2017/01/19 のログ
■エルフリーデ > 何処からも響く欲の嬌声は、性的な事への耐性のない自身を酷く困惑させる。
相思相愛の仲となり、永遠を誓った夜に初めてを迎えることを夢見るような自身にとっては、見聞きしたくない汚れた現実だった。
嫌だと何度も脳裏に過る言葉、そのまま逃げ惑うように歩き続けると、ドンッと肩が誰かとぶつかってよろめく。
「っ……し、失礼」
ぶつかったのは自分よりも少し背丈の高い男性、素直に否を詫びると、そのまま立ち去ろうとする。
しかし、ぶつかった男はこちらの手首を強引に掴んで引き寄せ、細身の体躯が簡単に彼の傍に引き戻されてしまう。
「きゃっ…!? な、何を…っ」
唐突の行動に目を白黒させると、手首を掴んだ男の顔がこちらの瞳を睨む。
酒気の交じる吐息、若干焦点の定まらぬ瞳、格好はそこらにいるありふれたもの。
じぃっとこちらを確かめる男の視線は、先程、奴隷を品定め手している男達のものと重なって見え、ぞわりと悪寒が背筋を走った。
ぶつかっておいて詫びだけか? と、脅し文句とともに、身体を抱き寄せようと手が伸びると、悪寒が恐怖に変わる。
力や技、魔法といったものを手に入れても、根底にある女として男の粗暴さに対する畏怖は、そうそう拭えるものではない。
息が詰まる様な思いの中、鉄板が仕込まれたブーツのつま先で、足を破壊しない程度、脛を蹴りつけてその手を振り払えば、後ろへと飛び退いて距離を取る。
「貴方こそ大概なさいな…っ、ぶつかっただけで、そんなことをされる理由にはならなくてよ!」
声が震える、撃てばいい、蹴り飛ばせばいい、それだけなのに何故か怖く感じる。
吐き出す呼吸のたび、身体が小さく震えるのが分かる。
早くここから立ち去りたい、そう思えてしか無かった。
■エルフリーデ > 足を蹴りつけられた男は、酔いが冷めてきたのか、怒りを強めていく。
このクソアマと罵りながらもう一度掴みかかろうとする姿に、少しだけ足の動きが鈍る。
けれど、ここで男に掴まればどうなるかぐらいは、想像に容易い。
必至に嫌悪の感情で表情を険しくすれば、間合いに深く踏み込んできた男へ、膝蹴りを腹部めがけて放つと、ドムッと鈍い音を響かせて、身体をくの字に折らせる。
足を引っ込めれば、崩れていく身体へ追い打ちの回し蹴りを首筋へと叩き込むと、男は声一つ上げる間もなく地面に激突して卒倒する。
地面を転げる派手な音に、周囲の喧騒が引いていき、視線がこちらへと集中するも、荒げた息を整えようと肩で息をするのに意識が向かい、気づきもしない。
酔っ払いが伸されただけ、それすらも日常の一つといったように、活気は再び取り戻される。
「はぁ…っ、はぁ…っ…最低、ですわ…っ」
じっとりと掌に浮かぶ汗、ぎゅっと掌を胸元で重ねて握りしめて、わずかに背中を丸める。
瞳を閉ざし、心臓の高鳴りを沈めようとしながらも、張り詰めた意識が回りをつぶさに感じ取る。
それだけ、ここの世界は自分にとって危険で未知の世界だった。
■エルフリーデ > また誰かに絡まれる前に……そう思いながら歩き続けながら、闇深い街の何処かへと消えていく。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からエルフリーデさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 とある娼婦宿の傍」にエルフリーデさんが現れました。
■エルフリーデ > 今日もこの治安の危ういところに現れたものの、今日は確かな理由があってそこにいる。
娼館の前には二人の歩哨、そして、その周囲にはピンク色の可愛らしい首輪を嵌められたミレー族の少女達が客引きに声をかける。
昨晩と違うのは、何処と無く濁った雰囲気を感じさせないことか。
この街にしてありふれながらも、少しだけ異質な明るい日常を眺める自身は、その宿の向かいにある木箱の上に腰を下ろし、ぼんやりとその様子を眺めていた。
「……」
九頭竜山脈の麓の集落、そしてこの宿、ここは比較的故郷に近い雰囲気を感じる。
今は、一度滅びて似ているようで違う何かと思えてしまう。
最初に集落にたなびく首都の紋を象った旗を見たせいか、その繋がりがあるここはすんなりと受け止めることが出来た。
脳裏に浮かぶアレコレを呆け気味の表情で纏め、じっとそちらを見やる姿は異質にみえるかもしれない。
妙に可愛らしくも派手な衣装に身を包み、汚れ一つない金髪に青く丸い瞳。
貧民地区に凡そ用事などなさそうな格好をした少女が、憂い混じりな溜息を零しつつ座っているのだから。
「…あんな娘もするなんて…大変ですわね」
自分よりも小さく、まだ身体の起伏も少ない少女が背伸びをしながら大人の男に声をかける。
大体は既に経験済みで、痛みはもうなく、乱暴はされないとも聞いていた。
それでも…倫理という言葉に背く光景は、そのまま見続けるのに苦しく、視線を下へと逸らす。
弾けるような高い笑い声が響くと、軽く小刻みな足音がどっしりとした緩やかな足音を連れて、宿に消えていった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 とある娼婦宿の傍」にガリアさんが現れました。
■ガリア > (王都の中でも、特に治安の悪い地域。
そんな場所を、態々騎士団の礼服を着て歩くのは、利点も在れば、危険も在る
利点は、態々と看板を背負って歩く事で、多少なりと犯罪者や荒くれ者達に警戒心を与えられる事
問題は、逆に目立つ事により、そう言った輩達から狙われる可能性も在ると言う事
まァ、そうは言っても喧嘩を仕掛けてくる奴なんて、早々居る訳じゃない
珍しく少しだけお仕事の雰囲気を出しつつ、夜間の警邏に巡るなら
きっと、路地をのんびりと歩む先に、そんな少女たちの光景を目にする事となる。
道端で客引きをする娼婦の姿は、別段珍しい物でも何でも無い
けれど、其の様子を眺めている、もう一人の矢鱈豪奢な姿の少女は、流石にこの場に置いて場違いにすら
――詰る所、なんだアレ、と言った視線が、若干向けられた事だろう。)
………おーい、其処の可愛い子ちゃん。 この辺りに何か用なのか?
(そうして、何となく其方へ歩みを向けながら、掛けた声が、此れである。
声だけ聞いたら、その辺のごろつきがナンパでも仕掛けて来たんじゃないかと思われそうな調子
声のほうを振り向きさえすれば、違うと判って貰えるかも知れないが…夜間、路地は遠目だとまだ暗いから、果たして)。