2016/08/27 のログ
■レイカ > 「……………。」
私は黙って、彼が何処で傷を負ったのかを聴いた。
訓練していただけならば、こんな場所に怪我を負うはずがない…ならば誰かに襲われた。
私はそう考えたけど、真実は彼がいう通りなのだろう。
私の前で嘘をつくようなこには到底見えない。そして、私も彼の言葉を信じている。
もし、裏切られることがあれば悲しいけれど…私は、彼を信じたい。
「……甲冑、ですか。
レン君、その甲冑の人物なんですけど……このあたりに何か、紋章はありませんでしたか?」
私は、胸の辺りに指を置き、軽く2回叩いた。
昔―――レン君には黙っていることだけど、私は騎士団に所属していた。
もし、胸に何かしらの紋章をつけた甲冑をしているのだとしたら…彼は騎士団に喧嘩を売ってしまったことになる。
まあ、その騎士団がここのことを知っているかと言えば、確実にノーといえるだろう。
しかし……少し困ったことになってしまった。
「いえ……その人も必死だったんだと思います。
怖くて、すぐに逃げ出したい衝動に駆られたんですから…仕方がないと思ってあげましょう。
でも……よくやりました。」
人を助けた、そのことは素直に賞賛に値する。
だが――――――。
「――――……え!?み、ミレー族!?」
私は思わず、驚き大声を上げてしまった。
■レン・レイト > 「…いえ、どうだろう。何も無かったと思いますが…」
姉が真摯に自分の話を聞いて、その内容をしっかりと信じてくれるのが分かる。
だからこそ、少年も話すを決めたのなら誠実に真実を話す。
「あ、あ、でも大丈夫です!ちゃんと布で顔は隠してましたから、きっと覚えられてませんし、帰りも雨にまぎれてつけられないようにしてましたから!」
伊達に少年も裏舞台で行きて来てない。傭兵団だろうと騎士だろうと、何らかの組織である、撃破した場合の復讐等を危惧して顔は隠していたし、つけられないようにその場を去ったと言う。
「―――ッ!?ど、どうしたの?」
仕方ないと思えと言われれば分かったとうなづくけれど、大きな声を上げれば、ビックリして少し不安そうにするだろう。
■レイカ > 「…あ、ご、ごめんなさい……。」
驚いた、まさかミレー族を助けていたなんて。
紋章が何もなかった事を考えると、おそらく傭兵、もしくは貴族子飼いの下級騎士というところか。
だが、さすがというべきだろう…顔を隠していたのは正解だった。
あとを付けられないようにもしていたとあれば、おそらくここを特定されることはない…。
だけど……。だけど…私はそれ以上に。
「ふふっ…ふふふっ……!
そうですか、ミレー族を助けたんですか…ふふふっ…!」
―――――嬉しかった。
ミレー族だからその場に出くわしても助けなかったというならば、私はもうしばらくここに留まるつもりだった。
組織を抜ける、という事は考えなかったけれども…この子を放っておけるわけがない。
だからといって、毎回往復できるかといわれれば…空を飛ぶ手段を持ち合わせていない私では難しい。
けれど…全ての問題が一気に、音を立てて解決していくのを、とても心地よく思っていた。
「レイくん、本当にその助けた人はミレー族でしたか?
出来れば…詳しく特長を教えてほしいんです。もし言えたら…そうですね。
明日、私が晩御飯を作って上げますよ?」
■レン・レイト > 「………?」
姉が謝り、次に笑い出すと少年は怒られてる訳ではないと分かり安堵するも何がなんだか分からず困惑する。
ただ、姉がとても嬉しそうにしているのが分かったから。
「え?は、はい。襟を掴まれていた時に帽子が取れて…髪に隠れて垂れたウサギみたいな獣耳が見えたから。…正面からでは分かりずらかっただろうけど僕は横から見ていたから」
姉が料理を作ってくれると言えば眼を輝かせてやった!とガッツポーズをした後、助けた女性の特徴を話す。
獣耳を隠すようにしていたと。
服装は平民かそれよりも少し裕福そうだったと。
しかし、襟を掴まれた時に首輪のような物が見えた事。
故に、裕福な貴族に買われているが待遇の良いミレー族ではないかと思うという。
■レイカ > 一頻り笑った後、私はレン君から助けたミレー族の特徴をじっくりと聞いた。
少し裕福そうな服を着ていたというならば、確実にレン君の言うとおり裕福層にいる貴族の奴隷と見るのが一番だろう。
それを助けたのは少々いただけなかったかもしれないが、先に考えたとおり顔を隠していたなら問題はない。
貴族に飼われているならば、それ以上のこと――――連れ出すことは難しいだろう。
けれども、助けたという事実こそが重要だったのだ。
抱きしめたくなるほどに、この子が私にとって最高のことをしてくれた。
もう、何も悩む必要はない。
「…わかりました、レン君。…ありがとう。」
私は、一つだけ礼を言うと…ついに切り出すことに決めた。
レン君を連れて行こうとしている場所…ドラゴンフィート。
そこは最近出来た、新しい集落で…ミレー族が多数暮らしている場所。
もしかしたら話くらいは、レン君も聴いたことがあるのかもしれない。
「そこの組織、民間軍事団体・チェーンブレイカーに所属しているのが、私です。
…実は、レン君がミレー族に好意的ではなかったら……と思うと、連れていこうにもいけなかったんです。
…でも、今日……その憂いはなくなりました。」
ミレー族を助けるような子ならば、何も問題はない。
明日にでも…このこと一緒にドラゴンフィートへ向かおうと思う。
「そこの荷物は、長期滞在を想定して組織から送ってもらったものなんですが…無駄になってしまいましたね。」
■レン・レイト > 姉に礼を言われればよく分からないながらも首を傾げながらもすこし誇らしそうに笑う。
そして彼女が続ける話。
ミレー族の集落。
そしてそれを守る組織の話。
なんだか少年にとっては遠いところの話で直ぐには飲み込められなかったけど。
「僕は…虐げられて来ました。ミレー族の人がどう思うかは分からないけど…僕には種族なんて関係ないんです」
人間でありながら人間に虐げられ、魔族やその他の種族にも虐げられて来た少年にとって、種族という括りは無かった。
他者は等しく敵か、無関心か、そのどちらかだけだった。
それだから…姉が助けてくれた事に寄って、他者への関心ができた今でも、種族は関係なかった。
そもそも、彼女の耳を見れば、恐らく人間種ではなく、エルフだとおもっている。
であれば、どうして他種族のみを敵害視できようか。
「あ…その、ごめんなさい」
結構なおお荷物が無駄になってしまったと聞いて、もうしわけ無さそうに謝った。
■レイカ > 確かに、彼の言うとおりだ。
人間に、魔族に虐げられて、誰も助けてくれなかった彼にとって、種族という括りはないに等しいのだろう。
他人は自分を傷つけるもの、だからどんな種族であろうと敵対するものという認識。
種族は関係ないという彼の言葉、その言葉に真実を感じる。
全てが同じ、だからこそ虐げることなどありえない。
「……そうですね、その通りです。
種族なんて関係ない、皆同じ生物ですから…関係ありませんよね。」
だが、その言葉がとても心地よく、そして重かった。
体にしみこんでいく安心感、あの人とはまた違った…満たされる感覚。
きっと、此れが母性というものなのかもしれないと…彼に出会って、なんとなく察した。
「いえ、いいんですよ。そもそも、早くこの話をしていればよかっただけですし…。
あ、そうだ。話を変えましょう、何が食べたいですか?」
此れでも私は料理に関しては、そこそこの腕前だと思っている。
何しろ、組織に入る前は飲食店で働いていたこともあるくらいだし、ある程度は出来るつもりだ。
「私が造れるものでよければ…集落についたら、沢山ご馳走しますよ?
ああ、そうそう。レン君のことを組織にも伝えないといけませんね。
そこに住んでる、戦えないミレー族の護衛についてもらわないといけませんし…。」
――――気づかないうちに、ついつい話が弾んでしまう。
もしかしたら、こんな姿を見せるのは初めてかもしれない。
■レン・レイト > 「……はい。おねえちゃ…おほん。姉さんみたいに…いや、姉さんほどじゃないにしろよくしてくれれば、僕も…礼を返せると思います。…でも害してくるなら…僕は…」
だいぶ情緒が安定してきた状態でお姉ちゃんと面と向かっていうのがどうにも気恥ずかしかったのか。
耳を赤くして言い直す。
ただ、自分を害するものの話をすれば…過ごしてきた荒んだ生活に引きずられ、目が淀んでいく。
まだ、完全に人間不信が払しょくできたわけではないのだろう。
ただ、それでも、姉が紹介してくれる人々ならば…信じれると思う。
「信用してもらえなかったのはちょっと悲しいです」
口を膨らませ、わざとらしく不満そうに言うのはちょっとした意地悪で、すぐに冗談だと笑いだすだろう。
冷静に思えば、まだ出会って日は浅いのだ。
そして彼女は自分を心配してくれていた。
それなのに、自分が彼女のことを…ミレー族の否定するかどうかわからない。
それはきっと彼女にとってとても重い問題で、それでも真剣に自分のことを思ってくれた上でのことだとわかるから。
すぐにありがとうと礼を伝えただろう。
「何でも!じゃなくて…じゃあ、姉さんが一番得意なもの食べたいです!」
姉が何が食べたいか聞かれても、実は料理には詳しくないから。
姉のおすすめの任せよう。
そして、気分が高揚しているのか、少なくとも姉にあってからこの数日で一番饒舌になってる姉を見て。
それが楽しくて、嬉しくて、ぎゅっと抱きついた。
「ありがとう…レイカお姉ちゃん。僕を見つけてくれて」
■レイカ > 「……お姉ちゃんでいいですけど…、まあいいです。
大丈夫ですよ、その人たちは悪い人じゃありません…、それは私が保証します。」
でも、もし害してくる人たちならば…、その話をすると、彼の顔に影がさす。
完全に、人間不信が消えているわけじゃないのは、私にもわかっていた。
けれども、少しずつ信用していけるようになれば言いと、私は思っている。
かつて、ノイローゼに陥り心を壊してしまった私…それが治るのにも、時間はかかった。
彼の場合でも、同じだろう。だけど…この数日で、彼は随分と丸くなった気がする。
「ふふっ…、最初にいきなり槍を向けてきましたからね…。」
ちょっとしたお返しです、と私は笑って答えて見せた。
勿論、信用していなかったわけじゃない。私だって――――怖かった。
もし彼がミレー族だからという理由で、その槍を向けるような人物ならば…そう考えると、怖かった。
だからこそ、ミレー族を助けたという事実がわかった以上、もはや私に何の迷いもなかった。
此れで、心置きなく彼を…連れて行ける。
「わかりました、じゃあ私が腕によりをかけて――――…。」
何でもいい、というよりも得意なものが食べたいと言うならば、私はお手製のパスタを作ることにしよう。
美味しいといって食べてもらえるように、じっくりと時間をかけて作ってあげよう。
お腹が空いたとわがままを言ってくれてもいい。
そんな考えをめぐらせ、彼が抱きついて来たら…私はそっと、その背中を撫でた。
「…どういたしまして。」
やっと、飛ぶ事しか知らなかった小鳥は、止まることを憶えたように思えた。
■レン・レイト > 「…うん。お姉ちゃんがそういうんだから…僕も。僕も頑張ってみる」
…やはり、他人はまだ怖い。頑張ろうというとしても、過去の記憶がよみがえり、恐ろしくて震えが自然と怒り言いよどんでしまうけど。
それでも、少年はそれをぐっと飲み込み、まっすぐに彼女を見つめて頑張ると、そう確かに決意を現した。
「…それを言われたら、もう何も言えませんよぉぉぉ……!!」
姉の返しに、ぐぬぬぬと物凄いうなっている。というか捻じれている。
少年はそれを人生最大の落ち度だと思っているので、そこを突かれると最高に弱い。
つまり姉には一生勝てないのだろう。
「……うん。……お姉ちゃんに会えてから…分かったんだ。思い出したんだ。…幸せって感情。…それで、一昨日は幸せで、昨日は一昨日より幸せで、今日は昨日より幸せで…!」
背を撫でられ、伝わる温もり。
どういったら伝わるのかわからない。
言葉では表せないほどの好意と感謝を相手に伝えたくて。
彼女が幸せをくれたこと。
朝日を拝むことを呪わず、むしろ安堵すること。
彼女がくれたものが抱えきれぬ程大きくて。
感極まり、また涙を零し始めるだろう。
姉の存在を確かめるように抱き付き、撫でられ涙する少年は、荒み狂う餓鬼ではなく、確かに一人の少年として温もりを享受していて。…それはすべて彼女のおかげなのだ。
■レイカ > 「大丈夫…レン君なら出来ます。」
私の弟なんだから…と。
他人は怖いし、話を美味くできるかどうかなんて正直、保障は出来ない。
だけど、レン君ならばきっと乗り越えられると信じられる。
この、強い瞳を見ていると、なんだかそういう気分にさせてくれる。
「ふふっ……、そう思うなら、それを塗り替えられるくらい頑張ってくださいね?」
私は願っている。この落ち度を塗り替えられるだけ、私を助けてくれることを。
だけど、だからといって無茶をしていいわけじゃない。
彼の命はいくつもあるのだろうけど…私は二度と、彼を死なせるつもりはなかった。
甘えが生まれて、命を粗末に扱うような弟にはしたくない。
だから…言い聞かせる。”決してもう死なないで”と。
「…明日はもっと幸せ。明後日はそれよりも……。
毎日、毎日が楽しく幸せでいられる…。だから、絶望なんて吹き飛ばせるんです。
…人間って、思っているよりもずっとずっと…強いんですよ?」
私は、エルフだからその強さはないのかもしれない…。
体もそこまで強くない、誰かを支えられるほど、強くないのかもしれない。
だけど、沢山の心と一緒に…そして、甘えてくる最愛の弟がいるならば。
私にも、その強さの片鱗くらいは宿るのかもしれない…。
抱きつき、涙を流す泣き虫の弟の背中を撫でながら、しかと温もりを感じさせる。
■レン・レイト > 「い、今に凄くなってお姉ちゃんとお姉ちゃんの仲間たちを助けて見せるから…!」
姉が自分ならできると、そして頑張れというのなら。強がり半分と、そして心の中では、本当に志す。
今は守られてるけど。守られるだけじゃない。自分も姉や誰かを守れるようになりたいと。
そして。そして姉が、”もう死なないで”と…”もう死なないで”と。
命を玩具にされ、餌にされ、常に害され、奪われてきた少年。
寒空に凍え死んだ事も、火に炙られた事もある少年。
彼にとって、その言葉は。…その言葉は、どんな聖者の愛よりも重く、尊く、救いそのものだった。
普通の人間として接してくれること。一人の人間として気遣い、心砕いてくれること。
また一つ、彼の過去が洗われたようで。
声を上げて、また泣き出してしまった。
彼女の言葉に涙ながらうなづく。
でもその幸せは彼女なしでは得られなかった。
彼女は人の強さをしり、それを教えてくれる。
もしかしたら彼女は自覚はないのかもしれない。
ミレー族を思い、救おうとする彼女。
自分を支え、その強さを教えてくれる彼女。
地獄のような生から救い出してくれた最愛の姉こそ、
少年の中では誰よりも強く、気高いものなのだ。
■レイカ > 「ええ……、レン君ならきっと、いまに私を追い抜いて…強くなれるはずです。」
だから頑張ってほしい、と私は強く頷いた。
胸の中の泣き虫が、いつか組織の中で最強といわれるほどになるまで強くなることを期待して。
魔族にも、貴族にも負けない強さと優しさを秘めた、最強の戦士に。
もし、この世界に彼のようなものがいなければ…きっと必要はないのかもしれない。
けれどもこんな時代だ、腐りきった世界に落ちたひとつの種でも、いつかは花を咲かせる。
その花が腐っているか、それとも輝くのかは…レン君しだいだ。
「ふふ……でも、強くなるためにはまず、その泣き虫を治しましょうね?」
ミレーを救いたいと重い、覚悟を決めた私の強さ。
それは、私にとって強くもなんともない、ただの偽善というものだ。
その偽善が人を救えるなんて思ってもいないし、彼にそこまで思われることは、本当はないかもしれない。
でも…私が彼を護りたいと思う言葉、そしてミレー族を護りたいと思わせる言葉は、一つしかない。
”お姉ちゃん”
たった、この一つの言葉だけだった。
「……護ります、必ず………。
もう二度と、レン君を死なせはしません…、私が、護ってあげますから…。」
■レン・レイト > 期待してくれる姉の言葉に、力強くうなづく。
少年の緋色の眼に確かに炎が宿った。
それはまだ灯だけど、彼が本来持っていたはずの確かな者。
きっとそれはいつか大きな炎へと。人々に温もりを与える暖かな炎へと成長するだろう。
「だって……やさしくなんて、…されたことないからぁ…!」
嗚咽とともに零しながら涙する少年。
甘えたい盛りに親と死に別れ、呪いを受けた少年。
以来地獄の苦しみを味わい…生に絶望し、なお死ねずに生きてきた少年。
死ぬほど行きたかったのではなく”生きる程死にたかった”、その境地に至った少年。
彼にとって…やさしさというものは劇薬のような刺激物に他ならない。
ただ…それは少年にとって必要なものであることも間違いなかった。
姉が自分がやっていることが偽善だといえば怒るかもしれない。
その偽善に確かに救われたのが自分なのだと。
そして姉の善性を信じているのも自分なのだと。
護るといってくれた言葉が嬉しくて。堪えられないほど嬉しくて。
恐怖ではなく、歓喜に打ち震えながら、その姉の言葉を信じていると伝えたくて。ぎゅっと抱く力を強めた。
しっかりと姉の存在を感じるために。
しっかりとその感謝を伝えるために。
■レイカ > …知らない間に、私は彼を沢山救い出してしまった。
辛い過去を砕くというよりも…生きることに絶望しきってしまっていた瞳。
その瞳に、かすかな灯火が浮かび上がった。
活きること、生きがいを見つけた光は、もう決して消えることはないはずだ。
いつか、太陽の如く燃え盛る炎を信じて…。
「………いいことを教えてあげます。いいですか、もしレン君を傷つける人が現れたら…言ってあげてください。」
”牙をむく優しさもある”という事。
私は確かに、彼にしてみれば優しいのだろう。私はそれを甘さだと思っている節はあるが。
だけど、その私のやさしさを向けている相手を傷つける…。
以前、ミレー族を捕らえようとした男がいた、その男に見せた私は、正しく牙だった。
私は、私の見ている前で誰かを傷つけようとするものに、容赦などしない。
だから、私は護る。
好み一つでとは行かないけれども。全てを守り切れはしないだろう。
けれど、昔の私とは違い…いまの私は、確固たる信念を持っている自信があった。
彼が私を姉と呼んでくれる限り、私は彼の手を離しはしない。
それが、彼に感謝されることにつながるのであれば…当然のことをしたまで、というだろう
■レン・レイト > 「……牙を剥く優しさ」
…まだ幼い少年にははっきりとは理解できないけど、言わんとしていることは伝わった。
一通り泣き通した少年は、故に前を見た。
強くなることを。
彼女の力になれることを。
そのために、彼女の組織の手伝いをしたいと伝えた。
多くの望みを持ち始めた。
かつて、未来だけでなく、”現在”すらも否定した少年が、確かに未来を見据えたのだ。
「僕は…炎になります」
姉がそうしてくれたように、自分も誰かを守りたい。
心に温もりを、光を与えられる誰かに。
そして幸福を奪うものを…激しく燃やすものになるという。
■レイカ > 「……ええ。レン君には見せませんけどね……?」
私の中にいるもう一人の私。
牙を剥いた優しさは、絶対に獲物を噛み砕く。
組織の手伝いをしたいという申し出に、私は頷いた。
彼のことは、既にあの人には知らせてあるけど…組合長にはいっておいたほうがいいだろうか。
なかなか組織に帰ってこない人ではあるが…話はそのうち伝わるだろう、とは思う。
ともかく、まずは彼をドラゴンフィートまで連れて行くことを考えたほうがよさそうだ。
「…わかりました、立派な炎になってください。」
この世界は悲しみで溢れている。
彼が助けたミレー族もそうだけれども、大半のそれは虐げられている存在。
その存在を護ると心に誓ってくれた…そのことが、とても嬉しかった。
間違った道に進みかけていた少年が、真っ直ぐ前を向いた。
決して折れることのない槍になった、そんな気がした…。
「ふふっ………いい顔ですね、なかなかハンサムですよ?」
■レン・レイト > 姉が連れて行ってくれる場所に思いをはせる。
やはり他者は怖く、未だ不安でいっぱいだけど。
自分が、もう一度信じてみようと思った…信じたいと思い、それを受け止めてくれた姉が連れて行ってくれる場所だから。
少年は未来に見据えるだろう。
「え?……え、えへへ」
姉の言葉に照れて顔を赤くして微笑めば、照れ隠しに彼女に顔を埋める様にして隠す。
強い景色を見せたが、まだまだ子供。
燃え盛る炎となるには、まだまだだろう。
しかし、決して遠くないはずだ。
■レイカ > 「…さあ、もう寝ましょう……。明日、お昼ごろにここを発ちます。
もし、いっておきたい場所などあったら…朝のうちに済ませて置いてください。」
拠点までは、片道で2日はかかる距離だ。
馬を走らせることは出来ないし、徒歩で向かうとなるとそれなりに時間がかかる。
だけど、この子には見せたいのだ。世界はまだまだ棄てたものではない。
活きることで、見える景色を見せてあげたいと、私はそう思う。
だから…私は合えて、徒歩で拠点まで向かうことにした。
まだ、子供で灯火程度の炎。
だけど、その炎が大きくなり…いつしか、全てを焼き尽くす炎となる。
私は、それが楽しみで仕方がなかった…。
私は炎にはなれない、けれど彼の心に宿る光になれるならば…こんなに嬉しいことはないだろう。
照れ隠しのように、また抱きついてくるその少年の頭を撫でながら…私は、自分が終始笑っているのに気づいた。
■レン・レイト > 「大丈夫です。特に…行きたい場所なんてないですから」
この国でも、生まれた国でも…彼に居場所なんてなかったから。
なんて暗いことを思い出すけど、今は明日に目を向けるのだ。
どんな明日が待っているかわからないが…少なくとも少年はもう、それを恐れてはいないのだから。
ふと姉を見上げれば、姉は暖かく笑っていたから。
少年もそれが嬉しくて笑うだろう。
とても、和やかで幸せな気持ちだ。
好きという気持ちはいつ以来だろう。その人の笑顔が見れることがこんなにうれしいとは知らなかった。
自分が、まだ笑えるなんて知らなかったのだ。
「おやすみなさい、レイカお姉ちゃん。…大好きです」
そんな彼女がいるからこそ少年にとって最も恐ろしかった夜が怖くなくなったのだ。
彼女の手を取り、温もりを感じれば…恐ろしい夜も耐えられた。
寝る支度を済ませれば、彼女への敬愛と感謝を言の葉に乗せ、瞼を伏せるだろう。
■レイカ > 「………じゃあ、朝早くに発ちましょう。
だからしっかり眠って、体力をつけておいてくださいね。」
どんなに暗い過去でも、絶対に朝日は昇ってくる。
私だってそうだった、心を壊したときでも、必ず朝日は裏切らずに上ってきた。
だから、彼にもきっと…明るい朝はやってくるはずだ。
「……ええ、おやすみなさい…レン。」
大好き、その言葉がとても温かく感じられた。
握られる手を握り返し、眠る準備を整えれば…私は、彼が眠った跡で少しだけ目を覚まし、手紙をつづった。
それは、拠点で待っているあの人へ送る手紙。
明日…3日後に拠点に帰ると、手紙をつづり明日の朝に、それを配達してもらおう。
いまはただ、弟と一緒に…私もしばらくは、安眠するだろう。
その夢の中で、私は――大きな大きな、炎を見ていた。
ご案内:「王都マグメール 廃墟地区」からレイカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 廃墟地区」からレン・レイトさんが去りました。