2018/05/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 周囲からの明かりが届きづらい細い横道に身を潜めて、乱れた呼吸を整える。
仕事の帰り道、見るからに柄の悪そうな連中に絡まれたのが不運の始まりだった。逃げ惑ううちに貧民地区まで迷い込んでしまい、本来帰るべき方向を眺めて溜息をこぼす。
動悸がおさまらない胸をぎゅっと押さえながら、困り果てて眉を寄せた。

しつこく追いかけてきていた悪漢の気配も今は近くにないけれど、明るい場所に出るとまた見つかってしまいそうな気がして、震える足を動かせないでいる。
だからといって朝までここに隠れているわけにもいかなず、無事に家まで逃げ帰る機会を待ってみる。それがいつかの判断は曖昧だった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にブレイドさんが現れました。
ブレイド > 貧民地区、コツコツと響く足音。
少年は平民地区の公園で買った甘味を片手に歩いていた。
このあたりは暗いが、それゆえに人もあまり通らない。
もぐもぐと片手にした甘味を食しつつ、平然と歩いていく。

「………?」

人の気配を感じる。
こういうところに潜むのは、たいてい行き先の無くなったジャンキーや強盗。
強姦魔とその被害者、といったところだが…。
用心に越したことはないだろう。気を引き締めて歩き出す。

ミンティ > 胸の前で重ねた両手は神に祈るような形で固まってしまっている。
なにかの些細なきっかけで、さっきの連中に見つかってしまうかと思うと呼吸するだけにも慎重になっていた。
周囲に対して感覚を研ぎ澄ましすぎていたせいで、誰かが歩いてくる足音に、その場で飛び上がりそうなくらいに見を震えさせた。

あわててふためいて肝心の気配がどこから近づいてきているのかも判断できず、何度も左右を確認し、いざとなれば逃げ出そうと震える足に力をこめる。

ブレイド > 様子がおかしい。
距離は近づいているのだが、動く様子がない。
人影がうっすらと見えるような。
思ったよりも小柄…女?
想像通り、『被害者』の方だったら気まずいことこの上ないのだが…

「おい、あんた」

まあ、こんな路地でじっとしているのはそもそも不審だ。
とりあえず声をかけてみることにする。

ミンティ > 喉の粘膜がかさかさに乾いてしまったように感じる。どうしようもなくなった時には悲鳴をあげるしかないかと考えたけれど、助けが来てくれる保証もない。
声をあげた結果、状況をもっと悪くしてしまう可能性さえあるから、なにをするにも踏ん切りがつかなかった。

「――っ! ……な、…なに?」

唐突に声をかけられた瞬間、涙がこみあげる。
しかし反射的に振り向いたところに立っていたのは、自分よりやや背が高い少年の姿だった。さっきの男たちとは違うと知って、安堵とともに力が抜けてしまう。膝が笑って崩れ落ちそうになるのを、壁に背を預けて、かろうじて耐えた。

ブレイド > 「なにしてんだ?こんなとこで」

強姦された女性にしては割と普通に声が帰ってきた。
それなら春売りか、薬の売人か。前者にしてはやや挙動不審なので違うだろう。
後者にしても様子を見ればそんな度胸の有りそうには見えない。
そもそも、見咎められたと知ればすぐに逃げ出すだろう。
それをしない…いや、できないということは……

「大丈夫かよ…」

なんか、壁にもたれかかっているが、膝がガクガクしているのが見ていてわかる。
どれだけ怯えきっているのか…。

ミンティ > フードをかぶっていて顔だちをはっきり確認したりもできないけれど、体格から見てこちらよりも年下だろう。
事情を尋ねられて説明しようと開いた口をとっさに閉じる。ここで話した事により彼まで巻き込まれてはいけないと考え、なんでもないと首を横に振った。いくらなんでも心配しすぎだと思うけれど、万一の事態さえ起こしたくはない。

「……だいじょうぶ。…酔っ払ってしまって」

緊張しすぎたせいで声はひどくかすれてしまっていた。おかげで飲んでもいないお酒を飲んだという嘘が、ちょっとだけそれっぽくはなった気もする。

ブレイド > 「はー、酔っぱらいかよ…つか、よく無事だったな」

歩み寄ってみれば、年若い女性に見える。
酔っ払っていた…にしても、こんな薄暗い通りによくたどり着けたものだ。
こんな格好の少女がひどく酔っ払っていたら、目が覚めたときには裸でベッドの上というのが常だ。
店を自分の意志で出れるかどうかも怪しい。

「つか、ほんとに大丈夫かよ…水飲むか?」

ゴソゴソと荷物袋から取り出した水袋を差し出し。

ミンティ > こちらが女だからか、少年が警戒しているようには見えない。もしくは襲いかかられても対処できる腕の自信があるのだろうか。
そんな事を考えている間に困ったように眉が寄っていく。追っ手が迫る気配は幸いにして感じられないけれど、あまり一緒にいると巻き込んでしまう確率がそれだけ増してしまう。
なんとかして彼を遠ざけようと頭を悩ませている間は、自分も逃げないといけない立場なのを完全に忘れていた。

「…あ。……えっと。…ありがとう。本当に…もう平気だから」

水袋を差し出されて戸惑う表情を見せる。
ここで拒んだりしても怪訝に思われるだけかもしれない。そう考えて素直に受け取り、申し訳なく思いながら喉を潤す。
逃げ回って乾いた喉が癒されて、ほっと息をこぼした。感謝を口にして水袋を差し出し、少年にも早く家に帰るようにと言いたげに視線を向ける。

ブレイド > 「……そうか?いや、いいんだけどよ……」

平気だという女性。あまりそうは見えないが…。
むしろここから一人で帰れるのだろうか?
あたまのてっぺんからつま先まで、見下ろす。
どう見ても荒事や魔術を得意としているようには見えない。
あえていうなら、鬻いでいるようにも見えない。
どちらかといえば、平民地区や富裕地区にいそうな風体。

「アンタ、迷子か?」

おそらくはそれゆえに怯え、避けようとしているのだろう。
他に理由があるかもしれないが。

ミンティ > じっと観察されると落ち着かない。困った顔のまま視線を逃がし、暗い地面を見つめる。
隙を見せたら金銭でも奪うつもりかいう考えも頭をよぎったけれど、少年の態度を見ていると、とても襲いかかってきそうには見えなかった。
純粋に心配されているのだと理解して、そうであればなおさら巻き込むわけにはいかないという方向に思考が傾いていく。

「帰る方向は、知ってるから…。
 ちょっと…酔いもさめてきたから、私はそろそろ。
 あなたも…あまり遅くならないうちに帰って」

いろいろと考えた結果、自分から行動を起こすしかないと思った。
水袋を強引に手渡して明るい方へ歩き出そうとする。しかし力が入らないままの足は当たり前のようにもつれてしまい、もたれていたのとは反対側の壁にごつんと頭を打った。

「……大丈夫だから」

心配されるより先に言っておいて、あらためて歩き出そうとする。

ブレイド > 「ふぅん……」

女性の態度はまあいい。
こんなところで声をかけられれば、送り狼かなんかだと思われても仕方ないだろうし。
だが、暴力で奪いにくる輩相手であればそんな態度は通用しないし
むしろその後のおたのしみに熱が入るだろう。

「いや、べつにアンタが襲われてーってなら放っとくけどよ」

強引に返されて水袋をしまいつつ、壁に頭を振るける彼女をみてため息一つ。

「大丈夫じゃねーだろ」

少し早足に彼女を追って。

ミンティ > 「そういうわけじゃない…けど…」

打った部分をさする。肩と壁が先にぶつかっていたからか、結構な音を立てたわりに痛みは薄い。痛くないわけではないけれど、こぶにはならずに済みそうだった。
心配してくれている相手に不躾な態度を取っている気はした。小声で申し訳なさそうに答えながら、首を横に振る。

「ちょっと…足がふらついただけ。ほら…もう、ね?」

追ってくる少年を振り返り、その場で軽く跳ねてみせた。もうふらついたりしないと主張したつもりだった。
けれど広い道に踏み出した次の瞬間、「いたぞ!」と声が聞こえる。
びくりと肩を震わせてそちらを見ると、五人ほどの見るからに柄の悪そうな男たちがこちらに駆けてきている。

ブレイド > 「………アンタ、なんかしたのか?」

追った女性が路地を出るやいなや、野太い声が響く。
なるほど、追われていたのか…だからあの態度…。
などと、感心している場合でもないだろう。
チンピラとは言え5人。まぁ…面倒なことだ。

「しゃーねーな…」

少女の手をとり、再び路地へと引き返そうとする。
まぁ、あのようすで放っておけば…輪姦されるのは当然として
何をされるやら。肉奴隷やらにされてもおかしくはないだろう。

ミンティ > 「なにも……!」

考える事が多すぎて頭がパンクしそうだった。余裕がなさすぎて今までで一番の高い声で否定する。
とにかくこの少年と別れて違う方向に逃げないといけない。このまま一緒にいたら、彼まで殴られたり、お金を取られたりするかもしれない。
あまり荒っぽい事に慣れていない頭でうろたえていると、急に手を引かれて足がふらついた。

「えっ…?だ、だめ……、あなたは違うところに…っ」

追っ手の一人が別方向から回りこんでいたのかと思ったけれど、手を取っていたのは近くにいた少年だった。
本当に彼まで危なくなると思うと、あげた声は悲鳴のようになってしまう。
無理にでも別方向に逃げようとはしたけれど、力の入っていない足はそのまま引きずられてしまっていた。

ブレイド > 「とにかくっ!逃げるぞ!!」

声を上げる女性、混乱しているようだが
おかげさまでこっちは逆に頭が冷える。
何もしてないって言うならご愁傷様、運悪く柄が悪い奴らの目についたのだろう。
それにしたって追ってくるとはしつこい連中に目をつけられたものだ。運のないことこの上ない。
内心同情しつつも手を引く…が…

「ばかっ!走れっ!!」

ずいと引く手に抵抗を感じる。
引きずってはいるものの彼女がついてこようとしないのだ。
この状態が続いたら、さすがに追いつかれる…ならば…
なおも抵抗があるならば抱き上げるほかはない。

ミンティ > もういっそ追われているわけではない、彼らは知人だと言ってしまおうかと思った。
そう言って手を払いのけて捕まってしまったあと、なにをされるかは想像もしたくないけれど、他に手立ても浮かばない。
迷惑をかけたくないと思うあまり自暴自棄に近い考えにはまりかけて、叱るような声にびくっと震えた。

「…!」

ここまでして助けてくれようとしている相手に嘘はつけない。息が弾んで返事もできないけれど、うんと頷いた。
別方向に逃げようとするのをやめて、力が入りづらい足を必死に動かす。
それでも鍛えているらしい少年が走る速度には追いつけず、距離が開くたびに何回も足を引きずられてしまう。

ブレイド > 「っ!」

まだ足がもつれるのか、そもそもの速度の違いか。
時折引きずるような感覚が繋いだ手から伝わる。
無理に走り続ければ、彼女は転んでしまうだろうし、そうなれば追いつかれるだろう。
幸いにも貧民地区の路地は入り組んでいる。
少し距離をとってしまえば簡単に撒ける。
相手が手分けしても、各個撃破できるならそれでいい。
そうなってしまうとやはり、選択肢は一つ。

「わりぃ、ちょっと我慢してくれよ?」

少女を抱き上げようと手を伸ばす。

ミンティ > 考えが追いつかない状況に混乱して、頭がくらくらする。
自分がちゃんと走れているかも不安になる。こんな事ならもうちょっとだけ日ごろから運動しておけばよかったと思った。
今はごちゃごちゃと考え事をしている場合じゃないとは理解していても、このあとの悪い予想ばかりが浮かんできて後悔が消えない。

「……っ?」

なに?と尋ねようとして開いた口からは吐息が弾んだだけだった。
こちらに伸びてくる手に目を丸くして、そのまま抱き上げられたなら、また驚いたように身を震わせてしまっただろう。

ブレイド > 「ちょっと、これもってろ」

すくい上げた手の先にもっていた…チョコバナナクレープを女性に。
あとはがむしゃらに走る。
できるだけ角を曲がり、相手の視界に入らないように。
相手の怒声を頼りに、遠ざかる方向へ。
迷いはしないが、変な場所で繋がっている道もある。
ばったり遭遇しないように道を選び、走り続ける。

「で、どうする?死ぬまで追ってくるってわけじゃねーだろうけど…」

さすがに女性一人分とはいえ、人を抱えて走れば息も切れてくる。
事情はわからないが相手のしつこさ次第で、やれることも変わってくる。

ミンティ > 「え?」

いきなりなにかを手渡されて反射的に受け取った。甘い匂いが鼻をくすぐってから数秒かけて、やっとお菓子だと気がついた。
その正体を知る前に、追われる緊張もあいまって強く握ってしまったせいで、ぼたりと溢れたクリームがブラウスに垂れた。

追ってくる男たちは皆そろって体格がいい人ばかりだった。そんな連中が細い道幅を五人で追いかけてくるのだから、きっと走りづらい事だろう。
怒声は徐々に遠くなっていき、しばらくすると聞こえなくなる。すぐに安心するのは早いかもしれないけれど力が抜けてしまって、深く溜息を吐き出した。

「あ…えっと、もう、ここまでで…平気。
 それと……ごめんなさい。これ…」

さっきよりは店がある平民地区に近い場所に来たように思う。
あたりを見回していて、今さら少年の腕に抱き上げられていると意識した。
しどろもどろになりながらも下ろしてもらおうとして、ついでに半分くらい握り潰してしまったクレープを申し訳なさそうに見せた。
 

ブレイド > もう怒声は聞こえないか。
このあたりともなれば先程よりも明るく人通りも多い通りが近い。
紛れてしまえばもはやわからないだろう。
少女の声に足をゆっくりと止めて大きく息をつく。

「っはー……お、おう…大丈夫か?
あー、そりゃいいって…あんな状態で……ほうり落とさなかっただけましだっての…
ぜー……は…っ…はー…それよか…服…」

足を止めれば呼吸も荒く、肩で息をしながら頷く。
クレープはだめになってしまったが、まぁ、それはいい。
チョコレートとクリームが服を汚してしまったようで逆に申し訳ないくらいだ。

ミンティ > 「わたしは…だいじょうぶ。……本当に…ありがとう。一人じゃ、逃げられなかったかも…」

ときどき依頼を受けて貧民地区に行く事もあるけれど、平民地区に近い見慣れた光景はやっぱりほっとする。
ここまで逃げれば追っ手にも見つかりづらいだろう。安心すると力も抜けきって、少年の腕に余計な負担をかけてしまったかもしれない。

「…服も…平気。夜だから…あんまり目立たないと思うし。
 あの…よかったら弁償させて。どこか…近くで買えそうなとこ、あるなら」

あの男たちに捕まる事に比べたら、服の汚れなんか気にならない。
助けてもらった上に少年の夜食だったかもしれないものを握り潰したままでは申し訳なくて、遠慮がちに尋ねて首をかしげる。

ブレイド > 「いや、いいって。むしろ勝手に引きずり回して…わりーな」

ようやく整った息。
このまま人の多い通りに出るわけにもいかないだろう。
力が抜けた少女を腕から下ろす。

「弁償って、まぁ公園で買ったもんだし一個食ったあとだから気にすんなって。
つか、アイツラはなんなんだ?ただのチンピラ…だよな?
事情も知らずに逃げちまったけどよ」

握りつぶされたクレープを受け取って、どうしようかと少し思案。
捨てるのももったいないがこのまま食べるにしたって…一人の時ならまだしも。

ミンティ > 「…そうしてくれなかったら…ちゃんと走れなかったかも」

少年を巻き込んでしまうくらいなら自分が捕まってしまおうと考えていた。今になって思うと無謀すぎると自覚できて、あらためて頭を下げて感謝を伝えた。
少年の腕から下ろされて、力が抜けた足はへたり込んでしまいそうになったけれど、これ以上の心配をかけないようにぎりぎりで踏みとどまった。

「えっと……じゃあ…お金。
 あれは…知らない人。急に声をかけられて、どこか連れていかれそうになったから」

ポケットから取り出した財布を開いて、デザート代に足りそうな金額より多めに掴み取る。
追ってきた人たちについては本当に知らないと首を横に振った。

ブレイド > 「あんなとこに隠れてたらもっとタチのわりーやつに捕まってたかもだぜ?
気をつけろよ?ほんとにな」

余計なおせっかいにならなかったようだ。
そこでようやく笑ってみせる。
だが、潜む場所が悪かったのもまた事実で、誰にも見つからずにいられたのが奇跡のようなものだ。

「あー?いらねーよ!
なんか金のために助けたみてーになるじゃねーか。
知らない…ってことは、単なる人さらいかなんかか?まぁいいか」

財布からお金を出そうとする彼女の手を制する。
平民地区から追ってきたと言うなら、追うのを諦めて帰ってきた奴らとばったり遭遇…などということもありうるかもしれないし
送っていくくらいのノリではいたが。

ミンティ > 「逃げるのに必死で…
 うん。……次からはなるべく…考えて走るようにする」

お説教されているような状況に、つい肩が下がってしまう。
少年の言う事はもっともだったから、真剣に耳を傾け、真面目な表情で頷いた。

「……わ、わかってるけど…なにもお返しできないのも辛くて。
 他にできる事って……ない、と思うし。だから……あの」

手を制されて、わかりやすく困惑してしまう。
口で感謝を伝えるだけなら何度でも繰り返せる。ただそれだけでは自分の気がすまない。
こちらの無理を聞いてもらえるように少年を見つめながら、それでも受け取ってもらえなかった時のために、他にできる事がないかも考える。

ブレイド > 「必死になるのはわかるけどよ…
ま、次がねーのが一番いいんだけどな」

助けを呼んだとしても、それも頼りにならないのがこの街ではあるのだが。
絡まれたのもそれこそ偶然というか…。
治安の悪さが何もかもいけないので、彼女に罪はない。

「ツライって言われると…でもべつに何もいらねーしな。
礼はまぁ、今度オレが困ってるの見たら助けてくれりゃいい。
で、家は?せっかくここまで来たんだし、ついでに送ってく」

ミンティ > 「……うん。じゃあ…絡まれないように…まわりも見るように」

次がある事を前提に話していたのが情けなくてうなだれる。
少年の言うとおりだから否定はできない。あらためて今後の心構えを口にして、しっかりと胸に刻んだ。
それでも運が悪い時にはどうしようもない事も知っているから困った顔。

「でも……、……わかった。逃げるなら、足は…そんなに速くないけど。
 あ、えっと…こっち。……本当に、ごめんなさい。ありがとう」

押し問答していても譲ってくれそうにないと思った。
まだ未練を残した表情を見せながらも、握っていたお金を財布に戻す。
少年はこのまま家までついてきてくれるらしい。さらに申し訳なくなってしまうけれど、今は誰かが一緒の方が安心する。
しばらく考え込んで、せっかくだから少年の好意に甘えておく事に決めた。
指差した方向に歩き始めた足は怯えきっていた時よりはしっかりしている。これならちゃんと店まで帰れそうだと安心して、ほどなくして二人の姿は雑踏の中へ消えていった事だろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からブレイドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にハティさんが現れました。
ハティ > 少年が主の下から逃亡し、この王都に流れ着いて既に数ヶ月…生活は未だにギリギリだ。
今日も今日とて貧民地区の何処かで、今にも崩れそうな廃屋の屋根の上に座り込んで佇む。

「……やっぱり仕事探さないと無理かな…。」

今まで殆ど外の世界を知らなかった…それでも、貧民地区で今日まで生き抜いてきて思うのは。
…やっぱり何かしら収入が得られる職に就かなければ、という意外な堅実思考であり。

「とはいえ、僕に何が出来るんだろうか…。」

剣術や体術に優れているとも言い難い。知識が豊富とも言い難い。
魔力は…豊富らしいがそもそもコントロール出来ない。
己が身一つで、となると驚くほど何にもない…ハァ、と人知れず溜息を零し。

(…そもそも、一応逃亡者だしなぁ)

ハティ > …こうしていてもしょうがない。今日も食料を何とか調達しなければ。
ノロノロと立ち上がりつつも、纏ったボロですっぽりと体と顔を隠して。
そのまま、ひっそりとした足取りで少年は廃屋を後にする。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からハティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地裏」にカインさんが現れました。
カイン > 夜が更け始め、活気に満ちる貧民地区の中でも怪しい空気の漂う一角。
娼館や露店の立ち並ぶ一角の路地裏の壁に寄りかかり路地を行き交う人々を眺めている男が一人。
路地で声を上げ、あるいは手を絡めて男の気を引く女性たちの様子に思わず感嘆の声を上げ。。

「今日は引っかかる割合が多い事多い事。忙しさで色々溜まってた連中が多いのかねえ」

心底感心した様子で漏らすと、一人娼婦に連れられ娼館に入っていく人影を見て肩を竦める。
男の仕事はその路上に立つ娼婦たちの護衛、早い話が用心棒だった。
とはいえ朝方から特に仲介に入る様な事態が起きるでもなく、
退屈な時間が過ぎるまま残った女性たちも最早片手で数えるほど。
はっきり言って手持無沙汰気味でぼんやり人波を眺めている。

カイン > 「しかし、平和すぎると仕事がなくなる…のはいつもの事だが、
 年中戦争やってる割りにこの辺は平和だよなあ。戦線の方は派手にやってるらしいが」

そういう話は漏れ聞こえてくる割に、
全く位気配を感じさせないこの街の様子はそう考えると割と奇妙に映る。
とはいえお互いどこまで本気なのか怪しい物だが、とは思いながらに顎に手を当て。

「ま、向こうの国の連中もロクでもないのしかいないんだしな。
 お互い様と言えばお互い様か」

そちらの国の出身であることを棚に上げてそんな事を言いながら、
軽く肩を竦めつつまた一人客を連れて行く娼婦を眺めていよいよ終わる仕事の様子に少し息を吐く。

カイン > 「おやま。あんまりのんびりしすぎだな」

ふと気が付くと仕事が終わった事に気が付いて、
合図を客に送ると未だに賑やかな娼館の様相には若干呆れた様子を見せる。
しかしそれはそれとして、軽く肩を竦めながら自分もそれに混ざるべく足を向けて姿を消すのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/路地裏」からカインさんが去りました。