2018/11/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にゼナさんが現れました。
■ゼナ > 「思ったよりも時間かかってしまいましたけど、十分早く帰れました、よね…?」
なんて独り言を呟きながら検問所を越えた大通りを進む女戦士は、年若く見えて背負う巨剣の使い込みも著しいベテラン冒険者である。
内張り毛皮の分厚いマントは暖かそうでも、むちむちの小麦肌が纏う軽鎧は露出過剰。
大人の手にも余りある豊かに実った双乳の半球、薄く腹筋を浮かばせつつも纏う脂肪が女らしさを色濃く残すヘソ周り、肉付き過剰な太腿付け根で小股に食い込む貞操帯。
極限まで重量を削ぎ落とし、最大限の可動域を確保した結果の鎧姿は、すれ違う男達にとってはさぞかし目の毒となるだろう。当の戦士娘にとっては最早着慣れた普通の装備であるため、己が格好の醸す過剰な色気にはまるで無自覚というのがまた悪い。
身を乗り出してまで二度見して、傍らの露店に突っ込みそうになる馬車とすれ違ったりしながら早足で家路につくゼナは――――ふと足を止め、虚空に眼力鋭い蒼眼を向けた。
「―――――獣の、声。狼……? なんでこんな街中で。」
■ゼナ > 呟きの直後に走り出した戦士娘がマントをたなびかせて駆け込んだのは、大通りから少し離れた位置にある袋小路。
馬車などは入り込めない細路地は、両脇から挟み込む建物の圧迫で昼間でも薄暗い。そんな場所にいるのは木剣やら棍棒を振り回し、無邪気な悪意で一頭の獣を追い詰める青年達。
対峙するのは狼に良く似た体躯を痩せ衰えさせた野良と思しき犬だった。
それは、肋を浮かせ、白と黒の毛並みも薄汚れ、片足を引きずり、今にも倒れ伏してしまいそうな弱々しい姿。しかし、青年達を睨みつける蒼銀の瞳は誇り高く、剥き出しにする牙の鋭さもまた命乞いの媚びなど見せてはいない。
『こいつ、しつけぇッ!』『くそ、そっちから回り込め。挟み撃ちで仕留めるぞ!』『うわっ、危ねぇ! この野郎、ふざけやがって死にぞこないがぁッ!』
狼犬は一人の青年のブーツに噛みつき引き倒すのに成功するものの、代わりに背後から振るわれた木剣の横薙ぎを横腹に受けて悲痛な声音と共に弾き飛ばされる。壁にぶつかり崩れ落ち、最早立ち上がる事さえ出来なくなった瀕死の獣に、ここぞとばかりに群がって滅多打ちの止めをさそうとする青年達に
「――――ま、待ちなさいっ!!」
思わずゼナは立ちふさがっていた。
■ゼナ > 獣の吠え声と暴力に酔った青年達の怒号だけが響いていた路地裏に割って入る若い娘の可愛らしい声が、木剣を持ち上げた男達の動きを止めた。
『あァ…?』『ンだよ?』物騒で胡乱げな声音と共に振り返る青年達の苛立たしげな表情に、戦士娘は怯みはしない。怯みはしない、のだが―――状況も分からぬままに割って入ってしまったため、己の行動に自信も持てない。
それでも、魂が叫んだのだ。このまま見過ごすわけにはいかないと。
だからこそ、若干の迷いを見せつつも、ゆっくりと進める歩は青年達と獣の間にその肢体を割り込ませた。
狼犬が今にも絶えてしまいそうに弱々しい吐息を零す頭部を持ち上げ、蒼銀の瞳で娘の後ろ姿を見上げる。
肉付きは良く、街娘などとは比べ物にならないくらいに鍛え上げられているとは言えども所詮は小娘。女戦士の中には女を捨てて男と変わらぬほどに筋骨を盛り上げる女傑も多いが、ゼナの肢体はそのレベルには程遠い。
素人同然のチンピラと比べても背丈は低く、胸周り以外は身体の分厚さでも大いに負けた頼りない小躯。
迫力などあろうはずもない。
突然の闖入者に苛立ちたっぷりだった青年達も、フェロモン過剰な娘の体躯にゴクリと生唾を呑み、先刻までとは些か異なる双眸の血走りと共に下卑た笑みを浮かべ始める。
「え、えぇと……ですね、も、もう良くないですか、ね? ほら、この子、もうぐったりしちゃってますし、あなた達も見た所怪我とか負っていないみたいですし、ね? 解散っ、これにて解散ってことでどーでしょうかっ!」
■ゼナ > 『はァ? なぁに勝手にまとめてくれちゃってンですかね、このバカ女は。』『お、おい、こいつ冒険者とかじゃねぇの? ヤバくね?』『何ビビッてんだよ、ただの女だろォ?』『へ、へへへっ、しかも、すげぇエロい女だよな』
自信なさげなゼナの言葉に大人しく従う悪童達ではない。好戦的な態度で今にも小突かんばかりに顔を近付ける者、腕を組んでニヤニヤと戦士娘の体躯を視姦する者、中には冒険者と思しき出で立ちに尻込みする者もいたがあっさりと周りの意見に封殺される。
「い、いや、だって……じ、状況はわかりませんけど、こんな、寄ってたかってっていうのは……その……見ていて、あの……気分が悪いというか……」
ごにょごにょする語尾は、自分でも少々おかしな事を言っているなぁとわかっているから。そんな娘の気弱な態度に増長したか、それとも卑怯者呼ばわりされたとでも思って憤慨したか、『あァんッ!?』青年の一人が低い声音と共にずずいっとその身を近付けた。
片手をポケットに入れ、木剣を肩に担ぎ、腰を折ってゼナの顔を下から見上げるかの姿勢。
彼にとっては威嚇の姿勢なのだろうが、本職の戦士からすれば『どうぞボクの首を落として下さい』とでも言っているかの隙だらけ。
もう、めんどうだしヤッちゃおうかな……。なんて物騒な思考がよぎる程度には、ゼナも本物であった。
戦士娘のスゥ…と冷却された温度にも気付かずに、リーダー格の男はなおも顔を近付け、周りで見ていた青年達もその包囲を狭めていく。
興奮に荒ぶる呼吸はそれこそ余程に獣じみて、適当な暴力でゼナを黙らせた後にどうするつもりなのかをはっきりと匂わせている。
■ゼナ > 「はぁ……わたし、一応は言葉で解決しようとしましたからね。」
つい先程までおどおどしていた小娘の、やれやれと言わんばかりのため息に『あ゛ァァンッ!?』再び荒ぶる悪童達―――が、次の瞬間には、それぞれ不自然に頭部を揺らして地面に崩れ落ちていた。
ゼナが無造作に振るったバラ手によって顎先を撃ち抜かれた結果である。
「なんで街の人たちって力の差とかわかんないんでしょうか? 外では兎だって普通にそういうのわかってくれるのになぁ……。」
しばらくは目を覚ますこともないだろう男達に背を向けて、未だぐったりとしたままの狼犬の傍らにしゃがみ込む。
戦士娘の伸ばした手を、牙も剥かずに受け入れる痩犬の反応は、それこそ力量差を正しく理解する本能故か、獣なりにこの娘が恩人であるとわかっているからなのか。
「よかった、ヒビくらいは入っちゃってますけど、内臓は無事みたいです。足もきちんと添え木をしてれば、元の様に走れるようになりますよ。」
そんな狼犬にニッコリ微笑んだゼナは、薄汚れたその身体をよいしょと抱きかかえる。そして足元に落としていた背負い袋もどうにかこうにか持ち上げて、体力的には余裕はあっても、見た目的にはなんとも危なっかしい格好で裏通りを後にする。
「――――リス、犬飼うの許してくれるかなぁ……。」
そんな暢気な言葉だけを路地裏に残して。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からゼナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/裏通り」にアムネシアさんが現れました。
■アムネシア > 夜半も過ぎた月明かりが煌々と照らす夜。
細い路地を修道服姿の少女がのんびりと歩く。
ウィンブルから覗く髪は夜闇よりも黒く、前方を見据える黒曜石の瞳は月明かりを写し込む。
この修道服姿の少女が酒場で一仕事を終えた帰りだと分かるのは、酒場で少女を見掛けた客くらいだろう。
何せ所謂ポールダンスと呼ばれる卑猥な踊りを提供する踊り子なのだから。
股間をたっぷりと擦り付けたポールは少女の蜜で糸を引くほどべっとりと濡れ汚れ、客の野次や口笛を一身に受けたのがほんの一時間ほど前の話。
体質的なこともあり、すでに身体の熱は引いているが下着を汚さない為に下着の股布に装着した生理用品はたっぷりと蜜を吸ってしまっている。
「うー、だいぶ寒くなって来たわね。
子供たちはちゃんとあったかくしてるかしら。」
吹き抜ける風に長い黒髪を揺らされ、両手で肩を抱いて身を震わせる。
孤児院で寝ている子供たちへと思いを馳せつつも懐の中身に意識を巡らす。
今晩の稼ぎはまあ、少なかったが仕方がない。
最近はどうにも足元を見られている感じがある。
これから冬を迎えることを考えるとまとまったお金が必要だ。
そろそろ身体を売ることも視野に入れなければ行けないかも知れない……そんな暗い先行きに小さくため息が漏れた。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/裏通り」に虎燕さんが現れました。
■虎燕 > 裏通りを行く少女の前にあらわれた、フードの男。
男は少女の行く手を遮るようにあらわれ……
「…………」
ぺこりと、頭を下げた。
かつて、自分が捨てた孤児院の先生。
いまだ姿の変わらぬ彼女に対して。
■アムネシア > のんびりと裏路地を歩いていると目の前に現れたのは先日何十年ぶりかに再会したかつての幼子。
「やあ、虎くんこんばんは。
まだこんばんはの時間よね?」
足を止め、にっこりと昔と何ひとつ変わらない笑顔を向ける。
見た目は完全に父と娘。
しかし、少女に取って彼はいつまでも可愛い我が子だ。
「偶然?それとも私に用かしら?」
頭を下げた我が子の顔を下から覗き込む。
いたずらっ子のようなにんまりとした笑顔も我が子を真っ直ぐ見つめる濡れた瞳も何十年経っても変わりがない。
■虎燕 > 「―—虎くんは、その、やめていただけませんか?」
これでもシェンヤン帝国都尉、それなりに高官である。
同僚にこの事が知れたら、変な趣味を持っていると誤解されかねない。
「――その。ようやく、ゆっくり話せるかと」
先日、かなり恥ずかしい事を宣言してしまった手前。
その事をなるべく意識しないよう、思い出さないよう。
慎重に言葉を選びながら言う。
下からのぞき込む顔は、かつての姿と変わらない。
前には上から見下ろしていたのに、今ではすっかり逆だ。
■アムネシア > 「じゃあ、二人きりの時は虎くんね。
人前では何て呼べばいい?虎燕様?」
弱みを見せたが最後、とことん弄り倒す悪癖は昔から変わらない。
猫のような笑みを深くし、我が子の顔をじっと見つめる。
「じゃ、歩きながらお話しましょうか。
朝までには戻らないと子供たち心配するしね。」
我が子の返事を待たず、再びのんびりと歩き始める。
いつもこうして朝までには孤児院に戻っているのだろう。
それはきっと昔から変わらない。
おそらく数十年前、我が子を毎朝起こしていた時も。
――果たして院長先生が毎夜男達の玩具になっていることに気付いた子供がいるのかどうか。
■虎燕 > 「―—虎くんでいいです」
がっくりと項垂れながら言う。
二人きりの時以外には、あまり会えないだろうし。
もう、あの店に行く勇気もない。
やはりこの人にはかなわないな、などと思いながら。
「――あの日も、夜遅くまで帰らなかったですよね」
数十年前のあの日。
夜遅くまで戻らなかった院長先生が心配になった虎燕は、先生を探しに行き――
そこで、見てしまった。
男相手に淫らに腰を振り、汚いモノを咥える院長先生の事を。
「我ながら、青かった」
そして、虎燕はそのまま孤児院に戻らなかった。
自分の中の感情を処理しきれなかった少年は、そのまま、王国を飛び出し――
■アムネシア > 「じゃあ、虎くんね♪」
諦めた我が子に対し、大人気なくも嬉しそうに勝利の笑顔を浮かべる。
並んで歩くと当然歩幅は合わない。
昔は子供の手を引いて歩調を合わせて上げていたのに……今は逆に合わせて貰わなければ置いていかれるだろう。
つくづく子供の成長は早いと思う。
そんな思いを胸にしげしげと我が子の顔を見上げる。
「んー……。」
そんな我が子の口から出た言葉に曖昧な答えを返す。
あの日……かつての少年が家を飛び出した日……。
その言葉で何十年間もの間疑問だった家出の理由を知った。
そっか……見られちゃってたか。
さすがにあの日どんなことをしていたかは覚えていない……が、少なくとも少年の目には嫌がっているようには映らなかったはずだ。
むしろ、嬉々として快楽に咽び泣き腰を振る浅ましい雌猫がそこにはいたはずだ。
もしかしたら、朝少年の額に口付けた唇で男の汚らしいモノをしゃぶっていたかも知れない。
「……結婚は?」
変わらず軽い口調で尋ねる。
あの日、何か事件に巻き込まれたのではと皆で必死に探し回った。
もう死んでしまったのではないかと悲しみもした。
だが、こうして再び元気な姿を見せてくれた、それだけで十分だ。
そして……あの日のことを謝ることは出来ない。
謝ってもやめることは出来ないし、そもそも謝って許して貰う資格もない。
だから、昔と変わらず……笑顔を向ける。
■虎燕 > 憧れの先生は嫌がっていなくて。
むしろ、嬉々として男たちに奉仕しているようで。
意味が分からなかった。
汚らわしいと思った。
今なら、わかる。
その行為にどんな意味があったのか、なぜ先生がそんな事をシていたのか。
「――してません。仲人ばっかりしてます」
彼の経営する避難村の事を語る。
王国や、それ以外の場所からやって来た、身寄りの無いミレー達。
そのミレー達が自活し、自分たちで暮らしていけるよう、小さな村を作った。
都尉の薄給を切り詰め、ガメついとの評判を得てまで金を貯め。
ようやく、最近になって、ミレー達は自活できるようになってきた。
自活できるようになれば、所帯を持ちたがるのも当然だ。
おかげで彼らの仲人ばかりして、自分の婚期を逃してしまった。
と、照れくさそうに笑顔を返す。
■アムネシア > ――子供たちの前では非道は行わない。
そんな誓約も子供が偶然覗き見てしまっては意味がない。
細心の注意を払っても不幸な偶然は起こってしまうだろう。
それに……今も生理用品を着けていなければ下着をぐっしょりと濡らしてしまっている淫売である事実は変わらないのだから。
「えー、いい人いなかったの?
何ならいい娘紹介しよっか?」
まるで友達同士のような気安い口調で尋ねつつ、女子が恋話を期待するような流し目を我が子へと向ける。
歪ませちゃったかな……?
多感な時期に母親のような存在の雌の部分を見せつけられたのだ、女性不信になってしまっていても不思議ではない。
内心責任を感じつつ、どうしたものかと思案する。
■虎燕 > 歪んだというよりかは。
あの日から、生きるのに必死だった。
確かに帝国にミレーに対する差別はなかったが、ただの家出少年にやさしくしてくれる程甘い土地でもない。
必死に生きて、成り上がって。
そして、村を作ろうと決めた。
あの日の事をようやく理解できるようになって。
自分も、先生のような事ができないか、と。
「――先生が結婚してくれる、っていうなら考えますよ」
軽口には軽口で返す。
少しくらい反撃したっていいだろう、うん。
■アムネシア > 我が子の言葉に思わずくすっと笑みが溢れる。
「虎くん昔もそんなこと言ってたよねー。
せんせーとけっこんするんだーって。」
昔の可愛らしかった幼子時代を思い出し、からかうよう口元に右手を当てて笑みの形の黒瞳を向ける。
あの頃は可愛かった……今も可愛いけど。
「別にいいけどー。
でも、虎くんにはもっといい子がいるよ、絶対。」
そう、数えきれないほどの数の男達に弄ばれ、何人も子を為した自分のような穢れた女よりも……。
励ますよう、昔のように背中をぽんぽんと叩く。
■虎燕 > 「男はみんな言ってましたよ」
苦笑しながら弁解する。
それくらい、あの日の先生は魅力的で―ー
「――そういえば、みんなは?」
あの日、捨ててしまった故郷だが。
自分のほかにも、何人かの孤児がいたはずだ。
その子たちは、どうなっただろうか――?
先生の言葉は丁重に無視しつつたずねる。
■アムネシア > 「ホント男の子って今も昔も変わらないよね。」
先日も誰が結婚するかで大騒ぎになったものだ。
本当、子供は可愛い。
「みんなちゃんと出て行ったわよ。
今頃はどこかでちゃんと立派に生きてると思うわ。
うちはほら、私がこんなだから、家を出たら絶対に戻って来ないって決まりがあるの。
途中で勝手に出て行った虎くんは知らなかったと思うけど。」
故に子供たちは卒業生の姿を見たことがないはずだ。
出来るだけの勤め先や世話をしてくれる人探しなどの支援をして送り出す。
それで終わり。
後は彼らが立派に生きることを祈るのみ。
彼らはもう大人なのだから……。
■虎燕 > 「――そうでしたか」
少し俯く。
自分と違って、皆は立派に、先生の教えを守っているようだ。
自分は先生の事をなにひとつ分かってあげられなかったなどと、今更のように少し凹みつつ。
「――先生、今は孤児院はどうなんですか?」
こんなご時世だ。
いろいろと大変ではないか、物入りではないか。
現に、こうして体を売っている以上。
孤児院の経営は、芳しくないのではないかと心配し。
■アムネシア > 「そうなのよ。
だから、どこかで兄弟と会っても、ね?」
口元に立てた人差し指を当てて、しーっと。
昔と変わらない院長先生の姿を見たらきっとショックを受けるだろう。
……もっとも喜ぶ子もいるかも知れないが。
「んー、まあ、変わらずよ。」
心配しているのは伝わるし、窮状を知れば支援を申し出て来ることは容易に想像出来た。
だが、性格的に限界以上に寄付しそうであるし、何より子供たちに負担は掛けたくなかった。
故に曖昧な返答と満面の笑顔を返す。
「あ、そうだ。
そろそろ卒業の子がいるから、勤め先紹介してくれると嬉しいな♡」
それでも力になれない無力感を感じることだろう。
だから、甘えるような表情で見つめ、おねだりする。
その言葉と表情はそれ以上のことはいいよと暗に拒絶していた。
■虎燕 > 相変わらずだ。
自分一人で抱えこんで、決して子供たちに迷惑をかけようとしない。
まだ、自分も「子供たち」の一人なんだろう。
そう思えば――
「――俺の所でも、知り合いの所でも、いくらでも紹介しますよ」
――俺の所に来ませんか、とは。
言えなかった。
そろそろ孤児院だ。
立ち止まり、先生を見送る。
子供たちに、変な大人が来ていると不審がられる事は避けなければ。
■アムネシア > 「やった♪これで今年は安泰ね。
虎くん頼りになるわ♡」
心底嬉しそうな笑顔を向け、腕へとしがみつく姿は傍目には父親と娘に見えることだろう。
そのまましばらく歩き……そして、我が子が足を止めればそっと離れる。
何十年経っても家の場所を覚えてくれている……それだけでも胸が熱くなる。
そして、その気遣いも……。
「じゃあ、またね。」
最後に昔のようにそっと胸へと抱きしめる。
身長差が逆転してしまったから、逆に胸にしがみつくような格好になってしまったけれど。
そして、子供たちが待つ孤児院へとゆっくりと歩き出す。
結婚……かぁ。
会話の中で出た言葉を何気なく反芻する。
ふと、少し歩いた所で振り返る。
「約束、ちゃんと覚えてるからね。」
酒場での約束……。
いたずらっぽくはにかみ、月光に照らされた顔はほんのりと赤く染まっていた。
その一言を残し、院長先生は子供のように駆けて行った。
それはかつて子供たちとかけっこした時に大人気なくぶっちぎった後ろ姿と何も変わっていなかった。
■虎燕 > 「約束――」
ふっと思い出す。
そして、彼女が駆け去った後であった事を感謝する。
流石にこの、リンゴのように真っ赤になった顔を見られては。
一生の不覚というものだから。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/裏通り」から虎燕さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/裏通り」からアムネシアさんが去りました。