2017/01/20 のログ
エルフリーデ > 客を惹くわけでもなければ、娼婦たちを仕切るわけでもない。
ただ、ここではありふれていることをぼんやりとみているだけ。
他人からの視線など、あまり気にしない性分なのもあって、奇異の目で見られようとも反応すら無かった。

(「これでもここではマトモだと仰ってましたわね、幼子が性を売らねばならない世界の…何処が正常と宣うのかしら。それは、たしかに…祖国とは違いますわ。それでも、秩序というものがあるでしょう…?」)

この街を知らない、この場所を知らない。
だから見て回って、それで引き受けてくれるなら嬉しい。
無理なら責めもしないし、見なかったことにして引き上げるといい。
決着を待たずして帰るなんてありえないと思っていたが、それすらも少し候補に浮かぶ酷さと思える。
そんな思考を悶々と繰り広げていると、声を掛けられるまで全く気づかずに、思案顔を見せ続けていた。

「――…っ!?」

不意にかかった声に、びくっと身体が跳ね上がると、反射的に腰にかけられたホルスターへと手を延ばす。
見た目とは裏腹に、西部劇のようなクイックドローを見せるも、相手の騎士団礼服の姿に気づけば、引き金は絞られることはなかった。

「し、失礼…。急に声を掛けられましたから…つい…」

慌てふためきながら、否を詫びると銃を収めて立ち上がり、軽く頭を下げる。
ワインレッドの色合いの制服姿が緩やかに揺れ、顔を上げると申し訳なさそうに眉をひそめていた。

「……見回りの騎士様かしら? お疲れ様ですわ」

格好を改めて確かめるように視線がなぞると、労いの言葉と共に目を細めれば、柔らかに微笑んだ。

ガリア > (――暫しの間の、無反応。 此方に気づいていないのか、或いは無視なのかは判らなかったが
ともあれ、ただ静かに、娼婦達の姿を眺めていると言うのは、矢張り不思議では在った
割と、距離が近付いてからも其れは変わらず、結局声を掛けるまで。
そうして、漸く彼女からの反応を得られたと思った矢先に、其の腰元へと光る銃身に気付けば、一寸瞳を瞬かせて。)

―――――……わお、案外やるなァ。

(向けられた銃口から、弾が飛び出す事は無かった。 寸での所で気付いてくれたらしき相手が
其の銃身をホルスターへと直ぐに戻すなら、くつりと歯を見せて快活に笑おう。)

いやいや、全然気付かなかったから声掛けたんだけど、音がデカ過ぎたかもなー。
まァ、アレだ。 アンマリ此処をうろつく様な格好じゃなかったから、ついなァ。

(見回り、と言う言葉には肯定を返して。 おして、声を掛けた理由を伝えては、肩を竦めよう
低所得層が集う地区に置いて、彼女の様な服装や姿は、この夜中に置いても悪目立ちする
判っているのか、或いは物を知らぬお嬢様なのかは判らないが
ともあれ、巡回をしているからには、注意をしなければと、大義名分。
――うっかり間違えば、脳天に銃弾を喰らっていたかも知れない事には気に留める様子も無かった)。

エルフリーデ > 「……ど、どうも」

何か憤りの言葉なり、非難の言葉なり飛んで来るかと思いきや、褒め言葉と明るい笑みが返る。
ここ最近、酔いどれやら悪党やらに絡まれ、まともに出会ったと言えば、少女のような少年のみ。
あっけにとられたまま、返事を返すも声を掛けられた理由を耳にすれば、自身の姿へと視線を落として確かめ、辺りを見渡すと、苦笑いを浮かべた。

「そうですわね…このような場所では、あまり見ない服飾かもしれませんわ」

回りには夜の蝶といった姿の娼婦ばかりで、自分の格好の異様さに気づく。
どちらかと言えば、余り物を知らぬ方だろう。
特に俗世、凡人の世界にはあまり触れていない。
貴族の娘に在りがちな知識の偏りながら、銃さばきは習い事の領域を超えているのもあって奇妙なものだろう。

「…ここでは、こんなことが当たり前なのかしら?」

娼婦が夜の宿通りを歩き回り、男の腕に細い指を絡める。
そんな姿ばかりであり、自分より年齢の幼い娘もいた。
その問いと、複雑に彼女達を見やる表情は、彼が訝しげに思った様子の答えと見えるだろうか?

ガリア > やれ、そんなカッコで此処の夜道なんて歩いてたらさ
物陰に連れ込まれて娼館行きだぜーって言おうと思ったんだけどなァ。
其れだけ抜くのが早けりゃ、そんなに心配もねェか。

(そも、こんな場所を出歩いていれば、予期せぬ出会いが碌なもんじゃないのは在る意味当然かも知れない
娼館の裏手に行けば、実際今も酔っ払った男達が騒いでいる筈だ
此処は、表側で多少なりと人気が在るから、まだマシ、と言った程度。
何処かの御貴族様か、或いは富豪の令嬢か、客引きをする娼婦達とは異なる
そんな雰囲気を持った少女に、けれど然程気遣いも無い、気楽な語調で言葉を交わせば
――ふと、少女の視線が向く先へと、つられる様に自分も視線を向けて。)

―――……当たり前か如何かは別として、これが現実って奴だろーさ。
こうやって金を稼いで、何とか生きてる奴らも多い、それは確かだなァ。

(――当たり前、にはしたくないのが立場上だろう。 だが、事実として目の前の光景が在る
体を売り、女を売り、愛を囁いて日々を生きるしか術が無い
女に限らず、男だってその道に入る事も在るのだから、と肯定しては
先刻から、彼女が静かに、何を見詰め続けていたのかを、何となく察した)。

エルフリーデ > 「……難癖着けられて、連れて行かれそうになったことはありますわ。こういう事ができても、悍ましくて堪らないのは変わりませんのよ」

欲望という牙を向けられる一瞬、わずかの合間だけ力ではなく牡と牝という存在に戻されてしまう。
その瞬間に体を駆け巡った恐怖は、今でも思い出すと身震いしそうだった。
緩やかに頭を振って、記憶を振り払うと、ここではありふれた光景へと視線を戻していく。

「現実……そうといえば、そうなのでしょうね」

自分は両親と共に戦争が始まる前に祖国を離れることが出来た。
もし、首都が陥落する頃…あの場に居たら?
こうして今までの全てを失って、男に媚びを売る存在に落ちていたかも知れない。
それどころか、昨晩に見た奴隷の少女と同じようになっていたかもしれない。
そう考えると恐ろしく、肩が小さく跳ねる。

「…騎士様も、ここで色を買われたりしますの?」

秩序を守る彼もそうなのだろうかと、何気なく問いかけ、彼を見つめる。
その行為を忌むというよりは、純粋に知りたいのか、じっと見つめるだけで、精巧な顔立ちが答えを待ち望み、視線を向ける。

ガリア > クク、怖かったか? 怖くて嫌なら、アンマリ出歩くもんじゃねーさ。
自分が嫌だっつっても、相手が待ってくれる訳じゃないんだしなァ。

(其れもまた、一つの現実だ。 どんなに力が在る者でも、油断すれば脚を踏み外す
例え少女が腕に自信を持っていても、其れが絶対とは限らない
――どうやら、該当するような対剣を、経験をした事が在るらしい様子に
多少素っ気無い言い方では在れど、改めて忠告は告げて置き。)

良いか悪いか、じゃ無いだろ、こう言うのはよォ。
其れとも、こんな生き方は間違ってるって思うか?

(ひとつ、逆に少女へと問い返してみよう
彼女がこの光景を、この現実を、どんな眼で見ていたのかと
――今、客を見つけた、20代半ば位の娼婦が一人、店の中へと入って行った
両手首に、独特の刺青を施していた彼女の事を、ふと顎先で指し示しては)

あの女はなァ、昔商人の娘だったんだとさ。 親が借金抱えて奴隷に落ちて
其れでも奴隷の儘必死に稼いで、今はあんな風に、手首の焼印も消せるようになったんだと。

イイ女だぜ、他にも、そう言う奴は大勢居るさ。 自分の出来る事を、必死で頑張ってる奴らがなァ。

(――娼婦一人について、其れだけの事を知っているのだから、きっと答えた様な物だろうか
どんな手段だろうが、必死に生き足掻いている彼女達は、強いと思う、イイ女だと思う
だから、色を買っているか、と言う問いについては、胸を張って認めるだろう。)

イイ女が一晩付き合ってくれるなら、買うさ。
勿論、俺にも選ぶ権利は在るけどなァ、同情じゃねーんだし。

エルフリーデ > 「そうしますわ…でも、今日は…見ておくべきだといわれてましたの。故郷に居た頃は、こんな光景を見たことがありませんでしたから」

竦んで、蹴り払う間合いより深く踏み込まれ、膝を叩き込んで間を離す必要が出てしまった。
相手がただの酔っ払いだったからよかったものだと思い出しながら、彼の忠告には小さく頷けども、娼婦たちの様子からは目を離さない。

「自ら望んで色を売ると決めたのなら…それはその方の意志あってこそのことですわ。ですが、隷従は違いますの。首輪を嵌められる側に、望む意志なんて…ないですわ」

全てを悪というのではなく、あくまで望まぬ答えに対してだけ答える。
彼が差し示したのは、自分より少し年上の娼婦。
手首についた入れ墨は、何か意味深なもののように見えるが、彼の語る事実に、息を呑む。

「……騎士様のいう、良い女性…と敬う言葉は素晴らしいと思いますわ。けれど、わたくしには、この街の人の扱いと申しますか…あり方が、おかしいと思いますの」

そんな身分に落とされた彼女達に良い女性と褒め称える言葉を送る彼には、何ら嫌な感情は抱かない。
しかし、この街のあり方がどうしても良いと思えず、言葉は暗くなる。
認めてしまえば、自分がそうなっていたかもしれない現実に、自分が壊れてしまいそうだと言うことには、気付くことができなかったが。
胸元に重ねた両手をギュッと握りしめるように閉ざすと、憂い混じりの溜息をこぼす。

そんな二人の元へ、件の娼館から小さなミレー族の少女がやってくると、エルフリーデに伝言を伝える。
今夜はもう遅いから、宿の客間に泊まっていくと良いと。
首輪いらずと呼ばれる宿の主からの言葉に、小さく頷くと彼の方へと振り返る。

「それではわたくしは…これにて失礼しますわ。忠告のお言葉、それと…ここについて教えて頂き、感謝申し上げますわ」

お別れの挨拶と共に、お礼を述べる。
それからスカートの裾をつまみ、会釈をすると、彼へ良い夜をと言葉を添えて歩きだす。
宿の扉を開けば、ミレー族の少女達の明るい笑い声と、酔いどれ達の豪快な笑い声が重なり合う音が溢れ、閉ざされる扉と共に、それは小さくなって消えていった。

ガリア > そうかい、ま、社会勉強には丁度良いんじゃねェかね。
……結局よォ、何かがおかしいだとか、間違ってるだとか
そんな風に考えもしない連中が、世の中にゃ一杯居る訳だしなァ。

(奴隷と言う労働力を土台にして成り立っている社会、其れもまた事実
特にこの国では、其れが最早当然の光景であると罷り通っている風潮が在る
だから、彼女のように、この国を、この現実を、おかしいと感じられる者が居るのなら
それは、恐らく良い事、なのだろうとは思うから
違和感を訴える彼女へと、其れで良いんじゃないかと、其の違和感を肯定して遣れば
程なくして、此方側へと駆けて来るミレー族の少女が見える
――此処に泊まっているのか、と言う一寸した驚きは在ったが
ともあれ、彼女が呼ばれたと知れば、肩を竦めて其の横顔を眺め。)

判った、んじゃ、俺もお仕事に戻るとするかね。 ……嗚呼、まだこの辺を見て回るんなら
何か在った時にァ、騎士団の奴らを探して相談しな、俺も時々回ってるからなァ。
ガリア、って名前出せば、まァ、多少は気ィ遣ってくれんだろ。

(彼女の会釈に、軽く片掌を掲げて見せては――其の背中へと、投げて置く声
己の名前を、果たして相手が気に留めるか如何かは判らないが
何れにしても、其の姿が無事に宿の中へと消えて行くのを見届けては
自分もまた、途中だった巡回路へと歩みを戻して、暗闇の中へと消えて行き――)。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 とある娼婦宿の傍」からエルフリーデさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 とある娼婦宿の傍」からガリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にシャニスさんが現れました。
シャニス > ちょっとした仕事の帰り道、近道をしようとそれなりに通りなれた貧民地区へと入る。
入ってしばらくし、見覚えのない光景に足を止めて周囲を見回す。
後ろを見れば来た道…が判らず、二股になっている道を眺め。
前を見れば3又の道がある。

「どこで間違えましたかしら…?」

知った道を歩いていたつもりがどこで間違えたか知らない道。
どうしようと困った顔で仕方ないとたぶんこっちと思う道を戻り。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からシャニスさんが去りました。