2017/06/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からカルニーツォさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にカインさんが現れました。
カイン > 昼間の喧騒に包まれた貧民地区の中でも一際胡散臭い人々の集う路地裏。
その中でも一際胡散臭い古ぼけた台の上に所狭しと怪しげな表では取扱のないクスリや麻薬、
道具類の数々の並べられたカウンターの内側。
設えられた小さな椅子に座り込んでいた。

「…全く、遅いな。人に店番押し付けておいていつまで店を開けてるつもりやら」

入用な道具があって立ち寄った露天ではあるものの、持ち合わせがないと言われ、
倉庫に取ってくるまでの間という条件で引き受けた即席の店番ではあったのだが一向に戻ってくる気配のない店主。
おまけに路地裏にあるせいで客の寄り付く気配もないので、手持ち無沙汰な様子で人通りの全くない通りを眺めていた。

カイン > 「他所で買ってもいいんだが…店番放り出すと流石に出禁だよな。どう考えても」

何せ場所が場所である。考えるまでもなく店番である自分が居なくなれば、
一瞬で商品な根こそぎ盗まれるのは想像に難くない。
そしておそらくは店番として自分を選んだのもクスリや媚薬の類に興味が無いと見て取られたからだ。
薬瓶のコルクに人差し指の平を押し付けてカタカタ音を鳴らしながら遠くから聞こえる喧騒の方へと視線を向け。

「これで酒の一杯でもお供にあればな。背に腹は変えられんけど」

カイン > 「仕入れのルート潰すとそれだけで苦労するのが目に見えるしなあ。
 傭兵団とかの大口で帰る連中が羨ましいやら面倒くさそうやら」

あっちを立てればこっちが立たず、を地で行く状況を思い返しながらぼやきがてらに肩を回す。
長時間座り詰めのせいで体が段々と固まっていくような錯覚を覚えながら、居並ぶ道具へ視線を向ける。
数多い薬瓶などは中身が解らないので何とも言えないが、淫具じみた道具などを見かけると、
色々と幅広い人間の趣味に何とも言えない面持ちになる。当然打っているからには買う人間が居るということだろう。

「業が深いねえ。魔族の俺が言えたことじゃないが」

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にカナンさんが現れました。
カナン > (人通りが途絶えた道を歩み、一つの店の前で脚を止める。硝子越し、店番らしき人影も見られて、幾らか窺う仕草を見せた後、無造作にドアを押し開く)

「…頼もーう。……店は開いている?」

(第一声は幾らか張られたものではあったが、後半は疑問へと転じる。手元の薬瓶が一瞬、酒瓶に見えた。ドアをあけたまま、通りの黴臭いにおいを室内に呼び込みながら顔を向け)

カイン > 「――うん?ああ、いらっしゃい。何かお求めかい?」

そのまま時間が流れるのを待っている所に聞こえた声。
視線を向けると見知らぬ人の姿が見えて、軽い調子で声を返した。
流れでやっているとは言え一応の店番である。
任された以上は放り出すわけにもいかず、営業スマイルで返しつつに客の様子をうかがい。

カナン > (ドアを閉めて数歩店内に歩み寄る。カウンターを間に置いて脚を止め)

「麻痺の解毒薬、強力なのを数本欲しいの」

(店番が代理とは知らないから、求める物をそのまま告げる。笑顔にはやや不愛想な素の顔で言う語尾に、店のドアが閉じる音が重なる。多少柱が軋んだかもしれない)

カイン > 「麻痺の解毒薬…?そりゃまた、なんというか妙な物を欲しがるな。
 多分あるとは思うがちょっとまってもらえるかい、何分代理なもんでね」

何がどこにあるのかは良く解らない。一応自分の知っている商品だったので、
見れば解りはするだろうが雑多なカウンターを探し回るのも一苦労だ。
ガサゴソと音を立てて中身を改めながら肩を揺らし。

「しかし何だ、何か麻痺毒を使う化物でも討伐するってのかい?出なきゃあまり使わんだろうこんなもの」

カナン > 「…代理なの? 信用されてるのね」


(意外、と。言葉そのものの表情を浮かべる。聞いた通りなら、其れなり以上に値が張るものがあるんだろうに。突っ立っているのに草臥れたのかカウンターに少し寄り掛かり。体裁を整える気も段々なくなってきて、カウンターに腕を乗せてしゃがみ込む)

「依頼は無いけど、何かあった時持っていた方が便利かなあ…って。何か良い話、持って無い?稼ぐのとか、稼ぐのとか、楽しいこととか。」

カイン > 「信頼というよりは、放り出した時のデメリットが大きいのを理解した上で押し付けられたって感じだな。
 中々悪辣と言うか食えない話だよ、放り出したらそれだけ困るのは俺だしな」

よしんば店のものを取っていったとしても興味のないものばかりだし、
薬のたぐいの換金はどう考えても足がつく。お手上げと言わんばかりに肩を竦め、
暫く時間をかけてカウンターから薬品を引っ張り出して相手の前に数本並べる。
なんとも直接的な話に少し苦笑いを浮かべ。

「そう言われてもあんまりな、此処の所景気のいい話無いからなあ。
 砦とかに行けばそれなりに儲けにゃなるけどよ。ま、生き残れれば、だが。
 楽しいことったって男の楽しいことと女の楽しいことは多分違うしなあ――酒だのセックスだのは共通かもしれんが」

それだけ金になるには理由がある。少女の様子を眺めて目を細め、
下ネタをのたまって笑い飛ばし。

カナン > 「デメリット…。このお店じゃなきゃ手に入らない品があるの?」

(縁を切る気でやるならデメリットと言うデメリットも思いつかず。残るのは店主との関係性か、他じゃ手に入れられないいわくつきか。興味を示して問いかけながら、並べられた数本と同じ目の高さでじっと見つめ)

「これ、全部同じ?何か違いがあるの。………熟練の人が命がけなような所はちょっと重いなあ。……最初、お酒飲んでるのかと思ったよ。女にもそれは楽しいね。たぶん。」

カイン > 「そういうわけじゃないが、店番放り出して悪評がたったら回復が面倒だ。
 傭兵って稼業は依頼してくれる人間が居ないと困るんでね」

取り返す方法がないわけではないが、数時間の我慢で終わるならそれの方がいいと割り切った様子で言い返す。
それはそれで苦痛と思っているのだが、どうしようもないのだからある意味諦めも付く。

「同じのが並んでたから多分全部同じだと思うんだけどな、っと。
 とりあえず値段はこっちで…ま、自身がつくまで危ないところには近寄らないほうが懸命だわな。
 酒が飲めればこの店番ももう少し楽しい催しになったんだが――
 何だい、嬢ちゃんも行けるクチかい?」

楽しげににんまりと笑って少女の様子を眺めながら問いかけ。

カナン > (だらだらしていたが同じと聞けば左端から3本己の方へと引き寄せて、軽く俯く。カウンターの足元でごそごそと何か探る間があって、言われた値段そのまま三倍にしてカウンターに滑らせる。そこから一枚抜いて手元に引き寄せ)

「高い。これだけまけて。」

(定価の一割引きをきりっと双眸引き締めて要求した。交渉成立してないのにもう瓶は膝元に持って行こうと。)

「お酒は好きだよ、奢って貰えるお酒は更に好き。……記憶は飛んでしまうからよくわからないけど。ひっつき虫になるらしい。」

カナン > 「傭兵だったんだ。腕も良いの」

(掠れて消えた一言足して)

カイン > 「…ま、いいだろ。それくらいなら俺からいって置いてやる」

相手の値引き交渉に少し考える仕草を見せた後、仕方ないと頷いて喉を鳴らし。

「そりゃまたよろしくないな、酒は飲んでも飲まれるなってなもんだ。
 酒をおごられた結果襲われるなんてのはあんまり宜しい未来とはいえないだろう?
 それほど大したもんじゃないが、長く続けてられる程度にはな」

下卑た笑いを浮かべて返しながら代金を受け取ってしまい込みながら、
意地の悪い言葉をにんまり笑って投げかけ。

カナン > 「すごいあっさりだね。ありがとう。」

(目をぱちりと瞬きさせて男を見上げる。布袋の口を広げて、小瓶三本を押し込んでしまうともうはちきれんばかりに膨らんでしまった。左側が少し重い)

「値引けないならお酒でも奢って、って言う手もあったんだった。……引っ付き虫になるくらいあやふやになっても、嫌だったらどうにかしてるみたい。

長く生き残ってるってことが、腕の良さの証明だよね…」

(目を細めて軽口を叩きながら痺れたようになってきた膝を伸ばそうと立ち上がり)

カイン > 「どうせ俺の懐は痛まないからな」

至極あっさりした物言いの背景は、言ってしまえば他人事だからというのがある。
この程度の値引きは自分自身が要求して通したことはなんどもあるのだから、という話もあるのだが。


「それは相手のことが然程嫌と思わなきゃ引っかかるってことだと思うんだがねえ。
 それでお前さんがいいならいいけどさ、割と変わってんな」

クックと喉を鳴らしながら頬杖をついて少女の様子をどこか楽しげに眺めて目を細め。

「腕の良さの証明になるかどうかはさておき、目端が聞かないと生き残れないのは確かだな。
 多少ズルくても逃げ回るくらいのほうが人間楽ができるってもんだ。命あっての物種だからな」

カナン > 「………もう1割吹っかけた方がよかったかな。」

(最初から二割、って言ってたら通ってたような気がしてきた。む、と眉間に軽く皺を寄せて)

「お酒を飲む相手ってある程度一緒にいて楽しいからじゃない。其れでそういうことになったら、楽しいからってことで…えーと。楽しいからだと思う。…あなたは、」

(カウンターに手を突いて貌を寄せる。耳朶にひそりと吹き込む声)

「人間なの?」

カイン > 「それは流石に、俺の一存じゃな。後は店主が帰ってきた後にやってくれ」

そこまではやってやるギリはないと言わんばかりに両手を上げて肩を竦めて笑ってのける。
が、続いて聞かれた問いかけに目がすっと細まり手を下ろしながら相手を見据え。

「へえ、普通人間の格好してる人間は人間だと思うが、何でそんなことを聞くんだ?

カナン > 「うん、分かった。…店主の方が狸な気がしてならないけどね…。これだけたくさんの薬を置いて無事商売してるんだもの」

(息が吹き掛かる位の距離で、温度が下がった眼差しを絡め合わせる。表情の変化を検分するように眺めて笑い)

「匂い……かな。野生の勘とか、引っ掛けとか、あてずっぽうとかでも。どれが良い?」

(小さく息を震わせて折り曲げた上肢をゆっくりと伸ばす。ドアの外へと視線を向け)

カイン > 「そりゃそうだ、商人なんて皆そんなもんだろう?
 だからこそ油断ならないんだけどな」

信用できるできないがハッキリしてると肩を竦めて言いながら、
帰ってきた答えに顎に手を当てて面白そうに相手をみやり。

「はん、そりゃまた随分と面白い感性をしているこったな。
 ま、お察しの通り俺は人間じゃなくて魔族だ。だからって言って何かをする気もないけどな」

大仰に両手を広げながら言い放って喉を鳴らし。

カナン > 「うん、…私も別に、何かする気も無いよ」

(魔族だから、と言って。半分そうだからと言って。後半は言葉にしていないが。小さく唇を笑ませて歩き出す。礼を一言残して店の外に)

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からカナンさんが去りました。
カイン > 「……なるほど。俺が言えたギリじゃあないが、この街には本当に色々といるな。
 気をつけて、また来いよ――と言っても俺が居るかは判らんが」

その大半が対して騒動を起こそうと思ってないからこそ取り締まられてない部分もあるのだろうが。
ひとりごちてから出ていく少女を見送って暫くの間時間を過ごせばようやく帰って来た店主の姿。
散々文句を言って幾らか代金を値切った挙句、自分も外へと去ってゆくのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からカインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……」

貧民地区、路地裏の一画で少女が細巻きをふかしている。
行き交う人の数は、割と多い。貧民地区としては賑わっている、とでもいうべきか。
そんな中、少女はその人々を見ては、つまらなさそうに煙を吐く。

「……ふむ。めぼしい情報もお宝もなし。
 ついでに仕事の依頼もなし。お手上げとはこのことかしらね」

少女が呪われて以来。デカイ仕事など入った例がない。
このままでは雇っているメイド二人と娘、家族四人で飢え死にだな、と小さく笑いながら。

「せめて欲しい情報が集まればいいんだけど。
 そうもいかないかしら……やれやれだわ」

まさしく文字通り。お手上げのポーズをしつつ空を見る少女。
何かうまい話でも降って湧いてこないかな、という感じで、立ち尽くし、ぼーっとしている。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」にウィルバーさんが現れました。
ウィルバー > 「なんだい君、お金に困ってるのかい?」
突然、顔を出してきた不審者。
夜空を見上げる少女はさぞ驚いたことであろう。
僕が逆の立場なら100%通報している。

「それなら、僕の家で家事手伝いをしてみないかい?
僕の家は富裕地区の外れにあるんだけど、家が広すぎて人手が足りてないんだ。
ああ、金なら割と持ってるから心配しないでくれよ? こう見えて僕、宮廷魔術師だからね。」
遺跡の帰りで汗まみれ、泥まみれの恰好でサムズアップをする僕。
疲れて逆にハイテンションになっていた。

でなきゃこんなこと、普段は出来ない。

セイン=ディバン > 「!! ……ビックリした……。
 あのね、お兄さん。こんな場所で急に声かけてこないでよ」

視界に突如、男性の顔が出てきたもので。少女は驚いて息を飲んだ。
一度深呼吸をし、まずは相手への文句を一言。
とはいえ、ぼーっとしていた少女自身も悪いのだが。

「お生憎様。お金には困ってるけど、こう見えて冒険者なの。
 家事手伝いが欲しいなら、トゥルネソル商会の店に行きなさいな。
 そこでミレー族のメイドでも雇えばいいわよ。
 ……ん? 宮廷魔術師?」

はんっ、と相手の提案を鼻であしらう少女。
そう、こんなちんちくりんで呪いまみれの身体ではあるが。少女は冒険者なのだ。
家事手伝い、などという仕事など、スリルを求める少女にしてみれば真っ平御免。この手の手合いからは離れるに限る、と思い歩み出そうとすれば。
何か、宮廷魔術師という単語に引っかかりを覚え、立ち止まる。
宮廷魔術師。何かを、忘れているような。ココ最近のゴタゴタのせいだが。
そうして、うんうんと唸り、思い出そうと必死な少女。

ウィルバー > 「そうかい、それは悪いことをしたね。 お嬢ちゃん。」
不満げな少女の顔をにんまりと笑みを向けていた。
オジサンではなく、お兄さんだって。 
うんうん、よく分かってるじゃないか。 

「冒険者ってのは条件が良ければどんな依頼でも受けるんだろ?
スポットで家事手伝いすればいいんじゃないの?
僕の家はそんな感じで交代でやってもらってるけどね。」
聴いたことのない店の名前を教えてもらい、とりあえずメモにしておいた。
どんな店かはおいおい調べるとしよう。

「宮廷魔術師なんて、今時いくらでも居るよ?
まあ、僕はその中でも新入りなんだけどね。」
何がひっかかるのか不思議に思ったが、今の時点ではそれが何かは分からない。
彼女が口を開くのを待つことにしよう。
とりあえず、手頃な椅子に座った。 もう立つのも歩くのもタクサンだ。

そして、少女が唸っている間、暇だったので僕も少女を観察していた。
うん、なんか呪われてるね。 

セイン=ディバン > 「……イヤに素直ね……。まぁ、うん。
 謝ったので許してあげます。こう見えて私は心が広いので」

文句を言えば、反論するではなく普通に謝ってきた相手。
あまりにも拍子抜けな対応なので、素直に許すことにした。

「それはそうだけどね。アタシ、冒険者って仕事と生き様に誇りがあるんで。
 家事手伝いとか、庭の草むしりとか、店番だとか買い物代行だとかそういうのは受けない主義なの」

ふふんっ、と鼻を鳴らす少女。実際、割とのんびりとした仕事を請けることもあるのだが。
その反動で、次に受ける依頼がスリリングなものを選んだりする。
要するに、退屈な仕事は嫌いなのだ。そして、スリルと冒険が好物なのだ。

「ん~……そうなのかもしれないけれど。
 ……あぁ!! 思い出した!!
 そう、宮廷魔術師!! その宮廷魔術師で、探してる人がいるのよ!!
 ねぇ、お兄さん。あなた新入りっていうけど、宮廷魔術師のお仲間の名前とか、どれくらい知ってる?」

イスに座り、ゆったりとした口調で喋る相手。その言葉に相変わらずうんうんと唸っていれば。
ようやく思い出した事柄に、思わず叫んでしまい、ずいっ、と相手に詰め寄る。
そう、思い出したことは重要なこと。大切な、大事なパートナーを襲った相手。宮廷魔術師だとか、学園の教師だとか。
その人物の情報を集めるという目的もあったのだった。

ウィルバー > 「そりゃそうよ。 素直は美徳らしいよ? 
おお、寛容も美徳だねえ。 いやあ、君は人間が出来てるじゃないか。」
オニイサン呼ばわり一つで機嫌のよい僕であった。

「冒険者って皆そういうこと言うよね?
喰えればそれでいい僕としては理解に苦しむわあ。
めちゃくちゃ金くれるなら、草むしりでも喜んでやるけどね。」
ああ、でも直射日光ガンガンは嫌だなあと、心の中で呟く。
どうも目の前の冒険者は荒事の類が好きなのかもしれない。

「おおう、グイグイ来るねえ。 宮廷魔術師に何か用なのかい?
つっても、僕が名前教えられるのなんてほとんどいないよ?
ウィルバーってのが、まあ、僕なんですけどね。」
詰め寄り、鼻息も荒そうな勢いでくる少女の様子に僕は面食らっていた。
思わず椅子の背もたれに身を寄せる。
だが、会ってばかりの人物に同僚たちのことをペラペラと喋るわけにもいかない。
とりあえず、自分の名前を告げてみた。

セイン=ディバン > 「美徳と悪徳って紙一重じゃない?
 素直も欺瞞も、使い所次第だと思うけど。
 あぁ、えぇ、はい、どうも」

なんだか判らないけど、随分と相手は饒舌だった。
とりあえず、基本的性格に根ざす反論をしつつ、相手の褒め言葉に微妙に引いておく。

「みんながみんな、じゃないけどね。
 だって、冒険者になった以上ロマンと危険は追い求めなきゃ意味無いじゃない。
 安定が欲しいなら普通の仕事してるでしょうよ」

冒険者。夢追い人。ならず者。どれもほぼほぼ同じ意味の言葉。
楽して儲けたい、生活に刺激が欲しい。
要するに。冒険者なんていう生き物は、ドイツもコイツも摂理から外れた存在なのだ。

「あぁ、ごめんなさい。つい興奮しちゃって。
 用……えぇまぁそんなところ。……そうなんだ。
 じゃあその、ウィルバーって名前の人とか知り合いにいない?
 ……って、え゛?

 ……そう。貴方が。ウィルバー、ね……」

一度コホン、と咳払い。そして相手の言葉を待つが、どうやらそんなに顔は広くないらしく。
残念に思いながら、とりあえず、と思い探している人物の名を口にする。
ほぼ同時に、その名前が、相手の自己紹介で飛び出し。
少女は、目を細め、相手を見た。とはいえ、まだ同じ名前の別人の可能性もある。
だがもし……目の前の相手が探し人本人であったなら。
……少女は、懐の銃の重さをしっかりと確認した。弾丸は六発、全て装填済みだ。

ウィルバー > 「おお、なんだか深いことを言うねえ。
君は学者か何かかい?」
打てば響く相手に、僕の顔は喜びに満ちていた。
一方、少女はどうもノリが悪くなっていく。
おかしい、何が悪いのか。

「そうだね。僕も実は遺跡の帰りでね。 ロマンを追い求めるのはよくわかるよ。
なるほど、ならこの話は別の子に振るとしよう。」
冒険者に家事手伝いは合わないと言われると、それ以上は勧誘すまい。
ちょっと残念な気もするが、今でも可愛い娘が手伝いに来てくれるので、あまり欲張らないことにしよう。

「お嬢さん。 冒険者をやるのなら、もう少し気配は抑えておいた方が良いよ。」
お嬢さんの声色が変わるのを見逃すほどの間抜けではなかった。
なので、ここからは先ほどと違い出来るがり神経を研ぎ澄まして少女を見上げていた。
…やはり、こうなるか。
僕は、彼女が銃の位置を確認すると同時にサーベルを抜き、首筋に刃を突き立てた。

「なんで僕を狙うのか知らないけど、宮廷魔術師と聴いたうえで手をあげるのならそれなりの
リスクが発生するよ?」

セイン=ディバン > 「別に。しがない冒険者。
 それも、学もないクソ田舎出身の、ね」

相手の言葉には視線を逸らし、呟くように言う少女。
もともと教養などないからこその、やさぐれた発言だったのだが。
どうにも相手には気に入られたらしい。

「あぁ、どうりで疲れてるのね。宮廷魔術師さんが遺跡だなんて。
 なにか凄い発見でもあったのかしら?
 えぇ、そうして頂戴な。アタシ以外なら話を聞いてくれるのもいるでしょうし」

相手の言葉には、少し目を輝かせる。魔術師が遺跡に行く。なんとも、お宝の匂いを感じる話だったからだ。
しかして、相手が雇用の提案を打ち切れば、少女は掌をヒラヒラと振りながらすぱっ、と切り捨てる。

「……チッ!!
 って、早ッ……!!」

つい、狙う相手かもしれないという思いから。感情が表に出すぎてしまった。
相手の言葉に反応し、銃を構えようとするが。それよりも早く首に白刃が迫っており。

「……もしかしたら別人の可能性もあるけどね。
 それこそコッチのセリフ。冒険者ギルド『エデン』の人間に手を出せば、ギルドが総力を上げてアンタを潰すわよ。
 それに、こんな路地裏でいたいけな少女に刃物突きつけるとか、見られたらマズいんじゃないの? 叫んじゃおうかしら。『助けて、犯される』ってね。

 ……アンタ、ノア、って女。……知ってる?」

一触即発の雰囲気の中、相手の言葉に冷静に反論する少女。
銃に手は届いているが、抜き打ちなど試みれば、その瞬間首をはねられるだろう。
少女はその姿勢のまま、相手に質問をした。

ウィルバー > 「いいじゃない、しがない冒険者。
人は生まれだけでは人生決まらんよ。」
やさぐれた少女の態度だが、それは逆にそれなりの人生経験を積んでいる証。
学院の生徒たちには良い授業が出来るかもしれないと、僕は目の色を変えていた。

「凄い発見はないけど、遺物をちょっとね。
これで家にゴーレムを配置できるよ。
まあ、君がその気になったらまた着てよ。」
家事手伝い用のゴーレムのパーツを集めてましたなんて言おうものなら、
さぞかしガッカリされそうだな、と思い笑顔が少し固くなってしまう。

「魔術師が切った張ったできないなんて、誰が決めたんだい?」
僕のサーベルは彼女の首筋にぴったりとはりついた。
無用な動きを見せれば、当然首と胴を泣き別れにする用意はある。

「なら、銃を探るまえに聴いておくべきだったね。
そうかな? 君が乱暴狼藉を働こうとしたのを棚に上げてまでそのギルドは面倒見てくれるのかい?
まあ、叫びたいなら思う存分叫べばいいさ。 多分、誰も来ないけどね。」
この少女は呪いに包まれているので効き目は確かではないが、彼女が助けを呼んだところで
その人たちの認識を改竄してしまえ良いのだ。 そして、そうすることで窮地を何度も載りきってきた僕には
簡単なことであった。

「ああ、知ってるよ。 と言うことは、君がセインって人かい?
あんな大きい子供が居るのに他の女に手を出すなんて悪い人だねえ。」
互いに張りつめた状態なのは変わらないが、相手の要件がわかり僕は納得した。
そして、僕は彼の娘にもあっていた。 
出来れば人の親には手をかけたくないものだ。

セイン=ディバン > 「そう言ってくれるのは嬉しいけどね。
 社会と世界はそうは見てくれない、でしょ?」

相手の言葉にはニコリ、と笑うものの。
世界の人間が相手同様、優しく、理性的であるという保証は無い。
そして、実際冒険者になるまで、少女は相当に大変な人生を送ってきたのだ。

「へぇ……。ゴーレム、ね。
 なんだか、最近ゴーレムと縁が深いわね……」

相手の発見の内容に、ふぅん、と少し興味深そうに頷く少女。
しかし次の言葉は小さなもの。本当に、最近ゴーレムには色々と縁がある。

「……あのね、アタシコレでも速さには自信あるんですけど。
 そのアタシ以上のスピードなんて、普通ありえないっつー……」

得意げなその言葉に、悔しそうに呻く少女。
実際のところ、少女の身体能力、特にその速さというものはかなりの物だ。
だが、今回はどうにも、相手のほうが上手だったようであり。

「……そうだけど、仕方ないでしょ。今回は状況が状況っていうか。
 まだ働こうとした、だけじゃない。実際銃を抜いてもいないんだし。
 ……なるほど。随分な自信だこと。それでこそ、だけどね」

相手の逐一的確な指摘には、苦しげな言い訳じみた言葉しか返せない。
そもそも、この絶対不利な状況を覆すには、手持ちのカードが少なすぎた。
切り札はギリギリまで取っておく。当然のことである。

「……へぇ。話が早くて助かるわね。
 って、その口ぶり……あぁ、そういえばルインにも会ってるんだっけ?
 あの娘はアタシから孕ませにいった訳じゃないし。
 ……ま、細かいことはいいわ。質問に答えな。じゃなきゃアンタのチンポ切り落として、口に捻じ込んでやるわよ。
 ノアの血を吸った理由は何? ノアをどうするつもり? 答えて」

ぬるり、と口にされた言葉に、しかし少女は薄く笑う。
そのまま、自分の命を相手が握っているというのに、質問をする少女。
まるで、自分こそ主導権を握っているとでも言うかのようだ。

ウィルバー > 「それは仕方ないよ。 でも、君に力があれば周りは黙らざるを得ないんじゃないかな?」
僕自身、口には出さないがそもそも人ではない。
だが、魔術の力でこうしてここに居る。
結局の所、最後は力なのだ。

「そうなのかい?
家の事をやってもらうならゴーレムが一番だよ。」
小さい言葉でも、距離が近いし身体能力の高い僕の耳には届いていた。
ゴーレムに触れたことのある冒険者は珍しい。

「ありえないって言われても、早いんだからしゃーねーじゃん。」
吸血鬼としての身体能力なのだが、いちいち説明するのも面倒なので、
僕は口を尖がらせるに留めておいた。

「君らってすぐ短気を起こすけど、相手は選んだ方がいいんじゃない?
勝てるタイミングで勝負を挑む物だよ。
…そうだね、今は僕が有利なタイミングってことだね。」
お互い予定外の遭遇ではあったが、今宵は僕の方が有利に進めれたようだ。
とはいえ、この少女はまだ何か隠していそうではあるが。

「ん? ひょっとして逆レイプでもされたの?
大変だったねえ。」
言ってることがまだよく分かってないが、淫魔の類が相手なら
そういうこともあるので左程驚きはしなかった。

「あのねえ、今の状況分かってる?」
僕は彼女の口ぶりに腹をたて、首の皮何枚かまで刃を食い込ませる。
僅かばかりに赤い血が刃を伝わろうか。

「まあ、可哀そうだから質問には答えてあげるけどさ。 
理由はノアの事を気に入ったから。 ゆくゆくは僕の完璧な眷属になってもらうつもりだけどね。
それより君こそどうなんだよ。 君、ちゃんと奥さん居るんだろ?
そんな状態で手を出しておいて僕にとやかく言う権利あるのかい?
あ、言っておきますけど僕は独身なのでご心配なく。」
奥さんの詳細は知らないが、妻帯者であることは聴かされている。
なので、彼女に追及されるのは納得がいかなかった。

セイン=ディバン > 「……なるほど、ね。確かにそうかも」

それは考え付かなかった、とばかりに。相手の言葉をすとん、と飲み込む。
確かに。少女自身、無意識に周りを黙らせようと、ムリをしていたかもしれない。

「う、ん。そうみたいね。
 でも、アタシの家そこまでは大きくないし」

相手からの提案に、少女は微妙に返答しづらそうに答える。
例えば、妻のようにデカイ城でもあれば。確かにゴーレムは便利なのだろうな、とも思うが。

「そうね……事実、こうして速度で負けてる訳だし」

なんとも子供のような仕草をする相手を、微妙に白けた目で見る少女。
これだから上位種族や超越者は嫌いだ、とぼやきつつ。

「短気? なにそれ、余裕のつもり? それとも人間を理解しきってないのかしら。
 勝てないタイミングで仕掛けて三流。勝てるタイミングで仕掛けて二流。戦う前に勝つのが一流で、アタシはその上を行く超一流よ?
 ……とはいえ。別に戦う気ばっかじゃないからいいけど」

事実の指摘でもあるそれを、一笑する少女。その表情は強がっているようなものではない。
心から、そう思っての発言だ。

「……言わないで。思い出すだけでも死にたくなるから」

ずばり、指摘通り。逆レイプで孕まれてしまったのである。
この吸血鬼、鋭いなぁ、と内心舌を巻く。

「ハンッ。吸血鬼様にしちゃずいぶん『短気』だこと」

喉に刃の食い込む感触。小さな痛みに目を細めるが、そのまま相手を睨み続ける。

「……そう。つまり、遊びやきまぐれでしたことじゃないって訳ね。
 ならまぁ、アンタを攻撃する意味はなくなったわね。
 ……うるっさいなぁ。仕方ないでしょ。惚れちゃったんだから。
 それに? ノアもアタシの気持ちに応えてくれてますし~?
 指輪とか贈って、喜んでくれましたし~?」

相手からの返答。それを聞き、少女はニコリ、と。
まるで友人にでも向けるような笑顔を見せた。
そのまま突っ込んだ部分を聞かれれば、悪びれず返答。
なにせ、本気で妻もノア嬢も愛しているからタチが悪い。
ともすれば、ノア嬢とも結婚を考えているような人間である。

ウィルバー > 周囲を黙らせる話は一端区切ることにした。
何せ、彼女も納得したようだし。

「まあ、奥さんと娘が居るなら別に要らないんじゃない?」
微妙な返答に、僕は目を丸くしていた。
相手が複雑な家庭環境になっていようとまでは想像が及ばず。

「まあまあ、そのうち良いこともあるよ。
そんなにしょげないで。」
そうさせた原因であることも忘れて、生暖かい目を向けていた。

「ご高説はもっともだけど、現に勝ててないよ?
まあ、僕はただのしがない宮廷魔術師だから荒事は苦手なんだけどね。」
どうやら、この冒険者はなかなかガンコそうだ。

「あ、そうなんだ。 まあ、魔族も酷い奴居るからね。」
まさかのビンゴだったようで、ちょっと申し訳ない。
眉の尻を下げ、力なく返答する。

「別に短気は起こしてないよ。 立ち位置を教えてあげてるだけ。
今の君の命は僕の気まぐれ次第ってことを忘れないでね。」
首筋にあてた刃はそれから動くことなく。
流石に殺生をする気はない。

「なら、僕も君を殺すのを止めておくよ。 ノアに見つかったら怒られそうだしね。」
首筋から刃を外すと、鞘に納めた。 どうやらケンカはなさそうだ。

「…なにそれ、君の方がよっぽどやってること酷いような気がするんだけど。」
別に重婚を否定する気はないので、それ自体を咎める気はないが、よくもまあこちらに文句を付けたモノだと、
僕は苦虫を噛んだような表情になっていた。

「へ~、やるじゃない。 で、その辺の事は今の奥さんにはどう説明したんだい?」
椅子に改めて座り直し、彼女の顔を興味深げに見上げていた。
この街は広いようで狭い。 恐らく、奥さんにもばれてるか、そのうちばれるだろうと思っていた。

セイン=ディバン > 「ま、ぁ。そうなんだけど……」

相手からの指摘には、更に視線を明後日の方向へ。
説明しようとして考え込むだけで頭痛がする。
なんとも面倒なことである。

「言っておくけど、コッチだって身体が元の状態だったら負けないし」

負け惜しみこの上ない言葉を口にするが、事実本気でそう思っている。
本当の結果としては、やってみなければわからない、といった所だが。

「ハハーン。この段階で勝ちを確信とか。まだまだ甘いっつー。
 最後の最後までやらなきゃわかんないでしょうよ」

維持の張り合いというか、挑発合戦というのか。
お互いがお互いに相手を煽るような口調になりつつある。

「魔族、ってか魔王なんですけどね」

目から一筋、涙が零れた。最終的には、自身の迂闊さが悪いのだが。
かといって涙は止められないのである。

「……そうね。少なくとも、今は確かにそう。
 でも、アンタはここでアタシを殺さない。だって殺したら、短気を起こして意味無く人間を殺した吸血鬼、っていう評価を認めることになる。だから殺さない。でしょ?」

下手をすれば本当に殺される状況で、少女は笑顔のままそう告げる。
無論、この一言が原因で相手が激昂する可能性もあるのだが。

「うん。話のわかる相手でよかったわ。
 もしもアンタが、本当にノアを気まぐれに傷つける様なヤツだったら……。
 死んでも殺してやるところだった」

音無く刃が喉から離れれば、少女は喉をさすりつつ回復魔術を詠唱する。
傷は、あっという間に消えうせた。

「なんとでも。ノアにはしっかりその辺説明してるし。
 なんにせよ……。ノアを泣かせたりしたら承知しない。
 あとは……ノアがどっちを選ぶかは、まぁあの子次第だし。
 いわば、アタシとアンタはライバル、って訳ね」

相手の表情を見つつも、少女は飄々としたものだ。
それどころか、これからは好敵手だ、といわんばかりに満面の笑顔で。

「……ノアのことも、アタシを逆レイプした魔王が孕んだ事も。
 全部正直に言ったわよ。おかげでお尻掘られて最悪だった」

妻、と言われれば笑顔も凍る。今度は少女が顔をしかめ、ぽつぽつ、と小声で囁く番だった。