2017/03/16 のログ
■シャーロット >
金銭での徴収ができない者からは家財を、
隠し持っているものも含めて家探ししてでも徴税を果たす
それでも足りなければ働き口として人そのものを連れてゆく
一切の温情を見せないシャーロット
対する貧民地区の人間の不満は高まっているようだったが──
馬車に石を投げようとする者はいない
そうすれば、どうなるかは目に見えている
貧民とて命は惜しい
恐怖で掌握するのが一番楽なのである
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にレナーテさんが現れました。
■レナーテ > 組合長に代わり、宿の様子を確かめた帰りに通りかかる貧民地区は、何時もよりも暗い雰囲気に包まれていた。
なんだろうかと首を傾げたくなる中、進むに連れて、泣き崩れる者や、呆然と両膝をついたものも見える。
(「……何事でしょうか、ちょっと賊が出たといった話では無さそうですが」)
訝しげに辺りを見渡すと、馬車の音が近づいてくる。
この場に似つかわぬ豪華な馬車は、遠目から見てもよく分かる目立ち具合。
何気なく、そちらへと金の瞳を向けると、窓越しに見えた彼女の姿に、全てが脳裏で繋がる。
(「正に恐怖政治といったところでしょうか」)
怯える民、誰一人馬車に抗議するどころか、視線を向けようとするものも居ない。
ただ一人、少女だけはシャーロットの馬車へと視線を向けていた。
薄茶と焦げ茶の入り混じった変わった髪の色、整った可愛らしい戦闘衣に、背中には魔法銃を斜めがけに背負う姿は、ある意味では彼女の馬車と同じぐらい浮いている。
以前、組合長を地下室から呼び出しに来た時に彼女をひと目見たが、彼女の記憶にあれば、その姿が重なるかもしれない。
■シャーロット >
馬車がゆっくりと停車、幌の中から貧民街には粗ぐわぬ衣装の少女、シャーロットが降りてくる
袖を鼻に当て、不快そうな表情を見せる少女は辺りを睨めつけるように眺めて
「ああ臭い。さっさと終わらせて帰りましょう」
そう言って衛士を引き連れ近くの民家へ、
その途中視線を感じ、レナーテのほうへと振り向く
「何か用かしらぁ?」
じとっとした玉虫色の視線
一目で貧民地区の住人ではないと理解できたものの、彼女の姿はシャーロットの記憶の中とは一致しない
元々、人のことをあまり覚えるほうでもないのだろう
■レナーテ > 「……」
馬車から降りてきた姿は、やはりあの時の女だと確信する。
この地区がこれだけ荒れ果てているのは、彼女の度の過ぎた搾取の結果だと言うのにと、思いつつ、臭いと吐き捨てる彼女へ苛立ちを覚えると、瞳を伏せて胸に手のひらを当てた。
(「……顔に出さない、動じたと思わせない…倣ったとおりにです」)
それほど感情のコントロールが上手なわけでもなく、言い聞かせるように心の中で繰り返すと、少しだけ落ち着きながら瞳を開いた。
「いえ、以前一目お会いしたので…ご記憶になければ結構です」
彼女の方は此方に覚えがないらしい。
ゆるく頭を振ってから答えれば、彼女の様子を確かめることにする。
彼女の残虐さは組合長づてに聞いてはいたが、実際のところは目にしていない。
特にそこから動くことなく、彼女の動向を眺めている。
■シャーロット >
「あら、そう?
何処で会ったのかしらぁ、まぁ、いっか♪」
くすっと笑みを返して踵を返す
衛士たちが一足先に向かった先には小さな見窄らしい家がある
案の定、既に揉めているようで、ドアの前で住人が嘆願をはじめているようだった
「無駄な時間を取らせないように~。
お金がないなら家具でもなんでもいいから徴収するのよ。
若くて働けそうな子供とかもいないワケ?」
少し遠目に、衛士達へと声をかける
「何もなかったら家を潰してその土地になるけどぉ…、
それよりは奴隷に身を窶したほうが幸せかもね?」
レナーテの眼前で、シャーロットは文字通り温情の欠片もない徴税を行う
家屋の前では、立ち入ろうとする衛士を止める住人が殴られ引き倒されていた
■レナーテ > つい最近だと言おうかと思ったものの、思い出すこともないと思えば無駄なこと。
人が住んでいなければ、ただの廃屋にしか見えぬ家の前で響く悲痛な声が鈍い音とともに消える。
「……」
無言のまま彼女から視線をそらし、カツカツと揉めている現場へと歩いて行く。
暴力でねじ伏せようとする衛士達の元へと近づけば、振り上げた拳に、重ねるように掌を伸ばした。
仲裁のように割って入った形だが、ジト目の金色が衛士を見つめると、行動は裏腹な言葉を紡ぐ。
「不効率です、力では禍根と争いを残します」
そう告げると、後ろにいる貧民たちへと視線を向けるも、期待の視線に小さく溜息を零しつつ、更に言葉を続けた。
「残念ですが、この人達の搾取を止めることは出来ません。抵抗すると怪我もしますし、一層重税を課せられる可能性があります。命あっての物種です、大人しくしてください」
希望を叩き伏せるような言葉だが、尤もな答えでもある。
意気消沈する貧民の様子を見れば、掌をおろし、再び衛士と彼女へ視線を向けた。
「失礼しました、ではどうぞ」
一礼するように軽く頭を下げれば、カツカツと足音を立てて先程の場所へと戻っていく。
■シャーロット >
「──へぇ~」
その様子を感心するように見つめるシャーロット
しゃなりとした動きで、元の位置に戻ったレナーテの元へと歩み寄る
「青臭い台詞でも吐くのかと思ったら、分別のある言葉ねぇ。
気が変わったから顔と名前を覚えておいてあげる♡あなたのお名前は?」
どこか薄ら寒い、にっこりとした笑みを向けて
その背後では住人を尻目に家財を漁り、馬車へと積み込む衛士達が映り込む
■レナーテ > 「……何か?」
先程までと違い、何か興味を示すような声。
この搾取を認めているわけではないが、暴力まで受けてすり潰される必要がないから仲裁に入ったまでである。
故に、彼女のことはあまり好きになれず、嫌気を示すことはないものの、少しそっけない返事と共にそちらを見やる。
(「庇う言葉を口にしたら、私ごと潰すつもりなのに、よく言えますね…」)
本音を言うなら止めろと一言言いたい、作り物の様な笑みから視線をそらすように衛士達の様子を見やる。
家財を持って行かれるぐらいなら、死ぬよりも、大怪我するよりも安いだろう。
「ありがとうございます」
安堵の吐息を零し、それから感謝の言葉はこちらも感情など込めずに音だけをそれらしくして紡ぐ。
「レナーテ・ヘヒトです、チェーンブレイカーで組合長の秘書を務めています」
お見知りおきをと言うように、再び軽く頭を下げた。
猫毛の柔らかな髪がサラリと揺れ、二色の毛が混じり合う髪からは、うっすらと甘い香りが溢れる。
■シャーロット > 「チェーンブレイカー!」
はた、と胸の前で両手を合わせる
その笑みは先程よりも深まっていた
「道理で。
そのへんの平民とは少し違うわけよねぇ~」
うんうんっ、と笑みのまま何度か頷いて
「レナーテちゃんね、ふふ、ちゃあんと覚えておかないとぉ…」
笑顔を絶やさないシャーロットの元へ、
家財を運び終えた衛士の一人が足早に訪れ何かを耳打ちする
耳打ちとはいえ、レナーテとの距離は近い
耳が良ければ聞こえるだろう
ほぼ全ての家財を徴収し、彼には家族もいない
次の徴税はほぼ不可能である、ということだ
「ふぅーん…あのトシじゃ奴隷としても長く使えないしぃ……。
じゃ、馬車にでも括り付けておいて♪
家は焼いちゃって、土地は欲しがる物好きがいるかもしれないし♡」
うふっ、と可愛らしく微笑んで衛士に投げ掛ける言葉はまるでお使いでも頼むかのように軽やかな声色で
■レナーテ > 「えぇ、そうです」
何やら良からぬことでも考えているのかと思えば、笑みにも嫌悪ばかり覚えていく。
「大差ありませんよ、住んでいるところが少し違うぐらいですから」
笑みを絶やさず頷く彼女の元へ、衛士が近づけば耳打ちの内容が届いていく。
次の徴税で徴収できるものがないという、その言葉に対する返答もまた…人を人と思わぬ外道の言葉と、相反する高い音。
自分たちへの嫌がらせか、それとも素の反応なのか。
少し思考を巡らせれば、彼女の言葉に続けようと口を開いた。
「売れもしない土地だけ残す方が価値を失います。殺さぬ程度に労働に就かせて、徴収したほうが良いかと思います。兵役以外なら、何かできるかと」
殺させないように、彼女にメリットのある提案を紡ぐ。
それですら、苦痛を老人に与え続ける選択でもあり、ほんの少し吐き出す息が震えた。
組合長ほど感情を押し殺しきれるほど、出来上がっているわけではないのだから。
■シャーロット >
「えぇ~、でもそれぇ」
レナーテの提案に眉が下がる
見れば万人が美しいと褒め称えるだろう玉虫色の瞳に溝川のような闇を宿して
「面白くないから、却下~
ほらぁ、生命を育んできたおうちが最後は綺麗な炎に包まれてぇ、
その輝きで私達高貴な人間の心を潤してくれるのよ~。
それって、貧乏人にはなかなか出せない『価値』よねっ」
金勘定など建前、所詮平民も貧民も自分達の玩具でしかない
腐敗した王国貴族の中で育まれた少女シャーロットもまた、腐敗した思想に満たされている
■レナーテ > 「……っ」
面白くない、そんな理由で正論を破棄した彼女に少しだけ目を見開いた。
命すらもしゃぶり尽くすというよりは、命すらも弄ぶ存在。
今になって脳裏で繋がるのは、彼女の挑発に乗るだけ無駄だという言葉。
何かすれば、こうして最後はひっくり返して嘲笑うからだと理解すれば、ぎゅっと掌を握りしめる。
「…貴方は、未来をみていないのですね」
もっと罵る言葉を吐き出したいのを押さえ込みつつ、絞り出した答えは、遠回しな言葉だった。
人の命すら弄ぶのを繰り返すなら、何時か自身すらも滅ぼしかねない。
愚かだと、伏せられた言葉を紡げば、少しだけ鋭くなった視線が彼女の濁った瞳を見つめ返す。
■シャーロット >
「未来?」
僅かに鋭くなったその視線
ほんの小さな変化でも、汲み取れるものはある
そんな視線と言葉に少女は嘲笑を返す
「マグメールの本質を知ってる人間で未来を見てるヤツなんて、
よっぽど現実が見えてないお花畑の住人か気狂いのどっちかよ?」
くすくす
暗い笑みは深く、濁ってゆく
「どうせ滅ぶ、絶対滅ぶ。それも遠くないうちに♡
だってもう根腐りしているんだもの、幹も枝も葉もそのうち朽ち果てる♪
だったらそれまで楽しい玩具で贅沢に面白おかしく過ごすだけなの~♡」
わかる?
と、言葉を投げ捨て笑う
そんな彼女の背景を彩るように、赤い炎があがる
どこか狂気じみたその嘲笑は、多くの腐敗した貴族達同様、
生まれ、そして育ちまでを国に狂わされた人間の一人であることを如実に現していた
■レナーテ > 嘲笑と共に紡がれる彼女の本音と、腐りきった闇の一面。
愛らしさもあり、絶世の美女とも言えよう姿で暗く微笑む姿は異質で、常人なら恐怖を覚えるもの。
おそらく、不意にこの顔を見せられたなら、ぞわりと鳥肌を立てて、小さく身震いしたかもしれない。
けれど…今は笑みが浮かんでいく。
ゆっくりと口角が上がり、悲しげに目を細める、憐れむような微笑みで。
「わかりますけど、貴方がとても可愛そうな方だというのも分かりました」
燃え盛る炎、老人は泣き崩れただろうか、それとももう貼り付けられて殺されてしまったか。
ちらりと燃え盛る家の方へと視線を向けてから、彼女へと視線を戻す。
「貴方に対して…嫌悪は消えましたが、憐れみは残りました」
正気に戻れば、苦しみで狂ってしまうのかもしれない。
もしくはもう、麻痺してわからないのかもしれない。
憶測ばかりだが、苛立ちはすっと引っ込んでいき、小さく溜息をこぼすと、懐中時計を取り出し、今の時刻を確かめた。
■シャーロット >
「憐れむ?私を?」
何それ?と再び笑う少女
「こんな国で希望なんかを持ってしまった人達のほうが憐れなものよ?
──だから貴方達もほんとにやりたいことがあるなら、国を捨てなさぁい。
こんなドブ川を煮詰めたような国で何かを志したって…ぜぇんぶ飲まれて、頓挫して…
そのうち誰にも忘れられてしまうだけなのだから…ね?」
くるりとドレスを翻し、踵を返す
老人の家は煌々と燃え上がり、その主はといえば。その家の前で項垂れていた
「貴方達のトップにもぉ、同じことが言えるのよねぇ。
……お隣にでも行ったほうが、色々と都合が良いと思うわよ♡
私みたいな目障りなヤツも、いないでしょうしね…♪」
一方的に言葉を投げつけ、背を向けて少女は馬車へと歩を進める
■レナーテ > 「えぇ、そうです。ある意味、一番可哀想な道筋に入っていますから」
小さく頷き、その言葉を肯定する。
力もあれば、人を捻じ曲げる力もあっただろう。
結局は絶望に呑まれて悪へと下ったのであれば、生まれた時代か、立場が悪かったとしか言いようがないと思えた。
「……希望があったから、私はここに居ます。だから、無駄と言われようと足掻きます」
背を向けて歩き出す彼女に、表情を引き締めながら言葉を続ける。
「組合長や私達がここからされば、ここで希望を持った人は壊れてしまいます。だから、続けます」
あくまで絶望を否定した。
ほんの少し、過去の嫌な記憶が過るも、もうあんなことは置きないと言い聞かせて走り出す。
自分が向かい合う相手が何なのか、組合長抜きでやっと理解が出来たのを実感しつつ、貧民街から茶色の影は遠ざかった。
■シャーロット > レナーテの返答は少女に届いたのか、それとも
その言葉を小さな背へと受けながら、鞭を叩く音と共に馬車が走り出す───
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からシャーロットさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からレナーテさんが去りました。