2017/08/14 のログ
■カイン > 「せめてもう少し繁華街に近い場所だったら良いんだがね。
色々と困ったもんだ、なんせここに居るのはネコかネズミ位のものってのじゃな」
何やら珍しい物とでも思われているのか寄ってくる小動物達を軽くあしらいつつ、
頬杖を付いて路地に視線を向けるとこういう場所にありがちな追いはぎ狙いの人気すら感じない。
本気でだれの気配もないと言った様子にお手上げとばかりに肩を竦め、
猫の頭を軽く撫でる。ニャアと無駄に軽快ななき声が響き渡った。
■カイン > 「しゃあない、歩いて帰るとするか。…とりあえずまずは繁華街の方でも…」
一直線に帰るのは何だか癪と感じたのか立ち上がり、
向かう先は娼館などの多く立ち並ぶ繁華街の方向。
遠くから聞こえてくる人々の喧騒を目指して男は広場から立ち去っていくのだった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からカインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にシュカさんが現れました。
■シュカ > 貧民地区の路地裏。娼館の裏手。
夜も更けて、賑わっている大通りから少し入ったところにある人気のない路地に男が立っている。
男が凭れる背丈ほどの高さの鉄製のフェンスの向こうは、このあたりでは一番「有名な」娼館だという。
客でもないのは明らかな男は、何をするわけでもない、ただ立っているのが、今の「仕事」であった。
娼館は、通りに面した部分は目が眩むほど豪奢に飾られていたが、
その裏手となるこの場所は、路地と敷地を区切るようにフェンスがあり、
娼館の裏庭であろう場所は、芝生のような草地の中にも、草が生えて、背の高い木々も手入れされている様子はない。
それが「いい」のだそうだ。
普段手入れされている屋敷に暮らす貴族たちにとっては、それこそ自然地帯での「行為」の真似事が出来る。
それが「有名な」理由らしく、そのおかげで、本日の「仕事」たる貴族サマの護衛の任を預かったというわけだった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にチェシャ=ベルベットさんが現れました。
■チェシャ=ベルベット > 草木の生い茂る娼館の裏庭、今日もそこに「行為」の真似事をするために
貴族、あるいは客の何名かがお気に入りの娼婦を連れてその茂みへと入っていく。
虫の鳴き声に混じってそこかしこから喘ぎが漏れ聞こえることもあるだろう。
と、草むらの中から言い争うような声が聞こえ、幾度かの暴行の音がする。
すっと周りから驚くような気配と喘ぎが押し黙る雰囲気が場を支配する。
それからしばらく無音の気配、ついでガサガサと草むらをかき分ける音がシュカの方へやってくる。
出てきたのは夜色の髪を持つ年端もいかない少年だった。
片方の頬が殴られたのか腫れている。
フェンスに手をついて、不機嫌そうな視線をシュカへ向けると
今にも人を殺しそうな機嫌の悪い声音で尋ねてきた。
「お兄さん、この娼館の警備? 客が無茶いうから殴って黙らせちゃった。
……ちょっとあの客外につまみ出してくんない?」
そう言って草むらの奥、気絶して仰向けに倒れている貴族らしい身なりの客を親指で指し示す。
「……それとも僕が罰を受けるのかな、これって」
それでもかまわないというように少年がぺっ、と地面に血混じりのつばを吐いた。
■シュカ > あとどのくらい待てば、お役御免になるのか、ため息をついたのは、何回目か。
娼館の裏手からは、悲鳴やら嬌声やら罵声やら、様々なモノが響いているが、それに対して、興が乗るわけでもないから、
ため息をつく以外に仕事がないと言えた。
だが、不意に、言い争う声と、不穏な音に、眉を顰め、フェンスに凭れていた上体を起こす。
「おいおい、まさか俺の金蔓じゃねぇだろうな…」
全身を貴金属で着飾った小太りで禿げた頭を終始撫でつけていた初老の金蔓…もとい、依頼人。
「身の安全を保証するように」との依頼を受けていたから、少しばかり冷たい汗がにじむが、
静寂を破り、こちらへとやってくる気配と音に、反射的に刀の柄に手が伸びる。
しかし。
出てきたのは、まだ年若い、やや険があるが秀麗な細身の少年だった。
虚を突かれた恰好になって、柄に手はかけたまま、
「あ?…あぁ、いや…」
ここの警備ではないことを短く否定し、漸く柄から手を離した。
それから、相手の指さす方へと視線を馳せれば、
「…お前さんがやったのかい?ずいぶん派手にやったな、相手は貴族サマだぜ、あとあとめんどくせーだろ」
その豪奢な身なりからして階級は知れたが、幸いにして己の依頼人ではなかったから、
先ほど一瞬でも剣呑な雰囲気にて柄に手を掛けたのとは裏腹に、笑いを乗せた緊張感のない冗談めいた口調になる。
「つーか…あいつは、お前さんの「客」か?」
摘まみだすのは簡単だったが、ふと問いかけた言葉。
言外に、目の前の少年が男娼なのか、という不躾な意味合いも匂わせつつ。
■チェシャ=ベルベット > 冗談めいた口調のシュカに対してこちらは険しい顔付きのまま
痛む頬を手で触り眉をしかめた。
「そーだよ、「客」だった……
けど無茶苦茶なプレイ要求してくるから思わず手が出た」
悪びれる様子もなく、男娼であることを肯定して頷く。
あとあとめんどくせーだろ、と言われてもさぁ? ととぼけるような肩のすくめ方をして
「あいつがこの娼館を出入り禁止になるほうが早いだろ。
僕じゃなくて娼婦だったら傷物にされていた可能性が高かったし
そういうのは客って言わないで疫病神だっていうんだよ」
あくまでどんな無茶な要求をされたのかは言葉には出さず。
シュカがつまみ出す様子が無ければ、こちらはフェンスを身軽に乗り越え
シュカの横にひらりと飛んで立つ。
「お客サマにするなら、お兄さんみたいな人のほうがいいな。
格好いいし、食べごたえがありそう」
そこでやっとにやりと口の端を吊り上げて笑う。猫が笑うときのような笑みだった。
■シュカ > 否定の言葉が返ってくるものだとばかり思っていたのか、肯定の言葉に目を瞬かせて驚いてしまう。
確かにその体躯やら容姿やら、客を取るとなっても十分であろうが。
「はは、そうか、「客」だったか。そういうプレイがお好みな「客」だったかもしれんな」
剣呑な雰囲気漂う相手の、聊か激しい「お仕置き」に、冷やかすように笑って冗談めかし、
いまだ伸びている貴族の男を一瞥する。
「へぇ、やってる事は激しいが、お前さん、優しいんだな。娼婦のねーちゃんたちを心配するなんてさ。
お前さんも娼婦のねーちゃんたちもキズモノにならなかったんだ、正義の鉄槌ってやつだな」
相変わらず口調は軽かったが、表情は意外性に満ちた少年を楽しげに双眸を細め、笑みを浮かべて。
ちょうど、こちら側へとやってくる様を見ると、なるほど、華奢ではあったが、少年らしいしなやかさもあり、
すっと目を細めて思わずその体躯を不躾に眺め。
「へぇ…そいつは。嬉しいことを言うね、じゃあ、「食って」もらおうかな」
不敵な表情を浮かべて告げられた言葉に、一瞬、驚いたような顔をしたが、
すぐに、肩を揺らしてくっつと笑えば、本気か冗談か、どちらともつかぬことを口にし。
それでも、前者であることを示すように、不意に手が動く。
大人しく触らせてくれるか、それとも貴族サマにしたように「お仕置き」を食らうか、
半ば運試しみたいに、伸ばした指先で、今だ腫れている頬へ触れようと。
■チェシャ=ベルベット > 「別に優しくなんて無い……。
ただ他の娼婦が傷物になったら商売上がったりなのは店のほうだし……」
優しいと軽口を叩かれれば何か言い訳するようにゴニョゴニョと呟く。
照れ隠しのようなものであり、語尾は段々と小さくなって聞こえなくなってしまった。
不躾にジロジロと自分を眺められるのは慣れているらしい。
相手の視線にも動じることがなく、堂々とその視線を細い体で受け止めている。
だが冗談で口にしたつもりだった挑発めいた言葉を、
相手が本気か冗談かわからぬ笑みでその手を伸ばしてくるのに驚いて瞬く。
一瞬体がこわばるのが気配で察せられようが、
結局一歩後ずさったまではいいが、そのまま男に腫れた頬を触れさせた。
まるで逃げそびれた猫のように目を丸くする。
「……お兄さん、警備じゃないなら誰かの護衛……?
ちゃんとお仕事しないと、お金貰えないでしょ。
それともそんなに僕が魅力的に見えたのかな……」
腫れた頬に触れる指先がまだ少し痛むようで、だがそれを悟らせまいと不敵に微笑む。
■シュカ > 「そーか?
まぁ、ねーちゃんたちがキズモノになりゃ、娼館にとっちゃ痛手だが、別にお前さんの腹が痛むわけでもねぇのにな」
だから優しい、と認定したようで、照れ隠しなのか、最後の方、よく聞こえなかったから、
んんー?とわざとらしく顔を近づけてから、照れてンの?と余計なひと言付け加えて揶揄し。
そして幸運なことにその頬に触れることが出来たら、こちらが驚く番。
とはいえ、触れたから、遠慮はなし。
そのまま親指の腹で頬をそっと、痛く無いように、と配慮はしているのか、触れるか触れないかという柔らかなタッチで撫で。
「あー…オシゴトを思い出させるなよなー…。
………つーか、ナニ?お前さん、煽っといて、それはジョーダン、ていう?
勿論、魅力的だね、俺にとっても食われ甲斐がありそうだし?」
まだ仕事中だったことを思い出してげんなり。
ため息をついたが、それを今だけはとりあえず忘れるつもりで、
自分より小柄な少年を見下ろし、やや身を屈めるようにする様は、少しばかり覆いかぶさるようにも見える。
目を丸くした相手を揶揄するように、頬を撫でた手が、そのまま顎先、首筋を撫でるように落ちて行く算段だが、
そこまで許してくれるかどうか、それをも愉しむように目を細め。
■チェシャ=ベルベット > 揶揄されればむっとしたように顰め面をしてみせる。
どうやらからかわれるのはお嫌いのようで、近づけられた顔に
片手で遮るように目の前で翳し
「照れてないって!
……お兄さんこそ優しいじゃん、頬、痛まないように触ってくれてるし」
真正面から相手を見据えるのは少々恥ずかしかったのか視線を脇にそらす。
頬を撫でられるのは嫌ではなく、むしろ気持ちよさそうに目を伏せた。
シュカの手が、頬から顎先、首筋へと撫でられれば ん、と快感を押し殺した声を上げる。
ぞくりと、チェシャの体が震えこちらからもそっとかがみ込んだ相手の頬に触れようとするかのごとく手を伸ばし――
が、そうする前に娼館の方から本物の警備が数人がやがやと音を立てて草むらへ侵入する。
一部始終を見ていた娼婦の内誰かが娼館へと通報したのだろう。
「やっば……、お兄さんごめん。
僕のほうが仕事しないといけないみたい……」
娼館からやってきた上役がチェシャを怒った顔で呼びつけてくる。
その時に、チェシャ、という名前はシュカにも伝わってしまうだろう。
名残惜しそうに相手の手から体を引き剥がし、お詫びに相手の頬へ軽い口づけを落とす。
「煽っておいて悪いけど、時間切れ。
また機会があったら会おうね、お兄さん」
いたずらげな顔をして、再びフェンスを軽やかに飛び越え草むらの中へと戻ってゆく。
呼びつけられた上役にはいはい、と生返事をしながら、もう一度最後にシュカの方へ振り返りバイバイ、と手を振って。
そうしてから警備と娼婦と、伸びた男と連れ立って娼館の中へと戻っていった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からチェシャ=ベルベットさんが去りました。