2016/09/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にフォルテさんが現れました。
■フォルテ > いくつかの明かりの灯った建物が微かに暗闇を照らす程度で、今はもう人気の見当たらない暗くて陰気な貧民街。
盗人はおろか、魔族すら徘徊している恐れのある魔境をおどおどしながら歩くのは一人の少年だった。
「……どうしよう…これは…。……お客さんの忘れ物…だとしても、こんなのをお店に忘れたまま抜け出すなんて……」
大切そうに何かが入った麻袋を抱えながら、困り顔で歩く男はどんなにモノを知らない人でも冒険者とは思えぬような平々凡々としており、それでいてひ弱な印象を与える。そんな彼が手にしているのは、酒場の客が置いて行った、何やらよくわからない道具ばかりが入った麻袋だった。
「見た事ない薬や道具ばっかり…何に使うのか、さっぱり分かんないな……。…持ち主の人、今頃慌ててお店に向かって帰ってるのかなあ…。…うーん」
閉店間際のある出来事。酒に酔って、羽目を外し過ぎたのか仕事にでも使うのであろうよくわからない物品の数々を置いてどこかへフラフラ出て行ってしまった客を追いかけている最中だった。
「絶対、返さないと困るよね…。冒険者の人が、仕事で使う道具なんだろうなあ…。…こんな夜にお酒飲んでふらふら出歩くなんて危ないし…持ち主の人早く見つけないと…」
■フォルテ > そこそこ歩き慣れ、だいたいどの辺りが安全でどの辺りが危ないかも感覚で分かりつつある貧民地区。それでも、一般人が歩くにはやはり物騒で、恐怖が絶えない。
「こんな時間に、泥酔した状態で襲われでもしたら、どんな人でもひとたまりじゃないはず…。……」
不意に、ボーっと麻袋をのぞき込んで考え込む。…泥酔してる冒険者なら、一般人でもひょっとして勝ててしまうのだろうか なんて事を。
「……うん…きっと無理だ。バカな事考えるのはやめて急ごう…。…ええと、早く持ち主が見つかれば僕もまっすぐ帰れるんだし…」
■フォルテ > そう願いながら歩き続けるも、体力がそんなにある訳でもない。だんだんと足取りは緩やかになっていき、ついに完全に広場で足を止める。…肝心の忘れ物の主は見つかるはずもなく。
「…ううん、役所が空いていれば届けて終わるのに。…持って帰ったら盗みと同じだもんな……。でも、今更お店に戻りたくなんてないや……。……はぁ、何事もなく帰れると思ったのに…。…あのお客さん、無事だといいけど…」
■フォルテ > ……、喉が渇いた。麻袋の口を広げ、薬の存在を思い出しながら可愛らしい瓶入りの液体を取り出す。
ラベルも何も張られていない、深い青色の瓶に入った液体はどこか不思議な潤いを見せていたが、こんな高そうなものを飲み水感覚で口にしていいかは難しいところである。
「……うわ…高そう…。…飲んじゃったらまずいかな…。……そもそも、人のだし…。……他にも色々入ってるけど……何なんだろう…」
瓶入りの液体はこれだけではなかった。中には見た事もない小道具がたくさん入っており、素人の彼には使い道などまるで見当がつかなかった。
…彼が生まれ持って「魔法」なるものに少しでも縁があれば理解とまでは行かずとも想像は出来ただろうか。
「……しょうがないから…もって帰ろうっと…。…また明日役所に届けに行けば大丈夫だよね…」
荷物の中身には困惑を覚えながらも、諦めて帰る事に。泥棒と間違えられたリ、本物の泥棒に襲われてはかなわない。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からフォルテさんが去りました。