2018/07/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にリーゼさんが現れました。
リーゼ > 日はすっかりと暮れて、辺りは夜の帳が落ちている。
それでもこの辺りは大衆食堂や酒場が集まっているせいか、
屋内から漏れ出る灯りのおかげで、足元に困ることはない。
けれどもその分耳が可笑しくなりそうなほどの喧騒と、
絡んでくる酔っ払いが多いのが問題だろう。

「マスター、ごちそうさま!
 今日も美味しかったよ。また来るね!」

いかついおっさん共が浴びるように酒を飲み、怒声を上げる中、
それに負けない声量で少女の声が通る。
どうやら常連らしいやり取りを残して、声の主が通りへと出てくる。

その少女が王都へと着いたのは、夕暮れも押し迫る時間帯。
安宿を確保して、すぐに向かったのがいつも王都に来た時には利用している酒場兼食堂だった。
馴染みの店のメニューを堪能しつつ、最近の街の様子を聞いたりしていたのだけれど。

「うーん……今回はあまり長居しない方が良いかなぁ……」

そんな感想が出る程度に、不穏な空気が漂っているのだった。

リーゼ > 聞いた話だと、どうやら魔族の国との境界で大きな戦闘があったらしい。
どちらが勝っても負けても良いことなんてないように思えるのだけれど、
結果はこの国には良くないものだったらしい。
それだけで済めば、辺境でのことだと切って捨てられるのだろうけれど。
魔族が街に入り込んでいるとか、余計な噂が流れたせいで、民衆の不安が高まっているとか。

「ほんとに迷惑な話だね。
 戦争なんてして、誰が得するのかなー」

夜風に紅い髪を揺らして、少女がひとりごちる。
酒場にいたむさくるしい傭兵共がその独り言を聞きつければ、
『俺たちに決まってるだろ!』と言い兼ねないのけれども。
仮に面と向かって言われたとしても、少女はスルーを決め込むだろう。

「これ以上、治安が悪くなると来にくくなるんだよね。」

ともかく、しばらくは警戒した方が良いかもしれない。
魔物に襲われるよりも、よっぽど民衆に襲われる方が怖いのだし。
しばらくマスターの料理とお別れかと思うと、
もう少し食べ貯めておけば良かったかもと思ってしまい。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリーゼさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 場末の酒場」にマリアベルさんが現れました。
マリアベル >  
マリアベルは憂鬱そうな顔をして、場末の酒場で酒を傾けていた。
酒は好きではない。お嬢様の付き合いで飲んでいただけだ。
それでもなお酒を傾けるのには、理由があった。

『貴女はだぁれ? 私を気持ちよくしてくれるの?』

地下牢で出会ったかつての主。
マリアベルは、自らの主が壊れた事を悟った。
シャーロット・アン・エル・フェルザはもういない。ここに居るのは、ただの肉便器だと。

その時、マリアベルの全ては終わった。
シャーロットの為に捧げてきた人生の全てはムダになった。
では――

「私の全てはお嬢様の為にあった。そのお嬢様が亡き今――私は、どうすればいい?」

マリアベル >  
酒で酔えば少しは気が紛れるかと思ったが、ちっとも酔えそうもない。
ただ、機械的に酒を流し込んでいるだけだ。

酒場に来た理由はもうひとつ、仕事を探しに来たのだ。
何せ、今の彼女は無職である。フェルザ家は分家の手に渡り、利権は貴族どもに喰い散らかされた。
一応、シャーロットの隠し財産をもてるだけ持ち出してきたが、それも多くは無い。
散財する癖などないが、それでも生きる為に金は必要なのだ。

「――冒険者の真似事でもするか」

幸い、腕には自信がある。
というよりも腕ぐらいしか誇れるものがない。
あとは書類の決裁やら帳簿の管理やらならできるが――素性の分からない半魔族がつける仕事ではないだろう。
結局、生きる為には、この酒場にある依頼でもこなすか。
もしくは、娼館の門でも叩くしかないわけだ。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 場末の酒場」にヴィンセント・ミラーさんが現れました。
マリアベル >  
ふと酒場の話を聞くと。
なにやら、噂話が聞こえる。
魔族の国で、例の第七師団が壊滅したらしい――

「――いい気味だ」

オーギュスト・ゴダンとマリアベルは因縁のある相手であった。
奴は不遜にもフェルザ家令嬢、シャーロットの命を狙った事がある。
その襲撃を撃退したのがマリアベルであり――奴の額に傷を残してやった事がある。
そのオーギュストが、死んだらしい。ざまぁみろ。

「あいつがお嬢様の没落を見て高笑いをあげなかったのが、唯一の救いだな」

ヴィンセント・ミラー > 「仕事を探しているのか?」

女性の隣に突然スーツ姿の男が現れる。
手には半分程減ったグラスを持っており、少し酔っているようだ。

「盗み聞きをするわけではなかったんだが、興味深いことを言っていたからな。 
暇をしているのならうちでやりがいのある仕事をしてみないか?
あんたみたいに腕に覚えがある様な相手なら大歓迎なのだが。」

執事の格好をしているが顔立ちや漂わせる雰囲気から只者ではない様子である。
ちょうど上から人材の獲得を仰せつかっていた男としては願ってもない機会。

「とりあえず、一方的に自己紹介をしよう。
俺はミラー。 ヤーク侯爵に仕えている騎士だ。」

マリアベル >  
「――突然なんだお前は」

マリアベルがじろりとそちらを眺める。
なにやら黒の服を着て、酔った男。
――女衒か何かか?

「――マリアベル。元執事だ」

とはいえ、仕事を選べる身でもないのも確かだ。
この男の話も、聞いてみる価値はあるかもしれない。
なに、ロクでもない話だったら断ればいいだけだ。

「それで。その仕事とはなんだ。話だけなら聞いても良い」

ヴィンセント・ミラー > 「随分と威勢がいい姉ちゃんだ。
あまり執事っぽくねえ。」

鋭い眼光を向けられた男はグラスの中の酒を空けるとテーブルに載せた。

「まあ、仕事と言うのは王都内で治安維持活動をしてもらうことになる。
最近だと聖猫派とか言うテロリスト集団の調査と逮捕だな。
あとは知っての通り騎士団の戦力が落ち込んでいるだろう。
うちの上はこの機会にタナールに関わりを持とうとしている。
だから砦の守備隊に参加してもらう形にもなるか。
他に雑用がいろいろ出てくるな。
冒険者をするよりは割が良いと思うがな。
あんたは腕が良さそうだし、望むならすぐにでも騎士身分にもなれるぞ。
で、興味はありそうか?」

ざっくりと仕事内容を説明する男。
あまりこういった勧誘をしたことはないのか時々思い出しながら話している。
さて、彼女はこの話に食いついてくれるだろうか。

マリアベル > 「そうだな――」

ヤーク侯爵の名前は知っている。お嬢様が銀行業をしていた時、『特に貸す予定も手を出す予定もなくてつまんないリスト』に入れていた筈だ。この男の言う事が本当ならば、良い仕事先だと言える。

「確認させてもらう。
ひとつ、報酬、もしくは契約金はいくらか
ひとつ、私は群れて行動するのが苦手だ。よって基本的に単独行動なのを許可できるか
ひとつ、合わなかった場合とっとと出て行くがそれでも構わないか
ひとつ、私は半分魔族の血が流れているが問題ないか」

思いっきり条件をふっかける。
なに、どうせアテなどないのだ、もう少し無職を続けるのも悪くは無い。
そう思いながら、男の反応を待つ

ヴィンセント・ミラー > 「そうだな…。」

興味は持ってもらったようだ。
女性の舌が動き出す。

「契約金は20万ゴルドだ。 不満なら後日上と交渉してくれ。
単独行動は大いに結構だ。 ただ、ちゃんと上か俺に報告はしてくれ。
別に良いんじゃないか? 誰も引き留めはしないだろう。
そういうことなら問題ないな。 魔族だろうがなんだろうがちゃんと仕事をしてくれるのならな。」

男は上司であるボスから言われていた条件を一つ一つ返答する。
時折、相手の反応を見ながらペースを速めたり遅くしたりと変化を付けながら。
彼女はうちの上を知っているのだろうか。
男は彼女の素上に興味が湧いた。

「あんた、元はどこに居たんだ?」

マリアベル >  
「そうか。なら契約成立だな」

フェルザ家で動かしていた金額には及ばないが。それでも、充分大金と言える金額。報告すれば単独行動可能、いつでも出て行って良い。破格の条件と言える。

「よろしく頼む――あぁ、元は『フェルザの猟犬』などと呼ぶ奴も居たな」

悪名高き、そして今は無きフェルザ家。
それを彼が知っているのかどうか。

ヴィンセント・ミラー > 「話しが早いな。
もう少し渋られるかと思ったぞ。」

駆け引きに持ち込まれると苦労することが分かっていた男は内心ひやひやしていた。
スーツの中は汗で濡れてしまう位だ。

「よろしくな。
基本的にはこの国の治安と安全を守る方向で動いてくれ。
フェルザ家か…あっこの時のやり方で動くのは止めてくれよ。
特に市民への不要な暴力はうちではタブーなのでそのつもりでな。」

フェルザの猟犬と言えば男でも聴かされたことがある。
彼女から醸し出される雰囲気は恐らく貴族の懐刀特有のものであろう。

「とにかく今日はお互いにとって記念すべき日だ。
こっちの経費で持つから好きなだけ飲み食いしてくれ。」

マリアベル >  
「――仕事を選べる身でもない。それに……何かをしていないと、気が狂いそうなんだ」

激昂するでもなく、ぽつりと。
まるで、己の明日の晩飯を心配するような口調で言う。
酒が回る事がないなら、任務でもなんでもやるしかない。

「――別に、あれはお嬢様の命令だったからだ。
私には拷問やら流血やらの趣味は無い。効率的な動きこそが好みだ」

まぁ、命令というなら良いだろう。一般市民への手出しはやめておくとしよう。
――必要な時までは。

「いらん――治安関係で、星の聖猫派と、最近タナールを騒がしている、例のアンデッドども。
その情報を取ってくればいいんだな?」

宴会の誘いはきっぱり断る。
久しぶりの「任務」だ――はやく、取り掛かりたいと考え、席を立つ

ヴィンセント・ミラー > 「まあ、なんだ。
俺で良かったら話位は聴くぞ。」

落ち着かない様子の彼女。
色々と抱え込んでいるように見えた。

「分かってるとは思うがテロ活動に関与している証拠が出ている時は関係ないからな。
あと、目に余る貴族も証拠などがあるのなら潰してくれ。」

男はスーツの中に手を入れ、何かを探している。

「もう仕事に向かうのならこいつを渡しておこう。
通信用の道具だ。
うちはこう見えて装備が充実していてな。
船や飛竜が使いたいならそれで連絡してくれ。」

スーツから取り出した石をテーブルに置く。
彼女が仕事に出かけるのなら男は黙って見送るだろう。

マリアベル >  
「――いらん。仕事上の関係には必要ない話だ」

あれは、お嬢様との日々は、自分の宝だ。
会ったばかりの相手には話せない。

「分かった、こちらのやり方でやらせて貰おう。
――よろしく頼むぞ、ヴィンセント」

真面目な顔でひとつ頷くと、通信用の石を懐に入れ。
自分の分の代金を支払うと、猟犬は夜の街へと消えた。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 場末の酒場」からマリアベルさんが去りました。
ヴィンセント・ミラー > 「…俺だ。 ああ、そっちの話しだ。
聞いて驚け。 そっちの世界での有名人をスカウトしたぞ。」

彼女の姿が見えなくなると、石を手に上司であるボスへと報告する男。
声は上機嫌で、男は得意げな顔をしていた。

後はここの料金を支払い、領収書を受け取ってから店を後にする。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 場末の酒場」からヴィンセント・ミラーさんが去りました。