2017/02/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 盗賊ギルド」にマリアベルさんが現れました。
マリアベル > 盗賊ギルドの中は血で染まっていた。
床に倒れ伏す者、およそ20人。
全てが血を流し、ある者は小刀で刺され、ある者は分銅を顔にたたきつけられ絶命している。

「ひ、た、たす……」

まだ年若い、10代前半の少年少女も居ただろうか。
しかし、その全てが殺された。
ここに立つ、女執事一人に。

「そうですね、あなたの心がけ次第です」

女執事は、静かに尋ねる。
返り血は少ない、多少汚れた程度だろうか。それは彼女の腕の証でもあった。
もっとも、この程度の数の人間を相手にする事など、『フェルザの番犬』にとってみれば、朝飯前なのだが。

「先日、お嬢様を汚らしい目で見張る事を命じたのは誰なのか。
それをおっしゃって下さいまし?」

彼女の右腕の先には、一人の男。
ギルドのサブマスターである男は、宙に浮いている。その身体を掴み上げているのは、女執事の細腕だ。
ギルドマスターは既に死んだ。出会い頭に頭に魔導芥砲をくらい、一撃だった。

マリアベル > ギリ、とサブマスターの身体が不自然な音を立てる。
おそらく、このまま力をこめれば、その肉体がちぎれてしまうだろう。
女執事は半魔族。普通の人間とは、膂力が違う。

「いだだだだ、いう、いうぅぅ!!」

ギルドマスターの悲鳴を聞き、少し力を緩める。
まったく、盗賊ギルドといえど、新興勢力ではこの程度か。
昔堅気の、大手ならば、死んでも口を割る事は無いだろうに。

幾人かの商人、貴族の名前が挙げられる。
新興の、敵対している者たちばかりだ。
お嬢様に許可を取り、『分からせて』やる必要があるかもしれない。

「ご苦労様でした――」

そして再び腕に力を込め。

ゴキリ、と嫌な音がして、サブマスターの首の骨が折れる。

マリアベル > 死体を適当に、床に放り投げる。
もう、何の価値もありはしない。
そして女執事は、ギルドの書類を漁り始めた。

「……ふむ」

軽く目を通す。
新興ギルドだけあって、ケチな仕事ばかりだが、ひとつだけ目を引く計画があった。

「――偽金造り」

まだ計画の段階で、実行に移されてはいない。
しかし、偽金造りは大罪。計画しただけで、参加者の一族郎党全て死罪である。
新興のギルドだけで出来るような仕事ではない。

「思ったよりも、大物が裏に居ますわね?」

書類を何枚かめくる。
計画が緻密だ。この連中だけの仕業では、断じてない。

マリアベル > これは見逃せない。
王国の為だとか、義侠心から発するものではなく。

シャーロットの富の源泉は、銀行である。
金の流通を牛耳り、その価値を担保する事こそが、銀行の役目である。
であれば、金銭の価値を著しく貶める偽金は断じて許してはならない。

「――なるほど、鋳造所の人間に密かに内通者を作り、夜のうちに潜り込む計画、ですか」

貨幣鋳造所の警備は厳重だが、内通者が居れば問題なく進入できる。
だが、直接金貨を盗むのではない。これは窃盗ではなく『偽金造り』の計画なのだ。

「夜のうちに大量の金を運びこみ、金貨を可能な限り鋳造。
 同じく夜のうちに運び出し、時間をかけ『正規品と変わらない偽金』を造り出す計画……!」

マリアベル > 鋳造所を出入りする金貨の量は、厳しく管理されている。
1枚でも誤差があれば、全ての操業を停止し、ずれが何処から来たのかを検査する程に。

だが、この計画ならば、出入りする金貨の量に変化は無い。
あくまで金は外部から持ち込むし、出て行く金貨の量も変わらない。
問題はその金をどうやって調達するか、どのようなルートで運ぶか、そして鋳造所の人間にどうやって内通者を作るかである。

「――この盗賊どもは、運搬係ですか。
 なるほど、誰かが持ち逃げしないように『ギルド』としてメンバーを管理していた、と」

書類を見て頷く。
こんな新興のギルドが何故いきなり現れたのか、得心がいった。
裏向きは盗賊ギルド。そして『裏の裏』は、偽金造りの為の盗賊団だったのだ。

マリアベル > そして、用意する金は、混ぜ物を使った粗悪品。
これでは王国の通貨の価値はどんどん下がっていく。
――シャーロットの銀行にも、悪影響が出るのは避けられない。

「計画段階で発見できて幸いでした……」

早急に裏に居る連中を探し、『始末』しなければいけない。
お嬢様に不利益を与える者は、一切合財許しはしない。

マリアベル > しばらくぺらぺらと書類をめくり続ける。

「ふむ……」

死体だらけの阿鼻叫喚の現場なのだが、女執事は気にしない。
この女は、そういう事の一切合財を気にしない。
どうせ治安部隊が来ても、打つ手はいくらでもあるのだから。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 盗賊ギルド」にカナムさんが現れました。