2018/11/06 のログ
ネコアシ > 何事にもリズムがある。
悲しい時なら悲しいリズム、楽しいときもまた然り、そして物騒な女性が奏でる不機嫌そうなリズムには知らない事でも知っている事でも理解が出来ようが出来まいが、合わせて同調するようなリズムで言葉を紡げば思ったとおり女性の気を引くことが出来た、それも最悪の方向ではなくちゃんと「良い具合」にだ。

かなり、いや多少重たくかかる女性の体重を受け止める事になるとは思っても見なかったが、酔っ払いの正面に立てばこうなる事は予測つくだろうと今更思いもしたが、ここで共倒れをしても……と浮べた人懐っこいつくり笑顔に一筋だけ汗をかきながら、何とか杖代わりを全うしようと足腰に力を込めた。

仕方なし、仕事しようとしていた腕を前にだし、女性の腰に細い腕を回して何とか支える様な体勢を取る……も濁り澱んだ眼差しは紐解かれていく皮袋に興味津々である。

「……野生の獣だったら適当に逃げるもんなぁ……。」

視線の先は既に女性の金色の瞳は見ていないが、ぽつりと思い出した様に言葉を吐き出してから、ぐっと言葉を飲み込んで、さて、こうなったらこの酔っ払いを宿に送り届けて、寝かしつけたら皮袋だけ奪って逃げようと、安宿に足を向ける女性の脇にまとわりついて、もしまた危い足取りになろうものなら支えて送り狼ならぬ、送り強盗でもしようと企てるが、見ず知らずの者がわかり易い行動にはしれば、その企てはバレるだろうか。

「その、お酒はほどほどにしようね?こんな場所で酔っ払ってると変な奴らに攫われちまうよ?と言ってもお姉さんは大丈夫そうだけど、ほら、ね?宿に戻って休もう?」

と行動の不自然さを取り繕うように表面上は心配した素振りの言葉をかさかさの唇で吐き出した。

その時だけ皮袋に向けた眼差しをちらちらと何度もうかがうような色を乗せて相手の顔色を伺うのだった。

アリゼ > ほどいた革袋には思っていたよりもゴルドが詰まっていた。
先日の依頼主がまともだった魔獣狩りによって、予想以上の稼ぎが得られていたことを今思い出す。
これなら少々の散財は許されるだろうと思い、先程から支えになってくれている少年にお礼をすることにした。
革袋からいくらかのゴルドを取り出し、その貨幣を少年の手に握らせる。

「君はここに住んでいるチンピラや悪党と違って、随分と優しいな。
 私の愚痴を無視せず聞き、こうして支えに……おっと、すまない。
 ……んっ……なってくれている。これはそのお礼だよ」

宿が近くなってきたところで、ふらりと少年に寄って身体を押し付けてしまう。
どうにか姿勢を立て直したところで、身体を這い回る呪いのタトゥーが疼くのを感じた。
少年とはいえ男の匂いを間近で浴びれば、性欲を増すタトゥーのそれは抗いがたく、
彼の企みや顔色を窺うような仕草を考える余裕もなく少年の身体をさらに掴んで、宿へと連れて行こうとする。

「よければもっと……そうだな……一晩ぐらい……
 ……どうだ?」

酔いというより興奮が身体をよろめかせて、徐々に荒くなる息が言葉を途切れがちにさせる。
はたして送り強盗をするつもりだった少年は、送り狼に目的を変えるのか。
宿の入口は目前まで近づき、何の抵抗もなければアリゼはこのまま少年を連れ込むことだろう。

ネコアシ > 送り狼ならぬ送り強盗の掌には数枚の貨幣、貰える物は貰うのが流儀であるし拒む理由など僅かにも無い、故に躊躇わずに貨幣を握り締めると、ボロボロのズボンのポケットに押し込んで、直ぐにその手を空けて再びその重々しい身体を支えようとする。それくらい手伝ってもバチは当らないだけのお小遣いを貰った事だしと……。

しかしながら、身体が密着する度合いが増せば聊か?と付議しに思うし、足取りは何を言わんとするまでもなく、素直に安宿の中へと引きずり込まれる事になるだろうか、握らされるだけ余裕があるなら、きっと皮袋はもっと温かいモノは想像に容易く、上手くいけば密着する体温を味合う事だって出来ると考えたなら答えは酷くシンプルに返す。

「一晩?いいよ、そういう仕事はしていないけどね?」

一言。
乾いた唇に浮かべる笑みは何処か意味ありげに唇の隅を持ち上げて笑みを作り、こんな世界で住んでいるのだから、相手の興奮の意味合いくらい察する事は出来るからこそ、「そういう仕事はしていない」と言葉にしたけども、性欲にかれるほど年寄りでもなく、知らぬほど幼くも無いと、澱んだ瞳の中に薄暗い欲望の輝きを浮べて、抵抗もせずに安宿に足を踏み入れる。

少年は性を知っているから欲望を吐き出す事を知っているからこそ加減を知らぬ欲望が潜む事を瞳で語る、そしてその捌け口を数ヶ月ぶりの柔肉を求めて応じて笑う、人懐っこいよりも若い獣の様に……。

アリゼ > 少年の回答にさらにタトゥーが身体を疼かせれば、
アリゼは迷わず宿の扉を開き、少年へ寄りかかる身体もさらに密着したものとなっていく。
宿の主人は二人を一瞥して、今夜分の代金を払うよう無愛想な口調で告げる。
慣れた手つきでアリゼが支払い、鍵をもらってそのまま二階へと上がっていけば、
奥にある部屋、いつもアリゼが泊まっている部屋へと向かっていく。

「……仕事ではないさ。『一晩』同じ部屋に泊まってもらうだけだからな」

少年の瞳に映る輝きを見て、タトゥーはさらにその効力を増す。
それは少年の内に秘めた欲望を嗅ぎ取ってのものかどうかは、アリゼにも分からないことだ。
どちらにせよ、アリゼは身体を火照らせて部屋へと入り、少年を迎え入れてすぐさま鍵を閉める。
部屋は寝台と衣装棚、小さなテーブルと椅子だけの簡素なものだが、
貧民地区には珍しくよく手入れされ、小奇麗なものだ。
そんな小さな部屋の中を歩いて、アリゼは自らの鎧を撫でていく。
すると鎧は溶けるように蠢き、少年には一瞬だけ素肌とそこに這い回る黒いタトゥーが見えたかもしれない。
だが瞬きでもすれば、その時間は過ぎ去り、アリゼはいつの間にか黒いロングドレスに着替えていた。
鎧に覆われていた豊満な身体が柔らかな布地に包み込まれれば、その身体つきを余すところなく見せつける。

「さて、あんなことを言ったからには初めて、というわけではないんだろう?
 お手並み拝見と行こうじゃないか……」

ベッドに腰かけ、少年を情欲に濁った目で見つめる。
そこにいるのはただ、欲望の捌け口となることを悦ぶ一人の女だった。

ネコアシ > 生ぬるい泥沼のような世界でも唯一照らす月すらも眠り陰り消え行く時間である、でも招かれた送り狼は今だ眠らず、黒色の重厚な鎧を艶やかなる闇色のドレスと変えて身を飾る女を前にして怖気ずくなどと言う事も有らず、己の中で小さなひだねとして燃えたモノが何かに煽られて大火に変わるのも抗わず、鼻に誘われるようにベッドに近づこう。

「一晩ね………今からなら何度夜を楽しめるかな……。」

澱んだ眼に危くも怪しい薄い笑みを浮べて、自分と同じ濁った情欲の輝きを宿す金色の瞳を見つめ返すと、思わずカサカサの己の唇を潤す為にちろりと小さな舌で舌なめずりをし、その美肉にここいらを根城にする娼婦とは違う危さのある美肉を貪る為に両腕を幽鬼の如くゆらしと伸ばした。

欲望のままに若く愚かな知識のままに加減知らずに悦び嬲るか、その仕事を想像させる巧みに器用な指先と唇で溶かすか、鍵を閉められた部屋で時間を重ねる二人にしかわからない、だがその潜む欲望の炎が触れ合い眠るだけで静まるはずなど無く……一夜は酷く甘く歪んで過ぎていくだろう。

日が昇るころにはどちらか先に眼を覚ますかで重たい財布の中身の軽さが違うと言う結末だけが少年の中では確定しているのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からネコアシさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアリゼさんが去りました。