2017/08/15 のログ
■シュカ > 「ははっ、そーかい、テレてねぇか。ハイハイ、そーしときますか。
え、俺は優しーぜ、勿論セックスんときもチョー優しいから?」
遮るように手が伸びたから、からかい甲斐があるねえ、と双眸細めて、
にやにや笑ってしまうあたり、なんとも相手の言動は微笑ましく。
故に、ついでに優しさアピールする姿は、あまり信ぴょう性がない笑いを含んだもの。
拒まれず、そのまま首筋にまで指先を這わせたとき、ふと顔を上げて娼館の方へと視線を投げる。
「あんま無理すんなよ。なんつーか、…幸運を、だ、チェシャ」
耳に届いた少年の名を口にし、手に落とされた口付けに目を細め、代わりに、とばかりにぽんと優しく一度だけ頭を撫で叩く。
軽やかに、まさしく猫のようなしなやかさで娼館の方へと戻る様を見送る形になると、
「あ、おい、俺はシュカ………っ!」
うっかり名乗ることを忘れていたが、手を振る姿を見て、はたと気づいた。
嬌声や怒声は響いていたが、名を告げた声は、届く程度の声量。
ひらり、と手を上げてその姿を見送ったのちに訪れる空虚な時間。
「さて…俺もオシゴト、オシゴト」
さて、依頼人が戻るまでどのくらい時間を空費するか。
再び、突っ立っているだけの仕事に戻ったときには、眉間に深い深い皺を刻むことになったとか………。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からシュカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にオズワルドさんが現れました。
■オズワルド > 何処の地区にも盛況な場所と言うのは存在して、其れが男女の戯れだったり、
今流行のスイーツだったり、原因と言うのは様々だ。
唯、貧民地区に於いては人が群がる場所と言うのはどうにも
欲求やら生き死にに関わっている場合が多い気がする。
例えば娼館通りだってそうだろうし、何が原材料か皆目検討も付かない、
屋台連なる目抜き通りだってそうだろう。
誰それが酒を手に入れたと聞けば、あっと言う間に群れが出来るし、
やれ雨が強く降り出したとすれば、今日の寝床の確保だと
廃墟の軒下が盛況だったりする訳で。
「次だと呼ばれたら、さっさと次が入れ!何度言ったら分かる!」
此のちんけな診療所だって其の小さな賑わいの一つだ。
すっかり蝶番が雨でやられてきいきいと耳障りに鳴るのは、
看板にぶら提げられた青い鳥だ。
「棺桶に早々ぶち込まれたくなけりゃ、さっさと入れ!
…嗚呼、此処で井戸端会議をするなと何回言ったら…!」
唯でさえ狭苦しい待合室で苛付いた声を上げるのは、
忌々しそうに黒髪を掻き上げる長身の医師風貌。
診察はとっくに終ったと言うのに、確りと円陣を組んで居座っている
近所の老人達だ。
思い切り顰め面してやった所で、先人達は痛くも痒くも無いらしい。
■オズワルド > 老人達がびくともしないのは此れが常の日常風景であるからだ。
こうして医師らしき男が暴言を吐いていた所で、結局診察は進むのだし、
順番待ちとは言っても、其処は其れ。
何しろ人情だの、物騒だのが織り成す此の界隈だ。どうせ重病人が運ばれて来れば
順番なんて物は無しに等しい。
彼等を動かす物は医師の怒号なんぞより、
「――…ぁん?雨?」
誰かが、おや雨だよ、と呟くと、あら大変だ、洗濯物が、地面がぬかるんで足元が悪くなる――等とてんでばらばらに喋り始めて
漸く其の重い腰を上げ始める。呆れた事に殆どが診察を終えていたらしい。
中には診察をされてもいないのに帰ろうと腰を上げる者まで居る始末だ。
大して悪くなかったのか、其れとも唯喋りに来ただけなのか――
そんな様子を見眺めては、額に手を宛てて大仰に溜息を付いてみせる。
「嗚呼、分かったよ。はいはい、気を付けて――…いや、だから芋は要らねぇって言ってるだろ。
…分ぁかった、分かった。有り難く貰っとくから。」
やれやれと診療所の戸口を先立って開いてやれば、随分と古びたドアベルが掠れた音をちりん、と立てて。
「ほら、余所見してんな、唯でさえ危なっかしいんだから。そんなんで転んでも、診てやらねぇぞ。…はいはい、またな。」
次々に、ゆったりとした足取りで老人達が出て行けば――先とは打って変わっての静寂。閑古鳥だ。
多くの選択肢を持たぬ人々であるから、此の診療所を訪れる者も少なくは無い。
そうそう何時も、盛況と言う訳には行かないのだ。
唯、休息は休息だ。
漸く、と言った様に一本取り出した煙草を咥えると、開いた戸を其の儘に、凭れる様に面した路地を見遣って。