2016/12/02 のログ
ステファン > 一瞬、自分に話しかけられているのだ、と判らずキョトンとしたが、直ぐ様彼女の方へ腰掛けたまま身体を向ける
マジマジと彼女へ視線を向ければ、随分と可愛らしい容貌にも関わらず老婆のような話し方をするものだ、と
笑ってしまった

「ようやく仕事が一段落したのでね…
 偶には1人というのも良いものですよ、大勢に囲まれていると気が休まらない」

こうして、見ず知らずの人物と交流できるのも街の酒場の良いところである
彼女のメニューを真似た負い目、というか借りもあったから、自分の料理の乗った皿を彼女の方へ差し出し
よろしければ摘んでください、と伝えて

「この時期、暖かい場所は人も動物も関係なく取り合いですから…
 譲ってやるのも飼い主の度量なんじゃないかと思います…」

猫に追い出される、というのも面白い話である
相当に猫好きなのか、或いは何かの例えなのか、あまり深くは考えず単純に面白い、と笑って見せた

アデリータ > 「気を使いすぎてやいないかい?
 まぁ、しょっちゅう一人なアタシが言っても説得力はないかもねェ?」

ひひひ と笑いながら 礼を言ってからステファンの料理を少し摘む。
エールに手が伸びたがここはぐっと我慢である。

「普段から動かないし、言うことを聞かない癖に餌と快適な場所だけはきっちり早く取るロクデナシの猫さ。
 これじゃあどっちが飼い主かわかったもんじゃない」

肩を竦めて笑う。

ステファン > 気を使いすぎる、という彼女の言葉にどうだろう、と首を傾げる。が、すぐに小さく笑い声が溢れ

「気を使いすぎて死んだ、という話は聞いた事が無いですから…
 肩身が狭い立場なので致し方ない事ですし、給料の内、と割り切ってますよ」

勧めた料理を口にして伸びかかった彼女の手が、ぐっ、と堪えるように留まった
そんな細かな仕草を目敏く観察しながら視線を再度、彼女に向ける

「私は猫を飼った事はないのですが、猫とはそういうものでは?
 見返りを求めて飼うような生き物ではないと思いますが…」

心の平穏とか、精神的なものはいず知らず
眼の前の少女が猫に餌を与える姿は想像できるが、その逆は全くもって想像に難い
ジョッキに手を伸ばし、ぐ、と喉を鳴らせば再びジョッキをテーブルに置き

「そういう手間というか、面倒を楽しむ為に猫と暮らしているのではないのですか?」

そう問いかけながら肩を竦める少女の様をのんびりと眺める

アデリータ > 「ああ、そりゃあそうだねェ。
 死ぬより先に潰れてしまうさね」

ひひひ と笑っていると注文した揚げジャガイモが届く。
スライスした芋を揚げたもの。
熱々のそれにチーズが乗せられており、熱でとろけている。
店主のサービスかバターも少量ではあるが乗っている。

「ネズミの一匹もとってる所を見たことがないからねェ?
 このご時勢だ、何の役にも立たない動物を飼えるのは貴族様くらいなものだねェ。
 まぁ、アタシャ使い魔候補にする為に育ててるんだけれど……育て方を間違えたのかもしれないねェ」

熱々のジャガイモを頬張る。
ホクホクしたジャガイモとチーズの味が口の中に広がっていく。
それらの余韻をエールで一気に流し込む。

「ひひひ やっぱり、この料理は熱いうちがいいねェ。
 兄さんは着ている服の仕立てが良い。
 もっといいトコの人間だろう? 酔って通り魔に襲われないといいねェ」

ステファン > 「潰して誰かの利益になるほどの価値があれば良かったんですが」

彼女と時を同じくして自分の眼の前にも料理が配される
薫り立つような料理ではないのだが、湯気を立てる芋の上にとろけたチーズが乗っており、
十分に食欲をそそる風貌であった。早速手を伸ばし1つ口に運べばチーズの塩気と
ホコホコした芋の食感が素晴らしい…なるほど、酒を我慢するわけである

「…使い魔が、というのは私にはわからないですが
 ひょっとしたら、その猫がいるお陰で家にネズミが寄り付かないのかもしれないですよ?
 目に見えているものが全て、とは限りませんから…」

店主、とカウンター腰に声をかければ酢を持ってこさせる
ほんの少量、じゃがいもに振りかければそれを口に運び、表情を緩ませた
隣で彼女がするのと同じように、もう1つ手に取れば彼女を真似て、ぐっ、とエールで流し込む

「まあ、その時はその時です
 そこで襲われるようならそれまでだった、ということですかねえ…?
 襲われることを考えてもしょうがないですし…」

へらり、と彼女の言葉に笑みを浮かべる
じゃがいもに手を伸ばしながら、なるほどこういう料理もあったのか、と感心して

アデリータ > 「そうなってないって事は、まだその時期じゃないってことさね。
 生かして誰かの利益になってるてことだからねェ」

ひゃひゃひゃ と笑う。

「そのネズミを見かけてるから、役立たずって言ってるのさ。
 ネコイラズの方がよほど仕事をしているよ。
 まぁネズミはネズミで使い方はあるものだけれどねェ……」

再びジャガイモを口にする。
冷めても美味しいのではあるが、やはり熱いうちがキモであるし。
火傷を気にせずなんのその。モグモグと平らげていく。

「襲われにくいようにする のも商人や軍人の仕事だと思うけれどねェ?
 リスクは減らしておくもんだよ」

笑いながらエールを最後まで飲み干した。

「なんだか頓着しない兄さんだねェ……周りから放っておいたら死にそうとか言われてないかい?」

ステファン > 「それなら、精々、誰かの利益を出し続ける努力をしますよ」

困ったような笑っているようなそんな表情が浮かぶ
余程、ジャガイモの料理を気に入ったのか、こちらも食べ進め更にはエールをもう一杯、と店主に求め

「…そうでしたか。
 私は猫にはあまり詳しくないですが、中にはネズミが嫌いな猫もいるかもしれないですし…
 ネズミにも使い道があるようですから、怠け者の猫にも何かしら出来る事があるんじゃないですかねえ?」

皿に残ったチーズを上げた芋で掬い上げるようにしてから口に運ぶ
こうすると少々、味が濃いのだがそこは先んじて追加注文したエールをぐっ、と飲めば良い加減である
それはまあ、確かに、と彼女の言葉を聞いていたのだが、部下の小言と同じような事を言われれば
手が止まり、マジマジと眼を瞬かせて彼女を見つめた

「…死にたがってるように見えます?
 全然、そんなつもりはないのですがねえ…」

視線が彼女から他所へ向き、ううむ、と唸りながらジョッキをテーブルに置く
思案顔を浮かべていたが、ぽん、と閃いたように手を叩き

「…まあ、努力しようがしまいが、生あるものは何れか死んでしまいますから
 どんな英雄、魔王、大商人も、永遠の時を生きながらえている、という話は聞きませんしね?」

アデリータ > 「死にたがってるわけじゃあないさ。
 頓着してないのさ。
 乱暴な言い方をしちまえば『どうでもいい』んだろうねェ」

すっかり平らげてこちらも〆とばかりにエールを煽る。

「アンタの頭ん中にある損得勘定に自分の事が入ってないんじゃないかねェ?
 そんなやつを外から見たら、死にたがりにも見えるだろうさ」

ひゃひゃひゃ と笑う。

「何時か死ぬなら、後に継がないといけないねェ……。
 アタシャいつまでも生きていたいけれねェ。
 魔女アデレータ様が死ぬなんて想像もできやしないし」

ごちそうさん と店主に声をかけてから金銭を支払う。

「ひょっとしたら、アンタはものすごく生き急いでるのかもしれないけれどねェ。
 次に会うときは、魔女の秘薬でも用意しておくよ。
 料理の礼はきちっとしておかないとねェ」

ひゃひゃひゃ と笑い、宙に浮かんだ箒を引っ張って店を後にした。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアデリータさんが去りました。
ステファン > 「そういうつもりは無いんですけどね…」

ううん、と眉間に皺がよった
確かに、やれ本家の甥の事やら、部下の事、自分の周囲には問題が山積しているだけで、
自分がどうでも良い、というつもりはないのだが、確かに少し自分自身を省みる事は減ったように思える
かと言って、危険に突っ込んでいくようなつもりは全く無いし、出来るの事ならば、
やれ戦場やら陰謀渦巻く王城で死ぬよりは、穏やかな陽の当たるテラスで揺れ椅子に揺られながら
眠るように死んだほうが万倍もマシであると思っている

「……肝に銘じておきます」

痛い所を突かれたような気がしたので素直に彼女にそう返す
どうも、自分に頓着しない風になっているらしい、自衛もしなくてはならないのだろうが…
ぐるぐる、と酔いも手伝ってか頭の中で思考がうずまき始める様相を見せれば、いかんなあ、と頭を振り
ひとまず、考えるのをやめた

「いえ、その点はもう心配ないです。後継者は既におりますから…」

彼女の名前を聞けば、目を丸くする
まさか、ご存命だったとは…と、捕縛云々より先にそちらに感心してしまうのだが、
流石に女性の年齢に触れるのはタブーだと思い、口を噤んでしまった
そうこうしているうちに料金を支払い出て行く彼女を見送れば、残った料理を平らげ、自分も料金を支払う

「……彼女に官舎まで送って貰えば良かったな」

と、内心思いながら上着に袖を通せば店を後にするのだった

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からステファンさんが去りました。