よりも遥かに巨大な身体に、ぽかんとした様子で見つめていく。

「……何か?」

何のようだろうかと思いつつも、じっと紫の瞳が彼を見上げながら問い返す。
片手にはランタン、片手には掌ほどの魔石らしきものを握りしめた、奇妙な格好で。

イグナス > 「ん、お。あ。」

一瞬言葉が止まる。ぽかんとした様子に、こっちも言葉を用意していなかったことに気づく。
改めて咳払い一つして、ああ、だの、んん、だと呻いた後に。

「いや、いきなりで悪ィンだが。
 ………道に迷った。ここァどこだ。」

貧民地区というのは知っているのだが。
そういう前置きをして続けた、ついでにいえば腹も減ってる。

「礼はするンで、道ィ、とか。
 ついでに美味いメシ屋でもあれば教えてくれ。」

そこでようやく、視線が合う。少しだけ覗き込むように。
…紫の瞳と銀糸の髪が少し、印象的だった。

モカ > 「……?」

そちらから話しかけてきたのだから、話す内容など決まっている筈と思っていたが、どうも歯切れが悪い。
何度か瞳を瞬かせながら、子供の様にじっと彼の様子を見つめていると、語られる迷子の内容に納得したように小さく頷くと、先程来た道の方を一瞥して、彼へと視線を戻す。

「ここは……墓場みたいなところ、飢えたり、病気だったり、捨てられたり…そんな人が転がってるところ」

とはいえど、死体が放置されれば、凶悪な病気の温床にもなる為か、屍は転がっていない。
ただ、先程確かめた細い路地の隅には、その証拠のように体液らしきものが滴ったうす茶色く汚れた地面がある。
墓標のように突き立てられたダガーナイフを添えて。

「……道案内は出来るけど、美味しいお店は…行きつけの場所ぐらいしか知らないけど、それで良ければ。あと、一箇所だけ、寄り道してくけどいい? すぐ、終わるから」

燃え盛る炎のように赤い髪に、赤い瞳、左目の傷に体付きと、どう見ても戦に生きる人だろうと思いながらまじまじと見つめる。
問いかける言葉とともに小首をかしげると、さらりと銀糸が流れ、紫色は彼を見つめているはずだが、どこか遠くを見るようにぼんやりとしていた。